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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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森喜朗氏の発言問題と公益法人:もし本当に辞任となってしまったら [2021年02月07日(Sun)]

2月3日 公益財団法人 日本オリンピック委員会(以下「JOC」)の森喜朗氏の発言が女性蔑視その他の点で問題視されたことが報道されています(注1報道例)。


翌日の釈明会見後の報道(注2報道例)によって、同法人の臨時評議員会における名誉委員としての発言であることが明らかにされています。



【参考】公益財団法人日本オリンピック委員会 定款 

第32条 本会に、最高顧問1名、名誉会長1名及び若干名の顧問、名誉委員を置 くことができる。

2 最高顧問及び名誉会長は、理事会で推薦した者につき、評議員会の決議を経て

 会長が任命する。

3 顧問及び名誉委員は、スポーツの功労者の中から理事会の決議を経て会長が任  

 命する。

4 最高顧問、名誉会長、顧問及び名誉委員は無報酬とする。

5 最高顧問、名誉会長、顧問及び名誉委員は、評議員会に出席して意見を述

 べることができる。





他方で、同氏は公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という)の会長職という要職にあり、かつ、問題発言内容が五輪憲章にも抵触する重大なものであることから、同法人の会長職に対しての辞任等の要求の声が高まっていると報道されています(注3報道例)。



【参考】

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会定款

第23条 当法人に、次の役員を置く。 

 (1) 理事3名以上35名以内

  (2) 監事1名以上3名以内 

理事のうち1名を会長とし、会長以外の理事の中から副会長、専務理事、常務理事を置く。

前項の会長をもって一般法人法上の代表理事とし、専務理事及び理事会の決議によって業 務執行理事として選定された理事をもって一般法人法第197条において準用する一般法人 法第91条第1項第2号の業務執行理事とする。 

4 当法人に会計監査人を置く。



となっています。つまり、森氏は組織委員会の唯一の代表理事です。

したがって、現在の状況を法令や二法人の定款から正確に記すとすれば、以下の通りとなるものと思います。


【2月3日の公益財団法人 日本オリンピック委員会の臨時評議員会において、定款第35条第1項の名誉委員である森喜朗氏(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長)が女性蔑視を含む重大な問題発言を行った。翌日、森氏は組織委員会において会見し、同発言を撤回したが、組織委員会の会長職(同法人の代表理事職)の辞任は否定した。IOCは発言を撤回したことから、この問題は解決済みとしている(注4報道例)が、組織委員会会長職に相応しくないとして辞任を求める声が高まっている。】


また、これに関連して

【「辞職すべきだと言うべきではないか」と迫ったが、首相は「組織委は公益財団法人であり、首相としてそうした主張をすることができない」と拒んだ。】と報道されています(注5報道例)。


「組織委は公益財団法人であり、首相としてそうした主張をすることができない」という点は、かつて公益法人の人事に政府が関与できていたことにより非常に多くの弊害が生じていた旧制度を改革した公益法人制度改革の趣旨からいっても、制度の説明として正しいものと思いますし、小生の立場からは政府関係者にはこの種のことに口に出してもらいたくないという強い思いがないわけではありません。もちろん、質問の趣旨が制度の説明を求めるものではなかったのかもしれませんが。


また、仮に組織委員会の会長職の辞任となった場合には、どうなるのでしょうか。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般社団財団法」)

第七十九条 代表理事が欠けた場合又は定款で定めた代表理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した代表理事は、新たに選定された代表理事(次項の一時代表理事の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお代表理事としての権利義務を有する。


となります。つまり、辞任しても代表理事としての権利義務は変わりません。したがって焦点は後任を選任できるかどうかという点なのです。


少なくとも辞任を迫る声が大きくなることはよく理解できます。女性への蔑視や会議では黙っておけというに等しい旧時代的な圧力が醸し出ているからでしょう。しかし、森氏の辞任という選択肢がどういう結果をもたらせるものかについて関係者は後任とセットで考えなければならないということを十分踏まえて対応しているはずです。唯一の代表理事なので空席のままにしておくわけにはいかないのです。


その点、件の発言のもととなったJOCのポスト(名誉委員)の辞任については誰も話題にしておりません。頭の固い学者からみれば、不思議に感じます。


また、一般社団財団法に基づき、公益法人の代表理事については理事会が、理事については評議員会が選解任の権限を有しています。


公益法人の理事をめぐって、世論が沸騰することがこれまでもありました。


そのたびに、話題となる人物の周りの関係者の発言も報道されることもあります。制度を踏まえた発言が、別の文脈で捉えられ、真剣に考えていないように受け取られることもなかったわけではありません。


我々の力不足で、社会一般に対する適切な公益法人解説書がないことも大きな要因と考え、反省の日々です。


公益法人も皆様にとっては、ガバナンス有識者会議の最終とりまとめが出てそれほど日がたっていないこともありますので、理事会などでガバナンスとマネジメントについてしっかりと議論をしておかれるようにおすすめします。


ガバナンスの制度設計は、性悪説に基づいて作り上げざるを得ません。昨今、ガバナンスを声高に主張する人は多いですが、企業との違いも十分に考慮する必要があります。多くの公益法人には無報酬の役員もたくさんいて、企業のように経済的要因で人事を動かしていく選択肢は狭いのも事実です。

 組織を運営するにあたっては、様々な点を考慮しながら運営する場面も出てくるものと思います。世論はしっかり受け止める必要はありますが、それとともに組織運営上のベストな選択肢を理事会や評議員会は現実的に考える必要があるでしょう。



世論がここまで国際的にも沸騰すると、本当に運営が難しくなりますね。

それにしても許されざる発言(撤回はしているが)でしたから…。


注1報道例:朝日新聞デジタル記事「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」森喜朗氏2021年2月3日 18時04分



注2 時事ドットコムニュース>特集>【詳報】森喜朗会長会見 女性増え「JOCもこれから大変」

 

注3毎日新聞2021年2月6日 11時39分(最終更新 2月6日 20時13分) 電子版 蔑視発言の森氏辞任など求め、20〜30代女性中心にネット署名11万筆以上

 

注4 TBSニュース 森会長“女性蔑視”発言 IOC「森会長は謝罪した、問題は決着した」5日5時1分


注5時事ドットコムニュース 菅首相、森会長辞任求めず 事態収束は不透明 2021年02月05日18時45分



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