2022年4月生活記録
皆さんこんにちは。ゴールデンウィークは楽しめましたでしょうか?充実した休日が過ごされたことでしょう。私の現状といえば、5月6日付けに修論発表があり、無事終えることが出来ました!
院生活2年間の集大成を発揮できたと思っています。無事合格することができれば、確実に卒業できます…!(とはいえ、すでに卒業の準備を進めています笑) 修論関連は帰国後に機会があると思うので、そのときに話したいと思います

さて、今月の内容は前月に続き、
「学校における言語発達」および、
「家庭と学校間のつながりの重要性」について考えていきたいと思います。ここは基本的に
ろう児を持つ聴親に向けて発信したい内容ですが、教師や学校にも意識するべきとも言えます。
子どもの言語発達において、家庭と学校、それぞれ役割があり、家庭では前月に話したとおり、
「基本的な言語能力を獲得する」「派生する様々な能力(想像力や認知力、コミュニケーション力など)を身につける」といったものが中心だったと思います。
学校ではどういった役割を持っているのでしょうか?もちろん、家庭で行われることが多い即時的な会話や非即時的な会話は、学校でも行うこともできます。幼稚部や小学低学年の段階ではそういった会話レベルも必要なので、意識するべきですね。ただそれだけではなく、学校ならではの役割があります。それは
「学術的な学び」です。小学生に上がる頃から国語、算数、理科など本格的に勉強が始まりますね。学術的な学びのために、子どもはさらに言語能力の発達が必要になってきます。学校に見られる場面はどういうものでしょうか?
交流のための会話(Social Talk)「からかう」「遊ぶ」「想像する」「おしゃべり」などといった交流で見られる会話レベルです。友達間や先輩後輩間、教師と生徒間でも様々な場面で見られます。こういう会話は休み時間(遊び)や食事時間、個人的な会話などから来ます。これは家庭で見られる会話(即時的な会話、非即時的な会話)と同じものとなります。つまり
教師も即時的な会話や非即時的な会話といった「家庭言語(home language)」を意識するべき理由の一つです。
学術的な学びのための会話(Academic Talk)ここが重要なポイントとなります。学校において最もよく見られるのは、学術的な場で見られる会話です。小学生、中学生、高校生に問わず全般的に見られます。学術的な会話とは、
「設問に回答する」「情報を共有する」「情報を比較する」「知識を要約する」などといった高次な認知能力が求められる会話レベルです。他にも、小説や物語などの本や授業で使われる教科書を読んで、語彙や内容を理解することも学術的なレベルの一つです。学校で学術的な内容を学ぶにつれ、こういった会話を自然にされるため、無意識のうちに
子どもたちの言語能力の発達に貢献できるのです。
ここでちょっとした豆知識ですが、ろう児に対する教育では手話で会話していれば自然な成長ができますが、
音声中心である口話での会話だとこういった成長ができず、言語発達を妨げる結果になってしまう可能性もあります。
話を戻しまして、
学校では言語能力の発達だけではなく、学術的な環境を通して、様々な知識や経験を得る場でもあります。そのため、社会自立やキャリアスキルの習得も必要になります。つまり学校は学術的に学ぶ場所なので、
ろう児の学術的な言語発達が達成できるように学校や教師は意識しなければなりません。これが学校における役割です。学校で見られる交流のための会話も学術的な学びのための会話を教育学では、
“School language”と呼びます。
教師や学校が意識するべきと言いましたが、もちろん、
親も学校に関する知識を知る必要があります。家庭でできないことを学校だと出来ることもあります。
どういった教育が必要か、どういった言語発達を求めるのか、学校や教師と話し合い、
自分の子どもへの教育について考える権利を親は持っているということです。

ここからは、「家庭と学校間のつながりの重要性」の分野になりますが、先程述べたように、親は子どもに合わせて適切なアプローチがなされるように学校に要望する権利を持っています。年齢に応じて、学術的な語彙や概念を提供することを求め、教師や学校と話し合うことが重要になります。例えば、聴親に多い悩みなのですが、皆さんは
自分たちが提供できる手話が基本的なレベルなため、子どもにとって物足りないのではないか。という懸念を持っているのではないでしょうか?
家庭では難しいことを学校に求めることも一つの方法です。学校では、
ろう教師や
手話通訳資格を持っているレベルの高い手話を提供できる先生もいます。また、ここで説明しているような
知識や教育学を学んでる専門性の高い教師が集まっています。家庭でも学校のようにレベルの高い教育をしたいと考えている場合、そのための知識が必要になりますが、教師や学校と相談することもできるのです。
他にも学校は優れている教師がいるだけではなく、
コミュニティに関する情報や教育学に関する情報もたくさん持っています。
成人のろう者モデルがたくさん集まるコミュニティだったり、
ろう教育やろう文化を学べるコミュニティだったり、学校は何らかの情報を知っています。
聴親として懸念していることに対して力になってくれるかもしれません。コミュニティでは、交流のための会話が多いですが、中には学術的な学びのための会話もあることもありますので、基本的な言語能力を身についたり、様々な能力を強化したりできる場でもあります。
以上が、家庭と学校とのつながりにおける重要性となります。最後になりますが、
これらのアプローチは手話で交流し、手話で会話し、手話で学習するという前提のもとに行われるべきです。ろう児に対して、音声での教育だと上記で述べた効果は期待できないと思います。
※人工内耳装用児などでは効果があるかもしれませんが、私は全てのろう児のために手話教育を推奨します。
聴親はろう児が誕生して、初めての経験に戸惑うことや懸念することが多く、不安要素がたくさんあると思います。私は教育者として、
そういった心配や不安をできるだけ和らげることができるように情報をたくさん発信していきたいと思っています。
ここまで最後まで読んでくださりありがとうございます。繰り返しになりますが、聴親に発信したい内容ですが、他の皆さんもろう児と関わる機会があるのでしたら、意識するべき内容になります。
第16期生
大西
【参考文献】
3月生活記録 第16期生 大西
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/1352Dickinson, D. K., & Tabors, P. O. (2001). Beginning literacy with language: Young children learning at home and school. Paul H Brookes Publishing.
https://psycnet.apa.org/record/2001-06306-000