
2020年3月生活記録【第13期生 橋本重人】[2020年04月08日(Wed)]
みなさん、こんにちは。新型コロナウイルス が世界180カ国、地域に広がっています。米国の感染者は37万人を超え、世界最多となっています(4月7日時点)。ギャロデット大学では3月11日に学長からの発表で、春休み以降(3月23日)はオンライン形式での開講となりました。その発表から春休みに入るまでの間、私はOSWD(障害学生支援室)でずっと働いていました。案の定、学生や保護者からの問い合わせや連絡が殺到しました。新型コロナウイルスの今後の対応方法やオンラインクラスや課題をどのようにすればいいかの不安事や相談ばかりで、担当教授もOSWDのスタッフも私たち学生もてんやわんやでその対応に追われていました。また、寮生たちは18日(水)までに寮を出なければいけないため、朝から夕方まであちこちの寮の前に車が停まっていました。保護者や親戚が学生を迎えに来ていました(留学生や特別事情のある学生は寮にとどまることができました)。私も春休み中は同学部の友人たちの荷造りを手伝いました。最後に、再会できることを約束して、強く手を握り合って別れました。
春休みが終わった後は、Zoomというビデオ通話ツールでリアルタイムに授業を受けています。やはり教室で授業を受ける雰囲気とは違うため、なかなか慣れません。特に肩が凝ってしまいます。じっと教授や学生の手話を見逃すまいとパソコンの画面とにらめっこするため、ついつい顔を前に傾いてしまいがちです。春休み後の最初の週は「どのタイミングで発言者を見たらいいか」等、みんなでルールを話し合いました。普段は教授を見る、手をあげて指名されるまでは発言しない、教授が学生の名前を言ったら、その学生の画面を注目する等のルールを決めました。自分の写っている画面の背景や服装にも気を使う必要があります。
実際のクラスと違うルールのため、私だけでなく他の学生もみんなクラスが終わった後はくたびれていたようです(個人的にメールのやりとりをして感じました)。精神的に苦しい時もありますが、春学期が終わるまで、残りの1ヶ月のため、クラスメートや友人と励まし合いながらなんとか読み物課題やプロジェクトに取り組んでおります。
今回は受講しているDifferentiated Instruction(多彩な学習方法)のクラスについて学んだことを書きたいと思います。どの学校でも学習における個人差や特性が多様な児童生徒一人ひとりに、どのように指導をしていくかが課題となっています。その解決策の一つとして、Carol Tomlinson(キャロル・トムリンソン)先生が提唱する多彩な学習方法を取り入れた指導法があります。これは、児童生徒それぞれの多様性に目を向けた、教室での指導法であるとトムリンソン先生は述べています。児童生徒の学習最終目標は同じですが、教員がそれぞれの児童生徒の状況に合わせていくつかの手立てを提供していくという方法です。一斉指導(みんなで同じ学習方法で同じことを学ぶ)とは違います。教室で教員ひとりで同時に違う指導方法で行うのは難しいですよね。その方法を行うには、チームティーチングとして補助の教員を取り入れたり、課題をいくつか用意して児童に選ばせたりするということです。
例を出します。教室に数名の児童がいると想定します。児童みんなは読解力もコミュニケーションモードもそれぞれ違います。そんな児童たちに対して多彩な学習方法を取り入れます。
社会(歴史)の授業です。
ある戦争について生徒グループいくつかに分かれてインターネットで調べもの学習をします。前もって教員は各グループに調べたことをどのように発表するかを伝えます。あるグループは劇で表現する、他のグループはパワーポイントで発表する、もう一つのグループは手話動画を作ります。生徒はやりやすいようなパフォーマンスを選んでグループを作り、仲間と協力しながら作業を取り組みます。
算数の授業です。
児童全員で今日の授業の流れを確認してから、教員が児童を3つのグループに分かれます。実際はグループをそれぞれの算数スキルのレベルで分かれていますが、児童たちに気づかれないようにグループ名を色の名前(青、緑、黄色)にします。青(基本)グループの児童は選択肢のある課題を、緑(中程度)のグループの児童は基本グループの課題に応用問題をいくつかを取り入れて取り組みます。黄色(応用)グループには自分で問題を考える、少し抽象的な課題を出します。
このように、トムリンソン先生は、児童生徒の個人差や特性に応じた教えるべき基礎・基本を本質的な理解や問いなどを用いて明確化し、実際の授業では「contents (学習内容)」、「 process (学習プロセス)」を多様化して、理解を得ているかどうかを「products (成果物)」で評価すると提案しています。多彩な学習方法を行うには、教員は前もって児童生徒の特性を把握する必要があります。そして、どのような内容で、どういった過程で児童生徒が学習していくか、常にチェックします。最後に、最終目標を達成できているかどうか児童生徒の発表、作品やワークシート、ノートなどで評価するという事です。
その多彩な学習方法はすべての授業に当てはまるとは限りません。しかし、私たち教員は様々な指導方法を知り、児童生徒の実態や目的に合わせて柔軟に指導・対応することが求められます。
参考文献はこちらです。
Tomlinson, C. (2017). How to Differentiate Instruction in Academically Diverse Classrooms (3rd ed.). Alexandria, VA: ASCD.