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川北秀人on人・組織・地球

「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に、市民団体(NPO)・社会事業家(ソーシャル・アントレプレナー)や社会責任(CSR)志向の企業のマネジメントの支援や、市民・企業・行政の協働の支援などに奔走する、IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者の毎日の、ほんの一部をご紹介します。


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日本のCSRは、欧米に比べてどう、どれだけ遅れているか? [2016年05月11日(Wed)]
毎年、本当にたくさんのご質問をいただきます。
それぞれにお答えすることが、僕自身にとって、勉強になっています。
ありがとうございます。
さて、本日は、海外の大学院生の方からのご質問です。

【以下、いただいたご質問の引用】
Q:日本のCSRの普及は西洋に比べどのくらいの遅れがあると思われますか?
 日本の現状はただの「遅れ」なのでしょうか、
 それとも全く別物として存在するのでしょうか?

もちろん、CSRの実行に正解はなく、世界各地歴史的背景からも様々な取り組み、
考え方があって当然ですが経済先進国である日本は西洋各先進国(アメリカ、カナダ、
イギリス、フランス等)に比べ、CSRに対する社会全体の認識、取り組み、特に
経営者の考え方には20年の遅れがあるのではないかと考えております。
【以下略】

みなさん、どう思われますか?
個人や顧客の立場、企業で働く・企業と仕事する立場、企業を経営する立場、
それぞれでお考えはあろうことかと思いますが、日本を代表する企業の
環境報告書やCSRレポートに第三者意見を書き続けてきた私の立場からは、
以下のように感じます。

まず、遅れているかというご質問については、Yes。
別物になってしまっているとすれば、それは経営者と社会の誤解に他なりません。

では、なぜ、どのように遅れているか。
まず、リンク先の「読者調査レポートはこちらからダウンロード」というボタンから
2014年秋実施の「環境・社会報告書」読者アンケートの報告書をご参照
いただきたいのですが、その13ページに挙げた、イギリス、ドイツと
日本との顕著な差は、「企業が取り組むべきSR課題」は
人権か、それとも労働か、という違いです。
P6をご覧いただくとおわかりのとおり、日本の若い世代は、雇用という
基本的な権利や状況が脅かされていると感じているのに対し、
欧州では、児童労働や強制労働をはじめとする人権が問題と感じている。
この差を生んでしまっている背景には、日本の経営者(正確には行政も)が、
自社内の従業員を「サービス残業」をはじめとする強制労働をさせている
だけでなく、取引先に対しても「お客様は神様」という圧力をかけ続けて
いることの証左と言わざるを得ません。

このように、人権が経営の最重要事項と位置付けられていない、という点で、
日本企業は、というより、日本の経営者たちは、欧州より遅れています。
「違い」であると私が申し上げない最大の理由は、国内でしか事業を
行わないならともかく、欧州を市場や取引先にする可能性があるなら、
人権への取り組みは、必ず求められる。しかもそれは、文化としてではなく、
英国の現代奴隷法アメリカSECの紛争鉱物を含む)
法制の形で要件とされます。そういった要件に先取りして備えられるか、
それとも、制度ができてから慌てて対応しようとして、それも、
取引を失いたくないがゆえに無理して「できてます」なんて
言っちゃったりして、結果として大恥をかいて負担を求められるのか。
これは、違いや参入障壁という問題ではなく、備えの早さ・遅れの問題です。

この遅れを生んでしまっている最大の理由は、日本企業において、
10年以上先にトップ・マネジメント層に就くことになる層の人たちが、
社内と目の前の顧客と直接の取引先のことは知っていても、
社会という、将来の市場や取引先や、しくみの要件となることを知らない、
学ぶ機会も、学んだことを試行する機会も、与えられていないことにあります。
(裏返せば、欧米のグローバル企業は、そういう機会を設けています。)

もちろん、日本企業がすべて、どうにもならないぐらい遅れているわけでは
ありません。しっかり取り組みを積み重ねていらっしゃる企業もありますし、
微力ながら、そのお手伝いをさせていただいております。

まさに今、「ソシオ・マネジメント」第4号として
「自社と社会の持続可能性を高める経営者のための
ベスト・プラクティスから学ぶCSRマネジメント」(仮題)を
執筆中です。。。今しばらく、お時間ください。
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