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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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収益事業課税に関する現場からの画期的な報告書 [2021年06月21日(Mon)]
報告書.jpg



 画期的な報告書が出ました。特定非営利活動法人 NPO会計税務専門家ネットワーク(理事長脇坂誠也)編 『福祉サービスに関する法人税課税問題研究報告書』です。全329頁の大著です。

現在はすべてWEBからダウンロード可能ですが、まずは下記をクリックして読んでみてください。

 非営利法人の収益事業課税は税務署にとっても、法人に寄り添う税理士にとっても、厄介な代物です。 

 法人税における解釈通達のかなりの部分は、収益事業に関連するものです。
 解釈上、課税とも非課税ともつかない事例が山ほど出てきます。 

 税務署の立場に立てば、課税と解釈可能な事例を非課税のままにすることは当然嫌なことでしょうし、税理士の立場に立てば非課税と理解して法人にアドバイスしていた事例を後から課税と言われたのでは面目を失います。

「はっきりしてくれないか」という思いは意外と共通するものかもしれません。 
  徴税コストと徴税額が全く合わないのではないかと想像しています。

 かつて政府税制調査会ではこの抜本改革を目論んでいたのではないかと思える時期がありました。 

 ところが、収益事業課税についてはそれぞれが余りに個別的であり、経緯や内容について必ずしも十分に理解されない中で、象徴的用語が飛び交う「空中戦」が行われていたのではないでしょうか? 

 小生もかつて下記の論考で収益事業課税について取り扱ったことがあります。 

出口正之2014「収益事業課税試論: イコール・フッティング論を巡って」. 公益・一般法人:, (871), pp 4-13. 全国公益法人協会 2014年6月15日

  「試論」と記載している通り、複雑怪奇な状況を示し巷間議論されていることでは収まらないことを示すことで精一杯でした。 

この度、会員数約500の税理士・会計士の同ネットワークのうち18名の委員からなる、福祉サービスに関する法人税課税問題検討委員会(委員⾧ 岩永 清滋) が立ち上がり、『福祉サービスに関する法人税課税問題研究報告書』が刊行されました。

 これは、2017年に障害福祉サービス事業に関しての国税庁の質疑応答事例の発表があったことが契機です。こうした質疑応答事例によって課税・非課税が明確になるということは、「その行う事業が課税対象なのかそうではないのかといった納税者の予測可能性を相当困難にする」ことへの疑問です。「もっと明確であるべき」という切実なメッセージです。

 法令の改正を伴わずに、医療保険業か請負業としての課税判断がなされた形になります。 

 そのことへの疑問を契機として、障害福祉サービス事業の実務、実態、制度、判例など様々な角度から調査研究した報告書となっています。 

 請負業が中心課題ではあるものの、法人税の収益事業課税全体を視野に入れた本格的な収益事業論となっています。

 「試論」を書いたことがあるだけに本書の素晴らしさがよくわかります。   https://npoatpro.org/commission.html#point6   

 収益事業課税の税制改正は、現行解釈の中で個別に課税・非課税の法人が混在している以上現実的には難しいこともあろうかと思います。

 実際に、前回の税制改革の最大のチャンス時には収益事業課税問題の本質の議論に向かう前に民間側が大反対をして機会を逸してしまいました。   

 ただ、これだけ複雑怪奇で整合的な説明が不可能となっている以上、いずれ抜本改革を行う必要があろうかと思います。   

 税務署でも現場でも、収益事業課税解釈のコストが無視できないほどになっていますし、法人制度改革と関連して簡素で誰にでもわかりやすい制度にいずれしていくための冷静な議論の契機となるものと考えます。   

 収益事業課税については国税庁と現場とは「同床異夢」ならぬ「異床同夢」のような関係に思います。

増税・減税を目論む税制改革ではなく、租税法律主義や租税原則に沿った整合性のある税制改革の端緒となってくれることに期待しています。

 なお、本報告書が公益財団法人三菱財団の助成を受けていたことも、素晴らしいことだと思います。




                         出口正之
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