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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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国際非営利会計基準議論の中の個別論その@:“Double Funding Fraud”(「二重資金調達不正」) [2021年03月23日(Tue)]

 先週の土曜日に公益社団法人非営利法人研究学会の関東部会がオンラインで開催されました。國學院大学の金子良太先生が「非営利組織会計の国際的枠組み」と題して、IFR4NPOの非営利会計基準の原案(CP)等について報告されました。


 正統派の会計学者である金子先生であるので、公表されたばかりの原案について、概要や位置づけについてさすがに非常に的確に報告されていました。とりわけ、日本のこれまでの非営利会計の議論で「ユーザーの視点の軽視」を端的に指摘されていました。日本では「実務家の視点」とは、財務諸表を作成する側の要請が強く、財務諸表を利用する側の視点が弱いのではないかという重要な点を指摘されていました。


 金子先生は、内閣府の「公益法人の会計に関する研究会」(会計研究会)における唯一の学者のメンバーです。議事録ではなく議事要旨しか公表していないので、詳細まではわかりませんが、最近、会計研究会の議論が良くなってきたのではないかと思っていますが、それは金子先生のご尽力によるところが大きいのではないかと思っています。上記の「ユーザーの視点の軽視」との指摘は非常に重要な問題提起だったと思います。



先生は「全体像をお話しする」ということで、初回であることから今回は個別論には入り込みませんでしたが、今後、会計学観点からたくさん議論されることと期待しております。


 質疑応答の時に、小生から原案(CP)には、簡単にしか触れられていない重要論点で、日本ではあまり議論されていないことについて少しコメントをさせて頂きました。この場で紹介させていただきたいと思います。IFR4NPOは起草した会計専門家グループと実務家(ユーザー)グループに分かれていますが、とりわけ、実務家(ユーザー)グループの方々が主張していることです。


 それは 「現金主義か発生主義か」という点に関して“Double Funding Fraud”(「二重資金調達不正」)とでも訳しておきます)という重要な論点が出されていたことです。非営利組織を助成団体と被助成団体に分けるとすると、助成団体は、被助成団体に現金ベースの報告を求めることが一般的です。例えば、車両を購入するための資金として100万円を助成した場合。その100万円を車両の購入に使ったことを示してもらいたいので、減価償却費を示されても困るわけです。


したがって、被助成団体は助成財団に現金ベースの助成金の単位の報告をしなければなりません。被助成団体全体の財務諸表が発生主義であると、助成団体への現金の報告との不一致が生じることになりますし、その部分は監査の対象外となっているものと思います。


 助成をしてくれる団体が複数ないし多数になると、その会計はより複雑になってきます。そうすると、Aという助成団体にも、Bという助成団体にも、それぞれ同じ領収書のコピーを添付して車両を購入したという不正の報告が起こりうることになります。これが“Double Funding Fraud”(「二重資金調達不正」)です。この不正に対して発生主義の場合にはどのようにして防ぐ手立てがあるのかという点が議論がされました。


 この主張を敷衍していえば、現金主義会計で助成源ごとにプロジェクト会計を作れるような部分会計と全てを合算した全体会計をユーザー側は望んでいるということでしょう。財産目録を必須とすれば、車両の台数も管理できますから、他の助成団体からどのような助成があっても、部分と全体は一致させることで監査対象となる全体の財務諸表の一部を助成団体に提出すればよく、“Double Funding Fraud”の不正や誤謬を防ぐことに効果が期待できるというものです。


 また、不正のチェックには現金を追うことが一番だという主張もあります。


あまり日本では存在しなかったユーザー側から出された主張だと思いましたので、私の方から紹介しておきました。日本の非営利会計議論で是非一度検討してみてください。

                            (出口正之)


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