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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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助成財団センターの公益法人制度改革10周年特別プロジェクトのWEB公表 [2019年08月03日(Sat)]

 公益財団法人助成財団センターの公益法人制度改革10周年特別プロジェクト「公益法人制度改革が助成財団に及ぼした影響と今後の課題」が同法人のWEBサイトで公開されました。


本編120 及び 資料編242 の大部からなる労作です。


公益法人制度改革施行10年を振り返り、制度改革が助成財団の助成活動等に与えた影響や課題を探り、提言或いは課題解決への方向性を示すとともに財団自ら取り組むべきことを明らかにし、今後の助成財団の活動・運営に資することを目的に実施したものです。

1.高い回答率調査の意義


この調査で最も注目すべきなのは回答率の高さです。


 調査対象として、4類型別に調査の結果が示されています。

@公益法人への移行認定の法人 160法人<208法人。77%>

A一般法人への移行認可の法人 87法人<196法人。44%>

B新設の公益認定の法人    47法人<69法人。68%>

C新設の一般法人       13法人<21法人62%>  <>内は調査対象法人でパーセントは回答率。


公益法人に対する民間調査ですが、77%の回答率です。民間の調査としてこれだけの回答率は調査の信頼性が非常に高いことを意味します。


ここで比較したいのは、平成27年に内閣府が実施した移行法人に対して行ったアンケート調査の回答率が

32.6%(「平成27年度公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」所収)

41.2%(「平成30 年度公益法人の会計に関する諸課題の検討の整理について」所収)

のことを思えば、調査の信頼度が如何に高いかがわかるでしょう。


平成27年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について.PDF



平成30年度公益法人の会計に関する諸課題の検討の整理について (3).pdf



余談になりますが、内閣府の調査の回答率の低さは異常値でです。

例えば総務省における統計精度検証の状況について(中間暫定報告)


当たり前ですが事業所を単位にした役所の統計回収率は70%でも低いとして問題視されます。

例えば、厚生労働省では60%代の回収率のものでも、回収率が低い理由を調査しています。


ところが内閣府では、「平成27年度公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」において法人からパブコメに相当する意見を求めて、すでにその際に回答率の低さを指摘されています。

「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について(最終報告書素案)」に関する御意見について(御意見の取りまとめ).PDF

それに対して、「十分に実績をふまえたもの」と超然たる回答をしております。この時にそもそも任意適用だった平成20年公益法人会計基準を「94%の法人が平成20年度会計基準を適用」として事実上の強制適用に近い形にハンドを切り、公益法人に大きな懇談を与えています。(実際の法人数では内閣府所管の4640法人のうち、わずかに925法人が平成20年度会計基準を使用していたことを回答しているにすぎません(20%弱)。


政府による統計不正がこの数年大きな問題となっていますが、公益法人に対するアンケート調査やこれを基にした会計研究会に大きな反省を促す意味でも、助成財団センターの調査は意義があったと思います。


2.アンケートとインタビュー調査の併用による実態の解明


 数字で追えるアンケート調査と深く掘り下げるインタビュー調査とは、それぞれに一長一短があります。本調査では両者を併用し、それぞれの端緒を補っています。とりわけ、詳細なインタビュー調査では、法人の実態がよく反映されているのではないでしょうか?

特に資料編ではアンケート調査の自由記入欄がすべて公開され、また、インタビューの要旨も公開されております。

 インタビュー要旨においてはインタビュー先の法人の基礎データとともに要旨が掲載され、インタビューの理解に役立つものと思います。


3.シンポジウムやフォーラムを盛り込んだ立体的な報告書

 本調査と関連して実施されたシンポジウム、フォーラム(四か所)の報告も含まれています(資料編V)。

 様々な角度から制度改革を検証することができるように思います。

 立体的な報告書となっています。


4.貴重な経過資料(資料W 委員会記録)の公開

  

 また、資料Wとして、調査の実施に当たってそれぞれ13回も開催された専門委員会及び調査検討委員会の議事録も掲載されています。


 報告書にこのような議事録が掲載されることは珍しいと思いますが、非常に重要な資料となっています。


 関係の皆様のご尽力も手に取るようにわかります。



それでは次に内容に関しての若干の感想を述べたいと思います。


5.公益法人制度改革は過去のもの?


110年ぶりと言われた新公益法人制度改革ですが、すでに10年を経過しています。10年ひと昔と言いますが、移行認定法人への調査で以前の制度で特定公益増進法人であったか否かという問いに対して、17%の法人が「分からない」と回答しています。

 制度改革では公益認定された法人はすべて税法上の特定公益増進法人として税制上の優遇を受けられます。以前の制度は、全公益法人のわずかに4%弱に過ぎなかったのですから大きな進展でした。分からないという回答の理由として、「過去の状況を知る人がすでに退職」としたことを同センターは理由として挙げています。

確かにそうかもしれません。改革の理想と現実のギャップを感じるものとして、新しい方々には「現状が当たり前」と思わないように願いたいですね。


6.財務3基準を仮に撤廃したとして


 公益法人を40年近く見続けた人間からすると、公益法人制度改革は「夢のような改革」でした。曰く、「税制上の優遇がない、主務官庁制度で活動が制約される、特定公益増進法人の更新に時間がかかり、税制優遇の空白期間が生じる・・・」こうした問題にすべて応えたものだからです。

 ところが実態はどうでしょうか?調査からは新公益法人制度で公益が増進したという声が上がってきません。シンポジウムでの役人の話も規制の話だけです。


 財務3基準に対しての制度改革の要望が強いように思います。無理もないと思います。とりわけ、収支相償規制、遊休財産規制に対する不満が強く出ています。

 法改正の要望もあるようです。


 しかし、仮に実現したとして、事態は改善されるのでしょうか?


 会計研究会が財務3基準の緩和策を発表すればするほどどこか別の個所の規制を強化して制度を却ってわかりにくいものにしています。FAQの内容は頻繁に改正され、法人運営を混乱に陥らせていることにも言及があります(76頁)


 財務3基準を改正して、その先にどのような公益法人の姿があるのかしっかりと提示していかないと、財務3基準は改善されたが、別の目に見えない規制が立ちはだかるということにもなりかねません。


 例えば、収支相償の計算上、寄付金を入れないという制度改革が仮に実現したとしましょう。しかし、その結果として、寄付金か対価収入かの違いを証明するのに書類がたくさん増え、相違の解釈をまた変な人がやるようになれば、それはそれで意味のないことになってきます。


 主務官庁制度はなくなったが主務官庁文化は存続しているというのが、最近の私の主張ですが、財務3基準はなくなったが「財務3基準文化」は残存しているということにならないようにしたいものですね。


7.公益法人間の協力に光明


最後になりましたが、本調査を実施まとめて頂いた助成財団センターの関係者、とりわけ、10周年特別PT調査検討委員会座長で、本調査の中心となった公益財団法人住友財団常務理事の蓑康久氏及びPTメンバーのご尽力に深く敬意を表したいと思います。


実は公益法人間のこうした協力による調査やシンポジウムの開催などは、1980年代が最も盛んだったように思います。

創設後間もない企業財団が多く、海外の財団視察や国際交流も盛んでした。

助成財団センターが設立されたのもそうした時代的な背景があったと思います。

助成財団センターがヨーロッパ財団センターよりも4年も早く誕生したことは以前にも書きましたが、その後低金利時代を迎え、公益法人間の協力が減少したようにも思います。


助成財団センター設立に中心的な役割を果たしたのが現理事長の山岡義典氏です。


その蓑氏と山岡氏による以下のメッセージ(12頁)を改めて噛みしめたいと思います。

「公益認定法の趣旨に沿って制度改革を正しく前向きに捉えると、民間の公益活動はその自主・自律が重んじられ、時代の先を読む先見性のある活動や国や自治体或いは営利企業では実現しにくいきめ細かな多様性のある活動が重視され、いわば生きた公益の現場が各地に広がっていく。こうした結果として公益法人は社会を活性化し活力をもたらす不可欠な存在として評価されるものになる。世の中の変化に対応し、様々な課題解決に寄与すると共に、社会にインパクトを与え、リスクを超えて新しい価値の創造へと貢献するような理想的な公益の姿が浮かび上がってくるのである。」


大阪でも、フィランソロピー副首都構想の下、「民都・大阪」フィランソロピー会議を設置して、世界の公益法人の中核を担える都市を目指していますので、期待していてください。

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