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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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会計関係者の論理矛盾を剥ぐ―その2 [2019年10月12日(Sat)]

会計学者の大御所のお一人、「柴健次先生の会計学の研究会」(以下「柴研究会」)での話の続きです。

会計関係の論理矛盾として「内閣府公益認定等委員会の会計研究会」(以下「内閣府研究会」)の報告書のことをとりあげました。


「公益法人の小規模法人の負担軽減策」を検討していた内閣府研究会は小規模法人を定義することは難しいことを理由に挙げ、この検討課題にゼロ回答をしました。


実は、公益認定法、同施行令及びガイドラインにおける情報開示に関わる規模別公益法人は存在し、小規模法人も定義されています。

そのことは本ブログでも何度でも触れ、岡本仁宏先生もそのことを指摘しています。


 本ブログ

法令ガイドライン上の大規模法人、中規模法人、小規模法人



 岡本先生

 大阪府公益認定等委員会委員長就任に当たって


したがって、小規模法人の負担軽減策に対するゼロ回答はあり得ても、「小規模法人が定義できない」ということは理由として挙げることはできません。どうして小規模法人が定義できないなどという理由が出てきたのでしょうか?しかも、今時の政府の研究会にも関わらずに議事録も議事要旨も一切公開していないのです。


内閣府研究会の委員の方は出口と会ってもなかなかこの疑問に答えてくれません。ようやくそのうちの一人の委員の方が、「情報開示について小規模法人が定義できても、負担軽減策としては定義できないことがありうる」と答えてくれました。


そこで、この点について、門外漢の出口にはとても理解できない話でしたので、柴研究会での念のために確認してみました。

すると、柴研究会での会計学者はこの発言の論理矛盾について皆同意してくれました。






なぜ、こんなことが起きて、そして、なぜ一向に訂正されないのでしょうか?

私には不思議でなりませんでした。


さらに日本の会計学者の論文では「諸外国に目を転じても、規模等に応じて区分された会計規制を行っている事例は少ない」(日本の某会計学者)。 201652)という認識が表明されています。


一方、海外の論文では「ほとんどの国で(例えば、イングランド、ウエールズ、スコットランド、米国)では、中小のチャリティには、報告の免除や(発生主義というよりはむしろ)現金主義での報告が認められている」(Cordery, C. J., & Sim, D. (201480)と、日本の当該会計学者と海外の当該会計学者は中小チャリティ法人に対して全く正反対の認識を示していたのです。


この点も、根拠を示して説明したところ、柴研究会の会計学者は日本の会計学者の間違いをご理解いただきました。


 本件に関して誤った認識を示した日本の会計学者は、上記の某会計学者だけではありません。まるで規模別の対応がないと信じ込んでいるとしか思えないような論文を発表している日本の会計学者が他にも出てくるのです。


 例えば最近出版された別の会計学者の本については以下の感想を述べさせていただきました。


  https://blog.canpan.info/deguchi/archive/90



そして、こうした「知の誤解」は犠牲者を生んでいきます。
(上記の話と直接関係はありませんが)、何と、公益法人の移行認定について不認定とした理由として「発生主義会計ではない」ことがあげられたのです。結果この法人は、移行期間を過ぎた後の不認定でしたから、その時点で「解散」となりました。
 これも不認定という決定について、その判断の是非まで問う材料はありません。しかし、少なくとも「発生主義ではないから」ということを理由として挙げることはできないはずです。

 こうなると、何か一部の公認会計士や一部の会計学者の間には、その集団独特の殻の中(これを「サイロ」といいます)の「思い込み」があったのでしょうか? そのサイロに取り込まれている現象を「サイロ・シンドローム」(ジリアン・テッド)といいますが、そのサイロ・シンドロームがあったのではないかということも率直に柴研究会で議論をぶつけてみました。この疑問についても違和感はありませんでした(続く)。



注)某会計学者にはCorderyらの論文をお渡ししておりますので、すでに誤解は解けているのではないかと思います。なお、有能な学者のほんのちょっとしたミスだと思いますが、「サイロ・シンドローム」の事例となりうるものとして取り上げています。また、当該学者の論文と公益認定等委員会の不認定理由との間に因果関係はありません。


注)ようやく今年の9月に行われた、公益社団法人非営利法人研究学会において、会計学者の上原優子先生がイギリスの中小チャリティでの現金主義会計の状況を発表しました。イギリス の中小チャリティについては小生が学会でもすでに発表していたことですが、今回会計学者がその発表を行ったということに意義があると思います。


 なお、誤解のないように言いますと、小生は現金主義会計を勧めているのではなく、ほとんどの国で中小の公益の団体に対して現金主義が認められているのに、その事実を否定していた論理矛盾についてのみ指摘しているにすぎません。あしからずご了承を。




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コメント
コメント有難うございます。
小生がここで取りあげているのは、海外の非営利公益の非課税団体(以下チャリティ)の会計に関する認識についてです。
依拠しているのは論文や書籍などです。
下記は小生が研究者としても人間としても尊敬するある会計学者の論文(2016:52−53)です。
「我が国においても、 内閣府(2015)が中小規模の公益法人 に対する簡便的な会計処理や開示の検討を行ったが、 小規模法人を一定の数値基準で線引きすることは難しいという結論に至った。 諸外国に目を転じても、 規模等に応じて区分された会計規制を行っている事例は少ない。
 そのような中、 新たな枠組みのもと、規模別の会計規制を開始した国がニュージーランド (以下、「NZ」という。) である。 規模別に非営利組織を4つに類型化する会計規制が、2015 年4月1日(一部の組織では2014年4月1日) に始まる年度より適用された。 これまでの我が国の非営利組織会計研究は、 米国や英国を対象としたものが多かった。 しかし、NZは世界で最初に政府部門に複式簿記,発生主義会計を導入した国であり、公会計分野において存在感は大きい。また、 非営利組織の会計を規模別に規定する点で、他国の先陣を切っている。 NZの事例は、今後の 会計規制を考えるうえでも有用な先行事例であると考える。」(某会計学者2016:52−53)

NZが「非営利組織の会計を規模別に規定する点で、他国の先陣を切っている」という以上他の国では米国や英国の規模別会計(そして現金主義会計の許容)がないことを前提としたものと思料します。
しかしながら、特に英国、米国、オーストラリア、ニュージーランドなどは従前より、規模別会計が存在します。「他国の先陣を切る」などということはできないことです。
英国のSORPや米国のFASBの議論はよく紹介されていますが、日本においては小生は浅学にて上原優子先生を除いて論文で各国の規模別会計や現金主義会計が紹介されているものを発見しておりません。所属機関の図書館では会計学全部の論文にまで目を通ることができないのでそのようなものがございましたら、ぜひご教授ください。なお、英文の会計の論文においては規模別会計、現金主義会計についてたくさん記載されております。

なお、本ブログの意図は会計学者ではない小生の目(アウトサイダー)から見たときに、公益法人の会計に関して明らかな論理矛盾が生じていることをお伝えする、という点にあります。この点を柴先生の研究グループに率直にぶつけて、真摯に問題を受け止めて頂いたものと思っております。
ご立派な研究をされている個々の会計学者に対して門外漢から研究の鼎の軽重を問うものでないことをご理解ください。
末筆ではございますが、本ブログを無視することなく受け止めて頂いたことに深謝申し上げます。
こうした議論が非営利の会計の発展に役立つことを祈念しております。

なお、規模別会計とその結果としての現金主義会計につきましてはコメントを尊重して誤解が生じないようにさせて頂きました。有難うございます。
Posted by:出口  at 2019年10月13日(Sun) 21:35
日本では、多くの非営利組織でこれまで長い間現金主義会計を行っており(直近で言えば台風を心配した私のマンションの管理組合も現金主義です)、そのことは会計学者のみならず一般にも周知の事実であるにも関わらず、先生がどうして「日本の会計学者は現金主義の存在を否定している」と考えているのでしょうか。
ある特定のテーマについて、互いの主張を理解したという前提で共通の土台で討論する、例えば「現金主義の是非」についてなら学問上の論争になりうると思います。ただ、「現金主義の考え方を否定すること」と、「現金主義の存在」を否定することとは全く異なることなので。「考え方」を否定する人であっても、「存在」を否定することまではできないし、していないはずです。
現金主義の話と小規模法人の話も本来別の話にも関わらず、それらがまとめられていることで、論争したくても論点がわからない状況です。一般の方々がそれらの論点があたかも1つの論点と誤解しないことを祈るばかりです。
Posted by:  at 2019年10月13日(Sun) 11:43