2023年8月「言語学のロードトリップ(続き)」鈴木美彩(18期生) 生活記録[2023年09月08日(Fri)]
2023年8月 第18期生 鈴木美彩 生活記録
言語学のロードトリップ
言語学のロードトリップB ~SALT会議での困難~
このロードトリップ最大の目的であるSALT会議はアメリカ言語学会の協賛のもと年に一度行われていて、第16回は東京で行われるなど規模の大きさが窺える会議です。春学期の終わりが近づく頃、私とボニーは参加登録をオンライン上で済ませました。最後の欄に「アメリカ手話通訳を希望する方はこのチェックボックス」にとあったのでさすがアメリカと感動しました。言語学の中でも意味論に特化したこの会議はかなり専門性が高く、アメリカといえど通訳の用意は大変な仕事です。それでもアメリカ手話の通訳が選択肢にあるのは素晴らしいことです。すっかりあぐらをかいていた私でしたが、ボニーは通訳者の経験上、通訳を用意しますと言っていても、専門外な通訳者が派遣されたり、一部だけへの派遣だったりするから、念の為に問い合わせた方がいいと助言してくれました。そこでメールを送ってみましたが、返信がありません。これは雲行きが怪しくなったぞと思いつつ、ちょうど学期末で忙しさのピークを迎えていたので、課題に追われて時間も過ぎていきました。そして直前になって返信が来ました。その内容は明らかに通訳の申請に対する動揺でした。いつ参加登録をしたか、通訳は全日希望するか、という質問が並べられていて心配になりました。しかし、私たちはすでに出発していてコネチカットに滞在中でした。会議には最終日を除いて全日参加の予定だったので、基本的には全てのプログラムに参加したいと伝えると、通訳の費用が用意できていないのでギャロデット大学側で負担できるかと、これまた衝撃的な返信が返ってきました。参加登録には大学も記入するので、当てにできると思われたのでしょう。参加登録の時、通訳申請の締切が明示されていなかったのが気になっていましたが、形だけの処置だったのはかなりショックでした。それを言語学部の先生に相談すると、「オーマイガーなんてこと!!そんなのありえない!」と先生方も驚いていました。開催に関わっていないギャロデットから資金を出すのはナンセンスと言いつつ、私たち学生のためになんとかしようと言語学部内の学生への支援制度が使えないか模索してくださいました。その間に私はSALT会議の責任者と通訳についてあーだこーだとメールでやりとりを続けていました。会議の開催も目前で運営に追われている中の対応だったので運営側も大変だったのは想像するに難くありません。イェール大学近くのホテルに到着すると、イェール大学で教えているろうの先生、ジュリア・シルブストリ先生からメールが届いていました。「通訳を必要としていると聞きました。私が力になりますので詳細を教えてください。とりあえず明日の朝の分はオンラインになってしまうけど確保できました。」とこの波乱の中とてもありがたい助け舟でした。その後、三日間手厚くお世話していただいて、SALT会議に参加することができました。正確には3日目は母の日ということもあり、通訳者がつかまらず、最初の1日と2日目の午後からのみでしたが、ないよりはずっとましです。シルブストリ先生も一緒に会議に参加し、意味論の様々な発表を拝聴しました。生成文法はギャロデットで学んでいましたが、生成文法から見た意味論はより複雑で特有の記号も用いたりと私にとってはまさに異世界でした。アメリカの地でも学術レベルのこう言った会議には情報アクセスが行き届かないものなんだと経験を通して学びました。今回は直前ということもあり、専門外だがなんとか通訳してみます!という通訳者もいました。中には自分には不適任と断る人もいたと思います。専門性のある人でないと内容に適った通訳が難しいですが、時間のない中きていただいただけでもありがたいです。これは今後の課題として他の学生とも議論して改善に努める必要があります。改めて、突然のトラブルにもかかわらず多大なサポートをしてくださったシルブストリ先生を初め、通訳者やイェール大学のろうの先生方に感謝申し上げます。もちろん、一緒に行ってくれた同期のボニーに対しても感謝の気持ちでいっぱいです。
言語学のロードトリップ
言語学のロードトリップB ~SALT会議での困難~
このロードトリップ最大の目的であるSALT会議はアメリカ言語学会の協賛のもと年に一度行われていて、第16回は東京で行われるなど規模の大きさが窺える会議です。春学期の終わりが近づく頃、私とボニーは参加登録をオンライン上で済ませました。最後の欄に「アメリカ手話通訳を希望する方はこのチェックボックス」にとあったのでさすがアメリカと感動しました。言語学の中でも意味論に特化したこの会議はかなり専門性が高く、アメリカといえど通訳の用意は大変な仕事です。それでもアメリカ手話の通訳が選択肢にあるのは素晴らしいことです。すっかりあぐらをかいていた私でしたが、ボニーは通訳者の経験上、通訳を用意しますと言っていても、専門外な通訳者が派遣されたり、一部だけへの派遣だったりするから、念の為に問い合わせた方がいいと助言してくれました。そこでメールを送ってみましたが、返信がありません。これは雲行きが怪しくなったぞと思いつつ、ちょうど学期末で忙しさのピークを迎えていたので、課題に追われて時間も過ぎていきました。そして直前になって返信が来ました。その内容は明らかに通訳の申請に対する動揺でした。いつ参加登録をしたか、通訳は全日希望するか、という質問が並べられていて心配になりました。しかし、私たちはすでに出発していてコネチカットに滞在中でした。会議には最終日を除いて全日参加の予定だったので、基本的には全てのプログラムに参加したいと伝えると、通訳の費用が用意できていないのでギャロデット大学側で負担できるかと、これまた衝撃的な返信が返ってきました。参加登録には大学も記入するので、当てにできると思われたのでしょう。参加登録の時、通訳申請の締切が明示されていなかったのが気になっていましたが、形だけの処置だったのはかなりショックでした。それを言語学部の先生に相談すると、「オーマイガーなんてこと!!そんなのありえない!」と先生方も驚いていました。開催に関わっていないギャロデットから資金を出すのはナンセンスと言いつつ、私たち学生のためになんとかしようと言語学部内の学生への支援制度が使えないか模索してくださいました。その間に私はSALT会議の責任者と通訳についてあーだこーだとメールでやりとりを続けていました。会議の開催も目前で運営に追われている中の対応だったので運営側も大変だったのは想像するに難くありません。イェール大学近くのホテルに到着すると、イェール大学で教えているろうの先生、ジュリア・シルブストリ先生からメールが届いていました。「通訳を必要としていると聞きました。私が力になりますので詳細を教えてください。とりあえず明日の朝の分はオンラインになってしまうけど確保できました。」とこの波乱の中とてもありがたい助け舟でした。その後、三日間手厚くお世話していただいて、SALT会議に参加することができました。正確には3日目は母の日ということもあり、通訳者がつかまらず、最初の1日と2日目の午後からのみでしたが、ないよりはずっとましです。シルブストリ先生も一緒に会議に参加し、意味論の様々な発表を拝聴しました。生成文法はギャロデットで学んでいましたが、生成文法から見た意味論はより複雑で特有の記号も用いたりと私にとってはまさに異世界でした。アメリカの地でも学術レベルのこう言った会議には情報アクセスが行き届かないものなんだと経験を通して学びました。今回は直前ということもあり、専門外だがなんとか通訳してみます!という通訳者もいました。中には自分には不適任と断る人もいたと思います。専門性のある人でないと内容に適った通訳が難しいですが、時間のない中きていただいただけでもありがたいです。これは今後の課題として他の学生とも議論して改善に努める必要があります。改めて、突然のトラブルにもかかわらず多大なサポートをしてくださったシルブストリ先生を初め、通訳者やイェール大学のろうの先生方に感謝申し上げます。もちろん、一緒に行ってくれた同期のボニーに対しても感謝の気持ちでいっぱいです。