速報 内閣府が公益財団法人日本プロスポーツ協会に初の命令
[2020年02月16日(Sun)]
内閣府は2月14日に公益認定法第28条第3項の規定に基づく「命令」を公益財団法人日本プロスポーツ協会に対して行いました。
同法人が評議員会の定足数を満たすことができない中でガバナンスの問題が発生していたところ、内閣府は昨年11月22日に勧告を行っていました。それに対して、同法人は本年1月31日付けで報告書 を内閣府へ提出したものの、勧告の内容に応えていなかったことから、さらに内閣府が命令を行ったものです。
従来、「勧告」や「認定の取消し」はあったものの、両者の間になされる「命令」は初のケースです。手続き的に「命令」を飛ばしていた形でしたが、今回、法が求める監督の手順をしっかりと踏み、果敢な判断を内閣府において行ったものと思われます。行政手続法との関係も明瞭であり、「命令」の内容も具体的で法人にも分かりやすいものと思われます。
公益財団法人日本尊厳死協会の判決内容やガバナンス有識者会議の議論の影響が良い形で出ているものと思われます。期限については、時刻の指定まであります。法人としては公益法人としての矜持がしっかりあれば、対応できる内容となっているのではないでしょうか。
なお、他法人にとっても極めて有用な内容ですので、本「命令」書をよく読み、これをを契機に各公益法人の理事会、評議員会、社員総会において、もう一度それぞれのガバナンスのあり方について検討してみてはいかがでしょうか。
コメントありがとうございます。関連記事を読みました。お気持ちよくわかります。本当にどうなっているのでしょうね。
ご指摘も固有名詞が並んでおり、かつ小生が入手できる情報は限られておりますので、一般論として言い換えれば公益認定の制度の解説としてお答えさせていただくことをお許しください。したがって、下記は一応ご質問の法人とは無関係という理解でお願いいたします。
「怪しい人」が公益を名乗って活動することについて不安だというお気持ちはよくわかります。公益認定法では、その点も配慮されて欠格事由(第6条)が設けられております。理事、監事又は評議員について、法律違反又は罪に当たる行為をして、禁錮以上の刑に処せられた場合を、一定の期間、欠格事由としています。申請の段階で該当すれば公益認定は受けられませんし、公益認定を受けた後、該当すれば、即取消しとなる非常に厳しいものとなっています。
従来はこのあたりの法律上の規定はなく、役所が何となく気分で「怪しい人」は避けていたと思います。しかし、誰が怪しいかというのは役人の心象次第でしたから、一般の方が公益法人を作ろうと思っても、「どこの馬の骨ともわからないから不安だ」(某官庁高官)といってなかなか設立を許可しませんでした。ところが、理事に役所のOBでもいれば「何となく安心」(同高官)ということで設立が認められていました。さらに、「怪しい人」/「怪しくない人」の区分はそう簡単ではありません。安心して設立許可したと思った役所のOBが理事長を務めていた法人が違法行為を繰り返し、いわゆる「天下り法人」の大問題が発生したこともあります。設立を許可するかしないかという入口段階での心象に基づく強い制限では、結局、「怪しげな人」も防げなければ、一般の方々の公益にかける情熱を心象だけで摘んでしまうことにもなっていたと考えられています。
そこで新公益法人制度として、法律に基づいてしっかりと上記のような欠格事由が定められました。
マルチ商法につきましては、特定商取引法で懲役刑を含む罰則規定がありますし、そもそも詐欺であれば刑法上の犯罪となります。もし問題があるのであれば、刑罰が確定することで欠格事由に自動的に該当し、公益認定の取消しとなります。また、取消しとなると法人の財産のかなりの額を他の公益法人か国または地方自治体に寄付しなければなりませんから、真の「怪しい人」が公益法人を作ることは割に合わないこととなるように制度が出来上がっています。
また、行政庁に対する情報提供も下記からできるようになっておりますし、財務関係の書類等の備置き資料は誰にでも見せなければならない規定となっており社会全体で監視するようにもなっています。
(行政庁への情報提供)
https://www.koeki-info.go.jp/pictis-info/pia0001!show#prepage2
そうは言っても「被害者に返すべきお金を使って奨学金財団をつくるのはけしからんではないか。すぐに取消すべし」というお気持ちを通常持つことは充分理解できます。そのお気持ちの矛先は特定商取引法の中で取り扱われるものと思います。そのマルチ商法が違法かどうか、違法だとしたら、どの程度のものなのかは、特定商取引法の管轄の役所である経済産業省が関与してくるものです。「何だ、役人でもないのにたらいまわしか」とも言われそうですが、公益認定法の建て付けがそのようになっているのです。
さらに、「被害者に返すべきお金を使って奨学金財団をつくるのはけしからんではないか」という当然の感触について、すぐ取消せということ以外の対策を考える余地はありませんでしょうか?
実はそれこそ「公益の増進」という立法趣旨だと思います。日本の状況を考えれば、もっともっといろんな公益法人ができて、マルチ商法の被害が起こならないようにする公益法人や被害者を支援する公益法人などがもっともっと身近にあってしかるべきだと思います。そうした公益法人ができることで少しでも被害者の気持ちを癒し、経済的な被害を回復させることができるのではないでしょうか?そういったかゆいところに手が届く公益法人がこれまで日本にどうしてできなかったのかを一緒に考えてみては如何でしょうか?
従来の制度は世間の声に反応して「不祥事⇒規制強化」を繰り返しが、結局、社会が必要とする公益法人が誕生しなかったのではないか、というのがこの改革の出発点でした(小山裕. (2009). 公益法人制度改革前史・序章: 改革はこう始まった. 嘉悦大学研究論集, 51(3), 115-131.)。
お怒りはご尤もと思いますが、逆に独立した公益認定等委員会がふらふらしていないことを監視することも大切だと思います。
お役に立てたかどうかは分かりませんが、日本社会全体で何度も繰り返されるマルチ商法の被害者がでないようにしていきたいものですね。