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民間公益の増進のための公益法人等・公益認定ウォッチャー (by 出口正之)

日本の民間公益活動に関する法制度・税制は、10数年にわたって大きな改善が見られました。たとえば、公益認定等委員会制度の導入もその一つでしょう。しかし、これらは日本で始まったばかりで、日本の従来の主務官庁型文化の影響も依然として受けているようにも思います。公益活動の増進のためにはこうした文化的影響についても考えていかなければなりません。内閣府公益認定等委員会の委員を二期六年務めた経験及び非営利研究者の立場から、公益法人制度を中心に広く非営利セクター全体の発展のためにブログをつづりたいと考えております。


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公益認定申請における実務混乱の要因分析と、法改正に伴う申請書簡素化への提言 [2026年05月18日(Mon)]

公益認定申請における実務混乱の要因分析と、法改正に伴う申請書簡素化への提言

1. はじめに 内閣府が法改正後1年間の「公益認定等委員会の活動報告」を素早く公表しました。内閣府の頑張りはよくわかる内容で、高く評価できますが、肝心の申請数も思ったほど伸びていないばかりか、相変わらず取下げ率が20%以上もあります(内閣府だけの数字です)。そこで、公益認定(および変更認定)申請実務がこれまで著しい混乱に陥っていた要因について、制度設計当時の経緯を踏まえ、以下の通り課題を整理し、今後の簡略化に向けた提言を行いたいと思います。


2. 混乱の歴史的要因:「収支相償」と会計基準のミスマッチ

  • 本来「収支相償」は、その名の通り収支計算(現金ベース)で行えば何ら問題が生じない概念でした。しかし、会計基準設計において損益計算が必須とされた結果、経常損益上で黒字であっても、未払金等の調整によって「手元に現金がない」という歪みが生じ、当時のパブリックコメントでその実態が明らかになりました。

  • 本来の設計意図: 当初はこれを救済するため、事後報告の収支相償欄に「短期調整金」を文章で記載する欄を設けました。もともとは、黒字が出れば「特定費用準備資金」や「資産取得資金」に充当することで、100%の法人が収支相償を簡単に満たせる前提で制度設計されていたものです。これを合意した時の委員会では委員の中に誰も反対者はいませんでした。

  • 「短期調整金」の形骸化と都市伝説の蔓延:しかし、2013年の会計研究会において十分な議論がないまま、この欄を「2年間でゼロにする」という、緩和とは名ばかりの実質的な制限が課されました。これにより、短期調整金に記載した金額は翌年の報告書のどの欄に記載するかが明確でなく、FAQで指示する変則的な形となっていたのです。本来の趣旨とは異なる「剰余金の使途」を記載する運用に変質し、「公益法人は利益を出してはならない」という誤った都市伝説を生む原因となりました。

3. 構造的欠陥:申請書における「円単位の次年度予測」の要求

  • 移行期の遺物の踏襲: 制度発足時、2万5,000あった旧公益法人が財務3基準を満たすかどうかを判断するため、認定後の年度末決算の予測値を判断させる欄が設けられました(1期目のことで当時委員であった私も責任は免れませんが)。今回の法改正に伴う申請様式にこのスタイルが踏襲されてしまいました。

  • 実務上の過大な負担: 申請法人は、申請後の年度末決算を予想し、その数字を「円単位」で細かく申請書に入れ、現在の財務3規律に適合するかどうかを証明させられています。その結果、法律で作成が定められた「収支予算書」の他、資産の変動まで見越した次年度の「予想活動計算書(損益計算書)」や「予想貸借対照表の内訳表」に基づく数字が必要であり、これは理事会で実質的に議論できるものを超えています。この細かな申請書自体が、「制度外の巨大な制約」として法人側に重く横たわっています。

4. 法改正の趣旨との乖離と行政チェックの肥大化

  • 制度の緩和と申請実務の乖離: 現在、財務3規律については大幅な緩和策が取られており、例えば「収支相償」も「中期的収支均衡」へと名称が変わり、単年度のプラスがあること自体は何ら問題のない状況になっています。それにもかかわらず、申請実務では従来の形に近い「円単位の予測数値」を求められています。

  • 行政側の負担と新規参入の阻害: 申請書に細かな数字がある以上、行政庁側の会計担当者も細部までチェックせざるを得ず、各種計算書の数字と合わなければ、修正を求め、双方に膨大な無駄が生じています。さらに、新規申請法人にとっては、当局の相談室に確認しても即答できないような難解な用語や書式が壁となり、大きな負担となっています。

5. 提言:法改正の趣旨に則った申請書の根本的簡略化

 今回の法改正の主眼は、事後チェック及びガバナンス重視にあると思います。したがって、事前申請の段階における財務3規律への適合性については、「満たせると思う・思わない」欄を設け、チェックさせるといった、大括りの確認で十分ではないでしょうか。50%以上であれば認定される、公益事業比率の「予想の数字」が、例えば92%が正しいのか91%が正しいのかというようなことをしている限り、 申請の「取下げ」件数はゼロにはならないでしょう。「事後チェック重視・緩和化」という法改正の趣旨を実務レベルで活かすためにも、申請書を抜本的に簡略化し、社会的な無駄(サンクコスト)を排除することが極めて重要であると考えます。


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公益法人を研究する大学院生に給付型奨学金を支給 [2026年04月01日(Wed)]

公益財団法人公益事業支援協会(理事長千賀修一)が、公益法人を研究する大学院生に給付型奨学金を支給を行っており、今年度の奨学生を募集しております。


これは我が国において「民間が担う公」としての重要な役割を期待されている公益法人制度に関してあまりにも専門家が少ないことを考慮して昨年度より開始されたものです。


1.目的

 公益法人は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するために公益活動を実施する存在であり、その活動に資するために公益法人の研究は極めて重要であるが、我が国において公益法人の研究に関する助成は極めて少ないのが実情である。そこで公益法人制度を研究する研究者を増やすため以下の通り奨学金助成事業を開始する。

2.対象者

 非営利法人制度を研究する大学院修士、博士課程学生

3.奨学金給付対象期間

 奨学生として採用決定した月の翌月から1ヶ月10万円、合計年間120万円  全額給付ですので返還の必要はありません。

 但し、後記5の研究論文を所定の期間内に提出しないときは、全額返還していただきます。

 また奨学金は、学術研究のための奨学金ですので、奨学生の判断で自由に使うことができ、使途に制限を設けません。

4.募集期間及び募集人数

 募集期間は、令和8年4月1日から、2ヶ月以内(令和8年5月31日)。

 募集人数は若干名。

5.奨学生の義務

 奨学生が応募した研究テーマを選択し研究論文を奨学金給付が終了した月から2ケ月以内に提出すること。同論文は原則として当財団ホームページに掲載する。

 奨学生が上記研究論文を提出しないときは、奨学金全額を無利息で当法人に返還しなければならない。

6.研究テーマ

 以下のいずれかから選ぶこと。

@ 公益法人に関する事例研究

A 公益認定の実態に関する研究

B 公益法人の役職者の報酬・給料の実態調査研究

C 公益社団法人の社費(会費)及び公益財団法人の賛助会費の実態に関する研究

D 公益法人の地域間格差に関する研究

E 公益認定における不認定、勧告、命令、認定取消しに関する研究

F 公益法人の活性化に関する事例研究

G 小規模法人の能力と制度のギャップに関する研究

H 行政庁の不当な指導の実態に関する研究

I 新公益法人会計基準に対する公益法人の受け止め方に関する研究

J 改正公益認定法での情報公開の進展を活用した研究

K 改正公益認定法で「新しい資本主義の実現」に資した事例研究

L その他、公益法人の活動に資するための研究



その他、申請書や提出先等については

https://www.pusa.jp/scholarship/index.html をご覧ください。


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太田達男氏が新公益信託法施行に関してステートメントを発表 [2026年04月01日(Wed)]

 本日4月1日より、いよいよ新公益信託法が施行されます。施行に当たって太田達男氏がステートメントを発表しました。ここに同氏の許可を得て全文を掲載いたします。


 その前に、なぜ太田氏がステートメントを公表するのかという点について、小生から簡単に説明したいと思います。


 公益信託は信託法(1922年)に盛り込まれながら、その後50年間全く利用されていませんでした。いわば、「眠れる森の制度」だったわけです。この制度を目覚めさせたのは、当時信託銀行に勤務されていた太田さんであり、1972年8月に『金融界』という雑誌に「公益信託にスポットライトを」という一文を寄稿したことが契機となっています。


 この論文が嚆矢となって様々な動きがあって、第1号の公益信託が1977年に誕生したのです。


 したがって、太田さんは公益信託に命の息吹を与えた方であり、その後も一貫して公益信託の発展に思いを抱いておられました。104年を経て公益信託が名実ともに市民社会において活用可能なものとして生まれ変わるときに、ステートメントを発表されることについては当然のことであり、関心ある者すべてが謹んで傾聴すべきものと思いましたので、本ブログで全文を掲載させていただきました。


2026年4月1日

公益財団法人公益法人協会

理事・会長 太田達男

新公益信託の施行にあたって

 新しい公益信託に関する法律が今日4月1日に施行されました。1922年に制定されて実に104年ぶりの大改正です。我が国における公益信託の歴史は大変苦難の道を歩んできたといってよいでしょう。

そもそも大正初期に信託法の制定が論議された際、政府が臨時法制審議会に提出した原案は私益信託だけで、公益信託に関する条文は全くありませんでした。この審議会で江木衷という学者がただ一人「公益信託を欠く信託法は信託法ではない」と主張、原案を固執する政府とそれに従う他の委員を相手に孤軍奮闘した結果、原案の最後に公益信託の規律8条文が追加されました。

しかし、その後50年間、公益信託が設定されたことはなく冬眠状態にありましたが、財団法人と比較して簡便に財産を基礎として公益活動を実行できる器として、見直しの機運が進み1977年に第1号の公益信託が2件誕生しました。この時代の公益信託は、受託者が実質的に信託銀行に限られ、信託財産や事業内容なども様々な制約があり税制上も厳しい条件があり、市民社会に根付くというまでには至りませんでした 。

そして、今回公益信託は抜本的に改正されました。誰もが受託者になれる、信託財産の制限も基本的になくなり、事業も助成型だけでなく、公益法人同様様々な事業展開が可能となりました。公益信託への寄付税制もほぼ公益法人並みに優遇されることになりました。

少子高齢化が超スピードで進んでいる日本では、単身高齢者の急増、富裕層の拡大、価値観の多様化も進み、生前・死後における公益組織への財産寄付も急拡大していますが、これらの受け皿として公益信託は、寄付者の願いを信託財産に込めることできるユニークな制度です。

 公益信託制度が生まれたものの冬眠状態にあった約50年、実用化はされたものの規制が厳しく成長が止まってしまった約50年を経てようやく今回を迎えました。市民社会における大きな役割を果たす次の50年の始まりと捉えたいと思います。



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内閣府が法改正後の成果の必見の資料を公表 [2026年01月29日(Thu)]

公益法人に関連して、内閣府が「秋以降の活動の振り返りと年度内の活動予定について」を公表しました。

www.koeki-info.go.jp/corporations/documents/ztqzlrff1s.pdf


内閣府は、公益認定法や公益信託法の法改正に関して、本当によくやっていると言えます。上記の中で、昨年4月1日以降の改正認定法施行後の状況を公表してくれています。

これだけの社会的コストを支払っての改正ですから、新しい公益法人が増えていくことが望まれています。


この資料によれば、4月から12月までで新規認定50件というのは、微々としてという評価もあるでしょうが、申請数自体も多くはないところで、内閣府はずいぶん頑張ってくれているようには思います。


というのも他の行政庁を現時点までで調べてみたところ、内閣府の次に多いのは、京都の2件、あとは、北海道、神奈川、三重、福井、鳥取、愛媛、香川、福岡、鹿児島が各1件。その他はなんとゼロです。


全体で、不認定は1件しか出ていませんが、認定を1件出していない東京都から不認定が出ているのが本当に驚きです。


日本の旧公益法人の移行がほぼ終了した2015年と2024年の日本、米国、英国(イングランドとウエールズのみ)の公益法人を比べてみましょう。日本は公益法人がそれぞれ9,397と9,746、米国の内国歳入法501(3)C団体は1,184,547と1,548,798、英国は169,500と175,058です。増加数は、日本が349、米国が364,351、英国が5,558。法制度が全く同じではないので一概に比較できないものの、実数では米国は日本の150倍を超え、英国は16倍。増加数は米国は日本の1000倍を超えます。英国も16倍である。


税制調査会では

「新たな非営利法人制度」の制度化を契機として、税制面において、欧米諸国並みに寄附文化を育んでいくためのインフラ整備に積極的に寄与するとの視点が重要となる。かかる視点に立って、寄附金税制についての従来の考え方を抜本的に見直し、より一層その充実を図る方向を目指すべきである。こうした寄附金税制の拡充は、「民」が「公共」の領域により深く主体的に関与するチャネルを拓き、今日的視点から官民の役割分担のあり方を改めて見直すきっかけにもなりうるものである。(「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」)と答申されています。


欧米諸国並みを目指したものが、米国の0.1%程度の新設の増加の少なさをどう考えるのでしょうか?「税制があるから」ということで委員会が仁王立ちのように立ちふさがっているのではないでしょうか? それは税調が目指した官民の役割の大改革の意図とは全く異なる、完全な勘違いとしか言いようがありません。


上記の資料にもある通り、第7期委員会発足に当たっての談話として内閣府公益認定等委員会の清水新一郎委員長は以下の通り素晴らしいことを謳っています。


○ 委員会の発足に当たり、改めて公益認定等委員会のミッションを「公益法人による民間公益活動の活性化により、社会的課題の解決に向けた取組を促進すること」として見据え、今後の委員会活動を進めてまいる所存です。

○ 民間公益活動を一層活性化させていく上では、「公益活動の担い手の増加」、「公益法人の新たな事業展開・挑戦の増進」、「公益法人に対する信頼の確保」、「公益法人への認知や支援(寄附等)の増大」などが重要な課題です。


なんのために民間人が入っているのでしょうか?制度を変えるだけではなく、民間人が入っているにもかかわらず容易に認定を出さずに、ブラックボックスと化している内閣府公益認定等委員会、都道府県の合議制機関の委員の審査の状況を抜本的に変える議論も必要なのではないでしょうか?


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公益法人行政の真の問題は「審査の文化」か。諸外国の審査文化(Rebuttable Presumptionの原則)の導入を [2025年12月24日(Wed)]

今般、公益法人行政の問題点を改正し、公益法人を活性化させるために、公益法人の法制度の改正が行われました。素晴らしい内容です。新しい公益信託についても公益法人と同等の仕組みがなされる予定です。


 「令和6年公益法人の概況及び公益認定等委員会の活動報告」がこのたび公表されました。これによると、制度改革前とはいえ、令和5年12月1日から1年間で公益法人の認定はわずかに78法人。さらに、解散、認定取消し、合併で減少した法人数を差し引けば、1年間で僅かに35法人しか増えていません。公益法人制度改革の中心であった、民間有識者による認定という制度で、国地方併せて約250人も民間人がかかわって、税金からの250人もの人件費を支払って、僅かに35法人しか公益法人が増えていない実態をどう考えているのでしょうか?実際の行政の事務局員の人件費や各種経費まで考えれば、委員側から強い懸念の声があがってもおかしくないですが、外から見ている限り、そうした声も聞こえてきません。その要因は行政側というよりも、委員会側にあるのではないかという強い懸念を有しています。


 さらに仔細を見れば、1年間で僅か公益認定の申請は99法人、取下げが実に32法人。対比をとれば、約3割が取り下げていることになります。

 申請数の少なさは「都市伝説」の流布などがあってやむを得ないものがあるかもしれませんが、その「都市伝説」にもめげずに申請して来た法人を、質問攻め・提出書類攻めにしているのは、「制度」というよりも、「委員会の審査の文化」という側面もあろうかと思います。海外のチャリティ委員会等で日本の制度を説明すると、「なんでそんなに担当者や委員がたくさんいるのか」という同じ質問を何度も受けてきました。


 制度改革については、内閣府は実に頑張ってくれました。改正に当たっては、情報を公開しつつ、意見提出を求め、とりわけ問題が多いと指摘されていた「財務三基準」の制度を思い切って柔軟化してくれています。あれだけの改正作業を行いえたのは、日本の公益活動を活発にしたいという強い思いがあったものと思います。問題は、その制度をしっかりと運用できるか否かにかかっているでしょう。単刀直入に言えば、委員会側が「審査の文化」を変えられるかどうかにかかっていると思います。


 米国では数万から数十万の公益の団体が、毎年、誕生していますし、英国の一部に過ぎないイングランドとウエールズでも、毎年、数千の公益の団体が、同じような認定の制度で誕生しています。


 米国でも財務上の規制はありますが、これについては、Rebuttable Presumptionの原則がとられています。つまり、一応は申請書に記載されていることは正しいとして審査し、余程合理的な矛盾があった場合に、それを覆すことができる(Rebuttable)前提(Presumption)として審査しています。


 日本の場合にも、明文化されてはいませんでしたが、非常に厳しい罰則規定を背後に持っているため、申請書の内容は真だと考えて差支えはなかったわけです。委員会側が、十分に合理的な疑いをもつ場合に、再度確認すればよいものと、法社会学的には解釈可能だったはずですし、実際当初はそういう運用がなされていたと思います。


 ところがいつの間にか、例えば、奨学金財団に対しては、途中で資金ショートしたら学生が気の毒だからという過度のパターナリズムから、寄附予定者が本当に寄附できる資産があるかどうかを確認するために、預金通帳の写しや確定申告書の写しなどをとっていた実態があったことが政府関係資料から明らかになっています。

 それどころか、「ガバナンスを重視せよ」と言いながら、理事会で議論すべき内容にまで平気で口を出す事例もここかしこで散見されます。


 その結果、4か月で認定するという標準処理期間は、大幅に伸び、1年を超えるような申請法人も出てきてたわけです。これでは、途中で取り下げる申請法人が3割にもなることもうなづけます。


 内閣府は「制度面」で何とか、手を打ってくれましたが、「申請書が真であるかを確認するような審査」の文化を変えない限り、どのような制度の下でも同じ結果になる可能性は否定しきれないと思います。公益法人の制度は、委員に対して行政は口出ししにくい制度ですので、国地方の委員会のおかしな点はことあるごとに民間が注意を促すことが大事だと思います。何か不安を抱える法人に対しては、公益認定を諦めさせることが委員会の役割だと思っている委員もいるのではないかと思います。実際に、公益法人を増やす必要はないとまで断言していた委員もいました。


 このような中で、新しい公益信託制度が公益法人と同じスキームでスタートすることになります。こちらはもっと深刻です。信託契約が行政庁の認可を停止条件としてはじめて成立するからです。数か月や一年以上かかっていたのでは、委託者と受託者の関係にひびが入りかねません。ましてや遺贈の場合はどうなるのでしょうか?


 委託者が信頼(トラスト)のもとに、受託者にお願いしているのに、受託者が信頼できるか否かを委員会が判断するなんてことはあっていいはずがありません。


 「柔軟・迅速」。かつて内閣府公益認定等委員会のキャッチフレーズだったものです。これを是非思い出し、一日も早い認定・認可をしていただけるようお願いいたします。


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財務三基準の「都市伝説」の原因は何だったのか:コンプライアンス・クリープと民間の責務 [2025年12月19日(Fri)]

 公益法人のいわゆる財務三基準については、誤解が広がり、「都市伝説」とまで言われていました。「財務三基準があるから、○○ができない」という公益法人の声にあふれていたともいえます。


 こうしたことに関して、内閣府の対応は立派でした。まさに清水の舞台から飛び降りる覚悟で、財務三基準を大幅に柔軟化する公益認定法の改正を行い、公益充実資金、公益目的事業継続予備財産の創設を導入し、、「収支相償、遊休財産保有の制限、公益目的事業比率」の財務三基準は、「中期的収支均衡、使途不特定財産保有の制限、公益目的事業比率」の財務三規律へと柔軟化されました


 また、内閣府は法改正に先立ち、財務三基準に対する間違った行政庁の指導の相談窓口までを設置してくれていました。


 さらに、今回の法改正に当たって、柔軟に対応することを期待して旧ガイドラインに具体的な基準等を示さなかった規律が「行政庁や担当ごとに指摘がバラバラである」等々の指摘を受けたことから、「ガイドラインには細かく書かないという考え方を改め、@法人や国民など利用者から見て、分かりやすく予見可能性が高いものとする、A行政による恣意的又は硬直的な運用を抑制する、B事前の審査より事後のチェックを重視するという観点から、ガイドラインの全面的な見直しを行った」として、全244頁の大部な新ガイドラインとなっています。


 このように「都市伝説」の原因を、政府側がしっかりと受け止めて、大幅柔軟化につながったものです。


 しかし、果たして「都市伝説誕生」の原因は行政側だけにあったのでしょうか?「柔軟に対応することを期待して」という部分を十分に理解しないままに、例えば、特定費用準備資金の規程等は、とても運用できない内容で法令上の縛り以上に厳しい規程が民間サイドで流布していたことも否めません。「羹に懲りて膾を吹く」ことになりかねず、過剰なコンプライアンス意識が公益法人の活発な活動を阻害してきた例はたくさん見られます。「昨年まで認められてきた方法を今年も繰り返す」というマンネリ化こそ、一番の安全運転だからです。


 このように、法令で求められる以上の規制を民間側が課すことを、学術上「コンプライアンス・クリープ」と言います。「コンプライアンス・クリープ」は、なにも日本だけに見られる現象ではありませんが、今回は政府が大幅な柔軟化を成し遂げてくれています。それに対応するように柔軟化を図り、民間側はコンプライアンス・クリープに陥らないように努力する責務があるでしょう。


 しかし、民間の士業の方々が、ガイドラインをしっかりと読みこんで、柔軟な運用が可能な最低限の規程を提案しても、行政庁が修正を求めるようなことも過去にはありました。今回のガイドラインには、そのようなことがないように釘を刺してくれていますが、士業の方が太鼓判を押したものを万一行政庁が否認してしまえば、士業の方は信用や仕事を失いかねません。どうしても安全運転への誘因が働いてしまうでしょう。


 民間側には常に挑戦的な心意気と、行政側にはガイドラインの十二分な理解と自制によって、はじめて「都市伝説」が払しょくされることでしょう。


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公益法人こそ新公益信託制度に貢献せよ [2025年10月26日(Sun)]

 全く新しい公益信託の制度が来年4月1日から始まります。


 現在、内閣府において、「新たな公益信託制度の施行準備に関する研究会」や「公益信託制度改正に伴う事業検討ワークショップ」が立ち上がり、ガイドライン案や申請の様式案がほぼ出来上がり、まもなくパブリックコメントに付されます。


 現在の公益信託ガイドライン案はA4で234頁にわたる大部なものです。


 また、様式集案も非常に複雑なものです。


この間、内閣府の関係者や研究会、ワークショップの関係者の並々ならぬ努力には頭が下がります。


一つの制度を作り上げることに、これほどまでに精力的に活動していただいていることにまずは深く感謝したいと思います。


公益信託は、大正時代の信託法によって出来上がった制度ですが、実は50年間は全くの「眠れる森の制度」でした。これに生命の息吹を与えたのは、一人の信託マンと総理府(当時)のお役人でした。


 しかし、この制度は受託者は信託銀行に限られていたうえ、旧公益法人と横並びの、悪名高い「主務官庁制度」によって、総合的な政策の中の制度とはならずに、このところ制度の持続性も風前の灯となっていました。


 旧公益法人制度は、2006年に法改正されましたが、その時、公益信託はおいておかれたままでした。


法制審議会がようやく2018年に「公益信託法の見直しに関する要綱案」を発表しましたが、これもまた放置されていました。



公益法人が再度の改正を行うにあたって、昨年、改正公益認定法とともに、新公益信託法が成立し、来年の施行を待っている状態です。


「眠れる森の制度」が信託マン等によって覚醒してから、さらに50年以上の月日が流れました。


繰り返しになりますが、この間の関係者のご尽力には大変なものがありました。


受託者には個人、各種非営利法人、営利企業を含め誰もが成り得るようになり、金銭の拠出以外の活動もできるようになった上に、主務官庁制度をなくしたことから、内閣府公益認定等委員会や地方の合議制機関が、公益信託契約を認可するという「公益法人スタイル」がとられています。


 その結果、先のガイドラインや様式集に関する知識のある方は、士業の方たちにも、信託銀行の関係者の中にもそう多くはいません。また、これらの大量の資料を読み込み理解可能とする時間を割ける方も決して多くはないでしょう。


 しかし、公益法人関係者だけは別です。申請のスタイルや各種規制は公益法人に準じていますので、ガイドラインもたやすく理解可能なはずですし、すでに知識を有しているといってもよいほどです。


 言い換えれば、日本の社会の公益の増進のために、多くの方が汗を流したこの制度を、各方面に活かすには、公益法人関係者が、まさに公益のために汗をかくことが不可欠であると信じます。


 公益法人は、損得でこの制度を考えるのではなく、明治以降の民間公益活動の中心であるとの矜持をもって、様々な受託者等への協力・助言を含めて、この制度を素晴らしいものにするために、ひと肌脱いでいただきたいと思います。


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ついにINPAS(国際非営利会計基準)が公表される [2025年10月21日(Tue)]

 かねてより、本ブログで日本でほぼ唯一ご紹介し続けたIFR4NPO(International Financial Reporting for Non Profit Organizations)がかねてより検討をしていたINPAS(国際非営利会計基準)が公開されました。


 考えてみれば、私も約6年にわたって関わってきた関係で感無量です。


 IFR4NPOは、より強固な組織として、INPRF(The International Non-Profit Reporting Foundation)という財団(米国で非営利法人化、さらに英国では外国法人として登記)として生まれ変わりました。


 この基準は、非営利団体の財務報告における一貫性そして信頼性を劇的に向上させることになると思います。非営利団体は、数十もの異なる資金提供者の要件を順守する代わりに、明確な基準を用いて報告できるようになりました。財務情報の比較が可能になり、寄付者の信頼が高まり、非営利団体チームの負担が軽減され、信頼が強化されることが期待されます。


 INPASは、助成金収入の認識方法、制限付き資金の報告方法、監査済み会計報告書の作成方法、そして助成金報告の統一化など、非営利団体に必要なあらゆる事項を網羅しています。INPASは、確立された国際的な枠組みに基づき、非営利団体の実際の運営に根ざしています。


日本の非営利会計基準の考え方とは以下の点で大きく異なっていると考えます。


1.使用する非営利組織側の視点から作成されたこと。

2.最大のステークホルダーである、政府への報告とは切り離されて議論されたこと。

3.IFR4NPOプロジェクトには、6年以上の年月をかけ、繰り返しの意見表明期待を提供し、多少なりとも関与した者は15,000人以上の個人と3,500以上の組織になり、そのことで正当性を担保していること。



 日本の非営利法人会計は混迷の度を深めていると思います。監査する側が主体で議論が進行する日本の非営利法人会計の考え方にとっても極めて示唆に富むものと思います。


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