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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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国際非営利会計基準は日本の公益法人会計基準議論に修正を迫る [2021年01月29日(Fri)]

先般の林雄二郎の「サードセクター論」のウェビナーには主催者として驚くほどの多数の方にご参加いただきました。あリがとうございました。

ところで、非営利の国際会計基準(直訳は国際非営利財務報告基準)も「サードセクター論」に基づいています。

企業のセクターの「企業会計」の国際基準である国際財務報告基準(IFRS)の存在。政府のセクターの「公会計」の国際基準である国際公会計基準(IPSAS)の存在がありました。

これに対してサードセクターとしての非営利セクターの国際非営利会計基準(IFR4NPO)については以下の議論がありました。

@非営利セクター独自の「会計としての特殊性」はなく、法制度上の制約から非営利独自の会計基準が必要であるという立場。

A非営利セクター独自の「会計としての特殊性」はあるのだから、法制度に関係なく、その「会計としての特殊性」に基づく非営利セクター独自の会計基準が必要であるという立場。

国際非営利会計基準の議論はAの立場に立ちます。このことは日本の非営利組織、とりわけ公益法人会計基準の考え方に以下の2点から非常に大きな修正を迫るものと考えます。


第1点

公益法人会計基準は番場嘉一郎先生の深い洞察からもともとAの立場で出発していました。ところが、平成16年公益法人会計基準は@の立場に急ハンドルが切られます。さらにその明確な理由は明らかにされておりません(「企業会計や公会計の動向を受けて」という理由ともいえない理由はありましたが)。そしてその考え方は現在も続きます。

その結果、企業会計の国際会計基準の変更に合わせて日本の企業会計基準が変更になると、当該内容を公益法人会計基準に付加するかどうかという以下の順序で議論が行われています。

企業の国際会計基準⇒日本の企業会計基準⇒日本の公益法人会計基準。

他方で国際的非営利会計基準の議論はAです。このスタイルが世界的な合意となっているということです。

今後、他の国では

非営利の国際会計基準⇒国の非営利の会計基準

という形で非営利の会計基準が定められていくものと思います。

言い換えれば、今回の国際非営利会計基準の議論の国際的な高まりによって今の日本の公益法人会計基準の議論を継続していけば、日本の非営利会計のガラバコス化に一層の拍車をかけてしまうということです。


第2点

第2点は策定のプロセスです。

今回の原案を見て頂くとよくわかりますが、議論のデユープロセスに力点が非常に置かれています。これは日本におけるNPO法人会計基準の作成過程と共通するものがあります。

IFR4NPOの議論は、会計関係者のTAG、実務経験や研究者からなるPAG、助成機関からなるDRG、さらに全体の進行のガバナンスを見ているコミッティ―から構成され、徹底した情報公開と意見徴募によって進められております。

これに対して日本の公益法人会計基準の変更の議論のプロセスは、「公益法人の会計に関する研究会」(会計研究会)として議事録も公開されずに、会計関係者だけがクローズトに議論しています。

もちろん会計研究会には立派な学者も入っていますが、如何にも前世紀的な議論の進め方が、時代錯誤であることを一層際立たせてしまいました。本来、それをチェックすべき公益認定等委員会の議論がどのように行われているかの議事録すらありませんし、そのことは公益認定等委員会運営規則に抵触しているのではないでしょうか。

したがって、国際非営利会計基準の議論が、こうした会議の進め方には大きな修正を迫っていくものと思います。


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