企業の持続可能性を本気で高めるための、2030年代を俯瞰する視野
[2020年12月28日(Mon)]
ある企業から、同社のサステナビリティ戦略の立案に際して、
コメントが欲しいというご要望をいただきました。
予めいただいたご質問にメールで回答し、それをもとに
オンラインでのインタビューにお答えしたのですが、
その内容は、きっと他社にもお役に立つだろうと考え、
メールでの回答を抽象化して、紹介します。
(回答の返信をまとめたのが10月末のため、若干、状況が
変わっていることもありますが、大勢には影響ないと考え、
そのトーンのままで記載します。)
Q1:2030年、2060年ごろの市民社会と企業の関係性は
どのように変化しているか?
A1:どの国においてか、また、人口・世帯構成の推移が大きく変動するか
否かによって回答は異なりますが、人口・世帯構成の推移の変動が小さいと
予想すれば、世界の人口は2030年に85億人(20年比+8%)、
2060年に100億人(同+26%)ですが、増える人口のほとんどは
赤道周辺または以南であることから、グローバルな企業にとっては、
すでに経済的に成熟化し今後さらに高齢化が進む(現時点での)先進国での
事業を適応度を高めるために進化させつつ、人口が増え続けるアフリカ・
中央&南アジア、中南米などで収益=市場を確立できるよう、人材・ビジネス
モデルと組織の在り方の多様性を豊かにする、という2つのプロセスを
同時に進めるしかありません。
https://www.unic.or.jp/files/15fad536140e6cf1a70731746957792b.pdf
現時点での先進国と、韓国・中国をはじめとする新興国は、高齢化、そして
国によっては人口減少という、日本が経験している道を辿ることになります。
日本の人口は
2030年に1.19億人(20年比−5%)、2060年に0.92億人(同−26%)、
65歳以上は2020年29%→2030年31%→2060年38%、
75歳以上は2020年15%→2030年19%→2060年26%と、
後期高齢者が全人口の6人に1人→5人に1人→4人に1人と、
医療と福祉に要する費用をどう下げるかを、国民と課題として共有し、
予防にも、負担にも向き合う必要があります。
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp
(これと並行して「インフラの高齢化」も進みますが、またの機会に。)
また、人間の高齢化は、年金運用の拡大を意味し、その長期運用を担う機関
投資家にとって、ESGをはじめとする、企業の長期価値、つまり持続可能性と
価値創出の双方の観点から企業を評価することを意味します。
もうひとつ、気候変動の主たる要因である二酸化炭素等の温室効果ガスの
排出抑制は、ようやく日本においても政策として意識されるように
なりましたが、「2050年に実質排出量ゼロ」を実現するには、
年率4%以上の削減が必要です。一方で、ICTの進化は「働き方」、
つまりどう稼ぐかにも大きな影響を及ぼし続けており、高いスキルや
能力を持つ人材にとっては、大きな企業に就社して都心部のオフィスに
通勤しなくても、力を発揮できるようになることは、さらに進みます。
つまり、グローバルな企業にとっては、市場・顧客への対応の面でも、
従業員の働き方や、ビジネスプロセスのマネジメントの面でも、
人口増加率の低下や高齢化、気候変動をはじめとする課題解決や
ICTがもたらす市場環境の変革や進化を生かす価値創出に挑み続ける
ことが、前提となります。
Q2:企業が社会価値を定義するにあたり、どういった点を重視すべきか?
当社グループに求められる社会価値とは
A2:経済価値が売上・利益や株価で示されるならば、社会価値は、
社会における有用性や信頼によって(定性評価を含め)示されることに
なります。
上述の背景から、世界の人口増加率が低下し、先進国や(先行)新興国に
おいては、経済的な成熟と高齢化、またいくつかの国・地域では人口減少が
始まる中で、有用性や信頼は、消費欲求を満たす新たな製品・サービスの
創出だけでなく、課題の解決や、課題を踏まえた新たな理想の実現を、
環境や人権に配慮した事業・組織によって進め、積極的に開示とエンゲージ
メント(多様な主体の力を借りて巻き込む)しながら積み重ねていく必要があります。
現時点での貴社の基本理念等を見る限りにおいて、
これまでのように、市場や顧客として効率の高い層だけを対象にするのではなく、
上記の課題に直面する人々にも、サービスや機会を提供できるよう、
包括的(インクルーシブ)な視野とアプローチが求められます。
この点について、統合報告書の価値創出ストーリーで明言することも、
コミットメントとして不可欠です。
Q3:「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」に
必要な要素は何か?
A3: この10年間は、
(1)2020年までに、世界で最も少子多老化が進んだ日本における
「地域経営」の確立
・多様な主体による協働
・小規模多機能自治
・社会責任公共調達
(2)2020年までに、すべての生命の危機である「気候変動への合理的な
解決策」の普及
(3)2020年までに、NPO自らが「社会責任経営の模範」に
の3項目を最も重要な成果目標と位置付けてまいりました。
Q4:川北氏のブログの中で、「自律を促すための判断材料が重要」と
書かれていたが、「自律」とはどのように定義できるとお考えか?
A4:「自律」は、自ら決めることができること。他者に迫られて決めるのでも
なく、判断が遅れて結果として選択できないようになるのでもなく、
「これまで」を構造と要素で把握し、「これから」を見通したうえで、
判断に先立って調査し、設けた仮説を検証しながら、より精度の高い判断と
実践を積み重ねていく過程と考えます。
コメントが欲しいというご要望をいただきました。
予めいただいたご質問にメールで回答し、それをもとに
オンラインでのインタビューにお答えしたのですが、
その内容は、きっと他社にもお役に立つだろうと考え、
メールでの回答を抽象化して、紹介します。
(回答の返信をまとめたのが10月末のため、若干、状況が
変わっていることもありますが、大勢には影響ないと考え、
そのトーンのままで記載します。)
Q1:2030年、2060年ごろの市民社会と企業の関係性は
どのように変化しているか?
A1:どの国においてか、また、人口・世帯構成の推移が大きく変動するか
否かによって回答は異なりますが、人口・世帯構成の推移の変動が小さいと
予想すれば、世界の人口は2030年に85億人(20年比+8%)、
2060年に100億人(同+26%)ですが、増える人口のほとんどは
赤道周辺または以南であることから、グローバルな企業にとっては、
すでに経済的に成熟化し今後さらに高齢化が進む(現時点での)先進国での
事業を適応度を高めるために進化させつつ、人口が増え続けるアフリカ・
中央&南アジア、中南米などで収益=市場を確立できるよう、人材・ビジネス
モデルと組織の在り方の多様性を豊かにする、という2つのプロセスを
同時に進めるしかありません。
https://www.unic.or.jp/files/15fad536140e6cf1a70731746957792b.pdf
現時点での先進国と、韓国・中国をはじめとする新興国は、高齢化、そして
国によっては人口減少という、日本が経験している道を辿ることになります。
日本の人口は
2030年に1.19億人(20年比−5%)、2060年に0.92億人(同−26%)、
65歳以上は2020年29%→2030年31%→2060年38%、
75歳以上は2020年15%→2030年19%→2060年26%と、
後期高齢者が全人口の6人に1人→5人に1人→4人に1人と、
医療と福祉に要する費用をどう下げるかを、国民と課題として共有し、
予防にも、負担にも向き合う必要があります。
http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp
(これと並行して「インフラの高齢化」も進みますが、またの機会に。)
また、人間の高齢化は、年金運用の拡大を意味し、その長期運用を担う機関
投資家にとって、ESGをはじめとする、企業の長期価値、つまり持続可能性と
価値創出の双方の観点から企業を評価することを意味します。
もうひとつ、気候変動の主たる要因である二酸化炭素等の温室効果ガスの
排出抑制は、ようやく日本においても政策として意識されるように
なりましたが、「2050年に実質排出量ゼロ」を実現するには、
年率4%以上の削減が必要です。一方で、ICTの進化は「働き方」、
つまりどう稼ぐかにも大きな影響を及ぼし続けており、高いスキルや
能力を持つ人材にとっては、大きな企業に就社して都心部のオフィスに
通勤しなくても、力を発揮できるようになることは、さらに進みます。
つまり、グローバルな企業にとっては、市場・顧客への対応の面でも、
従業員の働き方や、ビジネスプロセスのマネジメントの面でも、
人口増加率の低下や高齢化、気候変動をはじめとする課題解決や
ICTがもたらす市場環境の変革や進化を生かす価値創出に挑み続ける
ことが、前提となります。
Q2:企業が社会価値を定義するにあたり、どういった点を重視すべきか?
当社グループに求められる社会価値とは
A2:経済価値が売上・利益や株価で示されるならば、社会価値は、
社会における有用性や信頼によって(定性評価を含め)示されることに
なります。
上述の背景から、世界の人口増加率が低下し、先進国や(先行)新興国に
おいては、経済的な成熟と高齢化、またいくつかの国・地域では人口減少が
始まる中で、有用性や信頼は、消費欲求を満たす新たな製品・サービスの
創出だけでなく、課題の解決や、課題を踏まえた新たな理想の実現を、
環境や人権に配慮した事業・組織によって進め、積極的に開示とエンゲージ
メント(多様な主体の力を借りて巻き込む)しながら積み重ねていく必要があります。
現時点での貴社の基本理念等を見る限りにおいて、
これまでのように、市場や顧客として効率の高い層だけを対象にするのではなく、
上記の課題に直面する人々にも、サービスや機会を提供できるよう、
包括的(インクルーシブ)な視野とアプローチが求められます。
この点について、統合報告書の価値創出ストーリーで明言することも、
コミットメントとして不可欠です。
Q3:「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」に
必要な要素は何か?
A3: この10年間は、
(1)2020年までに、世界で最も少子多老化が進んだ日本における
「地域経営」の確立
・多様な主体による協働
・小規模多機能自治
・社会責任公共調達
(2)2020年までに、すべての生命の危機である「気候変動への合理的な
解決策」の普及
(3)2020年までに、NPO自らが「社会責任経営の模範」に
の3項目を最も重要な成果目標と位置付けてまいりました。
Q4:川北氏のブログの中で、「自律を促すための判断材料が重要」と
書かれていたが、「自律」とはどのように定義できるとお考えか?
A4:「自律」は、自ら決めることができること。他者に迫られて決めるのでも
なく、判断が遅れて結果として選択できないようになるのでもなく、
「これまで」を構造と要素で把握し、「これから」を見通したうえで、
判断に先立って調査し、設けた仮説を検証しながら、より精度の高い判断と
実践を積み重ねていく過程と考えます。