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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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非営利研究の巨星:故レスター・サラモン先生の思い出 [2021年08月24日(Tue)]

突然の悲しいニュースが舞い込んできました。ジョンズ・ホプキンス大学のレスター・サラモン先生が8月20日にお亡くなりになりました(享年78歳)。


 サラモン先生は、ジョンズ・ホプキンス大学の国際比較NPO研究を主導し、世界の非営利研究の足場を作った方です。この研究で各国の非営利セクターの歴史、法制度、税制、経済規模などが初めて明らかにされました。経済規模を比較可能にするための「非営利セクターの定義」がつくられ、その後の非営利研究に大きな影響を与えました。


 また、世界の非営利研究者のネットワークを作り、とりわけ、国際学会のISTR創設には大きな貢献をされています。


 近年ではイタリアやロシアの研究所にも深くかかわり、世界中を飛び回っていました。


 その研究業績については改めて紹介するまでもないと思いますが、アメリカ特殊主義の中だけで語られていた非営利セクターを目に見える形にして、普遍的でかつ重要な存在として明らかにしていった功績は非常に大きなものがあります。こうした実証データをもとに、Foreign Affairsに発表したThe Rise of the Nonprofit Sectorでは、20世紀最後の四半世紀に非営利革命(Associational Revolution)が世界中で進行していることを証明したことは世界を驚かせました(後に、Partners in Public Service: Government and the Nonprofit Sector in the Modern Welfare State.所収)。


 その他にも、第三者政府論、ノンプロフィット・フェイラー、非営利のソーシャル・オリジン理論、PtP(Philanthropication thru Privatization)等の新しい概念を次々と打ち出して、最近のフィランソロピーの動向にも深く注視をされていました。


 やや個人的な感傷に近いものですが、先生の思い出を記したいと思います。お許しください。


 サラモン先生と初めてお会いしたのは1990年の5月でした。当時の勤務先からちょっとした特別表彰として2週間の特別休暇と幾ばくかの報奨金を頂戴し、5月の連休を兼ねて3週間、米国の財団を尋ね歩きました。いろんな財団からのアドバイスもあり、創設間もないJohns Hopkins University International Philanthropy Fellows Program を有しているサラモン先生のところへたどり着いたのはその最終日です。この出会いが私の運命を大きく変えることとなりました。


 前年のベルリンの壁の崩壊によって、世界の財団が大きく変わろうとしているときでした。民主化した東欧を支えようとする米国大型財団の意向もあって、このプログラム参加者も東欧の関係者がほとんどでした。そこへアジア人が突然やってきましたので、驚きもあったのでしょうが、非常に歓迎してもらいました。


 翌年には、アジアからは初めてのInternational Philanthropy Fellowとしてジョンズ・ホプキンス大学へ行くことになりました。小さな子供連れの渡米でしたので、忙しい先生ではありましたが、ホームパーティを開いて頂くなど家族ぐるみのお付き合いをさせていただきました。


 特にサンクス・ギビングの日には「サラモン家の伝統」だからという理由で、「サラモン家感謝祭フットボール」と称して、お二人の息子さんを入れてアメリカンフットボールを敵味方全部でわずか6名で行ったのが楽しい思い出です。もちろん、アメフトなどしたこともなかったですし、ヘルメットをかぶったわけでもないですが、早口でその都度作戦を示され、ともかくわからないままに広場を駆け巡り疲れ果てたことを思い出します。


サラモン家感謝祭フットボール.jpg

「サラモン家感謝祭フットボール」(1991年11月)


 International Philanthropy Fellowのプログラムは当時の世界の財団の隆盛とも連動して毎年世界各国で会議を行っていました。もちろん、全てに出席できたわけではありませんが、ISTRの理事会や世界大会等を含めて数年に一度は必ず会議で一緒になっていました。


 研究面ではNPOの国際比較プロジェクトは数多くの方がかかわりましたが、とりわけ、雨森孝悦氏、跡田直澄氏、太田美緒氏、山本正氏らの貢献が大きく、その他にも、本間正明氏、田中敬文氏、山内直人氏らも後から加わる形で実に多くの研究者が実際にはかかわっています(詳しくは『NPOが拓く新世紀』参照)。


 柔らかな物腰、紳士然たるその立居振舞いは研究内容とともに世界各地から尊敬を集めていました。International Philanthropy Fellowsは、Salamonとsalmon(鮭)とをかけて、「母川(サラモンの下)に戻ってくる」と言われたものです。


IMG_20200601_0003 (2).jpg


 International Fellows Comferenceでのサラモン教授(チリ・サンチアゴ)


 1995年の阪神淡路大震災直後は、偶然にも来日しており「阪神・淡路大震災被災地の人々を応援する市民の会」をはじめ被災地をご案内致しました。


 リアルで最後にじっくりとお話したのは、2016年のドイツ・ミュンスターです。夕食を一緒に取りながら、国際比較プロジェクトが始まる頃の話をじっくりとお伺いいたしました。


 昨年にはISTRの特別プログラムでZOOMで元気な姿を見せていらっしゃいましただけに、残念でなりません。ご冥福をお祈り申し上げます。


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