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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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「正直で不正を起こさせないための会計」基準の議論を [2020年08月14日(Fri)]

非営利法人の会計の日本のおける乱立ぶりは甚だしいものがあります。

公益法人会計基準(平成20年、16年、昭和60年)、NPO法人会計基準、学校法人会計基準、社会福祉法人会計基準、医療法人会計基準、病院会計準則…。なんとかか統合した方が良いではないかという総論は誰も反対できないと思います。


ところが、そういったとたん別のロジックが出てきます。多様なステークホルダーのための「一般目的」の財務報告、比較可能性のある基準で効率的な運営ができるようにと。

これらは企業会計で使われるお題目です。つまるところ、投資家や金融機関向けの一般的な財務報告なのですが、翻って非営利の「一般目的」とは何なのでしょうか?


コロナのことで医療関係者は大変な思いをしていますが、コロナに対応した病院は経営が悪くなるようです。受け入れ態勢を整え、一人の患者に多くのスタッフがかかわることになります。それでも、社会的に意義があるから、医療機関の使命として頑張ってくれています。他方で他の患者への感染を恐れてコロナ患者には来てくれるなという病院もあるでしょう。


それぞれの病院は確かに比較可能な会計基準によって何らかの財務情報は財務諸表に反映されてくるでしょう。しかし、それらを比較して外部のステークホルダーはどのように行動の意思決定をしたらよいのでしょうか?


企業の場合には、資産を効率的に使用し、高い収益性を上げている企業は財務諸表で確認できます。利潤追求という1つの価値観に基づく尺度がありますから、比較も可能です。金融機関がお金を貸す時でも、今、清算したら企業価値はいくらになるのかということが分かっていた方がより良いものと思います。


だから一生懸命資産を時価評価をして真に効率的な運営をしているかどうかチェックも可能です。


では、非営利組織はどうなのでしょうか?


もともと非営利法人は会計情報の情報公開が十分ではありませんでした。したがって、財務諸表を公開するように制度改革されたことは大変良いことなのですが、その際に企業における「財務報告」の考え方が席巻してしまいました。その間、果たして十分な議論はあったのでしょうか?



我々が非営利法人に求めている「一般目的」とは何なのでしょうか?「担保価値が明確で効率的な運営が判断できる会計」でしょうか。仮に百歩譲ってそれを認めたとしてもそれは金融機関や債権者向けの特殊な目的ではないのでしょうか?かつて公益法人は厳しい指導監督基準の下、長期借り入れも二重三重の規制があり主務官庁に届出が必要でした。借入を行っていた法人は決して多くありません。公益法人やNPO法人などは、株式を購入する投資家はもちろんのこと、資金を貸し出す金融機関も存在しない法人が数多くあります。これが非営利組織の「一般目的」の会計なのでしょうか?


非営利法人の一般目的を探すとするならば「正直で不正の起こりにくい会計」ではないでしょうか?一般のステークホールダーは非営利法人に効率性を求めているのですか安心を求めているのですか?



仮に「正直で不正の起こりにくい会計」に依って立つ場合には、「現金取引の裏付けがない多くの資産」を膨大な時間をかけて客観的に評価し、それを財務諸表に載せることによって、会計はより分かりやすくなるのでしょうか?誰がその評価を正しくて誤謬がないと判断できるのでしょうか?


貨幣の犠牲がないものに価値をつけて財務諸表に載せるということは、心理状態としての一線を超えさせるものがあります。いやいや「測定できるものだけ計上すればよいのだ」という一見正論に見える主張こそ、測定できるもの/測定できないものを誰がどのように判断するのかという部分を完全にブラックボックスにしてしまって、非常に広汎な「グレーゾーン」を作ってしまいます。そして、このグレーゾーンこそが多くの真面目な法人の会計担当者に悲痛なストレスを与えてしまいます。比較することが目的だというのですから、自らの法人が測定できないとして計上せずに、他法人が測定できるとして計上すれば、そもそも論で貨幣に裏付けられないものを何のために計上するかという疑問に戻ることになるでしょう。


非営利の会計についてもう少し幅広い層からの議論があってよいと考えるのはおかしなことでしょうか?


現場の声をもっと反映させてください。

「あたりまえ」を疑う勇気を持っていただきたいと願っています。


 国際的にも様々な議論が出てきていますが、現場からの声がかき消されかねないところまで来ています。この数年が非営利の組織と会計(とりわけ「普遍性」を持った「進んだもの」としての企業会計」)との関係を決定づける重要な時期に来ております。


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