これからのくらし仕事支援室 室長 吉田 直美 さん [2012年01月26日(Thu)]
相手に寄り添いながら支援を ![]() これからのくらし仕事支援室 室 長 吉田 直美 さん 第14回は、これからのくらし仕事支援室の室長吉田直美さんをご紹介します。 吉田さんは、20年間勤めた盛岡市役所を退職し、昨年4月から「これからのくらし仕事支援室」(以下コレクラ)で室長として勤務しています。 「コレクラ」ではパーソナル・サポーター(以下PS)が、生活の立て直しから自立に至るまで、相談者一人ひとりに寄り添いながら、支援を行っています。 今回は、PSの仕事について伺いました。 ■今の仕事を選んだきっかけは何ですか 市役所職員として8年間、消費者行政に従事しました。 消費生活センターでは、多重債務など様々な問題を抱えた相談者と向き合いました。自殺につながりかねない深刻な問題を抱えた相談者も少なくありませんでした。 そのような相談者は、失業、生活困窮、心身の病、家庭崩壊など、様々な問題を抱えています。複雑に絡み合う問題を一つひとつ解決し、自立した生活を取り戻すための支援は、一行政窓口の消費生活センターだけでは限界があると思いました。 ■制度を超えた支援への挑戦ですか 例えば、健康問題は保健所、生活費の問題は福祉事務所、就職はハローワークなどと、相談窓口はそれぞれ用意されています。 しかし、深刻な多くの問題を抱えた人が、自らその問題を整理し、それぞれの相談窓口に出向くことは、難しい状況です。一つの窓口で相談から自立まで寄り添って支援を行う必要があります。それがPSの役割です。 ■PSの役割について教えて下さい PSは、「専門知識を持った良き隣人、良き友人」といえます。信頼関係のない人に悩みを打ち明けることはできません。相談者と出会い、信頼関係を築くことがスタートとなります。 もし、多重債務の相談を受けたら、借金の整理だけで終わるのではなく、その裏にある経済状況や家庭環境などを分析し、必要な支援内容を見極め、関係機関につなぎ、抱える問題を一つひとつ解決しなければ、自立につなげることは困難です。 暗闇の中に独りでいる相談者と会話をしながら光を見つけ、その光に向かって長い階段を一段ずつ登っていくような感じで共に歩んでいきます。 良い方向に向かったら、少し背中を押し、自分の生き方を自分で決める力を引き出す手伝いをします。そのことによって、様々な問題を解決し、社会の中に役割と居場所を見つけ、経済的にも自立できたらゴールです。 ■次の課題は何でしょうか 「コレクラ」は、できるだけ身近にあることが望まれます。広い岩手県をカバーするには、8カ所は必要だと思っています。また、8カ所で活躍できるPSの養成も重要な課題です。 ■大切にしている言葉を教えて下さい 「オムソーリ」。スウェーデンの言葉で「悲しみの分かち合い」という意味です。 一人ひとりの「痛み」を『自己責任』で片付けるのではなく、みんなで引き受ける社会を示したものと理解しています。 他人事を自分事として考え、困っている人が隣にいたら、お互いに手を差し伸べあう、いつ自分が気遣われる立場になるか分からない今の時代だからこそ、求められる社会像だと思います。 ■市民のみなさんへメッセージをお願いします ドアを開けるとき、後ろに誰かいたら、開けて少し待ってあげる、そんな社会―。盛岡市なら実現できそうです。 |