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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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会計研究会 収支相償 緩和になんか絶対ならない [2015年03月07日(Sat)]
これまでのことをまとめると、次のようになると考えます。

研究会は制度について明確な検討を行って変更するのではなく、なし崩し的に(例・他会計振替)定義を変えて、そこから議論を出発しているようです。研究会のメンバーの方は一生懸命議論されたことと思いますし、ついていないとしか言いようがないですね。


そこで、緩和なり、変更を検討していくには、最低限、次のステップをとっていただければと思います。

@ 現在の公表している制度の正確な把握、

A 現状において問題となっている事例の集積、

B Aに基づいての問題の要因の分析。問題個所が制度に起因するものであるのか、運用か、文化か、あるいは広報の不足かの把握、

C Bの検討の結果、万一、制度の変更を検討する場合には、収支相償、遊休財産規制、公益目的事業費率、公益目的取得財産残額に相当する額への影響の明示,

D 法人への影響や各種手引きなどの変更点の明示、

E 変更が府令改正、ガイドライン修正、公益会計基準の変更、FAQの変更のどれに当たるのかの明示。


これらがないと、制度が複雑だけに微変更でも、今以上に混乱すると考えます。


 それでは収支相償を例にしましょう。収支相償については解説も書いていますので、適宜、そちらをご参照ください。


収支相償の立法趣旨については、『一問一答公益法人関連三法』(204頁)に以下の通り書かれています。

Q206公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込まれるものと定めた趣旨は、何ですか。(第五条第六号、第十四条関係)

A.

1. 公益目的事業は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すべきものです。そこで公益目的事業の遂行にあたっては、動員可能な資源を最大限に活用し、無償又は低廉な対価を設定することなどにより受益者の範囲を可能な限り拡大することが求められます。

2. そのため公益目的事業を行うに当たり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならないものであることを認定基準として設けることとしたものです。


なお、「動員可能な資源を最大限に活用し、無償又は低廉な対価を設定することなど」は、例示ですし、あまり現実性がないものです(「制度設計者」の説明です)。


 これに対し、素案では次のような提案があります。

収支相償は 、公益目的事業に係る収入と公益目的事業に要する費用を比較することになるが、原則として、各事業年度において収支が均衡することが求められる。」(素案14ページ)

これでは制度を根幹から変える規制強化です。


 制度設計では「収入」と「適正な費用」との比較だったのに対して、いきなり、「原則として、各事業年度において収支が均衡することが求められる」という大転換を行おうとするのは制度を破綻させることになります。また「剰余金」の定義が大きく変わっています。「剰余金」の定義が変われば、「制度設計者」が苦心して作った美的な体系が崩れてしまいます。


素案には「収支相償の剰余金の解消理由としては、当期の公益目的保有財産の取得や特定費用準備資金の積立てがガイドラインに掲げられている」(素案15頁)と指摘されています。ガイドラインのどこに、剰余金の解消理由として特定費用準備資金が掲げられていますか?お示しください。特定費用準備資金は「適正な費用」として掲げられ、剰余金の中には入っていません。


 それではガイドラインを見てみましょう。

「(4) 剰余金の扱いその他

@ ある事業年度において剰余が生じる場合において、公益目的保有財産に係る資産取得、改良に充てるための資金に繰入れたり、当期の公益目的保有財産の取得に充てたりする場合には、本基準は満たされているものとして扱う。このような状況にない場合は、翌年度に事業の拡大等に

より同額程度の損失となるようにする。

A 事業の性質上特に必要がある場合には、個別の事情について案件毎に判断する。また、この収支相償の判定により、著しく収入が超過し、その超過する収入の解消が図られていないと判断される時は報告を求め、必要に応じ更なる対応を検討する。」


剰余金の解消理由に「特定費用準備資金の積み立てはどこにありますか?

とても穏やかなガイドラインではないですか?


このことは「他会計振替」とともに、大変大きな誤解なのです。ミスということばで表されるようなものではなく、収支相償の理解の根幹に繋がることだと考えます。


さらに、このような認識の元で、緩和策のようですが、素案の「ア〜ウを前提に収支相償の剰余金解消計画を1年延長する取り扱いを認めることとする」というのは、90度急ハンドルを切って3度くらい元に戻したようなことであって、事実上、混乱を大きくするものとなると考えます。


 「制度設計者」はとりわけ収支相償については、公益目的事業の増大につながるように、工夫して制度を作りました。現在、公益法人が混乱していると伝えられていますが、素案のおかげでその理由がはっきりしたように思います。感謝します。


好転」している委員会の皆様方におかれましては、今一度、上記@からEのステップを踏んでいただいて、混乱の芽を摘んでいただければ幸いです。事務局が今の委員会メンバーの意見を汲むことができれば、十分に可能だと思います。

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