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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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「職員数の中央値は5名」公益法人のガバナンス議論は比例原則を前提に [2020年01月20日(Mon)]

 公益法人協会の機関誌「公益法人」の1月号は、「公益法人のガバナンス・コードについて考える」という新春座談会が掲載されて興味深いものがありました。公益法人の関係者が率直な意見を述べていたからです。


 ガバナンス強化についてはガバナンス有識者会議が設置されるなど、やや外堀を埋められた感がありますが、公益法人協会としては個々の法人が自主的なガバナンス・コードを策定する際の「モデル・コード」として「公益法人ガバナンス・コード」を策定していたところです。そのことに関して公益法人関係者等が率直な意見交換を行っています。


 セゾン文化財団の片山正夫さんから「公益法人におけるガバナンスというには何かについての議論に時間をかけたかった」という発言もあり、「ビジネスセントリズム」(非営利法人の問題を企業中心の視点で考えること。企業中心主義)の中で議論が進むことへの懸念がありましたが、それは無理もないことでしょう。公益法人の場合、ミッション遂行のメルクマールが、利潤を追求するという尺度のある企業ほど明確でないからです。結局、ガバナンスと言ってもコンプライアンスにウエイトがかかるガバナンスとなります。



 先行する企業のコーポレートガバナンスについても、例えば、公益資本主義を唱える原丈人さんが「不正会計を助長するアメリカ流ガバナンス」(『「公益」資本主義 米英型資本主義の終焉』)と主張するように、米国型のガバナンスが本当に実効性があるのかについては疑問がもたれたままになっています。


 とりわけ、原さんは先進的なコーポレート・ガバナンスの優良企業だった東芝が会計で崩れた問題を強く憂慮しています。


 今世紀に入って、エンロンやワールドコムなど公認会計士が不正を働くたびにSOX法などが導入されガバナンス強化が謳われるようになりました。それによって公認会計士が焼け太りしてきているな、と素人として感じていたのですが、旧知の北海道大学の会計学の吉見宏先生(今回のガバナンス有識者会議のメンバーのお一人)が昨年の「会計研究学会」という老舗学会で同様の指摘をしたので驚きました。歯に衣着せぬ学者らしい先生です。


 原さんは「コーポレート・ガバナンスと不正会計の防止は何の関係もないのです」とまで言い切っています。


 少々話がそれましたので、公益法人協会の座談会に戻しましょう。全日本能率連盟の渡辺勝也さんは「5−6名の法人ですと余力がありません」と重要な指摘をされています。実は、日本の公益法人の職員数の中央値は5名でしかないのです。言い換えれば、職員5名以下の公益法人が半分を占めるということです。したがって、「5−6名の法人」というのは公益法人にとって職員数として標準的かやや多いくらいに相当します。この規模を想定した議論を展開していることはたいへん重要なことなのです。この規模に対して必要以上の規程をこれでもかと行政指導で作らせている現状があります。


 諸外国の非営利組織の規制の基本は「比例原則」(規模に応じた対応する原則)です。これがあって初めて大規模法人にのみに適用される様々な規制が議論されています。日本で諸外国の制度を参考にするのは良いのですが、海外の制度のコピペに近い制度を規模に関係なく強制適用させるものですから現場は大混乱です。とりわけ、地方の公益法人は青息吐息の状態です。


 何しろ、小規模法人対策を検討した会計研究会は「規模別に線が引けない」という理由とも何ともつかない理由を挙げて比例原則を放棄したことは本ブログで繰り返し批判していますが、あいかわらずの議論が続いています。


 公益法人税制に関する議論は閣議決定で決まっていたことが審議が不十分でいったん白紙に戻ったことがありました。ガバナンスを議論することは大事だと思いますし、ガバナンス有識者会議メンバーも優れた方が多いので、良い議論も期待しているところです。しかし、そのためには拙速にならないように真面目な公益法人の声を充分に拾って頂きたいと思います。


 とりわけ、現在の公益法人は当初のルールに対して会計研究会を中心に解釈変更が毎年のように繰り返えされた結果、「遵守すべきルールが実に不明確」になってしまっています。「遵守すべきルール」が共有されない状態でコンプライアンス中心のガバナンスを一気に高めれば、小さな組織の内部抗争を誘発しかねません。


 海外や企業から議論を始めるのではなく、公益法人の中に目を向けてぜひ議論を展開してください。


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