それと同時に、法制度に対する規制やアカウンタビリティに関する報告も目立ちました。頻出用語の7番目にはregulation (但し、regulations,regurated, regulatoryを含む)の用語があがっていることからも分かるとおり、政府の規制あるいは民間レベルの自己規制に対する発表も目立ちました。
特に、インドの2010年の外国人寄付規制法(FCRA)と中国の2016年の域外(香港等を含む国外)NGO管理法に対しては関心の高いところです。
後者については、施行時に本ブログでも取り上げております。
また、台湾の2018年の財団法についてもマネーロンダリングに関連した新法が混乱を与えている状況がよくわかりました。
規制関係で、とりわけ注目したいのは「グッド・プラクティス」を求めた自己規制です。市民社会側があえて自ら規制を行うのは、政府に先んじて規制を敷くことで、政府によるより厳格な規制を避けることができるという、一種の仮説ないし神話からなされていますが、これが実際にはそのとおりにはなっていないかもしれないというのです。特にしっかりと自己規制のブームが確立していた中国では逆に政府に利用されているだけに過ぎないのではないかという指摘がありました。
多くの法人にとっては何の問題もなく活動しているにもかかわらずに、ごく一部の法人の法令違反のために、先手を打って自己規制をかけたとしても、多くの法人にとってはその規制に従うインセンティブがありません。これらが機能するのは、政府からの補助金等の要件になっているといったようなインセンティブのある一部の法人だけに有効で、その他の副作用とメリットを十分に検討すべきであるというのです。
それにしても、各国の公益法人などの非営利組織の法制度・会計制度を押さえて議論している学会はISTRだけだと思います。一例としてトルクメニスタンの社団制度の問題点が指摘されるなど初めて知る事実も多くありました。
また、台湾の大物研究者Michael Hsiaoの招聘報告がプレナリーでありました。台湾のリーディング研究者としてこの分野の用語を台湾にどのように入れていくかについて苦心した状況が語られ、それはそのまま日本にも通じることがありました。この発表を聞き漏らした方は全くもったいなかったというほかはありません。
最後になりましたが、東北大学の岡田彩先生など若い日本人の活躍が非常に目立ちました。
世代交代が着実に進んでいくことに期待したいものです。