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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2023年10月「フィールドメソッドにおけるデータ」鈴木美彩(18期生) 生活記録[2023年11月08日(Wed)]
2023年10月 第18期生 鈴木美彩 生活記録
フィールドメソッドにおけるデータ


 先日、Field Methods、フィールドメソッドの講義について紹介しましたが、この講義での言語学データ管理について紹介したいと思います。私たちのGALLAUDET THATのプロジェクトでは様々なデータを扱います。
 まずはオープンエリアでの観察、つまり学内の食堂や学生支援課など多くの人が行き交う場に出向いてそこで人々の行動を観察し、個人情報は抜きにその行動を記録すること。私の場合は、「挨拶」をテーマにしたので学内を散歩し、すれ違った人々の挨拶を観察しました。私のフィールドノートの中の一例が以下になります。「保護者の手から離れて我先に建物へ入らんと小さな子供が向こうから走ってきた。そして、こちらの顔をみてきたので、こちらがしっかり目を合わせると手を振ってきた。こちらも笑顔で手を振り返した。ハローと付け加えると、子供もハローと返してくれた。(事後観察のメモ) バーイといえばバーイと帰ってき、ハローというとハローと返ってくることが多い。」
 インターネット上の動画もデータとして扱います。ギャローデット大学が外部向けに作成した動画に、多くのインラビュー動画が公開されています。そのうちの一つに「HOLA!」という珍しい挨拶を見つけました。観察の記録には「これはスペイン語での挨拶で、インタビューの記者が対象者と同じラテン系だったことからきている。」などと記録しています。
 他には、参加者を募り、インタビューの様子を撮らせていただき、この動画を観察します。特にインタビューの動画はELANというソフトウェアでアノテーション作業を行います。アノテーションとは手話をラベル付けする作業のことです。ELANは動画と並行でタイムライン上に何層もメモを残せる便利なツールです。無料のツールなので、人間が使いやすいようなデザインにはまだ程遠いのが難点ですが、基本的な操作を覚えれば強い味方になります。
 さらに、アメリカ手話の分析の場合、ASLSignBankという優秀なシステムがあり、これがさらにスムーズなアノテーションにしてくれます。これは名前の通り、銀行のように様々な手話単語が貯められていて、瞬時に手話を検索できるプラットフォームです。ELANと連動させたテンプレートを使用して動画内の手話単語にクリック数回でラベル付けが可能です。キーボードを使用する必要はありません。ASLSignBankの素晴らしいところは単なる書記言語を使ったラベル付けではなく、手話表現の表面そのものに注目したラベルになっていることです。例えば、「無知」の手話には二つのバリエーションがありますが、それぞれ「KNOW-NOTHINGf」「KNOW-NOTHINGo」というように手型の違いがラベルの最後に示されています。こうすることで手話の意味に惑わされることなく手話の形を分析することができます。

スクリーンショット 2023-11-07 午後8.55.18.png

https://aslsignbank.haskins.yale.edu/dictionary/gloss_relations/1693

 このフィールドメソッドの先生はDr.Julie Hochgesang、人呼んでジュリー先生です。彼女は言語学の研究の中でも言語の表面つまり手話の動きや手型などの音韻に着目した分析の経験が豊富で、データ管理を得意とするELANのスペシャリストです。しかもASLSignBankは彼女のプロジェクトです。つまり作成者直々の指導のもとELANとASLSignBankの応用技術を学んでいます。技術と知識が素晴らしすぎて雲泥の差...と感じてしまう瞬間も多いのですが、厳しく指導していただいているのでこの機会を無駄にせず得られるものはどんどん吸収していこうと頑張っています。

IMG_49269C43B9A3-1.jpeg

真ん中で手を組んでいるメガネの女性がジュリー先生。
Posted by 鈴木 at 10:43 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2023年10月生活記録【第18期生 田村誠志】[2023年11月07日(Tue)]
皆様、おはようございます、こんにちは、こんばんは。
Washington D.Cの気温は緩やかに寒くなってきていますが、突然暑くなったりと寒暖化が激しくなってきています。D.C.の10月の気候は穏やかな方だと思われますが、日本ではいかがでしたか?

ギャロデット大学の秋学期の授業もあと5週間(1週間はThanksgivingで秋休みとなります。)になりました。とても信じられないぐらい早いスピードで月日が経っています。院生二年目ですが、一年目と比べて自分が抱えているクラスの課題やプロジェクト、仕事、プレゼンテーションがたくさんあることに愕然としています。去年の院生一年目の自分はそのような機会が無く、院生だけど研究や言語学研究の仕事体験がないのが不安でした。そこでアカデミックアドバイサーに、言語学研究のリサーチアシスタントやプロジェクト挑戦したいと相談したこともありましたが、担当者からは、二年目になったらとても忙しくなる、一年目はまだ基礎を学ぶことに集中した方がいいと助言を賜りましたが、実際にその通りでした。

言語学院生二年目の授業は、研究プロジェクトを興す実践的な研究職の一歩手前まで学ぶクラスがいくつかあります。私は、現在受講している4つの授業のうち、二つの言語学選択科目を受講しているのですが、どちらも研究職をやる上で大変経重要な実技と知識を得られ、貴重な経験をしています。8月生活記録ですでに二つの選択科目について紹介しましたが、より深く掘り下げて説明したいと思います。

一つ目の選択科目はコーパス言語学です。コーパスとは機械可読のデータコレクションです。データの種類はテキストやドキュメントや動画、データが何であれコンピュータなどの機械が、手話動画のデータコレクションを読み取る、エンコードしたデータから必要な情報を検索することが可能であることが前提です。簡単な手話動画の検索の例ですが、「私」という手話をを探すとき、どのように探すのかを想像してみてください。動画では早送りしたり、巻き戻ししたりして手話の「私」を探すのが多いかもしれません。しかしコーパスデータではPDFやGoogle Docのように検索機能がついており知りたい手話の情報を検索したらすぐに発見することが出来ます。すでに8月の記事で紹介しましたELANと呼ばれるソフトウェアを使い、アノテーションを行うことによってプライマリーである一次データから、機械可読の情報を追加したメタデータまたは二次データを作ることが出来ます。講義では、実際に研究者が行っている仕事と同じように、一次データから二次データへとエンコードする作業、お互いのアノテーションを確認作業するproofingをしました。私はこのメソッドを学んだ上で、この講義の最終課題、私たちが使ったコーパスデータから、手話言語の特定音韻論機能や文法的機能を解析する研究プロジェクトを立ち上げています。

次に二つ目の選択科目であるデータマネジメントでは、誰がデータを持つのか、データの所有者の責任は何か、誰がそのデータを見る権利を決めるのか、データを格納する場所はどこなのかと実際に研究者が必ず出会うデータ管理についての問題についてディスカッションしながら学んでいます。今まで私は研究者として仕事する立場の経験は少ないのですが、実際にプロジェクトの第一人者となると、同様にデータ管理責任者になるので、研究者としては管理能力を身に付けなければいけません。誰がデータを持つのか、所有者の所有者の責任は何か、という問いでは当然研究者自身です。しかし、個人でデータを格納する容量が多い場合、研究室やリポジトリのような大きな格納場所を探さなければいけません。この時、同様に研究室やリポジトリの責任者もデータを預かる事になります。従って、自分自身のデータ保存する場所だけでなく、研究室やリポジトリの責任者のデータ保存する場所も把握することが大事なのです。データを見る権利についてですが、その研究者に協力してくれた参加者や、学会の参加者、研究データを見たい人たちに向けて公開します。しかし手話言語学の研究データによる動画の公開は、身元特定や個人情報漏洩の恐れがあります。このリスクを防ぐために、私たちは、可能な限りオープンアクセスできるデータ管理の方法を学んでいます。この知識を学び、私たちは将来どんなデータ管理をするのかという提案書を作成することが最終課題となります。
研究資金先やリポジトリに研究データを格納する目的や方法などを事細かく伝えるのはとても難しいですが、この提案書の課題は大学院生や博士学生でも必ず研究するために必須な仕事に繋がります。

さて長くなりましたが、今回の記事はここまでになります。
もうすぐ年末が来ますが、皆さんはもう準備を始めているのでしょうか。私はドタバタして年末をどう過ごすかわからないのですが、ルームメイトが企画してくれるそうです。楽しみですね。

写真はギャロデット大学言語学部門に飾っているデフアートです。
IMG_4223.JPG
Posted by 田村 at 06:49 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2023年10月「長州ファイブ160周年記念企画」金本小夜(19期生)[2023年11月07日(Tue)]
あっという間に11月となりました。
私はイギリスにきて半年が経ったところで、何だか長かったような、短かったような…と振り返っています。

実は先月の27日と28日、イギリス、エジンバラにあるヘイオワット大学に赴任された矢部愛子先生にお声かけ頂き、エジンバラに本部を構えるDeaf History Scotland(DHS:スコットランド聾歴史研究会)主催で行われた長州ファイブ160周年の記念イベントに参加してきました。

エジンバラはヨークから更に北へ2−3時間ほど電車で行ったところにあるスコットランドの首都にある美しい海辺の街です。『シャーロック・ホームズ』シリーズの作者であるコナン・ドイルや、『ジキル博士とハイド氏』や『宝島』の作者として有名なスティーヴンソンが生まれた街でもある他、『ハリー・ポッター』の原作者J.K.ローリングが現在も住んでおり、第1巻の原稿を執筆したElephant Houseというカフェも残っています。

27日はDHSのジョン・ヘイさんからエジンバラのデフにまつわる色々な場所(主に教育史にまつわる場所)を案内してもらいました。
最初に聾者への教育が行われたのは現在スコットランド文学博物館となっている建物でした。ですが当時のイギリスは窓の数に応じて税金が取られるシステム。この建物も例外なく窓は少なく、部屋は暗く、明かりが乏しい中での手話教育は困難だったこともあり、教育はエジンバラ内の各所を転々としながら続けられます。そして最終的にイギリス初の聾学校’Braidwood school’がトーマス・ブレイドウッドにより1760年、設立されました。そして1785年に当時の王であるジョージ四世の目に留まり、学校全体がロンドンに移されるまで続いたそうです。(その後、学校はまたスコットランドに戻ってきたそうですが)現在は建物はなく、プレートだけが残されています。
写真は左から、スコットランド文学博物館、ブレイドウッド聾学校跡地、案内をして下さったジョン・ヘイさん。

そして28日は長州ファイブの記念イベントが開催されました。
ちなみに長州ファイブについてですが(私も今回初めてこの呼び方を知りました笑)、日本語だと長州五傑として知られており、1863年、ロンドンに留学した伊藤博文をはじめとする5名のことを指します。まだ江戸末期で外国への渡航は御法度のため、5人は密航してイギリスに渡り、主に現在のロンドン大学で学んだそうです。その中の一人、山尾庸三はグラスゴー(エジンバラから西に1時間ほどのところにある工業都市)に赴き、そこで騒音の中作業する船大工たちを見て、なぜ彼らがこれほどの騒音の中作業できているのか疑問に思います。そしてよくよく訳を聞いてみると彼らは耳の聞こえない作業員たちだった、というエピソードが残されているのです。そして帰国した山尾は後の筑波大学附属聴覚特別支援学校の前身である楽善会訓盲院を設立しました。

この歴史のプレゼンを行なって下さったのが、筑波大学附属聴覚特別支援学校の関係からいらした那須英彰さん、野呂一さん、藤井理仁さんでした。日本手話と英語で紡がれる、授業で習ったことのない日本史はとても面白かったです。

また現在エジンバラで研究をされている手話言語学がご専門の坊農真弓先生なども参加され、いろいろと学びの多い2日間となりました。
IMG_4159.jpegIMG_4182.jpegIMG_4176.jpeg

エジンバラの寒さもあってか、私はヨークに戻って以降、絶賛風邪っぴきの状態ですが、日本もそろそろ冷え込む頃でしょうか。どうか皆様もお身体に気をつけて過ごしてくださいね。

Posted by 金本 at 00:59 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
■連載■海外留学奨学金 担当役職員のつぶやき<Part.11>[2023年11月02日(Thu)]
■連載■海外留学奨学金 担当役職員のつぶやき<Part11>

『日本財団聴覚障害者海外留学奨学金』を知って欲しい!と担当理事と事業担当者の2人が、事業のこと、募集のこと等を不定期につぶやいています。

キャプチャ1.jpg
Nami_吹き出しなし35.jpg最近、ますます円安が進んでいるわね。留学奨学生たちの生活にも影響はあるのかしら?

Nemo_吹き出しなし35.jpg学費や生活費は現地通貨で支給しているので、留学奨学生への円安影響は比較的少ないのですが、現地価格を円換算すると、やはり高く感じますね。

Nami_吹き出しなし35.jpg例えばどんな感じかしら?

Nemo_吹き出しなし35.jpg世界のさまざまな町に店舗があるマクドナルドのビックマックの値段を、奨学生に協力してもらって比較してみました。日本・東京が500円、米国・ワシントンDCは$8.19(約1,227円)、英国・ロンドンは£4.99(約909円)でした。(2023年10月18日時点)

Nami_吹き出しなし35.jpgえ〜っ、日本の2倍?!手軽には食べられないわ。

Nemo_吹き出しなし35.jpgでも、スターバックスのドリップコーヒー(Tallサイズ)は、こちらは上記3都市共ほぼ同価格帯だったんです。

Nami_吹き出しなし35.jpgそうなんだ、商品によって差があるのね。

Nemo_吹き出しなし35.jpg他にもへぇ〜って思うことがありました。またの機会に紹介しますね。

*英国のエコノミスト誌が毎年発表する経済指標”ビッグマック指数”を参考にして、価格比較に取り上げました。


かわいい<参考>2023年度 第20期生募集要項かわいい
20th_Flyer300.jpg
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/1398


かわいいホップ・ステップ・ジャンプ!かわいい
〜日本財団聴覚障害者海外奨学金事業の成果〜として、支援修了した奨学生達へのインタビュー記事を掲載しています。こちらからご覧ください。
https://www.npojass.org/hopstepjump


事業担当:根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 09:56 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL