CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


<< 2020年09月 >>
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      
最新記事
月別アーカイブ
会計研究会の不思議  法人会計 本当に緩和? [2015年03月08日(Sun)]
「正味財産増減計算書内訳表における法人会計義務付けの緩和」というのが出ており、今回の目玉の一つだと思います。法人の皆様は喜んでいるかもしれませんが、注意が必要です。


 議論の前提が、「法人会計は認定法第 15 条を踏まえ、公益法人の運営に必要な経常的経 費 (管理費) の額を事業費と区分する役割を担っている」(素案11ページ)という安易な立脚点にたっています。




 認定法第 15 条は公益目的事業費率に関わるところですから、ここを「制度設計者」の立場に立って言い換えると、「法人会計がもつ『収支相償』、『遊休財産規制』、『公益目的事業費率』、『公益目的取得財産残額に相当する額』の4要素のうち、公益目的事業費率のみを考えています」ということです。好意的に考えると、後のことは研究会の範囲を超えるので、公益認定等委員会で考えてくださいということかもしれません。いずれにせよ、「未完の提案」です。


今回はこの緩和提案に関わるもう少し重大な点を指摘します。


 それは法人会計の黒字です。「法人会計の黒字」はよほど気にかかるようです。制度設計者」は全く規制をかけていない部分です。しかし、気持ち悪いのでしょう。「そのお気持ちはよくわかりますが」(どこかで聞いたセリフですね)。


今回の緩和に関わるところで次の一文があります。

 「管理費の財源をどのように考えたらよいか検討を行った。その結果、法人会計区分を作成しない場合は、管理費相当額の収益を管理費の財源とみなさざるを得ないため、結果として法人会計の黒字が認められないことと同様となる。法人会計区分を作成する場合は、同区分で経理が適正になされていれば、黒字が生じていても、運用上認められることとなる。」(素案12ページ)



最後の「黒字が生じていても、運用上認められることとなる」というのは、どういう意味でしょうか、私にはわかりません。この文面は普通に読めば、「制度上は認められない」「原則は認められない」ということを含意しています。当然、この含意は監督などにも反映されているでしょう。上記で書いた通り、制度上、「法人会計の黒字」は全く規制がないところです。これもまた、規制のないところについて、運用上規制をかけたことにしておいて、緩和するというやり方なのでしょうか?「運用上認められる」という意味をはっきりと示していただきたいと思います。


 さらに、緩和しようとしている部分ですが、「法人会計区分を作成しない場合は、管理費相当額の収益を管理費の財源とみなさざるを得ない」の意味が分かりません。「管理費の額を管理費の収益の額の見なす」という意味なのでしょうか? その場合、収支相償規定、遊休財産規制との関係などはどのように整理するのでしょうか?ああそうでしたね。公益事業比率だけを考えたと宣言していたから、どうでもよいのでしょうね。


 あるいは「法人会計の収益を管理費の収益とする」ということなのでしょうか?後者であれば、「結果として法人会計の黒字が認められないことと同様となる」という部分とつながるように思いますが、そうすると赤字の時に矛盾が生じますが、上記の意味だとした場合には、

「法人会計が黒字でなければ、法人会計ではなく、管理費として記載可能です」ということなのでしょうか?もしこれならば、メリットとしては、縦に書くか、横に書くかという程度の差でほとんどありませんが、デメリットの方は・・・。余り書きすぎないほうがよいでしょう。


 それ以上に心配なのは、「法人会計の黒字は制度上認められないという含意」です。こればかりはやめてもらいたい。以前、書きましたが、法人会計の黒字は遊休財産規制でチェックできますし、「どんどん収益を生み出す不思議な法人会計」というものがあれば、法人税法の対象にもなりえます。法人税が非課税なのは、公益目的事業だけだからです。このように「制度設計者」が、様々なデザインを描いているところで、「法人会計の黒字は制度上認められない」ということになれば、法人はお手上げです。規制だらけの法律に、思い込みの規制をかけることがどんなに混乱を誘発することかお考えください。


 「収支相償は黒字を出してはいけない」(実は間違ったメッセージです)、「収支相償は単年度で判断する」(実は収支相償は単年度で計算しますが、特定費用準備資金を入れた段階で中長期で判断します。極めて不正確なメッセージです)というような混乱するメッセージの上に、「法人会計の黒字は出してはいけません」というとんでもないメッセージが加われば、法人サイドからは必然的に「そんなことやっていられない。制度が悪い。収支相償なんか撤廃しろ」ということになります。


 これではせっかく使いやすい制度をつくった「制度設計者」が泣いてしまいます。


好転」している委員会の皆様方におかれましては、今一度、混乱の芽を摘んでいただければとお願いいたします。
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
コメント
公益職員様

返事が遅くなり恐縮です。
「法人側は、黒字の場合は、公益事業会計を0円で条件をみたし、法人会計側で黒字をだす。その額は遊休財産規制額までとして運転資金を確保可能。」

これはその通りですが、あくまで「公益目的事業会計の収益と費用」、「法人会計の収益と費用」はしっかり分けなければなりません。結果的に上記のようになることはあり得ます。

 ただし、法人全体の黒字を法人会計の黒字で吸収させようとするような意図的な会計操作は、問題になると考えます。

 法人会計の節約の結果や収益の増大を気にすることなく、公益目的事業に勤しんでください。その結果として、公益目的事業が黒字になれば、特定費用準備資金をもうければよいだけのことです。

詳しくは下記をご参照ください。
出口正之. (2015). 「法人に寄り添って作られた」 真意を紐解く 声に出して読みたいガイドライン (第 1 回) 特定費用準備資金について. 『公益・一般法人』, (894), 2015年6月1日号30-36.

出口正之. (2015). 「法人に寄り添って作られた」 真意を紐解く 声に出して読みたいガイドライン (第2回) 収支相償と適正な費用の範囲. 『公益・一般法人』, (896), 2015年7月1日号34−42.



Posted by:出口  at 2015年07月20日(Mon) 23:56
遊休財産規制の真意は?

遊休財産規制に関して、『定期提出書類で計算する意味が不明』でした。その理由は、公益法人移行以降は、遊休財産を増やす手段がないとの理解からです。しかし、法人会計の黒字化が法律上規制されないとなれば、合点がいきます。必要に応じて、法人側は遊休財産規制額まで剰余金を持つことができるからです。
法人側は、黒字の場合は、公益事業会計を0円で条件をみたし、法人会計側で黒字をだす。その額は遊休財産規制額までとして運転資金を確保可能。

公益事業のみ実施する法人にたいしては、このような処理を認めてもらいたい・・・
Posted by:公益職員  at 2015年07月17日(Fri) 11:16
 上記の点については、かなり明確になった形でFAQとして発表されました。H表への記載方法や法令上の整理などまだわからない点は残りますが、法人会計についての緩和策は、緩和策として大きな意味を持つものと考えます。
 詳しくは下記をご参照ください。
 https://blog.canpan.info/deguchi/archive/32
Posted by:出口  at 2015年04月20日(Mon) 12:10