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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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ズバリ! 収支相償特集 [2021年03月04日(Thu)]

この時期、「収支相償の基本公式」をはじめ、収支相償に関するアクセスが多くあります。


今年度は特にコロナの影響もあり、収益も費用も予定外のことが多く悩んでいる公益法人関係者も多いと思います。そこで今回はズバリ収支相償特集です。


これまでもブログで何度も書いてきましたが、各所に散っているので、まとめてみました。『公益認定の判断基準と実務』(全国公益法人協会)も参考にされるとよいでしょう。


内閣府の前公益認定等委員会事務局長(=公益法人行政室長)が、端的に語っています。

@これまで内閣府の説明が不十分でした

A収支相償には特定費用準備資金を活用してください。


必要にしてかつ十分なメッセージです。


収支相償は公益目的事業の「収入」と「適正な費用」(いずれも法律用語)のバランスを見るものですが、これを「収益」と「費用」と言い換えて、「収支相償が未達だった場合の対応策」などの文言が巷間溢れるので誤解されています。


ここで「特定費用準備資金への積立て額」というのは、「適正な費用」として収支相償に組み込まれた正常なラベルなのです。未達の時の例外措置ではなく、これを使用することが前提となっています。


言い換えれば、収支相償の規制とは、公益目的事業のお金が余れば、「特定費用準備資金」というラベルを貼ってください、と言っているにすぎません。


したがって、全ての公益法人が収支相償を満たすように設計されています。(なお、収益事業を行っている公益法人は、50%を超える繰入額の上限を定める意味があります。)


「特定費用準備資金」は法人の資金繰りが厳しい時などを含め、1回は理由にかかわることなく取崩しができるような柔軟な設定にしております。これを例外措置として厳しく解釈する人がいるからおかしくなってしまっています。


認定規則の「正当な理由がないのに当該資金の目的である財産を取得せず、又は改良しない事実があった場合」の解釈として、ガイドラインでは「止むことを得ざる理由に基づくことなく複数回、計画が変更され、実質的に同一の資金が残存し続けるような場合」と二重否定して説明しています。


この個所は声を出して読んで何度も読んでください。


つまり、1回はどんな理由でも変更可能なようにとても柔軟に作っています(なお、法人内の規程整備や手続きはちゃんとしてくださいね)。


資産取得資金もほぼ同様の取り扱いですが、法律上「適正な費用」となっていることから、「特定費用準備資金」が原則で、「資産取得資金」が例外という取り扱いになっているにすぎません。


「黒字になりそうなので、無駄なことに使っても収支をとんとんにさせる」等ということは決してやってはいけません。まして、「鉛筆なめなめ他の科目と調整して収支を合わせるようなことなど」は絶対だめです。


「公益の増進」のために必要なことを必要な分だけ支出して、計算上余れば特定費用準備資金というラベルを貼ってください。組織として赤字となるよりも黒字となることが望ましいことは言うまでもありません。


つまり、収支相償は、公益目的事業の収入は公益目的事業の「適正な費用」に使ってください!!という常識的なメッセージなのです。


また、行政庁の方は、特定費用準備資金についての認定規則を満たしていないと感じたら、どうすれば、満たすようになるのかご指導をお願いします。間違っても、「特定費用準備資金として認められないから、積み立ててはならぬ」などと、立法趣旨と合わない指導は是非ご遠慮願います。「合理的に算定されていること」の文言に込められたメッセージも十分に読み取って、しゃくし定規に(前公益法人行政室長)解釈しないでくださいね。


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