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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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内閣府公益認定等委員会が画期的な報告要求を公表 [2020年03月13日(Fri)]

 内閣府公益認定等委員会が本日付で公益財団法人日本プロスポーツ協会に対して素晴らしい「報告要求」を行い、それを公開しました。


 これまでどちらかと言えば、公益認定等委員会に対しては本ブログは辛口のコメントを出さざるを得なかったのですが、今回は大きな工夫の跡を感じさせます。非常に高く評価できるものと思います。


 実を言えば、同法人に対する「勧告」(令和元年11月22日)が出たときには、どうなるのだろうかと思っておりました。その後、公益認定法に基づき初めてとなる「命令」(令和2年2月14日)が出され、それに対する報告書において同法人の評議員及び理事が外形的に刷新されたことが確認されています。そこで今回、理事会が法が求める通りの機能を実質的に果たしうるかについて、今後3回にわたって報告を求める内容です。


 報告要求は公益認定法上、公開の義務はないのですが、これまで他法人にも周知すべき内容として例外的に公開されたことはありました。しかし、それに続く勧告等は損害賠償請求までガバナンスの一環として勧告し、あきらかに法的に過剰な干渉として、公益認定法との関係で疑問視されることもありました(例えば、星さとる「初の是正勧告の内容と認定取消要件をめぐる新展開(上)−ガバナンス・内部統制と認定取消しのリンケージ−」公益・一般法人2013年10月1日号など)。


 また、ほぼ同時期に行われた別の法人に対する会計面の報告要求では、「法人は報告要求に対してこう報告しているが実はこうだ」といったやり取りが何度も続き、法人が内閣府の度重なる報告要求の全文を逆に自法人のホームページで公開する事態にまでなったこともありました。


 それに比べると、今回の一連の監督は従来のものと全く異なっており、ガバナンス強化について、形式面と実質面を両サイドから捉え、公益認定法の監督の手順に正式に従って、まずは形式面ので対応を勧告・命令で確認し、今回の報告徴収でその形式的な対応が実質を伴っているかを今後報告させようとしています。従来とは異なる監督を行おうとする意図が明確に出ています。「『命令』後に、報告要求を行うという手法があるのか」と思わず膝を打つ内容でした。


 法人サイドに立っても、何をいつまでにすればよいのかも明確に分かる内容となっています。


 報告要求や勧告の文面は、得てして旧来のものを踏襲することが多くなるものかもしれませんが、今回はまさに「画期的」といえるほど従来の手法から脱却し、強い変革の力を感じます。公益認定等委員が7名中5名も変わったことが影響しているのでしょうか。


 ガバナンスに対する監督としては地方の委員会にとっても今後の範となるものと確信しています。また、各法人も是非参考にされて、それぞれの法人の評議員会(社員総会)、理事会、監事が形式面ばかりでなく実質面でも公益認定法の趣旨に沿ったものとなっているか、今一度検討してみてはいかがでしょうか?




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