全国公益法人協会の機関誌『公益一般法人』(No.1014. 2020.9.15号)に弁護士の三木秀夫先生(日本弁護士連合会常務理事)の素晴らしい論考「日本尊厳死協会の公益不認定対内閣府の裁量権逸脱〜」が掲載されています。
是非、お読みいただきたいと思います。
公益法人を監督する側や運営する側にとっても、本判決は必要不可欠な基礎知識の1つとなると思います。
日本尊厳死協会の不認定に関してはこれまでもブログで何回か取り上げていますが、高度に法的な問題であるので、あえて詳しい論評は避けてきたつもりです。
https://blog.canpan.info/deguchi/archive/136
https://blog.canpan.info/deguchi/archive/135
https://blog.canpan.info/deguchi/archive/106
https://blog.canpan.info/deguchi/archive/85
今回、弁護士の三木秀夫先生が、法律の専門家として、的確な解説論文を掲載しています。
国が敗訴した一審と二審の司法介入方法の違い、具体的には公益認定等委員会に代わって東京地裁が認定の判断を行った「判断代置方式」から東京高裁では公益認定等委員会の審査・判断の過程や手続過程の合理性を審査する「判断過程審査」に変わっています。
その点について法律の専門家として、非常に分かりやすくかつ的確に解説しています。
また、判決の意義を「現在の公益法人制度の制度趣旨を十分に踏まえて行政の裁量の幅はかなり狭く解釈」している点をあげ、「決して行政官による恣意的な解釈や価値観で判断が左右されることのない仕組みは維持しなければならない」ことからも今般の判決には大きな意義があることを述べていらっしゃいます。
上記のことは「法令に基づいた判断」とする標語に典型的に表れていた、【恣意的な裁量回避の姿勢】がわずか数年で蔑ろにされかねなかった今回の裁判での争点に冷や汗を感じるところです。
第1期に内閣府公益認定等委員を務めていた人間からすると、裁量権は小さいという大前提で、ガイドラインを作り上げ実際の審査を行っていたので、国がなぜ裁量権を幅広く認めるべきという論理で裁判をしたのか首をかしげたくなります。
三木氏も「この判断を導いた原告代理人にも敬意を表したい」と敢えて言及していますが、社会全体が膨大なエネルギーを使った公益法人制度改革を救ってくれた原告代理人に感謝したいと思います。
とりわけ、意図的ではなかったと思いますが、裁判が佳境に入っているときに、公益認定等委員会の議事録がホームページ上から消えた状態になっていたなど、条件が非常に悪かった中での原告代理人のご尽力には頭が下がります。
内閣府も公益認定等委員会委員も入れ替わっていますから、本論文をしこりを持つことなく読んでいただけるものと思っております。そうした器量が試される時だと思います。
また、三木氏は認定法5条2号についても裁判所の判断を超えた独自の見解を主張されていますが、近年、5条2号の濫用が激しすぎると感じている小生もこの点も賛同いたします。
小生からも行政手続法上の審査の基準である「ガイドライン」を今一度重視していくことを勧めたいと思います。