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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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収支相償をはじめとする財務三基準とシステム論的思考 [2020年06月30日(Tue)]

公益法人の収支相償規制が「黒字を出してはいけない」とか、遊休財産規制が「余裕資金をもってはいけない」とかに理解され、その結果「制度は法人の持続可能性を考慮していない」というような理解をされている公益法人の役員の方はいらっしゃいませんか?

それは誤解であることをこのブログで繰り返し述べています。


新型コロナウイルスの時代を迎えて、今の公益法人制度では経営できないと感じている理事の方も多くいらっしゃると思います。


こうした法人の不安に当局はもっとしっかりとしたメッセージを出してほしいものですが、立場上、なかなか言えないのかもしれませんし、誤解ではないと思っている可能性もあるやもしれません。


この数年の解釈変更が「法人の活動がしやすいように緩和」したはずのものが廻り回って、「寄付に指定があっても指定正味財産ではない寄付

といった訳の分からない会計上の新たな規制まで生み出してしまっています。


こうした現象を説明するのに「相互連関性」という用語で説明してきましたが、これもご理解頂くのは難しかったようで事態は改善していません。


本日は随分昔に流行った「システム論」を使って解説してみたいと思います。


収支相償規制、遊休財産規制、公益目的事業比率規制のいわゆる財務三基準の細部の骨子を作った方はシステム論的な思考方法があったように思います。


参考資料(資料2関係)〜.は制度設計者による公表資料なのですが、そのうちの最初の図は見事にシステム論的な発想の元に描かれています。残念ながら、この図はその後長い間利用されておりませんでした。


生命体を単なる機械論から切り離して理解しようとすることから始まったシステム論では@ある目的へ向けて活動している(=公益の増進)、Aシステムは互いに作用している要素からなるものである。そしてBその相互連関性から単純な要素還元主義的理解ができないと考えられています。このところ下火ですが、社会現象もシステム論的に理解しようとする考え方が一時はやっていました。


財務三基準が「公益の増進」のためにあるのだということをまず理解すれば、「制度は法人の持続可能性を考慮していない」というようなことがあってはならないことがすぐにわかるでしょう。


さらに、財務三基準のルールを動かすことによって会計基準の解釈まで影響を与えたように、1収支相償、2遊休財産規制、3公益目的事業比率の他、4公益目的取得財産残額、5税制(=収益事業のみなし寄附金額)は相互に連関する要素として存在しています。解釈まで含めれば、6公益法人会計基準にまで含めてよいかもしれません。



遊休財産は非常に明確に定義されていますが、内部留保とは全く異なる概念です。

遊休財産とは何に使われるかが明示されない財産で、内部で留保している財産でも何に使用することが明確であれば、遊休財産から外れますし、法人の財政状況が悪い場合をはじめどんな場合でもあっても一度は目的外に使用することも認められることもあります。


収支相償は税制との関係は深いのですが、ここでも誤解があるようです。税制といっても公益目的事業非課税の部分ではなく、収益事業等課税からの繰り入れ(みなし寄付金)の部分です。


「税制(=公益目的事業非課税)があるから、黒字を出してはいけないのだ」という論理的に成立していない主張まで一般に流布しているのが不思議でなりません。公益目的事業非課税というのは黒字であっても課税しないという意味ですから、そもそもその黒字が認められていないというのは明らかにおかしな主張です。


他方で、税制では収益事業課税との関係は非常に密接です。

公益認定法の第14条「公益法人は、その公益目的事業を行うに当たり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない」という条文については、最後の最後は収益事業等からの繰り入れが決算時に行われるわけですから、

⇔「公益法人は、その公益目的事業を行うに当たり、当該公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収益事業等からの繰り入れをしてはならない。」というところに関心があるのだと理解すれば、それほど不可思議な条文ではありません。


大事なことは、これらの要素が相互に連関しながら、「公益の増進」に向けて相互に作用しているということです。


言い換えれば、三つの要素がそれぞれ独立の変数になっておらず、どこかを触れば、それぞれに数値が変わっていくことを意味します。そのことを先ほどの図は見事に可視化してくれています。


もしどこかに抵触した場合には、いずれも「公益の増進」によって事態は改善します。そのことがシステム論的思考です。以前にも記載しましたが、その場合には、三基準のどこに抵触するのかということにあまり拘泥する必要はありません。「公益の増進」に向かって何ができるのかを理事会で考えることが慫慂されていると考えてください。


間違っても「黒字になりそうだから無駄な支出を年度末にしよう」などと考えないように願います。


また、活動がしにくいからといってルールを変更するときに、要素還元主義的に各要素のどこかだけを少し変更すれば、別の箇所に影響が出るということにも留意が必要です。残念ながら、この数年の「緩和策」と呼ばれるものは、三基準のうちどれかを個別に取り出す愚を行い、パブリックコメントでもそのことの問題点が指摘されてもおります。その結果、本来、寄付者(=民間)と法人(=民間)の間の契約上の取り決めにしか過ぎない指定寄付金にそのしわ寄せがいってしまってはいないでしょうか。あるいは、公益目的取得財産残額の計算(別表H)が少しづつ変化してはいないでしょうか?


新型コロナウイルスで公益法人の運営が難しいと感じておられる役員層の皆様方は、まずは、法人の持続可能性を意識しながら、「公益の増進」を図るという常識的な運営を目指せば、財務三基準の数値は年々よくなっていくものと思います。


もう少し知りたい方は、今度たっぷり3時間話をしますので、是非、下記にご参加ください。



https://koueki.jp/wp/schedule/kansai/#anc16



マスメディア関係者、行政職員、合議制委員会委員等の参加も可能だと伺っていますので詳しくは、全国公益法人協会関西支部まで、ご連絡ください。



なお、個別のご相談はお受けできませんのであしからずご了承願います。

日時 2020年7月27日(月)13:30〜16:30

会場大阪私学会館(3階 301、302、303号室)大阪府大阪市都島区網島町6-20

問合せ先関西支部 電話:06-7220-3354 FAX:050-3730-4611

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