• もっと見る
聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
« 2024年02月 | Main | 2024年04月 »
2006/4/28ブログ開設時からのアクセス数
UL5キャッシング
最新記事
カテゴリアーカイブ
リンク集
最新コメント
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index2_0.xml
2024年2月「文献解題 -参考文献一覧-」鈴木美彩(18期生) 生活記録[2024年03月08日(Fri)]
2024年2月 第18期生 鈴木美彩 生活記録
文献解題 -参考文献一覧-


 言語学部生として最後の学期も折り返し地点にやってきました。日毎に学位取得のその日が確実に近づいてきているのをひしひし感じます。そんな今回は Annotated bibliography、参考文献一覧についてお話ししたいと思います。日本語では文献解題とも言うようですが、一言で説明すると「参考文献に要約と自分の意見を加えたもの」です。その形式は人まちまちですが、基本的にAPAスタイルのような論文の引用とその論文の要点、それに対する自分の意見、の3つが要です。研究する上で論文を読む行為は大変重要で、研究における肝とも言えるほどです。だからこそ、研究において必要になった時にすぐに引用できるよう、これまでに読んだ論文をしっかり整理して自分の保管庫にしまっておかなければなりません。そこで役立つのが参考文献一覧です。私はこの参考文献一覧をGoogleドキュメントで作成しています。引用の形式がすでにあるので、引用したいと思った時にすぐコピーして貼り付けることができます。また、過去に読んだ内容でも、要約があるので何について書いた論文なのかをすぐに理解できます。自身の意見の部分はどう自分の研究課題に結びつけるかの考察に役立ちます。
 私はこの文献解題すなわち参考文献一覧をEEEクラスの課題で取り組んでいます。このクラスはDeanna Gagne 先生による授業で、規模の小さい言語に関する研究に着目した授業です。EEEは Emergence (発生), Ecology (生態), & Evolution (進化) の略で、規模の小さい言語といっても様々あります。最近生まれた言語、村落手話、島の手話、プロタクタイル (触手話の進化版) などなど。毎週様々な研究者の論文を読んでクラス内でディスカッションを行います。毎週新しい論文を色々読んでいくのは楽ではありませんが、毎回興味深いテーマなので刺激のあるクラスです。Gagne 先生が作った格式に従って1ページに納める必要があります。たった6ページの論文でも、30は超えるページ数の論文でも関係なく1ページに納めなくてはいけないので、そこがまた大変です。また、Gagne 先生はその論文の著者の背景も重要視するべきとの考えをお持ちで、ちょっと ”追っかけ” になったつもりで情報を集めることと教えられました。その著者の見解がどのようなものなのか、そしてそれはどのような背景からきているのか、この ”Positionality (ポジショナリティ)” つまり立場をはっきりさせることでその論文の理解も異なってきます。
 この課題に関しては、まず形から入る方が私は集中力が高まるので、最初はAPA式引用に取り組みます。そして研究者の情報をGoogle Scholar や Linkden,著者の在籍している機関のホームページをチェックして情報を集めます。1ページしかないので、この情報は3−4行くらいに納めます。ここでの Googleドキュメントの強みはリンク機能やコメント機能があることです。名前の部分をウェブサイトにリンクさせて後から振り返ることができます。この部分のコメントにはその他のYouTubeなどのリソースをメモしておきます。そして、論文読みに入ります。ここでは辞書と翻訳機能が欠かせません。軽く文章をたどって、意味がわからない箇所にぶつかったら、単語を辞書で調べます。単語が理解できても文章全体の意味が掴めない時はその部分を翻訳機能でタイプして日本語を見ます。ここで気をつけなければいけないのは、プラスにもなるかもしれないしマイナスにもなるかもしれないということです。翻訳がうまくいくと、英語ではこの表現になるのかと学習に大変利益的ですが、翻訳がうまくいかないときはより混乱をきたします。気をつけながら論文の主張など重要なポイント箇所をマークしていき、要約の作成に入ります。
 最後に自身の意見を書きますが、これまたGagne 先生の挑戦状で、論文に対する評価は良い面と悪い面とを両方含むことと言われています。全ての論文は確かな質を持っていると同時に完全なる論文はない、というのがGagne 先生の常套句で、学生はよりクリティカル、批判的な思考をトレーニングできます。決して簡単な課題ではないですが、自分の弱みを発見でき、成長を感じさせてくれるので今の所楽しく取り組めています。
Posted by 鈴木 at 11:50 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2024年2月「イギリスの食べ物の話」金本小夜(19期生)[2024年03月08日(Fri)]
みなさんこんにちは。
3月ですね。日本は梅や桃が見頃の時期でしょうか。
イギリスも2月半ばくらいから突然あたたかくなり始め、スノードロップや水仙、桜の花などが一気に咲き始めて春めいてきました。
またこの時期は小鳥がたくさん庭先に現れるのですが、それは地面が暖かくなって虫がで始めるから、それを狙って小鳥が集まってくるのだそうです。イギリスを舞台にした児童文学『秘密の花園』にもコマドリが春先に登場していますが、餌を探すためだったのだな、と大人になってから知りました(笑)
ロンドンに引っ越してヨークシャーの自然が恋しくなるかなと思っていましたが、全くの杞憂でした。ロンドンでもたくさんの鳥や動物が見れるので毎日が楽しいです。

しかし一方で今月末に進級試験(Transfer)用の論文の提出が控えているので、ロンドンにいてもほとんど外出ができず、引きこもり気味の毎日が続いています。
ちなみに前にロンドンにいた時にはよく大英図書館を勉強先に使っていたので、今回もそうしようと思っていたのですが、先日資料を確認しようと出かけたところ、なんと昨年末受けたサイバー攻撃のため、カードの新規登録、更新が全てストップ状態とのこと…。3月中にはなんとかできるようになるはず、と受付の人が言っていましたが、本当になんとかなって欲しいですね…。

今は勉強の他は、引きこもっているので毎日の気晴らしがほぼ料理や食べることになっていますが、そういえばイギリスの料理ってみなさんご存知ですか?
イギリス料理はまずいとよく言われますが、実際のところ、すごくまずい料理にはまだ少ししか当たったことがありません(まずいものも少しはあります笑)。どちらかといえば、イギリスの人は食べるのが好きなんじゃないかな、という気がしています。
例えばイギリスで有名なアフタヌーンティー。お昼ご飯と夕ご飯の間に食べるリッチなおやつで、数種類のケーキに、サンドイッチ、そしてイギリス名物のスコーンとジャムがよく3段重ねのお皿に乗って出てきます。イギリスに来る観光客がほぼ必ず食べる人気のメニューとなっているようです。このスコーンにつけるクロテッドクリームは、日本で買うとイギリスの4倍ほどお値段するそうなので、みなさんイギリスで食べて帰る理由はお金的な意味もあるかもしれません…
また面白い名前の料理も多く、ソーセージを入れて焼いたパイの名前はトード・イン・ザ・ホール(Toad in the hole、穴の中のひきがえる)と言って、ソーセージをひきがえるに見立てたものです。他にもバブル・アンド・スクイーク(Bubble and squeak、ブクブクチュウチュウ…とでも訳せばいいでしょうか…)は残り物を刻んで鍋に入れて焼き固める料理なのですが、その残り物を鍋底に押し込めるときに空気が漏れ出る音が料理の名前の由来になっているそうです。
私が好きなイギリス料理としては、シェパーズパイや、ハギスが挙げられますが、シェパーズパイは色々な野菜を混ぜたミートソースの上にマッシュポテトを被せた焼いたもので、そのミートソースの肉には羊肉がよく使われることから、シェパード、羊飼いの名前が付けられたのだそうです。ハギスは元々はイギリス北部、スコットランドが原産の、羊の肉や内臓を刻んでハーブで味付けされたソーセージのようなもので、今では全国のスーパーで売っています。スコットランドではウィスキーを混ぜたクリームソースをかけて食べるのだそうで、私は今ちょっとこのウィスキーソースのレシピを実験中だったりします(笑)
あとゲテモノを一つ紹介すると、ジェリード・イール(jellied eel、うなぎのゼリーよせ)というものがあります。これはぶつ切りにしたうなぎをお湯に放り込んで煮て、うなぎから出てきたゼラチンで自然に固まったものをうなぎと一緒に食べる料理なのですが、まずこのゼラチンに味がついておらず、お酢と塩をかけて食べるだけ、しかもゼリーが溶けないように冷たいままで食べるので、うなぎといえば鰻重しか知らなかった私としてはなかなかショッキングな料理でした。おすすめは…しません…(笑) 元々は労働者階級の人々が手軽に食べれるものとして19世紀頃から広まったそうですが、ロンドンの川にうなぎがいるというのは少し驚きでした。日本のうなぎと同じものなのか、気になるところです。

なんか食べ物のことを書いていたら随分長くなってしまいました…食いしん坊の本性が出てしまいましたね…
次回は進級試験の論文提出直後の執筆となるので、何か楽しいロンドンのニュースでも書けたら、と思っています!
IMG_6202.jpegIMG_6233.jpegIMG_6091.jpeg
写真は左から、コマドリ、日向ぼっこするキツネ、近所の公園に咲く野生のクロッカスです。
Posted by 金本 at 00:19 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2023年2月生活記録【第18期生 田村誠志】[2024年03月06日(Wed)]
皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
学業や研究活動をしながら2月を迎えつつ、忙しい日々がまだまだ続いています。卒業までゆったりとしたペースで行こうと思っていましたが...。
2月の活動では、ビジネス部門とともに新しい研究プロジェクトを立ち上げ、プロジェクトリーダー担当しております。研究内容はより学術的なビジネス英単語によるASLの辞書作成であり、ギャロデット大学のビジネス学部で使われている専門用語のASL、実際にASLニュースで使われている専門用語、一線で活躍されている聾者の個人営業、ビジネス用語の知識を有している手話通訳者にご協力いただいております。
なぜこのプロジェクトを立ち上げたのかと言いますと、現在ギャロデット大学はろう児、ろう学生のための手話言語による教育発展向上のためのプロジェクトが多く取り上げられています。その中でも重要なのは教育者や手話通訳者と、学生たちの手話言語によるコミュニケーションです。
実際、とても複雑な専門知識(数学や医学、工学や化学、言語学や英文法)の単語や説明ではそのまま指文字やテキストブック、文章などで説明することが顕著に見られます。数学の積分や微分、三次関数、極値などの説明を文章で読んでも内容が分からず、概念がなかなか理解しにくいでしょう。ですから教育者たちはろう学生たちに、難解な説明や概念を視覚言語による象徴的な説明をするようにしています。その過程で聾者の学生は新たな知識と概念が育むにつれて、専門知識による象徴的な概念が生まれ、彼らのコミュニケーションの中で新たな手話言語が創造されることがあります。この瞬間がろうコミュニティの中で生まれる新たな言語発達の兆しの一瞬として私は感動しますね。

しかし、ろうコミュニティにおける学術的な専門知識の範囲においてまだ十分に行き届いていません。その例としてギャロデット大学のビジネス部門では、ASLのビジネス専門用語による手話単語動画も存在していますが、辞書としては情報が不十分であるためさらなる教育発展のために、前学期のフィールドメソッドで培った経験をもとにビジネス用語の100単語によるデータコレクション作業から手話言語音韻論分析まで取り組み、論文作成まで目指しています。

長くなりましたが、これが新しいプロジェクトの一つになります。現在抱えているプロジェクトは合計で6つぐらいですね...。その上クラスも3つありますので宿題や中間試験も同時並行しつつこなしていますが、体調管理はできるだけ気をつけるように頑張ります。

写真はBusiness ASL Dictionaryのプロジェクトリーダーに就任された時の写真です。
69de09f1-17df-47dc-a62e-65991c109b1b.jpg
Posted by 田村 at 01:14 | 奨学生生活記録 | この記事のURL