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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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公益認定委員会「10年の振り返り」に対する疑問 [2019年05月06日(Mon)]

 こんなことが起こるのではないかと思っていました。

本ブログでたびたび指摘しておりますが、内閣府の公益認定等委員会運営規則.pdfでは個別法人に関わることを除いて公益認定等委員会の議事録は公開することになっています。


 ところが、このところ公益認定等委員会運営規則に違反する形で議事録を公開せずに、委員会が開催されてきました。「新公益法人制度10年を迎えての振り返り」報告書(以下「報告書」という)も議事録が公開されないままに、公表されてしまいました。


 報告書は今後の制度改革の基礎資料となりそうな重要な報告書なのですが、驚いたことに間違いだらけなのです。完全な間違いをわかりやすい順に列挙します。



1.「親会社や子会社等の関連当事者という概念がない」(報告書21頁)

  関連当事者(公益法人会計基準関連当事者.docx)については公益法人会計基準及び公益法人会計基準運用指針(平成30年6月改正)にしっかりと定義が存在します。

さらに、また、一般社団財団法には子法人(一般社団財団法における子法人.docx)の定義があります。

 つまり「親会社や子会社等の関連当事者という概念は存在」するのです。


 これは単純ミスというべきものではありません。小生の知り合いの会計関係者はこの部分について「生き恥をさらした」という表現まで使って驚いています。


2.「公益法人の財産は上述のとおり公益目的事業に使用されること が本来の姿であるところ、 資産運用と称して適切な機関決定等を経ず関係団体に貸付等が行われ、 結果的に回収不能となり、 法人の財産を毀損 した事案も見られた。このような場合には、理事会の牽制機能の発揮、 業務執行を行う代表理事等の責任や役員の善管注意義務といった観点 から問題であり、上場会社における株主代表訴訟に相当するような仕組みが必要」(報告書24頁)

これは公益法人の有識者会議での目玉の一つで、有識者会議報告書で「株式会社制度と同様の社員による代表訴訟制度を新たに設けることとする」(有識者会議報告書7頁)とされ、一般社団法人については一般法第二百七十八条の規定が、設けられています。また、一般財団法人については、株主に相当する社員がいないことから、責任追及の訴えこそないものの、評議員会には理事に対する解任の権限など理事会の牽制機能がしっかりと担わされています。



3.(公益目的支出計画の)「趣旨としては、移行一般法人が保有する財産は、旧制度下において国民からの寄附や税制優遇を受けて形成されてきたものであるから、事業内容や残余財産の帰属が法人自治に委ねられる一般法人に移行することにより、そのような財産が無制限に公益目的以外に費消されることは適当でないと考えられることによる。」(報告書31頁)


これについては公益目的支出計画の趣旨については税の問題とは完全に切り離され、解散時には残余財産を類似の公益法人等へ寄付するという旧民法72条との整合性を図る法律上のものです。当初の説明は以下の通りです。

「『制度の趣旨』でございますけれども、現行公益法人が法人格は継続させたまま、財産についても保有したまま、通常の一般社団法人・一般財団法人に移行することができるようにするために、それまで公益法人として保有していた、言わば公益目的のために使用しなければいけない財産が移行後も公益目的にちゃんと使われるようにするために、この公益目的支出計画を立てております。

  そして、移行後も公益目的に使用しなければならない財産額の算定の考え方として、現行の公益法人が解散した場合の残余財産に相当する額ということで、公益目的財産額というものを考えるという形にしております。」(運営規則が遵守されていた第6回議事録 (1).PDF


公益目的支出計画を「かつての税制上の優遇ゆえだ」といえば、ほとんどの移行法人は違和感を覚えるものと思います。寄付金控除対象の特定公益増進法人は、全公益法人の3パーセント程度しかなく、一般法人へ移行しているところはさらに少ないはずです。金融収益課税は非課税でしたが、その恩恵で現在の資産が形成されていると思っている法人はほとんどないでしょう。多くは寄附金と事業収益によるものです。議論した第31回公益認定等委員会の議事録では法人の財産構築の経緯について「税制上の優遇」とは一言も言わずに「 110 年の間における法人の成り立ちの経緯、あるいは財産の構築の経緯、さまざまな方から寄附をされて今日まできているというものも多くございます」と、私有財産である側面を強調しています。また、支出しなければならないのは税制上優遇されてきて形成されてきた「具体的な財産」ではなく、抽象的な「財産額」です。「税制上の優遇」という錦の御旗を立てて「財産」そのものに過剰な干渉をされても困ります。


こうした趣旨の取り違いをした上で「移行一般法人においては、公益目的支出計画の趣旨を十分認識した上で、計画の完了に向け、適切に事業等を実施していくことが望まれる」(報告書31頁)と言われても困るわけです。議事録が全く公開されていませんから、突然、移行法人に対する公益目的支出計画の話題がなぜ出てくるのか全くわかりません。


以上三点は指摘したい箇所です。実はそれ以外にも、首をかしげたくなる箇所があります。


冒頭に申し上げた通り、公益認定等委員会での個別案件以外のことについての議事録の非公開は法令等の違反です。



公益認定の仕組みは、有識者会議、政府税制調査会、第1期公益認定等委員会等の丁寧でかつ多角的な観点からの議論を経て、それらの資料や議事録が完全に公開されながら作り上げられてきました。


例えば、株主代表訴訟のことなどは、有識者会議で様々な観点から検討が加えられ、今の制度があります。それらはすべて議事録・資料が公開されています。現在行われていることは、議事録を公開しないばかりではなく、そうした過去の議論を全く振り返っていないということを見事なまでに露呈してしまったのではないでしょうか。


「公益認定法」は行政法の一種であり、法人を律する法律であるとともに、行政庁や公益認定等委員会を律する法律でもあります。


10年振り返り」は新しい公益認定委員会の下で、議事録を公開しながら、厳しい批判も受け入れながら、一からやり直すことを強くお勧めします。ぜひお願いいたします。


 委員会委員がほとんど入れ替わった今が最大のチャンスだと思います。大いに期待いたします。






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コメント
公益目的支出計画の部分について

公益目的支出計画についての立法趣旨について小生の記載とは見解が異なるというご意見を頂戴しました(民間の方からです)。大変優れた論理で説得力があるものでした。
「税の問題とは完全に切り離され」と記載したのはややセンセーショナルだったかもしれないので、正確を期せば、「公益目的支出計画を議論した第6回公益認定等委員会では財産の淵源に関わる税の話は一切出ていない」という表現の方がよいかもしれません。

公益目的支出計画が@(「報告書」記載の通りの)寄付や税といった財産の<淵源由来>に基づくものか、A第1期公益認定等委員会議事録にあるとおり「公益法人として保有していた、言わば公益目的のために使用しなければいけない財産」という<状態由来>に基づくものなのかについて、法学者ではない小生がこれ以上細部を検討することについては差し控えましょう(しっかりとした考えは有しています)。

ここでの主張は現在の内閣府公益認定等委員会が
@委員会運営規則に違反する形で議事録を公開していない。
Aそれと同時に公益法人会計基準や過去の議事録などをないがしろにし、すでに存在している規制を新規に必要だと主張しているということにあります。

公益目的支出計画についても、「報告書」の問題意識にあるようにしっかりと履行していただく観点から、整備法施行規則やガイドライン上の規制が現在存在しているところですが、その現行規制について一切言及せずに、権力の象徴である「税」の問題を前面に出して「趣旨を理解せよ」としていることについては極めて強い違和感があります。

いずれにせよ真摯にご意見をいただいた方には深く感謝申し上げるとともに、本ブログが制度をよくしたいという方々の議論の端緒となって頂ければ、望外の幸せだと思っております。
Posted by:出口  at 2019年05月10日(Fri) 17:19
公益目的支出計画の部分について

公益目的支出計画についての立法趣旨について小生の記載とは見解が異なるというご意見を頂戴しました(民間の方からです)。大変優れた論理で説得力があるものでした。
「税の問題とは完全に切り離され」と記載したのはややセンセーショナルだったかもしれないので、正確を期せば、「公益目的支出計画を議論した第6回公益認定等委員会では財産の淵源に関わる税の話は一切出ていない」という表現の方がよいかもしれません。

公益目的支出計画が@(「報告書」記載の通りの)寄付や税といった財産の<淵源由来>に基づくものか、A第1期公益認定等委員会議事録にあるとおり「公益法人として保有していた、言わば公益目的のために使用しなければいけない財産」という<状態由来>に基づくものなのかについて、法学者ではない小生がこれ以上細部を検討することについては差し控えましょう(しっかりとした考えは有しています)。

ここでの主張は現在の内閣府公益認定等委員会が
@委員会運営規則に違反する形で議事録を公開していない。
Aそれと同時に公益法人会計基準や過去の議事録などをないがしろにし、すでに存在している規制を新規に必要だと主張しているということにあります。

公益目的支出計画についても、「報告書」の問題意識にあるようにしっかりと履行していただく観点から、整備法施行規則やガイドライン上の規制が現在存在しているところですが、その現行規制について一切言及せずに、権力の象徴である「税」の問題を前面に出して「趣旨を理解せよ」としていることについては極めて違和感があります。

いずれにせよ真摯にご意見をいただいた方には深く感謝申し上げるとともに、本ブログが制度をよくしたいという方々の議論の端緒となって頂ければ、望外の幸せだと思っております。
Posted by:出口  at 2019年05月10日(Fri) 17:08
ここまでは書きたくなかったというのが本音です。しかし、致し方ないでしょう。直接言う(2月)、内々に通知する(4月)、別件パブコメで指摘する(3月)など、ブログで公開する前にやるべき様々な手は尽くしたつもりです。
Posted by:出口正之  at 2019年05月07日(Tue) 11:15