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川北秀人on人・組織・地球

「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に、市民団体(NPO)・社会事業家(ソーシャル・アントレプレナー)や社会責任(CSR)志向の企業のマネジメントの支援や、市民・企業・行政の協働の支援などに奔走する、IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者の毎日の、ほんの一部をご紹介します。


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さいたま市議会による条例改正で問われたこと [2015年10月20日(Tue)]
さいたま市議会において
「さいたま市市民活動サポートセンター条例の一部を改正する条例」
151015_saitama_cityhall.pdf
が提案され、可決された問題については、すでに多くの方がコメントや
声明を発表されている。
こういう案件では「真っ先に抗議する!」と思われている私が、
コメントも声明も出せなかったのは、慌ただしく業務に追われて
いたからでもあるが、それ以前にこの問題は、
「憲法89条とどう向き合うか」、そして「自治とは何か」を
問いかけているがゆえに、意見を述べるのが難しいと感じたからだ。

日本国憲法第89条には、
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益
若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは
博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
とある。

では、発注者・受注者という上下関係ではなく、協議も決定も、
実施も成果の帰属も、対等であることを基本原則とする協働を
進めることは「公の支配に属しない」事業に対する支出・利用に
結びつくこともあり、それは違憲なのか。
この問題に早くから気付き、その条文の意味するところを汲み取り
ながら、官民協働における対等性を原則と位置付けた横浜市は
「市民活動との協働に関する基本方針」(通称・横浜コード)を、
1999年に定めている。

ここで重要なのは
「5.公金の支出や公の財産の使用における必要条件」の
3つの要件の最初に、
「(1)社会的公共性があること
社会的公共性のある市民活動とは、幅広く多くの人々が幸せに生きていく
ために必要な、営利を目的としない、市民が自主的に行う活動を指す。
但し、その活動において政治活動、宗教活動及び特定の公職の候補者
もしくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対
するものを除く。」
を挙げていることだ。

つまり、当時の横浜市は、行政が、市民活動を「支援」する場合には、
憲法第89条が「第7章 財政」、つまり、行政による公費の濫用を
抑制するための章に位置付けられていることを踏まえつつ、
その対象には社会的公共性が求められることを、自ら定めた。

さいたま市では、価値観、事実の認識、そして発言にも問題があると
言わざるを得ない議員からの発議とはいえ、市議会において
多数の賛同を得て条例案が可決された。
同条例は、同センターの管理基準などが「市民の福祉が最大限に
増進され、センターを設置した目的を効果的に発揮するもの」で
あることを求めている。

これから、同市の執行部は、その基準をどう定めるか。

自治とは、自己決定・自己実施が原則。
「市民の福祉の最大限の増進」とは、どういうことなのかを、
同市市民自身が提案し、実現に結びつけることが求められている。

「今はまだない制度を新たにつくろう」とか、
「既存の制度では効果を生まないから、改善・廃止しよう」
という提案も、
「これは良い・賛成」とか「あれはダメ・反対」という意見も、
主権者である市民が自ら提案し、主張し、協議・討論を経て決定し、
実施する自治を実現するために不可欠な、とても重要な要因。
それを否定することは、民主主義ではなく、専制主義。

さいたま市は、自治体か、それとも、専制主義者の支配地域か。
問われているのは、表現や活動の自由ではなく、自治だ。
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