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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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公益財団法人公益法人協会が会計研究会ヒアリングに対する意見書を公表 [2021年10月08日(Fri)]

そもそも誰のための何のための改正なのか?


公益法人協会による全面否定



【内閣府公益認定等委員会公益法人の会計に関する研究会(以下「会計研究会」という)ヒアリング「活動計算書」への名称変更に伴い検討すべき事項】に関する意見を公益財団法人公益法人協会が公表しています。存在感を示しております。


非常に的確な意見だと思います。


日本の公益法人制度は法制、税制、会計もバラバラです。番場資金収支会計時代にはそれなりの共通性がありました。それが、近年、制度間での差が拡大し大きな混乱を招いています。例えば「非営利法人会計の混迷」(長谷川哲嘉 2012)という論文が発表されています。これとまったく同様のタイトルで”Nonprofit Accounting Mess”(Anthony.R.N 1995)が米国で出版されたのは1995年のことです。日本の非営利の会計が法人間で異なるのは、前世紀から同じなのに日米の「混迷論文」の時間差は気になるところです。法制、税制のバラバラな状態を温存したまま会計だけを無理に統一しようとすれば、どうなるのかを端的に示しているようにも思います。


さて、余談はここまでにして、早速、公益法人協会の意見を解説を加えながら見ていきましょう。



@会計の基本的考え方特に「比較可能性」について

 会計研究会の提案では比較可能性が強調されています。これは企業会計の財務報告の考え方を踏襲したものです。市場のグローバル化が進む中で投資家や金融機関が企業の財務状況を把握するのに、比較可能であることが重視されるようになりました。そのことによって初めて投資の判断などの「意思決定有用性」が生まれるというものです。つまり、どの法人へ投資するのが有利か(M&Aを含めて)、どこの企業に貸し出すのが間違いないかを探る上では、確かに比較可能性は企業においては「意思決定有用性」において意味があるかもしれません。


 これを企業会計の専門家は「一般目的」と呼んでいます。少しでもアカデミズムに身を置くものにとって、「一般性」を主張するというのは非常に勇気のいることです。「一般目的」という慣用用語だからといって、それが投資家もいなければ、従来規制のため金融機関借入がほとんどなかった非営利組織にも妥当するのかどうかについて全く検証がなされていないからです。この部分も非営利法人に適用可能とするのは「妄想」に近い部分といってよいでしょう。 


 公益法人協会は、比較可能性などの意思決定有用性を「優先度が低い」と否定しています。当然のことと思います。


A指定正味財産から一般正味財産への振替の会計処理について

 定着してきたものを変える必然性について公益法人協会は疑問を呈しています。

ほんの少しの変更でも中小規模がほとんどの公益法人(職員の中位数5名)には大きな負担です。会計研究会は「分かりにくいから」という理由を挙げていますが、それでは変更する理由にならないというのが、公益法人協会の主張です。全くその通りです。


 もう一歩進めれば、「誰が分かりにくいといっているのか」会計研究会は明確に根拠を示すべきです。これまでの内閣府の公表文書でこの点につては、「公益法人のガバナンスの更なる強化等に関する有識者会議」(第2回)で「こういった非営利の分野についての知見がまだ浅いというのは確かにそうなのですけれども、 そこは会計士協会として研修なり徐々に知見を持った会計士を増やしていくという形で今 推し進めているところでございますので、急には間に合わないかもしれないのです」と会計士が公益法人会計基準を理解していないといわんばかりの公式発言がありました。 


その他詳細は略しますが、意見内容を一言で言えば公益法人協会による会計研究会提案の全面否定です。


これを読んで感じることは、そもそも@何が現状では問題であってA誰のために変更するのかB変更する場合のコストはだれが負担するのか。C変更した場合のメリットはどのようなものでそれを誰が享受するのか、という一連の制度改革のルールが明示されていないことが非常に問題だと思います。


また、個人的には1,2検討してもよいのかなという部分がなくはないのですが、その部分も「会計」の問題ではなく、「認定法上の問題」(正確には認定規則の部分で内閣府公益認定等委員会で取り扱うべき課題)も混在しています。公益認定等委員会がこの点を含めてしっかりと把握することが大事なのではないでしょうか?


ただでさえ会計で青息吐息の公益法人に混迷を深めることが明白なのは公益法人協会の意見書からも読み取れます。


そもそも誰のための何のための改正なのでしょうか?


長谷川哲嘉. (2012). 「非営利会計の混迷」. 早稲田商學(432).111-174

Anthony, R. N. (1995). The nonprofit accounting mess. Accounting Horizons, 9(2), 44-53 .



出口正之


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