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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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第12期 福島愛未奨学生、帰国[2018年12月31日(Mon)]
第12期 福島愛未奨学生、帰国

12月25日、第12期の福島愛未奨学生が留学を修了し、無事に日本に帰国しました。

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<帰ってきました〜! 大阪と言ったら、これでしょ〜>

デフスペース・デザインの本場ギャロデット大学で学び、デフスペース・デザイン事務所でインターンシップを行い、学習に、実践力にと精力的に学んできました。
今後の活躍にご期待ください。
ご支援いただいたみなさま、ありがとうございました。

*福島奨学生は、2019年1月5日の帰国報告会で、留学報告をします。

事業担当:根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 19:59 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
第9期 瀧澤泉奨学生、帰国[2018年12月29日(Sat)]
第9期 瀧澤泉奨学生、帰国

12月24日、第9期の瀧澤泉奨学生が留学を修了し、無事に日本に帰国しました。

Izumi.jpg
<ただいま!−新潟空港>

留学中は、ギャロデット大学大学院で、ろう児のための絵本製作から国際開発を学び、大学内・外でのインターンシップも経験してきました。
今後の活躍にご期待ください。
ご支援いただいたみなさま、ありがとうございました。

*瀧澤奨学生は、2019年1月5日の帰国報告会で、留学報告をします。

事業担当:根本
Posted by 事業担当者 根本和江 at 22:54 | 事業担当者よりお知らせ | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
2018年11月生活記録 12期生 福島愛未[2018年12月08日(Sat)]
こんにちは、12期生の福島です。

ハロウィンが終わると気温がぐっと下がり、真っ赤に映えていた紅葉も散ってしまいました。キャンパス内の景色も少しガラーンとした寂しい印象に変わりました。
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11月のビッグイベントは、DeafStudies Conference(ろう者学学会)でした。11月1日〜3日の3日間ギャローデット大学のキャンパス内で行われました。今まで日本でもいくつかの学会に参加したことがあるのですが、ろうに関する学会は初めてです。アメリカ国内にとどまらず、日本・ベルギー・イギリス・ドイツなど様々な国からプレゼンターが来ていました。研究内容も、黒人ろう、盲ろう、デフアート 、ろう女性など幅広く、この3日間で、ろう者学って奥深い学問だと痛感しました。

スクリーンショット 2018-12-07 午後9.23.42.png



今回のDeafStudies Conferenceにはデフスペースデザインについての研究テーマはありませんでしたが、今後の日本のデフスペース デザインの研究が進めば、この学会で発表してみたい!そのために頑張ろうと、いい刺激も受けました。

スクリーンショット 2018-12-07 午後10.02.18.png



また11月はこれまで地道に進めていたインターンの成果が目に見えるようになった月でした。現在のインターンは、ギャローデット大学にあるOffice of Campus Design and Plannningというデフスペース デザインのオフィスに通っています。これまでいくつかのプロジェクトを任せられて来ましたが、日本で経験して来たインターンと全く異なるやり方で初めの頃はとても戸惑っていました。



日本では、インターン中にやるべきことを細かく指示してもらっていたのですが、ここでは大まかなプロジェクトの指示のみを受けた後、全て自分で考え行動する必要がありました。仕事の経験が全くなく、企業とのやりとりもプロジェクトをどのように進めるのかも全く何も知らない状態でしたが、まずは自分で何をするべきか考えるという経験がとても斬新でした。


ここでは手話でやり取りをするため、インターンだから、学生だから、聞こえないからという言い訳は通用しません。このような経験は初めてでした。特に、週に1度上司と行うミーティングでは、常になぜこのような進め方をしたのか、なぜこのような考えを持ったのかと問われて来ました。これまで自分の考えや行動について説明する機会が少なかったので、はじめはうまく説明できず、モジモジとしていましたが、今では自分の意見をはっきりと述べれるようになって来ました。

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(プロジェクトのために毎日キャンパス内を歩いています)


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(何の巣だろう、鳥?リス?)


担当しているプロジェクトが完成しつつありホッとしている反面、もっとここで学べたらという気持ちもあります。残された時間は短いですが、帰国までに一つでも多くのことを吸収できるよう、期末シーズンもインターンも頑張りたいと思います。

ではみなさんまた来月きらきら
2018年11月生活記録 第10期生 辻功一[2018年12月08日(Sat)]

こんにちは、今日も生きています。
10期生の辻 功一です。

11月は大変な時期でした。
日本のニュースでも流れていたのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、カリフォルニア州の二箇所で大規模山火事が発生しました。一つはサーフィンのメッカで有名な南カリフォルニアのマリブ、もう一つは北カリフォルニアのパラダイスです。

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<紅く染まったチコの空。昼にも関わらず街灯が点いています>

特に11月8日から25日にかけて燃え続けたパラダイスの被害が甚大で、東京23区とほぼ同じ面積の620km2が焼失し、88人の死者と25人の行方不明者を出しました。火災による大気汚染も深刻でパラダイスから300km離れているサンフランシスコまで煙が届きました。あるニュースによると、当時の大気汚染は世界でも最悪レベルだったそうです。

そのパラダイスはチコの隣にあり、車で20分の距離です。
チコでは黒煙に包まれ、太陽光が遮られて朝にも関わらず夜と錯覚する位の暗さでした。外では灰が舞い、家の中は煙の焦げ臭いにおいで充満していました。

多くの教授や職員の住まいがパラダイスにあるということもあり、大学はサンクスギビングと合わせて約二週間、閉鎖されました。同時に多くの学生たちが実家へ戻り、チコはゴーストタウンのようでした。

今は鎮火しましたが、パラダイス一帯は焼け野原となり、危険なうえ行方不明者もまだいるので、立ち入り禁止となっています。半年以上続く見込みだそうです。

<火災発生の翌日、チコ上空から撮影>

FINA 369 (Real Estate Finance and Investments)
「不動産ファイナンスと投資」
約5万人のパラダイス一帯の住民が主にチコへ避難してきたため、チコの不動産業界も大きく影響を受けました。講義内容を大きく変更して、チコの不動産の現状と予測について解説を受けました。

不動産物件売買では既に価格上昇していますが、非常事態時は日常生活必須品(賃貸住宅を含む)の価格据え置き(10%以上の価格上昇を認めない)法律があり、賃貸住宅の賃料は今のところ目立った値上げはありません。しかしチコでは普段、空室率が1%前後で推移しているところに急に人口が増えたため、完全に供給不足に陥っています。これから賃料も緩やかに上昇していくだろうという予測です。

今回の火災から様々な面でのリスクマネジメントが重要であると改めて感じました。

以上です。
日本ASL協会から8,188km離れたチコ大学からの報告でした。
ありがとうございました。
2018年11月生活記録【第13期生 橋本重人】[2018年12月08日(Sat)]
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 課題の難易度が徐々に上がって苦しんでいた時に、素敵なものと出会うことができました。ギャロデット大学の建物の壁にはあちこちに付箋が貼られていて、なんだろうとそれらを読んでみると「You will have a great day!(きっといいことが起きるよ!)」「Believe in yourself!(自分を信じて!)」など、いろいろなコメントが書いてありました。誰の所為かは分かりませんが、そんな一言が私を元気づけてくれました。やる気や自信を失くした時に、そんな短い文章で気持ちを前向きに変えることができるなんて、すごいことですよね。とても励みになりました。言葉を選ぶって本当に大切ですね。おまけに、寮内のエレベーターには「You are loved(あなたは愛されているよ)」という付箋が貼ってあり、言葉に言い表せない気持ちになりました。
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○Trends in Special Education(特別支援教育の動向)
 特別支援教育の基本的なことであり、日本ではあまり知られていない「UDL(学びのユニバーサルデザイン)」の概念を学ぶことができました。「ユニバーサルデザイン」という言葉はよく知られています。例えば、段差のある場所ではスロープがあると、車椅子ユーザーだけでなく、お年寄りや松葉杖を使用している人たちなどにも身体的な負担が軽くなります。文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることをめざした建築(設備)・製品・情報などのデザインと定義されています。使用者を限定することなく、誰もが使えるようにするものですね。では、「UDL」とは何かというと、学校で子どもたちが自分に適した学び方を選んで学習できる柔軟なアプローチを指します。ここアメリカでは20年以上も前から科学的研究によりデザインされており、どんな子も教室で活躍し、学ぶことができるための授業づくりの枠組みだそうです。
では、例を挙げてみます。学校の授業で、子どもたちが話し合いをします。先生は子どもたちの意見を聞いて黒板に書いてまとめます。子どもたちは黒板に書いてあるものをプリントやノートに書き写します。最後に、先生が助詞を間違えていないか、今回の授業の内容を理解できているかどうかチェックして丸をつけます。そんなよくありがちの授業でも、特別支援を必要とする子どもたちはつまずいてしまうことがたくさんあります。例えば、

1. 体が固定できず、椅子から離れてしまう。
2. 話に集中できなくて足に刺激を与えたくなり、貧乏ゆすりや上靴を脱いだりする。
3. 黒板に書いてあるものが見えない。
4. プリントやノートに書き写すことが難しい、そんな自分が嫌になり感情的になってしまう。

など、学習を阻害するいろいろな障壁を目の当たりにします。そんな時、UDLの概念を取り入れるとしたら、

1. 体を固定するようDycem(滑り止めのシート)を椅子の上に敷いて座る。
2. 上靴を脱いで、椅子に座りながら足裏ボードに足を置く。
3. iPadを使って黒板に書いてあるものを写真で撮る。そして、自分の指で程よい大きさに調整したり、先生にいつ消されるか心配などせず自分なりのペースで黒板の内容を読んだりすることができる。
4. 手話中心の子はビデオをとって、まとめをする。パソコンが得意な子はパソコンに入力して印刷する。音声中心の子はボイスレコーダーを使って記録する。

といったような方法があります。そんな柔軟な対応をすることで、子どもたちは意欲が高まり、集中して学習に取り組むことができるのです。
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↑一人ひとりの児童生徒に合わせたアプローチの一例です。


○Teaching functional Curriculum to Deaf Students with Disabilities(ろう重複障害の生徒への機能的カリキュラムの指導)
 学生同士で話し合いを進めたり、グループに分かれてテキストをそれぞれの章を要約して(パワーポイントでまとめていました)、共通理解を図ったりするという学生中心のクラスです。Academic Reading and Writing(読み書きの指導)、Math-time and Money(時間とお金の指導)、Motor skills(運動)、Recreation and Community skills(レクリエーションとコミュニティースキル)など様々なスキルをどの場面でどのように指導・評価したらよいか、その指導計画を作成する練習をしています。オンラインクラスですが、アメリカ手話が全くなく、英語のみで進めています。クラスメートたちは面白いことに、私を除いて全員が現役教員でした。このクラスはろう発達障害・重複障害に関するクラスですが、やはりどの学校現場でもその専門性は求められているそうです。そのため、みんなギャロデット大学から離れて暮らしており、オンラインクラスという形で授業を進めているわけです。ジョージア州、マサチューセッツ州、フロリダ州、ワシントンDC(ギャロデット大学内のケンダル聾学校で教えている受講生もいました)、カナダなどです。彼らの意見や経験談は興味深いものばかりです(英語なので、イメージしにくいこともありましたが)。学校の授業時数が異なる、長期休暇の開始日や終了日はそれぞれの環境(北は雪、南はハリケーン、西は山火事などの影響があるため)に合わせているなど州によって異なっているそうです。さすがアメリカは広いな、と実感しました。
2018年11月 生活記録 【第12期生 西 雄也】[2018年12月07日(Fri)]

11月終わり頃になると、ワシントンDCでは冬が近づいてきていると感じるほど、寒くなっています。
これまで行ってきたインターンシップは11月中旬に終わり、少しほっとしましたが、次は最終テストや最終プロジェクト、レポートなどに追われる時期に入りました。
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↑木の葉はほとんど散ってしまい、
街中も落ち葉だらけの状態になっています。

◆クラス◆

これまでのクラスですが、ほとんどのクラスが、それぞれの理論を学び、同時に学ぶ内容をインターンシップにも取り入れて行うというものでした。

Literacy Applications in ASL/English Bilingual classroom K-12
(K-12のバイリンガル[ASL /英語]教室でのリテラシー(読み書き)応用)

バイリンガル教育をどのようにクラスの中に取り入れるかの理論やアイデアなどについて学んできました。
前回の生活記録でも述べたように、移民の人が異国からアメリカへ英語を学ぶときの理論をもとに第一言語である言語と同時に、もしくは、第二言語である言語をどのように向上すると良いのかというコンセプトを取り入れながら議論深めました。そして、第一言語が手話であれば、第二言語が英語の場合、どのような方法で行うのが良いのかを学んで行きました。
更に第一言語の言語は言語獲得などの理論がベースとなり、第一言語の言語力があれば、第二言語の言語も上達するという話ですが、どのように第一言語の言語からどのように第二言語へ切り替えたり、元々の第一言語の言語やコンセプトからどのように第二言語を学ぶ・教育する方法が良いのか、またろう者の場合、言語獲得の開始時期(年齢)や言語獲得の状況・環境に違いや問題がある中、この問題をどのように観つつ、指導するべきかを議論するという興味深い内容もありました。
そして、これまで学んできた内容をもとにバイリンガル教育を取り入れた指導計画を作成し、その指導案はインターンシップ活用するなどしました。また、最終プロジェクトは、バイリンガル教育の理論を取り入れた指導案をギャロデッド大学内でプレゼンテーション発表を行うというものでした。
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↑プレゼン発表の様子

K-12 Classroom-Based Assessment
(K-12教室の評価)
これまでクラスルームでの様々な評価方法について学びました。
すなわち、教室の中で生徒達を評価するときに様々な評価方法の種類があります。例えば、一つの教科でテストやRubricという教員が評価するための表によって、評価したスコアをもとに、生徒の得意な面や弱点などを分析・評価する方法を学びます。そして、行動や心理・感情などには、抽象的な部分があり、その抽象的な事例に対する評価の仕方は何が良いのか、またこのような物事に対してどのように認識すると良いかを議論しながら学びました。例えば、ある生徒は計算が得意ですが、家庭の中で親からの厳しい叱責などのストレスによって感情が不安定になり、まともに評価ができない状況が生じた場合、この生徒は計算ができないんだと分析、判断を下すのではなく、どのように指導、対応するのが良いのかを考える材料にもなります。
更に、インターンシップ先で、クラス全体の生徒を対象にした評価方法(自分の指導しているクラスにはどのような評価が良いか、またその評価方法を使ってみる)と、一人の生徒を対象にIEPなどの資料をもとに分析・評価し、レポート作成を行いました。

Capstone
夏から、卒業に必要なCapstoneのテーマについて考え、テーマ決定や資料収集をしました。Capstoneは一年かけて行うことになっており、講義などはなく、主に自分で研究やまとめ、担当教授に提出・審査をする流れとなっています。
今学期はCapstoneの提案を進めることが中心となり、テーマは「ろう者(生徒)のためのデフアートカリキュラム」を予定しています。このテーマをもとに様々な資料を集め、「なぜカリキュラムにデフアートを」ということをDe'VIAのコンセプトも取り入れながら、内容をまとめています。また同時にDe'VIAに取り組んでいる方との情報交換も進めています。
2018年11月生活記録 【第13期生 山田茉侑】[2018年12月01日(Sat)]
みなさまこんにちは。
ボストンで一番美しい紅葉の季節は、木枯しによってすっかり一掃されてしまいました。

秋景色.jpg
こちらの紅葉が、5日後にはこうなりました。


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上の写真は、ボストン郊外にある公園で撮った湖です。見渡す限り静かな視界に、もうすっかり冬になってしまったと心寂しさを感じます。



さて、今月は「Lead-K」について紹介したいと思います。今月の流れは、以下のようになります。

⑴ 前置き アメリカのろう教育の歴史を振り返って
⑵ Lead-Kとは
⑶ Lead-Kの課題と戒め
⑷ Lead-Kはバイアスがあるのかどうか

⑴ 前置き:アメリカのろう教育の歴史を振り返って
これまでのろう教育の歴史を振り返ってみると、アメリカは手話→口話→手話→口話と移り変わってきています。「ふりこ」、その様にろう教育の行く末を形容されています。

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そうです、現在はより口話教育が強くなっております。実は、全米の98%のろうの子どもは、手話による教育を受けておりません。そのような子たちの言語は正常の発達過程に沿っているかというと、そうではありません。大幅に遅れていることも珍しくありません。また、ろう学校でも、5歳児の子どもの言語がわずかなものだということもよくある話です。
そのような中、「Lead-K」のキャンペーン運動が始まりました。「Lead-K」とは、日本で前からホットな「手話言語条例」制定推進運動のようなものです。
こちらの運動が始まってから、もしかしたら、ふりこの向きが手話に向くのではないかと全米でも注目されており、最近クラスでも取り上げられました。


⑵ Lead―Kとは
(Lead-K のウェブサイトのURL: http://www.lead-k.org
(こちらで、Lead-Kの方針や現在の状況が詳しく紹介されてます。http://www.lead-k.org/media/
「Lead-K :Language Equality and Acquisition for Deaf Kids」とはなんでしょうか。Kindergarten (5歳児クラス) に入るまでに、子どもたちが5歳児レベルの言語発達に辿り着いている状態にすることを目標に、「州全体で0−5歳児の英語、ASLの発達テストを義務付ける法律」を推進する運動のことです。
ASL、英語どちらも同じ言語発達過程を持ちます。しかし今までは英語、ASLどちらにおいても発達テストを行うかどうかは各機関の判断に委ねられておりました。つまり、子どものASLや英語のレベルが年齢同等なのか判断できないまま、課題や解決方法を話し合うこともできず言語が大幅に遅れたまま5歳に達してしまうという現状にありました。
また、先生が言語の遅れについて保護者に話しても目に見える物差しがないため、なかなか信じてもらえないこともあったそうです。例えば、保護者にとっては、子どもと正常にコミュニケーションが取れていたつもりでも、実は単語だけのやりとりだった、というケースもよくあるそうです。
それが、発達テストを義務付けることで、子どもの言語のレベルが視覚化されます。そして、現在の課題が洗い出され、これからどうするかという将来のことを話し合えるようになります。例えば口話で育てたものの、テスト結果を見てコミュニケーション手段をASLに切り替えるなどといった判断が早いうちからできるようになります。
ちなみに、テストはASLと英語両方やらなければならないという縛りはなく、どちらか一方のみのテストでも可能だそうです。
現在はカリフォルニア州を含む7つの州で評価を義務付ける法律が制定されました。(https://www.livebinders.com/play/play?id=2106355
将来はIDEA(Individuals with Disabilities Education Act)という全米の法律レベルで制定されることを目標にしているそうです。


  ⑶「Lead-K」の課題と戒め
現在2つの課題があります。
1) 英語の発達リストとテスト方法は全米で共通のものが使われている一方、ASLは発達リストがあっても、共通のテスト方法が確立されていない。

例えば
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子どものASLの表出を一からカウントしてテストする先生もいれば、テストをせず自己判断でチェックを入れる先生もいます。また、保護者の「大丈夫です、500語あります」という言葉に従ってチェックを入れる先生もいます。つまり、各個人の判断によって評価が委ねられてしまっています。


2) ASLのテストをする先生が、必ずしもASLができるとは限らない。
例えば、手話の音韻の一つである手の形が間違っていても、オーケーを出す先生がいるのです。2歳であれば、手の形が間違っていても問題はないのですが、5歳になるとそそうでもありません。手話に長けていないと手話の音韻の評価は難しいものがあります。


もしも、日本でLead-Kのような言語発達の評価を義務付ける法律を推進する場合は、アメリカでの課題を参考にする必要があります。日本手話の同一した発達リストとテスト方法を確立させ、かつ日本手話の評価に関しては専門家を呼ぶか、テストを行う者の条件を加える必要があります。


⑸ Lead-Kはバイアスがあるのかどうか

クラスで、Lead-KはASLを持ち上げている、バイアスがあるのではないか、と話し合いました。確かに、Lead-Kのメンバーは強力なろう者のリーダーで固められています。また、メンバーの思惑が感じ取れるときもあります。ですが、英語至上主義だった中ようやくろうの子どもの言語であるASLが英語と同じように一つの言語として並んでいるのです。そこにバイアスがあると考えること自体が英語を持ち上げるバイアスとして存在するのかなと思いました。

長くなりましたが、Lead-K、とても興味深い法律ですね。発達リストにそってテストができると、子どもの言語のレベルが目に見える形で現れるので、聞こえる保護者たちも安心して日本手話などで子育てができるようになるのかな、と思いました。それでは翌月またお会いしましょう。