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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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出口はなぜ公益法人会計基準改正手続きに反対するのかーその3 [2020年02月14日(Fri)]

(前回)(前々回)からの続きです。 


 平成20年公益法人会計基準は従来の平成16年公益法人会計基準を公益認定法に合せて改正し新しく作られたものです。


公益法人が使用すべき会計基準については、平成16年公益法人会計基準等も認めることで「公益法人は、一般に公正妥当と認められる公益法人の会計基準その他の公益法人の会計の慣行によることが求められますが(公益法人認定法施行規則第 12 条)、これは特定の会計基準の適用を義務付けるものではありません」(FAQ旧問X−4−@)となっておりました。つまり、20年基準の任意適用の原則をはっきり位置づけていたのです。海外などの会計基準をグローバルトレンドとして日本に導入しようとするときに、実は任意適用か否かが非常に重要なのです。


 ところが、非公開の会計研究会ができると、移行が十分に完了していない中で公益法人にアンケートをとり、わずか有効回答数1498法人のうち94%が平成20度公益法人会計基準を使用していたことから、FAQを変更し(現行 問X−4−@)、「通常、平成20年度公益法人会計基準を優先」という微妙な表現で、「事実上」平成16年公益法人会計基準等を排除し、平成20年公益法人会計基準を強制していくようになりました(一部企業会計も認める)。これが認定規則の改正を伴わずに、非公開の会計研究会の議論(当時は議事要旨すらなし)とFAQの変更だけで断行されたことも驚きです。しかも、この時の会計研究会は中小法人向けに何らかの措置が取れないかということを検討することを主眼として設定されていたのですから。


 監査については、会計監査人設置の義務付けの大規模法人、外部監査を受けること又は監事の一人に公認会計士または税理士を置く中規模法人、5年以上の経理実務者の監事による小規模法人の三種類が当初から規模別に設けてありました。


 会計研究会は、それにもかかわらず、中小規模法人を定義するのに「線が引けない」ことを理由に、早々と当初の目的を放棄し、平成20年公益法人会計基準の任意適用から事実上の強制適用という形のかじを切る提案をします。


 法解釈としては微妙なところでしょう。行政庁としては法令に基づく書類を提出してもらえばよく、その際に別表Gがしっかり記載できれば、会計基準は本来はどれでもよいはずでした。資金収支計算のものもなかったわけではありません。


この急展開の余波は、例えば、移行認可の5年間の期間を超えた某移行認可申請法人が「発生主義ではない」という理由を掲げられて不認可処分=解散にまで追い込まれたことにも現れています(別の理由もあったのででしょうが)。


 事実上、平成20年公益法人基準強制適用の上、ここへ来て、同基準の総則の追加です。

「第1 総則」に、次を追加する。

2 継続組織の前提

この会計基準(引用者注「平成20年会計基準」)は、公益法人が継続して活動することを前提としている。したがって、組織の清算や全事業の廃止など、組織の継続を予定していない場合は、この会計基準は適用されない。


非営利法人の本質としてゴーイング・コンサーンではない法人は一体どの会計基準を使用したらよいのでしょうか?清算法人のものでしょうか?清算法人の前提として、わざわざ現金処理として、公益認定法における公益目的保有財産残額との関係をどのようにしていくのでしょうか?決算が一年延びた場合には、別表Gの作成をどのようにしてやれというのでしょうか?


海外の制度や企業会計を参考にすることもよいことだと思います。しかし、その時には日本の法制度が異なっていること、細部にわたってどのような影響が出るかを考慮しないわけにはいきません、


「世界の言語は一つになればコミュニケーションが取りやすくなる」という総論に反対する人はいません。しかし、実際には大変難しいことです。


「法人税率、所得税率が世界で同一であったほうが分かりやすい」というのも確かにそうでしょう。しかし、こういう権限に直結しているものについての、統合もほぼ現実性が伴わないものです。


 非営利公益の法人の全てに発生主義を強制している国は、私の知る限り、日本だけです。

 会計関係者にとっては当たり前のことでも、急ハンドルを取られたことで、現場の法人は泣いています(実際に泣きながら小生のところへ電話をしてきた法人もあります)。



 さて会計研究会では、それでは、今回どのような意見交換が行われたのでしょうか。

 本件に関する議事要旨をすべて引用いたします。


第36回会計研究会議事要旨

(継続事業の前提の呼称について)

○(全参与から、呼称変更には賛成との意見あり)

○公益法人が実施する個々の事業のことだと誤解を受けるおそれがあるため、名

称変更したほうがよいのではないか。

○新たな呼称については、国際公会計基準(IPSAS)第1号と国際会計基準(IAS)第1号ではエンティティーが継続するかしないかとなっていて、事業体は企業、非営利どちらもあるので、「継続事業体」が良いのではないか。

〇新たな呼称については、公益法人全体を示すには、「継続組織」よりは「継続事業体」か「継続法人」のほうが良いのではないか。

〇新たな呼称については、企業会計が「継続企業」だということからすれば、「継続法人」が一番しっくりくるのではないか。

〇モデル会計基準がなぜ「継続組織」を採用しているのかを十分理解した上で、採用する用語を決定することが必要ではないか。

〇新たな呼称については、日本公認会計士協会が一定のデュープロセスを経て決めたものを使用するのがわかりやすいので、「継続組織」が良いのではないか。

〇モデル会計基準は参考にすべきであるし、非営利組織であることからすれば、「継続組織」が良いのではないか。

(継続事業の前提の規定について)

○規定することについては賛成であるが、監査との関係が前面に立ちすぎないようにすべきではないか。

〇会計理論の進展的にこのような話になってくるので、規定を追加することでいいのではないか。

〇他の非営利法人の会計基準に対するリーディング的なものになるのではないか。


第40回議事要旨

(3)議事の3「継続事業の前提について」に関し、事務局から【資料4】に基づき説明がなされ、説明内容について了承された。

【主な意見等】

〇今年度の報告書の中では、「事業」から「組織」への名称変更について、もう少し変更理由を説明した方がよいのではないか。

〇今後の予定としては、公益認定等委員会に報告し了承いただければパブリックコメントにかけることを予定している。

〇今回、会計基準を改正することの意義は大きいと考えている。

〇運用指針の様式の元号の変更も併せて行う予定である。



 これだけです。

 同じ内閣府の事務局が行っている「ガバナンス有識者会議」では議事資料を即日公開し、議事要旨、議事録も公開しています。私ごときが口を挟むまでもない高いレベルの議論が展開されています。外部の意見が重要ということなども議論されています。


 実際に、外部の意見が必要なのは会計研究会ではないでしょうか?監査のために会計基準の総則を入れ込むなどの前例を決して作らないように願います。監査のために法人が存在しているのではなく、法人のために監査があるのですから。


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