• もっと見る

川北秀人on人・組織・地球

「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に、市民団体(NPO)・社会事業家(ソーシャル・アントレプレナー)や社会責任(CSR)志向の企業のマネジメントの支援や、市民・企業・行政の協働の支援などに奔走する、IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者の毎日の、ほんの一部をご紹介します。


Google

Web全体
このブログの中
カテゴリアーカイブ
リンク集
最新コメント
プロフィール

川北 秀人さんの画像
https://blog.canpan.info/dede/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/dede/index2_0.xml
不安定を乗り越えるための判断力と「試行」力を。 [2025年01月01日(Wed)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
みなさまには、昨年も私どもに貴重な機会を与えていただきましたことに、
深くお礼申し上げます。

人類が世代を超えて積み重ねてきた民主主義が、世界各地で脅かされたことで、
今年を含む数年間は、その結果を引きずり続けることになります。
情報通信技術(ICT)の進化により、スマートフォンとSNSが
膨大な情報へのアクセスを可能にした結果、社会は動かされやすくなりました。
もはや人々にとって、情報の格差は問題ではなく、
判断の格差、そして、その判断による負の影響の受けやすさの格差が、
深刻であることを意味します。

意図的な誤った情報を「ネットで知った真実」と信じて判断した投票結果が、
自らを利するどころか、より厳しい状況へと導いてしまうことも、
一方で、状況が厳しくなっているのに、それを知らせる情報もあるのに、
目や耳を、そして心も閉ざして「今までのまま、ずっとこのままがいい」と
判断せず、判断と対応をしなかったことによる負の影響を
自らも周囲も受け、状況がさらに厳しくなっていく、ということも、
同時に進んでいます。

特定の個人と多くの匿名の人々によって「つくりだされた社会の不安」で、
人々のくらしが不安定になってしまう。
これは従来から呼ばれてきた「保守化」や「リテラシー向上の必要性」といった
問題ではなく、判断力と「試行」(「思考」ではなく)力が下がってしまっている
という問題であると、捉え直す必要があります。

島根県雲南市をはじめとする住民自治力の豊かな地域に共通するのは、
「決めてみる・やってみる・ダメならやり直してみる」という3つの「てみる」を
実践し続けるチャレンジ精神を持ち続ける人々が、世代を超えて存在すること。
判断力と「試行」力が求められる今こそ、3つの「てみる」が重要かつ有効で
あるとともに、それを下支えする力、具体的には、
「これまで」の経過を踏まえて「これから」の見通しを示し「てみせる」、
ある地域での工夫や努力を、他の地域の状況や環境に即してその場で試し「てみせる」、
地域の人々が抱く課題や不安、そして理解し試行したことを
それぞれの飾らない言葉で伝え「てみせる」の、3つの「てみせる」が、
私たち支援者に求められていると、改めて強く感じます。

冒頭でも述べた通り、これから数年間は、昨年までの判断の結果に引きずられます。
しかし、どんなに関税を高めても、自国の製品・サービスの質が高まることを促しません。
どんなに減税を進めても、それはたくさん稼いでいる人の資産をさらに増やすだけで、
所得が少なく、日々の生計に困り、未来にも大きな不安を抱いている人々の
くらしを支えることはできません。
先進国と呼ばれる各国が成長率を高めたのは、植民地政策など他国から収奪した時か、
中間層が生活の豊かさを実感していた時か、そのいずれか。
企業の稼ぐ力を強くするだけでなく、労働分配率をしっかり高め、
困窮や不安を少しでも解消できるよう、社会保障を積み上げる。
家族が小さくなり、終身雇用でなくなりつつある現代では、
医療や介護だけでなく、教育や居住も、社会保障の基礎に改めて位置付ける必要があります。
ただ、高齢者率が世界で最も高く、しかも民間資産の大半を高齢者が保有している
日本では、高齢者の社会保障費負担を高めることは、避けて通れません。

地方創生も、日本経済の再生も、世界に広がってしまいつつある保護主義からの脱却も、
3つの「てみる」と「てみせる」は、重要で有効だと確信しています。
大きな経済も、小さな経済の集積であり、また、国家行政の存在理由は、再分配の
最適化にこそあるからです。

微力は無力ではない。決して精神論ではなく、物理学でもそうです。
その力を、持続可能な地域と世界のために。
厳しい戦いこそ、冷静に先を見通して [2023年01月01日(Sun)]
謹んで新年のあいさつを申し上げます。
昨年も北海道から沖縄まで、全国各地のみなさまに、
本当にお世話になりました。心からお礼申し上げます。

COVID-19の影響が収まらない中で始まった
ロシアのウクライナ侵攻から、まもなく一年。
厳冬期を迎えたヨーロッパは、エネルギー価格の高騰を、
人権と環境という、持続可能性の2つの重要な基礎を念頭に、
乗り越えようとしています。

一方の日本も、バブル崩壊以降の経済システム再生という
30年以上にも及ぶ長い戦いの中にありながら、
人権と環境をずっとずっと後回しにした政府は、
改革や革新を促さず、財政規律を忘れて補助を出し続け、
結果として企業は革新に挑まず、労働分配率を下げ続けることで
利益を確保し、それゆえ国民一人当たりGDPの順位は1970年代の
水準にまで下がり、韓国や台湾といったアジア諸国にも追い抜かれました。

これから先の基調も、85歳以上が1千万人を超える2035年までは、
楽観を許さないどころか、厳しい改革を積み重ねることが不可欠です。

民主主義とは、誰かを選んで託せば、よい未来が訪れるなどという、
楽なシステムではなく、市民が判断し、その実践を担ってはじめて成り立ちます。
高度成長を知る70歳代以上、バブルの恩恵を受けた55歳以上、
その人たちに従っていれば済んだ40歳以上が、まだまだ続く厳しい戦いを、
ちゃんと状況を理解し、冷静に見通し、どんなに厳しくても、
判断と実践を積み重ねることでしか、持続可能性を高めることはできません。

高度成長期に、日本の製造業が世界市場に受け入れられたのは、
たくさん残業したからではなく、良いものを届けようという熱意を形にする
投資と人材育成を積み重ねたから。
しかし今は、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が遅れ、
ICT分野でもイノベーターを育てる市場風土が弱いために、
貿易収支は赤字が続いてしまっています。

これからも続く厳しい戦いに、希望の光があるとすれば、
それは、日本がそれらの課題の先進国である、ということ、
そして、課題解決先進地となろうとする人々が、各地にいらっしゃること。
その方々を支え、ともに学びあう機会を設け、小さくても着実な
課題解決や価値創出が、新たな日本のお家芸となるよう、
微力を尽くし続けます。

厳しい戦いが長く続く時こそ、自らの努力と可能性を信じて、
冷静に見通して、前へ。
みなさまがくらす地域や働く組織が、課題の解決や価値の創出に
挑まれるとき、必ずお手伝いします。どうぞご一緒に。
上書きを促す [2022年01月01日(Sat)]
謹んで新年のあいさつを申し上げます。
昨年も、みなさまに大変お世話になりました。
より良い社会づくりのお手伝いを仕事にする立場のはずが、
むしろみなさまに、例年以上に助けられながら過ごした一年でした。
重ねて深くお礼申し上げます。

そして昨年は、感染症が顕わにした課題の深刻さを体感した年でも
ありました。重傷者への対応に追われるごく一部の医療機関、
自宅で待機させられている間に亡くなられた数百名もの方々、
もとより厳しい労働条件に加えて対策も求められながらケアを続けた介護施設、
事態の長期化に伴って静かに増え続ける生活困窮者。
そのすべての仮説や判断の遅れの原因となった内閣、
結果として対応に追われる基礎自治体行政。
文字通り史上空前規模の予算を用意しながら、
その効果が限定的だったのは、深く調べることもなく、
アイディアレベルで予算を付け、その執行は外注にまかせてきた
この10年間の「国の仕事の仕方」の劣化に大きな原因があると
言わざるを得ません(もちろん、委託先の手数料収入を増やすことが
目的だったのならば、それは十分に成功していますが)。

2020年から、ひとり親世帯をはじめとする困窮者・家族の
支援活動団体のお手伝いも、従来以上に積極的に行うように
してきました。そのくらしの厳しさは、想像や言葉に絶します。
他国とは異なり、「働いているのに生活が苦しい」という人の多さと、
その増えるスピードの速さ。原因は、最低賃金や労働分配率の低さだけ
でなく、労働者派遣事業者の利益率の高さや、技能実習制度など、
さまざまな要素の積み重なりにあります。しかし、どんなに複雑でも、
基本的人権を損ね続けている、これらの制度や、その背景にある慣行
・文化までを、上書きしていかなければ、働いている人々が安心して
くらし続けることができない。ゆえに将来に希望も、地域や他者への
信頼も抱くことができない。それが、都心部だけでなく農山漁村部でも
進み続ける「小家族化」、実質的には独居化と並行することで、
「孤立」というさらに深刻な課題を生んでいく、という、課題の連鎖を
止められません。

これまでも日本は、どんなにすばらしい技術や製品・サービスのタネを
開発しても、消費者と行政が過剰なまでの安全の保証を求め、
結果として市場化に失敗し続けてきました。検査の偽装が発覚しても、
「安全には問題ない」と悪びれずに言い切る会社が相次ぐ背景にも、
「過剰品質」という言葉が当たり前に使われるほどの手間やコストが
求められてきたという意識があるのでしょう。
この「問題ない」という感覚は、相手の気持ちを共有することなく、
自分の判断を相手に押し付けるものであり、安心という関係を損ねます。
同様に、高齢化と人口減少に加えて、小家族化が進みつつある中での
くらしや、それを支える地域づくりにおいても、「これまで通りで
問題ない」「変える必要がない」という人々が、まだまだたくさんいます。

しかし、ごくわずかながら、上書きの成果を生みつつある地域も
出てきました。昨年11月末に発表された国勢調査(まだ一部ですが)
をもとに、2010年から2020年にかけて、30歳台と40歳台の
残存率(ここでは2010年の30歳から49歳までと、2020年の
40歳から59歳までの数を比較した増減率)の上位200市区町村を
見ると、大都市やその近郊、離島振興などの理由がある場所だけでなく、
「若者のチャレンジ」を積極的に受け入れ続けてきた自治体も含まれて
いることがわかります。
2010-2020_30-40.JPG

もちろん、すべてのチャレンジがいきなりうまくいくわけでは
ありませんし、無理やり押し切って始めたと周囲が感じていることは、
うまく進む確率も下がってしまいます。
そこで、各地に伺った際、「チャレンジ」というカタカナではなく、
「決めてみる・やってみる・ダメならやり直してみる」の
「3つの『てみる』」を大切にできる人を増やそう、とお伝えしています。
高齢化だけでなく、人口減少と小家族化まで同時に進行する日本は、
世界の課題先進国。これまでは農山漁村部で戦後75年かけて徐々に、
そしてこれからは都心部で加速度的に深刻化する課題に立ち向かうには、
「これまで通りで問題ない」「変える必要がない」という発想こそが
最大の問題です。そういった考え方の持ち主は、行政や政治家といった
特定のセクターにではなく、どこにでもいる、私たち自身です。

英経済誌「Economist」の昨年12月11日号は日本を特集し、
https://www.economist.com/special-report/2021-12-11
巻頭に「Adapting for the future: What the world can learn from
Japan: The country is not an outlier -it is a harbinger」と題した
記事を設けました。直訳すれば「未来に対応する:世界が日本から
学べること:外れ値(異常値)ではなく先駆け(前触れ)」。
最前線にあるという自覚を、チャレンジに結び付けるには、
形式的・手続き的な決議ではなく、「これまで」と「これから」は
どう違うかを見通し、仮説に基づく試行を通じて精度を高める、
という、リスクと、将来の価値への投資を引き受けながらの判断を
積み重ねるしかありません。

資本主義を進化するには、まず民主主義の深化から。
これからも、ひとつでも多くのコミュニティ(地域でも組織でも!)で、
持続可能性を高めるチャレンジを促すために、判断と試行を
積み重ねる人々を増やせるよう、微力を尽くし続けます。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
Zoom Out! [2020年12月31日(Thu)]
謹んで新年のあいさつを申し上げます。
本来なら、お祝いやお慶びを申し上げるべき年頭ですが、
文字通り世界中を襲う新型感染症は、人々の命とくらしを、
静かに、深く、蝕み続けており、病や経済的な影響を
受けられたみなさまには、心からお見舞い申し上げるとともに、
少なくともあと半年、冷静に見通せばあと1年は続くこの状況に
みなさまのご安全をお祈りし、困難や課題を抱えていらっしゃる
方々のお手伝いに、微力を尽くし続けることを約束します。

これからのことについて述べる前に、ひとつだけ、
これまでのことについて触れさせていただくとすると、
今年ほど、人に感謝の言葉を述べた年はない、と、改めて感じます。
それはまるで、事故や災害に遭って、さまざまな人々の支えを
受けたかのように。そのことで改めて、自分を含めた世界中が、
新型感染症の被災者であることを実感しました。
同時に、さまざまな人々にお礼を申し上げることができる
ありがたさも痛感します。かねてから「人『交』密度」の
大切さをお伝えしてきましたが、自らがそのありがたさを
日々体感し続けた一年でした。

これからを見通すと、日本国内で陽性であることが判明した人は、
現時点で25万人弱、400人強に1人の割合。
春を過ぎるまでは日々の陽性者数の大幅な減少は見込めないことから、
やがて50万人を超える、つまり、200人強に1人の割合に
達することを織り込んで、例年より雪や寒さが厳しい冬から春を
過ごすことに備える必要があります。
医療や福祉など人をケアする仕事に従事されていらっしゃるみなさまには、
引き続きご苦労をおかけすることになりますが、どうか身体も心も
安全を保ち続けていただけることを、強く願います。

新型感染症への対策がひと段落する頃、出生者数は大幅に減っている一方で、
他の感染症による死亡者が減少したことを受け、日本の高齢者率は30%を超え、
後期高齢者は全人口の6人に1人を超えます。
世帯当たりの人口も、減少は止まっていません。
少子化と高齢化、そして、「小家族化」が加速しながら進む2020年代は、
グローバル企業の戦略も、大企業のマーケティングも、地場企業のお得意先も、
わずか数年前までの「当たり前」が通用しないほど、社会は変わってしまいました。
変化の大きさ・深さは、その対応が難しい人々のくらしへの影響の大きさ・深さを
意味します。今、大切なのは「社会を変える」ことではなく、「変わってしまう
社会に、心を(または、心で)補う」こと。特に日本では、もともと課題や困難を
抱える率が他国より圧倒的に高いひとり親世帯の方々に、安心してくらし、
活躍し続けていただけるよう、支えることが喫緊・焦眉の課題です。
私どもも、遅ればせながら、学びながら微力を尽くしてお手伝いいたします。

さて、長くお付き合いくださっているみなさまは覚えていてくださっているかと
思いますが、実はIIHOEは、2020年までにその役割を終えて、
解散するつもりでした。しかし、わざわざ解散しなくても息の根が止まるほど、
全国各地での勉強会や研修などにお招きいただく機会は大きく減りました。
オンラインでの開催もようやく進み始めている状況で、完全な切り替えも
現実的には期待できません。
IIHOEの設立の背景のひとつに、1990年のバブルの絶頂期を過ぎた
後の経済的な減速から、「1960年代生まれの自分たちが次の世代に
バトンタッチする2020年までを俯瞰しなければ!」と、同世代とともに
「VISION2020」という勉強会を立ち上げたことがあります。
それからもう30年。次世代に渡すべきバトンがこんな状態では、
本当に申し訳ない限りです。
これまでちゃんとできなかった者ががんばっても、ろくなことには
ならないかもしれませんが、しかし、少しでもマシな状態にするための
下働きを務める責任を痛感しています。
このため、恥を忍んで、次の30年を俯瞰し、持続可能性を高めるための
しくみづくりに挑む人々を支え続けられるよう、自らのネジを巻きなおす
ことといたします。

世界でも、日本でも、地域でも、時は止まらずに動き続けます。
「変わってしまう社会に、心を(または、心で)補う」ためには、
しっかり先を見据え、遠慮しすぎずに踏み込み、決めてみる・やってみる・
ダメならやり直してみるの「3つの『てみる』」をともに積み重ねること。
オンライン化が進んでしまった今こそ、俯瞰(Zoom Out)を。
2030年を自信と安心とともに迎えるために [2020年01月01日(Wed)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
新しい10年紀の始まりは、不安とともに迎えました。

これまで10年間も、大規模な災害をはじめとするさまざまな
できごとがありました。それはきっと、これから10年間も、
避けては通れない与件です。
世界においては、経済のサービス化(価値創出の主力が製造業
からサービス業へとシフトすること)と低炭素化(エネルギーや
資材を調達・生産から使用・廃棄の段階まで最大限効率的に
用いること。わかりやすく言えば、大切に丁寧につくり、使い、
使えなくなっても生かすこと)に勝ち抜くために、施策も市場も
大きくシフトしている国と、その必要性すら理解できずに、
国民と未来の世代を犠牲にし続けている国とに分かれています。

日本がいつ、そのシフトを始めることができるか。
中央省庁と国会議員に期待できない以上、地域と市場ががんばる
しかありません。「地球上のすべての生命にとって、
民主的で調和的な発展のために」を組織目的に掲げるIIHOEに
とって、まず足元の日本の持続可能性の向上を確立するためには、
地域と市場の担い手を着実に育てるために、
市民活動はウォンツからニーズへ、自治体行政は協働から総働へ、
地域は行事から事業へ、役から経営へ、現場づくりからひとづくりへ、
企業は自社のみの利益創出から社会課題の解決へ、
そして、人々を消費者を市民へ、とシフトすることが不可欠であり、
1994年の設立以来、そのすべてに取り組み続けてきました。
これからも私たちが担うべき役割は変わりませんが、しかし、
これまでの手法や進め方では、着実に積み重なっているとはいえ、
社会のシフトを十分に実現してはおらず、見直し・やり直しが
不可欠であると痛感しています。

原点を再確認するとともに、当方からのアウトリーチの機会とした
設立25年謝恩プログラムは、多くのみなさまのお力添えを得て
これまで23回開催。
支援の新たなしくみのモデル開発として「公益大家」にも
着手しました。

どうすれば、社会の、日本の持続可能性を高め続けることができるか。
そのために、支援者として求められる機能と技能は。
その問いに、これまで以上に、誰よりも早く深く臨み、答えを示し続けます。

その観点からも、どうしても触れざるを得ないのが、休眠預金制度です。
資金分配団体に選ばれた計22団体の方々による24事業の助成が、
本格的にスタートします。
その本来の趣旨や期待にもとづいて考えれば、明らかな問題点もあり、
これを、制度を動かしながら是正し、日本の持続可能性を高めるために
しっかり役立てるための案と議論(と判断)を整えるのも、私の役割で
あると自覚しています。
本件については「ここが問題だ」というご指摘ではなく、
「この点をこう改正すれば、こういう成果が期待できる」という
事実と効果の期待にもとづくご提案を、ぜひお寄せください。

2030年を自信と安心とともに迎えるために。
引き続き微力を尽くし続けます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
不安定の拡がりを、着実な基礎で支えるために [2019年01月02日(Wed)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。

と、申し上げる私自身にとって、昨年は悔いばかりが募る一年でした。
年頭から掲げた目標の多くが実現できずに終わり、
結果として、より良い社会づくりを進めるはずが、
状況はさらに悪くなってしまっているという現実。
地方自治体における官民協働の退化・劣化、
非営利組織のガバナンスの不全・不備、
地域運営組織を担う人材を継続的に育てるしくみの未整備。
どれも、何十年も前から気付いて働きかけていたにもかかわらず、
予防できなかったことには、力不足を痛感するとともに、
これまで通りでは通用しない時代である以上、これまでに
確立した技法だけでなく、新たな手法や可能性の模索に、
これまで以上に挑まねばならないことを、突き付けられました。

成長や成果を諦めないためには、自分の力を信じるとともに、
その限界を認め、そのチャレンジをともにしてくださる方に
お力添えを仰ぐしかありません。
東京でさえ、超高速な高齢化が始まってしまう2020年代まで、
あとほんのわずか。
みなさまには、これまで以上にお力添えをお願いすることに
なりますが、どうぞどうぞ、よろしくお願いいたします。
状況がどんなにひどくなっても、自分の力は小さくても、
それを乗り越えるのは、個人の意思と、認め合う心がつくる
信頼という関係から。人「交」密度、高めていきましょう。
真摯で謙虚な経営者を育てる社会に! [2017年12月31日(Sun)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年も大変お世話になりました。心よりお礼申し上げます。

このブログで年始のご挨拶を申し上げるようになって、もう10年以上に
なるのではないかと思い、履歴を調べてみたところ、
2010年は「2020年までの10年間を、どう生きるか?
2011年は「逃げるな、日本人!
2012年は、東日本震災の犠牲者と、相次いで旅立たれた先輩への約束を、
2013年は「『しくみをつくる人と組織』を育てる
2014年は「21年目の再スタートに備えて
2015年は「課題解決先駆国であるための姿勢と力を
2016年は、IIHOEの3つの事業の柱における転換点について、
2017年は「greatでもfirstでもなく、betterをめざして進化する社会を
といったことを、それぞれ申し上げておりました。

その時々に大切なことを、先を見通す俯瞰と、足元・目前の優先順位とを
ともに踏まえながら申し上げ、その実現に微力を尽くしてきたつもりであり、
お手伝いさせていただいた個々の現場では、着実に、歩みを進めていただいて
いるのですが、しかし、本当に悔しいことに、世の中全体ではよい方向に
進んでいるという実感は得られず、また、いくつか(いくつも!)の現場では
甚だ残念な事態に至ってしまってさえいます。

その象徴例は、製造業大手による品質偽装でした。
製造業以外の生産性が他国より著しく低い日本の経済・社会において、
製造業の品質の高さこそが、成長どころか、国力維持の基礎中の基礎で
あるにもかかわらず、それを、従業員にはまるで還元されないコスト削減を
優先するために偽装してしまう現場と、現場感覚を喪失してしまった、
あるいは、そもそも現場感覚のない人々によって管理される中央。
形式的な謝罪、「立て直しこそが責任」と居直る経営者、踏み込みが浅く
具体的な改善提案に乏しい検証は、現場の事務手続きを増やすだけ。

これは、決して製造業大手だけの問題ではなく、不祥事が相次ぐ行政や
教育はもとより、急増したNPOや、今後も増え続ける小規模多機能
自治の担い手となる地域運営組織においても、状況は変わりません。

詳細は年次報告書の公開時に改めて申し上げますが、IIHOEにとっても、
昨年は、いただくご依頼の傾向という点からは、静かに、大きな転換点でした。
率先垂範を自らの責任と心がけ、なすべきことをなし、申し上げるべき
ことを申し上げてきたにもかかわらず、社会の変化に直面して、進化が
求められる、地域や行政、NPOやその支援者、企業や、その顧客である
市民から、しっかりご依頼をいただけるよう、これまで以上に働きかけを
強めなければならないと痛感しています。

上述のとおり、企業ではもちろん、行政でも、地域でも、NPOでも、
今ほど、真摯で謙虚な経営者を育てる必要性が高まっているときはありません。
ようやく日本でも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、
主要国に遅れてつつも、環境・社会・ガバナンス(ESG)評価に基づく
投資を、昨年春以降本格化させたことを契機に、やっとガバナンスに
おける多様性をはじめとする持続可能性を高める経営基盤づくりの
重要性への認識が、広がりつつあります。
業務ができるだけでなく、小さな現場を切り盛りできるだけでなく、
俯瞰的に先を見通しながら、しくみづくりという大きな現場の組み立てや
運営も、また、持続可能性を大きく左右する人材の育成もできる、
真摯で謙虚な経営者は、企業でも、行政でも、地域でも、NPOでも不可欠です。

IIHOEでは2000年(もう18年前!)に、当時の全米NPO
理事センター(NCNB)が刊行した「NPO理事会の自己評価」と
「NPO理事による事務局長評価」の日本語版を発行するなど、
事業だけでなく組織の評価を、特にマネジメントとガバナンスの
自律的な評価から改善を促すことを主眼として進めてきました。
できる限り早い時期に、勢いは衰えたとはいえ、わずか20年足らずの
間に各地に急増した、特定非営利活動法人や社団・財団法人、さらに、
地域貢献が法令により求められるようになった社会福祉法人の役員や
管理職層において、真摯で謙虚な経営者を育てる機会を設けるとともに、
手引きとなる資料を改めて刊行いたします。

また、小規模多機能自治を進める地域組織においても、設立段階だけ
ではなく、地域の持続可能性を守り続けるための担い手となる、真摯で
謙虚な経営者を育てられるよう「地域経営研究所」の設立を働きかけ、
判断の根拠となるデータづくりや、互いから学び合える環境づくりなど
お手伝いさせていただく所存です。

戦争でも天災でもないのに、人口減少と少子化と高齢化が同時に進行
する日本が、持続可能性を確立するためには、時間という貴重な資源を
最適に活用できる経営者の育成を、急ぐしかありません。

みなさまの組織や地域におかれても、継続ではなく、成長のために、
天動説ではなく、地動説で、真摯で謙虚な経営者を、早く、
一人でも多く。もちろんご自身も率先して、大きな声で #me too と。
greatでもfirstでもなく、betterをめざして進化する社会を [2017年01月01日(Sun)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年も大変お世話になりました。心よりお礼申し上げます。

個人的にも、組織としても、また、仲間とともに進めたことも、
とても充実していたにもかかわらず、国内外の、この閉塞感。
グローバリズムの綻びから、排他的な不寛容主義へ。
それも多数の選択の結果ですが、まったくワクワクしない。
より良い社会づくりをめざしているのに、またも力不足を
思い知らされた1年でした。

購買意欲の旺盛な途上国を生産の担い手とする近年の
グローバリズムは、グローバル・ブランドの経営者や株主を
豊かにしたかもしれませんが、結果として、その綻びは、
しくみやモデルとして持続可能性が低かったことを意味します。
先進国の中間層、ストレートに言えば、近年のグローバリズムで
恩恵を受けなかったどころか、むしろ、相対的には悪化し、
不安定性も高まった層が怒っているのは、賃金でも、社会保障でも
改善・停滞より、脅かされていると感じているからでしょう。

その帰結が「great」や「first」を標榜する勢力の台頭です。
組織も社会も、ダメなときは、きわめて内向き。
本来なら、社会も世界も変わり続ける中で、
進化し続けることが求められているのに、
何も失いたくない、全く変わりたくないけど、よくありたい。
努力はしないけど、プライドは高い。
そんなときに「あなたも、私たちも、悪くない。悪いのはあいつだ」
と、大きな声で唱える輩は、魅力的な存在に見えるでしょう。

さらに、兵法の古典に「ダメにするなら、与え続けよ」という
趣旨の言葉があるようですが、世界に先駆けてそれを実践し続けた
日本の地域社会に、若者を雇用する力がないのは、そのためです。

今、私たち、とりわけ、国土や人口の半数以上を占める「東京以外」に
必要なのは、未来世代からの借金を原資とする補助でも、
多様な価値や文化に対する不寛容、つまり他尊・共尊しない自尊でもなく、
変わり続ける社会や市場の中で、多様な価値や文化をも、
市場や商機として稼ぎ続ける意欲と力です。

それは、世界も同じ。
greatでもfirstでもなく、互いにbetterをめざして進化する社会を
実現するために最も重要なのは、その最前線である地域の人材育成です。

農業でも工業でもサービス業でも、事業なら、国内外の市場で
変化を商機にし、多様な人材の力が生かせる経営者を、
政治なら、変化を見通して厳しい選択肢も提案できる候補者を、
行政なら、職員数が減り続けても公共サービスの質と量が
劣化しないよう、管理も育成も経営もできる職員を、
NPOなら、小さな現場に溺れることなく、しくみという大きな現場も
つくり、まかなっていける経営者を、育てるしかありません。

しかし、最も重要なのは、ただ受動的に選択するだけの消費者ではなく、
より良い社会づくりを自ら担う市民を育てること。
どんなに企業や行政やNPOがイノベーティブであろうとしても、
市場が、購買者が、保守的であれば、社会がより良くなるはずはありません。

「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を
設立目的とするIIHOEは、
1990年代には、NPOなど市民活動・市民事業の担い手に経営を、
2000年代には、企業の経営者に社会責任を、行政に協働を、
教え、促し、支え、ときにはその一員として責任を担いながら、
それなりの積み重なりと進化を実現してきました。

そして2014年に、設立20周年を迎えた時、2020年代に向けた
自らの役割を
「日本をチャレンジの森にする」
と定義しました。

そのために不可欠なのは、住民が、消費者から市民へと進化すること。
本当にありがたいことに、「地域を自ら経営する」という、
本来の自治の意義や必要性を理解し、進み始めていらっしゃる方々から、
ご依頼いただく頻度がますます高まっています。
課題最先進国だからこそ、チャレンジ最先進国に。
今年も、自らそうありたいと真摯かつ謙虚に希求する人々を支えると
ともに、そうありたいと真摯かつ謙虚に希求する人々を増やせるよう、
微力を尽くし続けます。
みなさまのご協力・お力添えを、引き続きどうぞよろしくお願いします。

(甚だ遅ればせながら)謹んで新年のお慶びを申し上げます [2016年01月05日(Tue)]
誠に遅ればせながら、謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年も、本当にお世話になりましたことを、深くお礼申し上げます。
また、関東・東北水害をはじめ、各地で被災されたみなさまには、
重ねて、心よりお見舞い申し上げます。

「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を
組織目的とするIIHOEは、
「社会事業家のマネジメント支援」、
「ビジネスと市民生活を通じた環境問題・社会的課題の解決」、
そして、「2020年の地球への行動計画推進」を事業の柱とし、
「日本をチャレンジの森にする」ことを中期的な価値目標に掲げています。
昨夏には、創設以来21年間に、全国各地で学ばせていただいたことを、
網羅的かつ体系的にお届けする「ソシオ・マネジメント・スクール」を開校し、
計6テーマ中、3つのテーマで先行して開講したところ、早速、熱心に
受講してくださった方々が、最初の修了生として巣立たれました。
今月末からは、残り3つのテーマが開講します。
そして8月には、全6テーマの今年度のクラスも開講します。
どちらも、どうぞお見逃しなく。

さらに昨年から今年にかけては、私たちの3つの事業の柱についても、
大きな転換点を迎えています。

まず、2020年の地球への行動計画の推進については、
世界の課題先進国である日本の地域社会/コミュニティが、
課題解決の先駆者となれるよう促し、多様で実践的な解の束を
世界に示すことで実現します。
高齢化は、65歳以上が増えた「第1幕」から、
85歳以上が急増する「第2幕」へ。
私が雲南市で学ばせていただいた「小規模多機能自治」を推進しようと、
昨年2月に発足した「小規模多機能自治推進ネットワーク会議」に、
設立時までに全国140以上、昨年末までに180以上の自治体行政が
参加してくださったことは、次の一歩を進める上で、とても重要な
基盤となりました。
地域を守り続けるための進化を促すために、長らくお待たせした
「ソシオ・マネジメント」第3号は、「小規模多機能自治
- 総働で人「交」密度を高める」と題して、その必要性や進め方の
ポイントを、データと実例を豊富に織り込んで、今月中に刊行します。

ビジネスと市民生活を通じた環境問題・社会的課題の解決については、
日本では若者の関心低下が続く環境問題ではあるものの、やっとパリ協定が
合意され、政府も「2030年までに13年比でマイナス26%」という
目標を掲げました。その実現は、工場でも行政でもなく、私たちの家庭や
オフィス、そして、移動や輸送の環境効率を2倍近くにまで高めることに
よってしか実現できません。
また、政府税調が11月に発表した「経済社会の構造変化を踏まえた税制の
あり方に関する論点整理
」を読めば、改めて、多数派である世代、つまり
現在の高齢者を優遇、正確には、先送りした負担を若者に負わせることを
前提に、誘導する施策を積み重ねてきた結果が、若者を非正規雇用へ追いやり、
結果として若者だけが所得が20年・30年前より下がり、あろうことか、
さらに先の世代である子どもの貧困を拡大しているという現実。
「東京一極集中の解消」と言われますが、しかし「論点整理」でも明らかな
通り、各産業の生産性を見れば、製造業も農林水産業も改善しているのに、
東京の主力産業である第三次産業は生産性を下げ続けています。
つまり東京は、世界で戦える力も、地域を支える人材も、育てていない。
世界で戦える企業を増やすために、社会責任への取り組みの進化と深化を、
地域を支える人材を増やすために、地域で「あと100万円」稼げる力の
育成を、それぞれ進めます。
このため、「ソシオ・マネジメント」第4号は「ベスト・プラクティスから
学ぶCSRマネジメント」をテーマに、準備を進めています。

そして、IIHOEの設立の原点ともいえる社会事業家のマネジメント支援に
ついては、「社会起業家支援」を標榜するプログラムが増えています。
しかし、それが単に先輩の話を聞かせるだけだったり、支援名目で資金を
提供することを優先するあまり、当事者の理解や社会の見通しなど、起業家
(の卵)が直面すべき問いに向き合わないままで規模の拡大を模索させたり、
挙句の果てには、拍手と審査しかしない輩の前でプレゼンテーションするために、
徹夜までさせているものまで現れてしまいました。
社会起業家は、メディアに紹介されたり、聴衆に拍手されたり、
いわんや、今後は通用しないような社会性や持続可能性の低い「過去の大物」
に審査されるためではなく、課題に悩み、危機にさえ瀕している人々などに、
1歩先の視野を持って、半歩先のプログラムを提供して、より良い社会づくりを
実現することにしか、存在価値はありません。
このことをずっと伝えてきたつもりが、その道を外す人たちが現れたことに、
自分の力不足を思い知らされました。
そこで今年からは、社会起業家(の卵)を支援するプログラムについては、
私どもが主催・共催し、企画と運営に責任を持てるもの以外には、一切、
お手伝いをしないこととしました。
各地で社会起業家(の卵)を支援するプログラムを主催されるみなさまには、
ご迷惑をおかけするかもしれませんが、しかし、この機会に、どんな社会を
つくるために、どんな課題にどう挑む起業家を、どう育てるのかについて、
しっかり考え直す機会としていただけることを祈念します。
IIHOEが主催・共催する社会起業家の支援プログラムは、あくまで
基本に忠実に。そのテキストとすべく、「ソシオ・マネジメント」第5号は
「社会起業家の事業デザイン - 調査とポジショニングから社会を動かす」を
テーマに、また、綻びが目立ってきたガバナンスの再建を促すために、
「非営利・公益の理事会 -判断・支援・働きかけのガバナンス」(仮題) を
第6号のテーマとして、準備を進めます。

さらに昨年は、日本と世界各国において、民主主義の脆さを思い知らされました。
多数の専横を許さないために、先人が積み重ねてきた知恵としくみが、
壊されたのを嘆いていても仕方ありません。
市場も民主主義も、大切なのは、良い選択肢をつくり続けることと、
その担い手を育て続けること。懲りずへこたれず、つくり、育て続けます。

最後にもうひとつ、お礼を。
関東・東北水害で被災された方々への支援活動と、
東日本震災で被災した子どもの放課後支援
お寄せいただいたご寄附が、それぞれ259,166円と316,392円に達し、
私からのマッチングを合わせて計1,260,312円をお届けしました。
みなさまのご協力に、重ねて、心から深くお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。また、引き続きよろしくお願いします!

長文にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
今年は、これまでよりさらに無私・無心で進めてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
課題解決先駆国であるための姿勢と力を [2015年01月01日(Thu)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年も、みなさまに本当にお世話になり、心からお礼申し上げます。

1994年夏に、私の個人的な活動として始まった
IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]は、
おかげさまで、昨年8月に創立満20年を迎えることができました。

「地球上のすべての生命にとって、調和的で民主的な発展のために」を
組織目的とし、地球規模の環境問題への取り組みは、世界規模の
日本企業に対する働きかけから、全世界的な民主主義への取り組みは、
まず足元の日本の草の根の市民団体と自治体に対する働きかけから、
と考え進んできたこの20年間をふりかえると、まだまだできていない
ことの多さ、自分の力・技能・知識の足りなさに、愕然とします。

特に、前回から5年ぶりに実施した「第5回 都道府県・主要市における
NPOとの協働環境に関する調査」(通称:協働環境調査)
は、
全国の255自治体と36 の市民活動支援機関のみなさまにご協力
いただいて昨年11月に刊行したものの、発行後に相次いでミスが
発見され、現在もまだ、確認・修正作業を続けています。
ご協力いただいたみなさまには、心からのお礼とお詫びを、
重ねて申し上げます。
再修正版は、本年1月末までに刊行し、2月初旬に順次お届けする
予定です。どうかご了承ください。


「あなたがマネジメントするのは、組織だけではない。
 社会もしくみも、つくり、守り、営むのは、私たちだ。」

上記は、12年6月に創刊準備号を刊行しながら、昨年ようやく
創刊号を刊行できた「ソシオ・マネジメント」のショルダー
フレーズですが、自分自身のこの20年間の体感と課題認識を、
そのまま言葉にしたものです。
(おかげさまで、創刊号もご好評をいただいており、
 創刊準備号は残り数冊です!)

昨年正月のごあいさつでも申し述べたとおり、今後、日本全国のみならず、
世界各国もが直面する少子多老化。
そのフロンティアである日本海側や中山間地を中心に進められてきた、
真摯で謙虚で丁寧な、人材と組織づくりを基軸とした地域づくりの
現場を拝見して、「小規模多機能自治」と名付けたのは2006年。
カリスマ的なリーダーに頼るのではなく、誰もが自分にできること・
自分たちでできることを増やし続けるという、自治の原理であり
理想でもある状況を、自分たちの地域にもつくりだそう、増やそう
という方々が、少しずつではありますが、増えつつあることは、
本当にうれしく、心強く感じます。
今年2月には、この志を共有する自治体の方々を中心に、
「小規模多機能自治推進ネットワーク会議」の設立総会が、
開催されることになりました。この機運やネットワークを、
しくみづくりへとしっかり結びつけるためにも、微力を尽くします。

自分自身の在り方や仕事の進め方を見つめるとき、加藤哲夫さん
亡くなる2か月前に、つなプロの幹事会でおっしゃってくださった
下記の言葉を、読み返すようにしています。

「緊急時には傷口に絆創膏を貼るような仕事が必要。その中でつなプロは、
 一見見えないニーズを発掘し、マイノリティのニーズに応えようと発足し、
 活動していただいた。
 残念ながら今までの市民活動・市民運動は、社会がつくりだした矛盾の
 後始末だった。しかし我々NPOの本来の役割はしくみをつくり、
 提案をし、そして、新しい社会構造と参加のしくみを世の中に
 位置付けていくことだ。
 見えるニーズに即応することはわかりやすく、この3か月、人はたくさん
 動いたと思うが、ここから先は、ニーズが見えない状態に入ってしまう。
 見えないものを可視化したり、見えないものの中から何が重要かを
 きちんと取り出して、対策を立てるためにも、できるようになるためにも、
 つなプロの調査力とそのノウハウを地域に移行していってもらいたい。」


20年前にこの仕事を始めた当時、すでに1億円を超える規模の
活動や事業を行っていらっしゃった大先輩たちからも、

「NPOや市民事業は1歩先の視野と半歩先のプログラムを」

と教わりました。だからこそ、私たちNPOや社会事業の支援者には、
2歩先の視野と、1.5歩先のプログラムが求められます。

これまで学ばせていただいたことをもとに、さまざまな団体や地域、そして、
企業や行政機関にも、これまで以上に深く踏み込んで、持続可能性を高めて
いただくためのお手伝いをさせていただきます。
本年も、そして、これからも末永く、どうぞよろしくお願い申し上げます。
21年目の再スタートに備えて [2014年01月04日(Sat)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。

昨年も、みなさまに本当にお世話になり、心からお礼申し上げます。

昨日まで、昨年中に、それも秋には終わっていなければならなかった業務を
どうにか完了させるべく取り組んでいたため、お礼やご挨拶が遅くなって
しまいましたことを、新年早々ですが、お詫び申し上げます。
(お待たせしてご迷惑をおかけしていたみなさま、本当に申し訳ありませんでした!)

1994年夏に、私の個人的な活動として始まった
IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]は、8月に創立から
満20年を経過します。

「地球上のすべての生命にとって、調和的で民主的な発展のために」を組織目的とし、
地球規模の環境問題への取り組みは、世界規模の日本企業に対する働きかけから、
全世界的な民主主義への取り組みは、まず足元の日本の草の根の市民団体と
自治体に対する働きかけから、と考えて進んできたこの20年弱をふりかえると、
まだまだできていないことの多さ、自分の力・技能・知識の足りなさに、愕然とします。

ご存知の方も多いように、IIHOE創立の日は、私の30歳の誕生日でした。
設立から10年を経て、40歳になったころから、「50歳になったら、
設立20周年で、IIHOEは解散。僕はほかの仕事をします」と申し上げてきました。
「2020年までに、日本の地域のくらしには、医療と福祉が統合的に営まれている
状況の実現が不可欠」と考え、その現場に立てるよう(とはいっても、運動神経が
本当に弱いので、医師にも介護士にもなれませんから。。)、医療と福祉の事務を
担えるよう勉強するつもりで、7年ぐらい前までは、本気でその準備も始めていました。

しかし、ちょうどそのころに本格的にお手伝いさせていただいた取り組みから、
もうひとつ、深刻な問題に気づきました。
どんなに医療と福祉(サービスだけ)の統合的な提供が進んでも、安全や安心が
向上するわけではない。くらしの基礎には、食品や日用品といったものの売り買い、
つまり、経済がなければ、コミュニティが存続しえないという、至極当たり前のこと。

まちやくらしを支え、地域の「元気」や安全・安心の源になっているのは、
人の数や、若者の比率ではなく、人「交」密度であることを、島根や山形や秋田を
はじめとする日本海側の各地でのお手伝いを通じて、痛感しています。

今後数十年の間に、世界共通の課題となる少子多老化に、世界で最も早く直面し、
真摯に取り組み続けている山陰や中国山地は、昭和30年代からほぼ一貫して
人口が減り続け、ゆっくり進む少子多老も合わせて、地域の与件と受け止めて、
そこにいる人たちが、自らとお互いの力を合わせて、くらしやコミュニティを
守り続けてこられました。

まさに、日本と世界のフロンティアといえる日本海側に、東日本震災の被災地も、
首都圏も、アジアの大都市もが学ぶべき、知恵というより、姿勢と営みがあります。

日本と世界とIIHOEにとって、これまでの20年は、戦後につくりあげられた
構造や、幻想・残像が壊れていく中で、新しい構造や担い手を育てるべき時期であり、
それなりに、進んできたと評価してもいいでしょう。
「NPO」というセクターにではなく、「社会起業家」というサービスや機能の担い手に
注目が集まるようになったことは、その証左と言えます。

これからの20年は、企業や地域、国家にとって、皮相的・短期的・相対的な
競争だけでなく、持続可能性そのものが問われる20年。
人は、稼いで選んで買うだけの「消費者」ではなく、家庭や地域や社会を担う「市民」に
どれだけ育つことができるか。
大きく動く流れの中で、目先に対応するのでなく、しかし諦めて動かないのでもなく、
実り続ける豊かさを支える土づくりと、それを担う人づくりを、
これまで以上に踏み込んで、お手伝いしてまいります。

ということで、これまで学ばせていただいたことをもとに、さまざまな団体や地域、
そして、企業や行政機関にも、これまで以上に深く踏み込んで、持続可能性を
高めていただくためのお手伝いをさせていただきます。

本年も、そして、これからも末永く、どうぞよろしくお願い申し上げます。


「しくみをつくる人と組織」を育てる [2013年01月01日(Tue)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。

昨年の年頭、遅ればせながらのごあいさつで、
「『日本の企業・行政・団体のチャレンジを促し、
課題解決や理想実現の先駆者を増やす』ことを、
人類史上最大規模の自然災害によって犠牲になられた方々と、
私たちに道を示してくださった先輩たちに、改めて約束します。」
と申し上げました。

微力は尽くし続けていますが、まだまだ、まだまだ。
至らなさ・力不足を痛感するばかりの毎日ですが、
それを突きつけられた場面の一つが、衆議院議員選挙でした。

永田町に関わることになった1991年から、もう20年以上経って
いるため、どの党が勝ったとか負けたとか、どの候補者が通ったとか
落ちたとかいうことには、大きな関心や感慨はありません。
驚いたのは、投票率が6割を切った、それも、首長選や地方議会
議員選では投票率が高い地域で、前回に比べて15%も落ちている
ところがある、ということでした。

福祉も、教育も、交通も、食の安全保障も、持続可能な発展も、
くらしの中の身近な公共サービスから、基盤整備、外交や経済まで、
政治を抜きにしては、私たちのくらしは成り立たず、より良くなる
こともありません。

今日の政治は、「政策」と「選挙」でできています。
政策とは、案をつくり、実践するしくみと力を育て、財源をつくること、
選挙とは、候補者と政党を育てることから、始まります。

今回の結果は、小選挙区制の持つ特徴が強く発揮されたという意味で、
05年の小泉・郵政民営化選挙、09年の鳩山・政権交代選挙によって
「未熟な候補者と未熟な政党・政権運営」が2度も繰り返された以上、
3度目も同じ振れ・転換(スウィング)が起きることは、想定して
おかねばならないことでした。

しかし、私たちは、その間に東日本大震災と、東電の起こした事故を
経験しています。その間にも、高速な多老化と少子化は進み、
新興国をはじめとする途上国の成長は、リーマンショック直前の水準を
上回るまでに達しています。
日本企業と、そこで働く人々、そしてもちろん、行政で働く人々も、
より早く決め、より早く動くことで国際競争力を高めなければならないのに、
まだまだ多くの人や会社や役所は、昭和や20世紀のままのテンポで、
耳触りのいい「緩和措置」という名のモラトリアムと、
「事業・予算」という名の借金をあてにし続けています。

私たちには、失望や絶望をしている暇もゆとりもありません。

次こそはよい選挙ができるように、候補者と政党を育てるとともに、
身近な地域の「自治」、県や国の単位の「共治」、そして文化や価値が
異なる人々が国を超えて世界を営む「総治」が進むように、
案をつくり、実践するしくみと力を育て、財源をつくることができる
人材と組織を、今まで以上に加速的に育てられるよう、自分自身と、
組織(IIHOE)の仕事の進め方を、進化させてまいります。

世界で最も少子多老化が進みながら、負担を伴う判断と実践を先送りして、
課題を深刻化させてきた、人々と地域と企業と行政機能の集合体である日本。
課題解決先駆国になるために、壁はありますが、多くの人々と共に進めば、
大きな障害ではありません。

どうか本年も、お力をお貸しください。
よろしくお願い申し上げます。
寒中お見舞い申し上げます。 [2012年01月05日(Thu)]
年が明けてから、もう数日が経とうという今ごろになっての
ごあいさつを、新年早々ですが、深くお詫び申し上げます。

何人もの方が、同じことをおっしゃっていらっしゃいますが、
今年は、新年を祝う、という気分にどうしてもなれません。

言うまでもなく、福島第一原発事故のため、住みくらし働いていた
場所を追われて、避難先で冬を越そうとしていらっしゃる方々を思うと、
そして、山本いま子さん、森綾子さん、加藤哲夫さんという、
昨年相次いで先立たれた大先輩を思い起こすと、
もっと良い年に、というのは、叶うのを待つ希望ではなく、
意志と約束に基づく行動によって自ら叶える責任だと感じます。

もっと良い年に、必ず、します。
そのために、全力を尽くします。

この約束は、被災地・被災者の方々にだけするのではありません。
10年後・20年後の社会に生きるすべての人々に、
今を生きる者が果たすべき責任として、お約束します。

東日本大震災で、最も激しい被害に遭われた岩手県の大槌町や
陸前高田市、宮城県の女川町は、すでに数年前から、高齢者率が
3割を超えていたところに津波が襲いかかり、実に人口の1割近くが
一夜にして死亡または行方不明となりました。
高齢者率の高さと、失われた人の数の多さは、地域の復興や再生の
難しさを意味します。

しかしこれは、少し長い目で見ると、決して特別なことではありません。
社会保障・人口問題研究所が2008年に発表した予測によると、
2005年から2015年までの間に人口が1割以上減少するのは、
全国1800弱の市町村のうち600以上、2020年までの15年間なら
1000以上にも達します。そしてもちろん、その市町村のほとんどは、
その時点での高齢者率が3割を超えています。

つまり、2005年からの10年以内で日本の市町村の3分の1以上が、
同じく15年以内に6割近くが、大槌・陸前高田・女川と同じ状況に、
ただ、3653倍から5478倍のゆっくりしたスピードで近付いていくのです。

行政や企業、そして、歴史を持つ団体の方々とお話ししていて感じるのは、
日本人は、つくづく、変化の兆しを感じ取ることが不得意で、その結果、
次にすべきことの決断と実践が遅れてしまう、ということです。

私たちNPOや社会事業家は、社会の1歩先を見据え、半歩先の
プログラムを通じて社会をより良いものへと導こうと、微力を尽くしています。
そんなNPOや社会事業家の力や感性、可能性を生かせる社会に
なれるかどうかは、人類史上初めて、高齢者率が25%近くにまで
達しつつあるのに、目先の刺激策と称するものをまだ続け、これまで
悪化させた財政の健全化さえ決断・実践できない「課題先進国」日本を、
「課題解決先駆国」にできるか否かと、同義です。

だからこそ、NPOや社会事業家が、地域の団体の方々や企業・行政と
連携・協働して、被災地・被災者の支援に取り組むことできるかどうかが、
直近の日本のみならず、すぐに高齢化に直面するアジア諸国にとっても、
重要なチャレンジなのです。

昨年の年頭、私が代表を務めるIIHOEは
「日本をチャレンジの森にする」
を、今後数年間のモットーにすると申し上げました。

今年も、その方向に違いはありません。
しかし、さらに踏み込んで、
「日本の企業・行政・団体のチャレンジを促し、
課題解決や理想実現の先駆者を増やす」ことを、
人類史上最大規模の自然災害によって犠牲になられた方々と、
私たちに道を示してくださった先輩たちに、改めて約束します。

本年も、どうぞよろしくお願いします。
逃げるな、日本人! [2011年01月01日(Sat)]
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年も、みなさまにはとってもお世話になりました。
これから年賀状を作るのですが(遅い!)、限られたスペースに
織り込むべきことを整理するために、まず、ブログに書いてみます。

2010年は、社会的にも、組織的・個人的にも、大きな変化の続いた
1年でした。
必ず来ると予測されていて、それが実現したものではあれ、
ドイツを抜いて以来ずっと世界第2位だった国内総生産(GDP)が、
とうとう中国に追い抜かれ、65歳以上人口(高齢者)率が30%に達した
(小数点以下の四捨五入ベースでですが)ことは、後世にふりかえったとき、
大きな転換点だったと言われるでしょう。

しかし世界全体でみれば、リーマン・ショックなどなかったかのような勢いで
成長は続き、むしろ加速しています。
そんな世界の市場経済の中で、老いながら閉ざし、しかも決めず動かない
日本が、これまでと同じ社会経済システム(超低負担で中福祉、「責任」の忌避、
内需より外需、決めるより話し合う、お任せ&先送り民主主義、・・・)を
続けるわけにはいかないことは、自明のはずです。

権利も義務も責任も自らのものとして、しくみをつくり、担い、守る「市民」
ではなく、義務や責任を忌避して権利意識だけは強い「単なる消費者」を
育ててきてしまったツケが、先の参院選の結果でした。
抜本的な改革を期待した国民に応えられない政治家の責任も大きいですが、
負担や責任を耳にしただけで拒絶する有権者、つまり「逃げる日本人」こそが、
真の原因です。

IIHOE(正式名称は「人と組織と地球のための国際研究所」)の組織目的は、
「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」です。

国際研究所と名乗りながら、この数年間、活動のほとんどを日本国内で
行ってきた最大の理由は、可能性や責任がありながら、自らと世界を
変える営みを加速できずにいる日本こそ、世界で最も大きな課題を
抱えた国であり、その原因が、そこにくらす人々が、民主主義を理解も実践も
していないことにあり、その解決は、地域にくらす人々や、企業や役所で働く
人々に、現状と今後の見通しを明確に伝えた上で、「どうにかなる・どうにか
してもらえる」と逃げる・甘えるのではなく、自ら動き、支え、次に備えて
働きかける「市民」へと転換するよう促すしかないから、です。

だからこそ今年も、市民団体にはマネジメントを、企業には社会責任を、
行政には協働を、今まで以上に深く踏み込んで働きかけます。

組織的・個人的には、浦安から東京都中央区の新川(最寄駅は茅場町)に
引っ越しました。
築10年弱の一戸建てで、予算の制約から、内装のリフォームは全くでき
なかったのですが、ガス燃料電池(エネファーム)と断熱用の内窓だけは
どうにか手当てし、省エネ型の生活ができるように心がけています。
(でもやっぱり、この冬は寒い!)
何よりありがたいのは、大手町から銀座ぐらいまでは、十分に歩いて
行ける距離にあること。おかげさまで、電車に乗る時間も、交通費も減り、
まちなかをいろんなルートで歩く楽しみも増えました。

なのに、年末に「境界性糖尿病」と診断されました。。。
身体を動かしてるつもりだったのですが、まだまだだったんですねぇ。
動く量を増やすとともに、飲む・食べる量を減らすようにします。
各地で(特に夜の部で)お世話になる方々、どうかお含みおきください。。。

まだまだお話したいことはあるのですが、また随時、書かせていただきます。
では本年も、日本を担い、支え、守るためにちゃんとがんばる「市民」の
ために、微力を尽くします。みなさまも、どうかお力をお貸しください。
どうぞよろしくお願いいたします!