このブログを書いている今、来週のプロジェクト、最終テスト、そしてインターンについてのプレゼンと、春学期総まとめの準備に追われています。かなり大変ですが、この学期に学んだこと、調べたことをどのように表現したらいいのかを振り返る良い機会になっています。私の同期は個性的なキャラクターが揃っているので(例年と違って、ろうばかりです)、彼らの発表を見るのも楽しみです。
さて今回は前回の続きで、まだ説明していなかったChildren's Literature(児童文学)について書きます。
Children's Literatureは学部のクラスです。なぜそのクラスを選んだかというと、以前ろう学校幼稚部に勤務していた私が絵本の読み聞かせが好きだったことがきっかけです。当時は、帰りの会で毎日絵本の読み聞かせを行っていました。また、どのように読み聞かせを行えばいいかをいろいろと研究もしました。例えば、ろうの先生による読み聞かせや手話ビデオを何回も見て真似して自分なりに手話表現を工夫したり、手話表現を物語の内容や子どもたちの反応に合わせて変えてみたり、子どもたちが集中して見ることができるように試行錯誤をしてきました。子どもたちが「もっと!もっと!」と読みたくなるよう、自分から進んで読もうとなるよう、絵本の読み聞かせを行ってきたつもりです。そういった経験を踏まえて、ギャロデット大学はろう大学だからこそ何か他にヒントになるようなものが得られるのではないかと思い、履修することにしました。
このクラスでは、絵本の文章とイラストの中にRacism(人種差別)やGender(性差)にかかわるようなものはないかをチェックしたり、学校で読ませてもいい内容かどうかを学生同士で議論したりしました。意外とそういった問題は絵本だけでなく身近な生活の中でもよくあります。たとえば、テレビコマーシャルや広告誌などがありますね。例を挙げます。


(90年代の広告)

(現在の広告)
この二つの広告の違いを見つけられましたか?
学生たちが答えたのは、
昔
・出ている人はすべて白人である。
・女の子、男の子の遊びがはっきりと分かれている。
・女の子の遊びは家事に関することばかり。
今
・バラエティーがある。(音楽、料理、ゲーム、お菓子作り、人形遊び、組み立て)
・白人だけでなく、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系などが出ている。
・女の子、男の子の遊びがはっきりと分かれている。
男の子はこれ!女の子はこれ!というジェンダーに関わることがまだありますね。
また、黒人差別に関わる絵本もありました。

『たとえ奴隷だったとしても、Mintyは幸せでした』
その文章を読んで、違和感を感じずにはいられません。
先生が言うには、「アメリカの学校では読み聞かせる絵本を選ぶ際、慎重に、それも親にも確認しながら選ぶべきである」ということでした。ただイラストがかわいいから、作者が有名だからといって、絵本を子どもたちに読み聞かせをするようなことは決してしないようにと言っていました。人種意識の高い州によってはそのような絵本を図書館や学校に置かない、子どもたちの目に触れさせないようにするルールがあるそうです。
また、先生に教わった手話での絵本の読み聞かせのルールを学んだので、ここに書き記します。全部で15項目あります。とても参考になります。
1. 絵本の内容を手話で表現する。
2. 絵本の文章と手話、両方とも子どもが見えるようにする。
3. 絵本の中にある言葉の意味を分かりやすく説明する。
4. 手話で絵本の内容を伝えた後、絵本に書いてある文章を読ませる。
5. 子どものしたいことに合わせる。(子ども一人、二人、集団によって変わる場合もあるが、基本子どもたちに任せることも大切である)
6. 絵本の文章の意味合いをはっきりと示す。(この文章は何を伝えたいかをはっきりと伝える)
7. 絵本の流れに合わせて手話の場所位置を変える。
8. 絵本の内容に合わせて手話表現を変える。
9. 絵本の中で出てきたものを子どもたちの普段の生活につなげるようにする。
10. 子どもが集中して読むように促すなど工夫をする。
11. 話し手が視線を使って子どもに興味を持たせるようにする。
12. ロールプレイ(劇遊びなど)をすることで、言葉や文章のイメージを膨らませる。
13. 同じような言葉や決まり文句を子どもが飽きないように様々な手話表現で伝える。
14. 子どもに好ましい環境を整える。
15. 子どもはきっと絵本や文学に興味を持つようになると前向きに考える。
(先生が紹介してくれた論文はこちらです)
Schleper, D. R. (1997). Reading to deaf children: Learning from deaf adults. Washington, DC: Laurent Clerc National Deaf Education Center at Gallaudet University.
今回は絵本・児童文学ワールドでした。それでは、また来月。