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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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変身のルールその2 届出それとも変更認定申請? [2015年01月25日(Sun)]
昨日、変更の認定か届出かという点で委員会の責任の大きさを指摘したわけですから、もう少し詳しく説明した方がよいでしょう。

東日本大震災という特殊事情があったとはいえ、内閣府は渥美さんの「集合的即興ゲーム」さながらに機敏に対応しました。その一つが次の「よくある誤解への回答」です。これも「読み方のコツ」に沿った素直な表現となっています。

よくある誤解への回答
【質問1】 今回の震災に際し、寄附を募り、被災地に義援金として渡す活動を事業として行いたいと考えていますが、現在の公益目的事業には含まれていない内容です。このような場合、事業内容の変更を伴うものとして、事前の変更申請が必要になるのでしょうか。
【回答1】
〇事業の内容の変更であっても、公益目的事業における受益の対象や規模が拡大する場合など、事業の公益性についての判断が明らかに変わらない場合は、事後の変更「届出」で済みます(FAQ問Ⅺ−1−@・A参照)。
〇また、内閣府としては、被災者支援や震災復興に向けた活動については、公益の原点であり、かつ、機を逸することなく迅速に始めていただくことを最優先にしたいと考えています。
〇ご質問のような場合も含め、こうした活動に係る事業の変更については、前記FAQ の趣旨から、基本的には、事後の変更「届出」で済むものとして扱うこととしたいと 考えています。 ➪ 詳しくは最寄りの行政庁までご相談下さい。
(補足1)事業内容の変更を伴わない場合(現在の事業内容で読み込める場合等)は、届出も不要です。
(補足2)継続事業のみを実施する移行法人(公益目的支出計画を実施中の一般法人)が公益目的事業や特定寄付を追加する場合等、変更認定・認可の申請が必要となる場合で あっても、最大限迅速に対応することとしています。
(参考)東北地方太平洋沖地震に関する公益認定等委員会委員長からのメッセージ

特に、【(補足1)事業内容の変更を伴わない場合(現在の事業内容で読み込める場合等)は、届出も不要です】と踏み込んでいます。

民間公益の増進へ向けて委員会が真剣に取り組んでいたという姿勢は「読み方のコツ」と共通するものがあります。

それではどうして、申請書の記載内容の粗細については委員会の責任なのでしょうか?
ここで、申請書の記載内容の一般論を議論することを想定してください。内閣府の場合、委員が7人いるのですが議論を簡単にするために、5人が5つの意見を出したとします。ある原案に対して、意見としては同じ「距離」で以下のような意見が出たとします。距離の順に1から5まで番号を振ってみましょう。

1.かなり削るくらいの記述でよい。2.少し削るくらいの記述でよい。3.追加記載することも削る必要もない。4.少し記載を追加する方がよい。5.かなり記載を追加する方がよい。以上のような等距離の5つの意見が出たとします。

この場合、削除するとか追加記載するということを法人に求めることに関する法律上の議論はちょっと括弧に入れておいてください。それだけでも大きな議論がありうると思いますが、ここでは措いておきましょう。これはある案に対する、一般論としての議論の中での意見の距離感をつかむだけの表記とお考えください。合議制機関なので、合議の結果、どれかに収斂することは、あり得るのですが、合議の結果でもなお、5人が上記の5つの意見にばらついたと考えてください。そうすると、多数決投票においては中位投票者、この場合は3の意見に落ち着く、ということを理論的に導くことができると考えられています。これは「中位投票者の定理」といって、学問的にはかなり確立された考え方です。感覚的に言っても、3の意見で収斂するものと考えられるものと思います。

ところが、具体的な案件であった場合にはどうでしょうか? 
「記述は簡略に」というものから、「詳細に」という順にならべて、同じく等間隔で、1から5が並んだとします。すると5の主張は、「公益性の判断をするのにこの記述では判断できないのでこの点を『記載』してほしい」ということになります(注.記載というのは問題のある表記で修正願望といったほうがよいのかもしれませんが、括弧付の「記載」という明示的な表現にしました。わかりやすくするためのものです。以下同じ。)そうすると、国会同意人事の1人が判断できないと言っている以上、事務局では法人に「記載」を求めざるをえなくなります。

すなわち、具体的な案件では、記載を増やす方に必ず収斂してしまう、ということです。委員会はほぼ必然的に最も記載を求める意見(人という意味ではありません。あくまで案件ごとの意見です)に集約されます。もちろん、「熟議デモクラシー」を信じて合意に達せば、1から5のうちのどれかに収斂する可能性は理論的にはあります。しかし、実際には時間も限られており、何度繰り返してみても、5でないと収斂しません(経験則)。しかも、この場合、1から5までが等距離でなくても、必ず5で収斂します。なぜなら、国会同意人事の委員の意見として判断ができない申請書類であるというのは、例の「葵の御紋の印籠」のような効果があります。言い換えれば、事実上、「これでは公益性がわからない」といえば、拒否権を行使するに等しい状態になると言えるでしょう。(議論の展開パターンはもう少しバリエーションがあるのですが、この程度にとどめておきましょう)。
5というのは最大値ですので、申請書との関係で委員会の修正願望は「中位者定理」通りにはならず、「最大者の意見で均衡する」ということになるわけです。これを、今後の議論のために、「出口の最大者仮説」といっておきましょう。なお、これはあくまで、申請書類の粗細に関することに限定されます。

そうすると、次の段階でどうなるかと言えば、膨大な案件を処理する中で、事務局も法人も法人の年度末に合わせた移行を優先しますから、事務局側が予め委員から追加「記載」を求められないように、事前に法人へ追加「記載」を求めることとなります。

これが繰り返されると、時間軸に従って記載内容がどんどん増える方向へと推移していくものと想定されます。

したがって、「記載」内容の追加の指導については、事務局が間に立ちますが、事務局ではなく委員会(何度も言いますが、私も入ります)がこの点の責任を負っているものと考えます。これは個別の委員の問題というよりも、委員会に内在する意思決定メカニズムから必然的に生じる構造的な問題という解釈も取りうるものと考えます。これをここでは後々の議論のために「委員会のパラドックス」と呼んでおきましょう。

さらに次の段階へ進むと、いよいよ監督の段階になりますが、その時には、昨日申し上げた通り、変更認定か届出かは、記載事項の変更を伴うか伴わないかが判断の分かれ目になりますので、どうしても許認可のプロである事務局は忠実に「記載事項の変更を伴うか伴わないか」をチェックすることになってしまいます。その結果、以上のような文化面を考慮すると、委員会全体の平均的な考え方以上に、「変更認定が多くなる」線引きとなる可能性があります。

 他方で、法人の文化を考えてみましょう。法人にとって「変更の届出」の方が「変更の認定」よりも望ましいのは明らかでしょう。届出は事後でいいですし、認定であれば、事前に膨大な資料の提出が必要となります。ところが、文化というものを考えてみると、話はもう少し複雑です。実は、変更の認定を受けないで変更し、認定要件に抵触してしまえば(認定法第62条第3号)、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金というたいへん重い罰則が控えています。世はコンプライアンス時代です。人生そのものを失いかねません。そうすると、変更認定か届出か迷ったら、念のために変更認定にしておこうと考えるのも無理からぬことでしょう。

かくして、法人、行政庁、委員会だれもが「変更の届出」で済むと思っていても、「変更の認定」を選んでしまうという皮肉な現象が起こりうるのです。

繰り返しになりますが、行政改革本部から公益法人制度改革が出てきた以上、「変更の認定」・「変更の届出」について、公益認定等委員会の事務の仕事量を減らすことと法人の負担を減らすことは見事にベクトルが一致しているはずなのです。

良い機会なので官民を挙げて、「変更の認定」・「変更の届出」の最適な線引きの考え方について整理をしてみてはいかがでしょうか?
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