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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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【奨学生に聞く】第5期 川俣郁美さん[2019年05月20日(Mon)]
第5期 川俣郁美さんへインタビュー!

日本のろう社会他で活躍されている川俣郁美さん(2015年12月 米国から帰国)に
応募や留学のことなどお話を伺いました。(約6分 *Youtube字幕on/off)
(インタビュアー:日本ASL協会副会長 秋山奈巳)

キャプチャ.PNG
撮影日:2019年3月17日

現在、2019年度第16期留学奨学生の募集中です。(給付型奨学金)
日本やアジア諸国のろう者コミュニティで必要と思われる分野で活躍することを志す
ろう者・難聴者(一部、聞こえる人)を支援します!


応募〆切:2019年5月31日(金)

募集の詳しい内容は、こちらからご確認ください。
http://www.npojass.org/archives/18157

Photo1.PNG

ご応募、お待ちしています。


事業担当 根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 17:06 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
2019年4月生活記録 第10期生 辻功一[2019年05月08日(Wed)]

こんにちは、今日も生きています。
10期生の辻 功一です。

オーロニ大学でお世話になったナンシー教授が今学期限りでリタイアするそうで、サプライズ訪問してきました。
変わらずお元気そうでした。リタイア後はご趣味の時間をゆっくり過ごしたいとおっしゃってました。チコ大学へ転学して以来、すっかりご無沙汰しておりましたが、卒業前にお会いできてよかったです。

201904.jpg
<お元気そうなナンシー教授>

さて、残り1ヶ月。

BADM 495 (Applied Strategic Decision Making)
「戦略的意思決定」

最後のクラスもいよいよ佳境を迎え、講義で学んだ様々なフレームワークを使用し、分析と改善提案を行うというアサインメントで忙しい日々を送っていました。

コストコを題材にチョイスし、マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱するFlexonsというフレームワークを当てはめて分析しました。

Flexonsアプローチとは何ぞや?

なかなか難解なので具体的な説明は省きますが、簡潔に述べると以下の作業になります。
  • 5つの切り口からそれぞれの問題点と解決策を探る。
  • そしてそのためには何を分析するべきかを考察する。

この分析を通して、個人から組織、業界、そして社会まであらゆるレイヤーでのあいまいで複雑な問題を具体的に構造化し、そこからより優れた革新的な解決策を生み出そうという試みです。

Flexonsから導き出した結論は単刀直入に言うと、現在のコストコ戦略を維持した場合、、、 令和五年 から頭打ちになり苦しくなるだろうというものです。
あ、いや、単に「令和」を使ってみたかっただけで、レポートでは普通に5年後と書きました(笑)
なぜ頭打ちになるのかという理由はかくかくしかじかで、僕の考えるサステナビリティな戦略を提案しました。

5月は学生最後のプレゼンテーションを行い、そして学期末試験を迎えます。
その後は、いよいよ卒業です。

以上です。
日本ASL協会から8,188km離れたチコ大学からの報告でした。
ありがとうございました。
4月生活記録 【第13期生 山田茉侑】[2019年05月08日(Wed)]
5月に入ってようやく花や動物たちが「こんにちは」と春の訪れを告げ、活力あふれる景色に外を歩くのが楽しくなる季節がやってまいりました。

写真は、ボストン大学教育学部の建物です。
s_IMG_0397.jpg


今月のテーマは、「Home Signer(ホームサイナー)」です。

「言語とはなにか」「なにが言語を言語たらしめるのか」そもそも、「言語はどうやってできあがるのか」。たとえ言語を流暢に使いこなしても、そしてたとえ言語を創成する一員であったとしても、この疑問に答えていくことは並大抵のことではありません。長い年月と、多くの人々の意思疎通なくては、言語は自然と発展していきません。それが上記の疑問をより複雑にさせています。


さて、「Home Signer(ホームサイナー)」といえば、ニカラグア 手話を思い出させます。ニカラグア 手話は、世界で初めて言語の成り立ちが記録された言語です。ろう学校が建立するまで、ニカラグアの多くのろう者たち(ホームサイナー)は家庭内でのみ通じるサインでコミュニケーションをとっていました。1970年代にろう学校が建立してから、次々とろう者が一つのコミュニティに集まるようになり、そこでそれぞれのサインが持ち出され、混ざり合い、洗練されていきました。ニカラグア 手話は、20年の歳月を経てろう者たちによって生み出されていったのです。
ニカラグア 手話の成り立ちを分析していくことは、上記の疑問に答えるための一つの鍵となるでしょう。そして、ホームサイナーの研究では、ニカラグア のろう者たちがよく対象になっています。



「Home Signer(ホームサイナー)」の話に戻ります。
最初にクラスで「言語剥奪*」について話し合った時に、ホームサイナーのような第一言語を持たない者は「心の理論*が低いのではないか(客観的に考えることが難しい)」「抽象的なことを考えることは難しいのではないか」という意見になりました。様々な論文を読んできていたからです。しかし、実はこれ、全てわたしたちの中にある完全なるバイアス(偏見)だったのです。


言語剥奪…十分にアクセスできる言語環境で育たなかったとき、そして第一言語を獲得するタイムリミット(一般的には5歳と言われています)を逃してしまったとき、それ以降で第一言語の獲得が難しくなること。詳しくは2018年10月生活記録に記載しております。

心の理論…他者の目になって考えること。たとえば、二人の子どもが積み木で遊んでいます。一人が積み木をオレンジの箱に片付けた後にトイレに行きました。その間、もう一人がその積み木を別のピンクの箱に移し替えました。
「トイレから帰ってきたその子どもがもう一度積み木で遊ぼうとしたとき、オレンジの箱とピンクの箱どちらを真っ先に確認しますか」
読者のみなさんは全ての過程を知っていますが、トイレから戻ってきた子どもはもう一人の子どもが積み木をピンクの箱に移し替えた過程を見ていません。そのため、その子どもは「オレンジの箱」を真っ先に確認するでしょう。このように、他者の目になって考えることを「心の理論: Theory of Mind」といいます。




2018年10月の生活記録で紹介したこちらの記事、覚えておりますでしょうか。


Screen Shot 2019-05-07 at 8.42.38 AM.png

先日こちらの論文を改めて読んでみたら、「ホームサイナーは1から4までの数字であれば推測することができるが、5よりも大きな数字になると難しくなる。しかし、それでも答えが合っているかどうか、もっと指を叩いた方がよかったのかどうかを、実験の後に尋ねるのです。つまり、研究者たちが答えを知っていること、数を数えられることを知っていたのです。」という記述がありました。この記述からもわかるように、第一言語を持たなくても、彼らは他者の目線に立って物事を考えることができるのです。

また、家にいる聴者の家族よりも、ホームサイナーの方がサインを流暢に使いこなしているという実験結果もあります。そして、ホームサイナーのサインはジェスチャーレベルではなく各自によってルールが構築されており、家族(聴者)よりもビデオ越しで見たわたしたちのような外国にいる他のろう者の方が理解できたという驚きの結果にも出会いました。

心の理論について、ろう児は心の理論が低いという論文が多い中、ある研究は、心の理論が低いという結果がでた方たち(ホームサイナー)を集め、いくつかのシチュエーションを経験させることで、その方たちの2度目の実験のスコアが上がったことを確認しました。心の理論は誰でも発達できるという可能性を示唆しておりますね。

これらのことから、たとえ強力な第一言語を持たなくても、脳は世の中を認識し、それに合わせて人間が人間になるために常に育っていることがわかりました。



世の中の現実をグラフや数字にすることはできます。そして、それは現実を動かすための大きな動機にもなり得ます。しかし、そこからあれこれ推測することは、それこそ目の前の現実を見失わせてしまう恐れもあると改めて反省させられました。




追記
今学期とあるクラスでは、プロジェクトとして英語版のウィキペディアを編集しました。テーマは伏せますが、他の国に紹介したいという思いから、日本のろうに関して馴染みの深いテーマで書き上げました。ウィキペディアの編集はいかに自分の中にあるバイアスに気づくこと、中立性を保つことの難しさを痛感する戦いの日々でした。もしも英語版ウィキペディアのどこかでお会いできましたら嬉しいです。


それでは、また翌月にお会いしましょう。
2019年4月生活記録【第13期生 橋本重人】[2019年05月08日(Wed)]
このブログを書いている今、来週のプロジェクト、最終テスト、そしてインターンについてのプレゼンと、春学期総まとめの準備に追われています。かなり大変ですが、この学期に学んだこと、調べたことをどのように表現したらいいのかを振り返る良い機会になっています。私の同期は個性的なキャラクターが揃っているので(例年と違って、ろうばかりです)、彼らの発表を見るのも楽しみです。

さて今回は前回の続きで、まだ説明していなかったChildren's Literature(児童文学)について書きます。

Children's Literatureは学部のクラスです。なぜそのクラスを選んだかというと、以前ろう学校幼稚部に勤務していた私が絵本の読み聞かせが好きだったことがきっかけです。当時は、帰りの会で毎日絵本の読み聞かせを行っていました。また、どのように読み聞かせを行えばいいかをいろいろと研究もしました。例えば、ろうの先生による読み聞かせや手話ビデオを何回も見て真似して自分なりに手話表現を工夫したり、手話表現を物語の内容や子どもたちの反応に合わせて変えてみたり、子どもたちが集中して見ることができるように試行錯誤をしてきました。子どもたちが「もっと!もっと!」と読みたくなるよう、自分から進んで読もうとなるよう、絵本の読み聞かせを行ってきたつもりです。そういった経験を踏まえて、ギャロデット大学はろう大学だからこそ何か他にヒントになるようなものが得られるのではないかと思い、履修することにしました。
このクラスでは、絵本の文章とイラストの中にRacism(人種差別)やGender(性差)にかかわるようなものはないかをチェックしたり、学校で読ませてもいい内容かどうかを学生同士で議論したりしました。意外とそういった問題は絵本だけでなく身近な生活の中でもよくあります。たとえば、テレビコマーシャルや広告誌などがありますね。例を挙げます。
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(90年代の広告)

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(現在の広告)

この二つの広告の違いを見つけられましたか?
学生たちが答えたのは、

・出ている人はすべて白人である。
・女の子、男の子の遊びがはっきりと分かれている。
・女の子の遊びは家事に関することばかり。


・バラエティーがある。(音楽、料理、ゲーム、お菓子作り、人形遊び、組み立て)
・白人だけでなく、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系などが出ている。
・女の子、男の子の遊びがはっきりと分かれている。

男の子はこれ!女の子はこれ!というジェンダーに関わることがまだありますね。

また、黒人差別に関わる絵本もありました。

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『たとえ奴隷だったとしても、Mintyは幸せでした』
その文章を読んで、違和感を感じずにはいられません。

先生が言うには、「アメリカの学校では読み聞かせる絵本を選ぶ際、慎重に、それも親にも確認しながら選ぶべきである」ということでした。ただイラストがかわいいから、作者が有名だからといって、絵本を子どもたちに読み聞かせをするようなことは決してしないようにと言っていました。人種意識の高い州によってはそのような絵本を図書館や学校に置かない、子どもたちの目に触れさせないようにするルールがあるそうです。

また、先生に教わった手話での絵本の読み聞かせのルールを学んだので、ここに書き記します。全部で15項目あります。とても参考になります。
1. 絵本の内容を手話で表現する。
2. 絵本の文章と手話、両方とも子どもが見えるようにする。
3. 絵本の中にある言葉の意味を分かりやすく説明する。
4. 手話で絵本の内容を伝えた後、絵本に書いてある文章を読ませる。
5. 子どものしたいことに合わせる。(子ども一人、二人、集団によって変わる場合もあるが、基本子どもたちに任せることも大切である)
6. 絵本の文章の意味合いをはっきりと示す。(この文章は何を伝えたいかをはっきりと伝える)
7. 絵本の流れに合わせて手話の場所位置を変える。
8. 絵本の内容に合わせて手話表現を変える。
9. 絵本の中で出てきたものを子どもたちの普段の生活につなげるようにする。
10. 子どもが集中して読むように促すなど工夫をする。
11. 話し手が視線を使って子どもに興味を持たせるようにする。
12. ロールプレイ(劇遊びなど)をすることで、言葉や文章のイメージを膨らませる。
13. 同じような言葉や決まり文句を子どもが飽きないように様々な手話表現で伝える。
14. 子どもに好ましい環境を整える。
15. 子どもはきっと絵本や文学に興味を持つようになると前向きに考える。

(先生が紹介してくれた論文はこちらです)
Schleper, D. R. (1997). Reading to deaf children: Learning from deaf adults. Washington, DC: Laurent Clerc National Deaf Education Center at Gallaudet University.

今回は絵本・児童文学ワールドでした。それでは、また来月。

2019年4月 生活記録 【第12期生 西 雄也】[2019年05月08日(Wed)]

今学期末になる頃、最終プロジェクトなどに追われる時期に入りました。今回はアメリカろう学校見学とアメリカろう教育の歴史の話を中心とした内容を記載したいと思います。

American School for the Deaf (アメリカろう学校)

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今回、アメリカろう学校への見学に行きました。このろう学校はコネチカット州にあり、
アメリカで最初に設立した私立の (1817年に設立)ろう学校です。現在この学校の設備は新しいものへと変わりましたが、歴史は深いものでした。

基本的な話では、昔、まだアメリカにろう学校・教育がなかった頃、ある裕福な家庭にAlice(アリス)という女の子がいました。彼女はろう者であり、学校教育を受けることができない状態でした。それを心配したアリスの父が、娘の教育方法についてThomas Hopkin Gallaudet(トーマス・ホプキンス・ギャロデッド− アメリカろう学校の設立後にギャロデッド大学を設立)に相談しました。相談されたギャロデッドはろう教育が進んでいるフランスへ行くことを決意し、ろう者であるLaurent Clerc(ローレント・クレーク)と出会いました。ギャロデッドはクレークをアメリカのろう教育向上の為にアメリカへ連れて行くことを提案し、2人はアメリカで一緒に生活することになりました。

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↑Alice(アリス)の像
もし、ギャロデッド がアリスと出会うことがなければ、ローレント・クレークと出会うことはなかっただろう。そして、アメリカろう学校、ギャロデッド大学を立てることはなかったかもしれない。


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↑左:Laurent Clerc(ローレント・クレーク)と 右:その妻(Eliza Clerc)が眠っている墓

そして、ギャロデッドはアメリカろう学校を設立しました。設立した当初はギャロデッドとローレント・クレークがアメリカろう学校のろうの子供たちにフランス手話(Langue des Signes Francaise (LSF))で教育を行いました。後にアメリカのろう者のコミュニティの中で段々とアメリカ手話(ASL)というものができました。またASLの60%は昔のフランス手話から来ているとも言われています。ASLはアメリカのろうコミュニティの中で様々な人種によって確立されましたが、広まった手話の多くが白人達のアイデアで作られた手話だと言われています。なぜなら昔は白人が優位であったこと、アカデミックな会議などに参加するほとんどが白人だというシチュエーションが多かったからです。

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↑ASLがどこから形成されたかの図

日本では1929年に大曽根源助がヘレンケラーとの出会いによって今の指文字があるわけですが、それ以前のアメリカで起きたろう教育やろう者の状況についていくつか知ることができたことは大変勉強になりました。

Deaf Studies Class
今学期履修しているクラスの中で、ろう者の状況や歴史についてのプレゼンテーションや話を記録した古いビデオテープのデータ(1910〜1920年のデータ)を観る機会があり、その中でトーマスギャロデットの活動についてのストーリーについての話がありました。これがきっかけとなり、アメリカろう学校へ見学しようと思いました。また、1900年代のアメリカのろう者はリンカーンに感謝しているという話もありました。なぜなら、これまでの大統領はろう教育に対してあまり肯定的ではありませんでしたが、リンカーンはろう者との交流もないのに、ギャロデッド大学を設立するのを認可するためのサインをしたからです。
このクラスを通して、過去の状況や、ろう者の状況を残すエビデンスを作ることの大切さについて学びました。

第16期留学奨学生、応募受付開始![2019年05月01日(Wed)]
第16期留学奨学生、応募受付開始!

日本財団聴覚障害者海外奨学金事業では、現在、2019年度第16期留学奨学生の募集を行っています。
給付型奨学金)

日本やアジア諸国のろう者コミュニティで必要と思われる分野で活躍することを志す
ろう者・難聴者(一部、聞こえる人)を支援します!


5月1日(水)から応募受付を開始しました。

応募〆切:2019年5月31日(金)

募集の詳しい内容は、こちらからご確認ください。
http://www.npojass.org/archives/18157

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たくさんのご応募、お待ちしています。


事業担当 根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 00:00 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)