写真は、カリフォルニア州立バークレー大学の図書館です。
週に一度は図書館でMacを広げ、おしゃれな雰囲気に貢献しております。
今月は、縁があってとあるワークショップに参加しました。CDIの試験を受ける資格を得るためのワークショップです。
✩CDI(Certificated Deaf Interpreter)…手話通訳の免許を持つデフ通訳者
CDIになるには、様々な条件があります。
・約10日間のワークショップに参加
・筆記・実技試験の合格
・AAの学位(近い将来、大学卒業程度(BA)の学位が求められるようになるそうです)
など
実は、デフ通訳者の中にも、手話通訳の資格を持たないまま活動してきた方も多いそうです。通訳のトレーニングを受けられないまま、自分の経験を頼りに通訳してきたというお話も伺いました。
ろう者通訳が必要、でも人が足りない、そういう現状にあるそうです。
病院関係の手話通訳派遣の場合は、州の法律でCDIの資格のある通訳者の派遣が必須になっています。(ただし、その資格は医療に特化した資格ではないのです・・・。)
ワークショップでは、通訳のトレーニングをこなし、最後は実際にろう者を前に通訳の実践もしました。また、様々なテーマにスポットを当てた講義も受けました。講義のたびに議論が白熱し、連日夜の9時や10時まで講義が続きました。その中でも、一番印象に残ったものをシェアしたいと思います。
【他者と協働するときに、どうして相手のアイデンティティを知る必要があるのか。】
アイデンティティといえば、「デフアイデンティティ」などが身近ですね。そのほかにも、「留学生」「日本人」「○○ろう学校出身」などが、時としてわたしの中で強いアイデンティティとして現れてきます。
英語で、Intersectionalityという言葉があります。様々なアイデンティティが融合して人が人になる、また、時と場合によって、どのアイデンティティを大事に捉えるかという優先順位はうつりかわっていく。
例えば、聴者に囲まれているとき、デフアイデンティティがわたしの中で強く現れる、しかし、ろう者の中にいるときは、出自など他のアイデンティティが強く現れる。
昔読んだ本の中に、アイデンティティは抑圧からの昇華によってつくられるもの、とありました。Intersectionalityの概念と合わせて考えてみると、なるほど深いものがあります。
文化の違い、環境の違い、もっといえば、相手のバックグラウンドを知る。難しいですが、相手のアイデンティティを構築するものは何かを知ることは、人間関係構築の中でとても大切なことですね。
さて、なぜこのトピックに興味を持ったのかというと、この議論を通して突然アメリカ人を近く感じたからです。
ワークショップに参加した白人の中に、2歳の時にアメリカに移住した方がおります。その方は、アメリカ国籍を持っておりません。しかし、メキシコ人移民と待遇が異なるそうです。その理由の答えはただただシンプルで、見た目が白人だから、とおっしゃっておりました。他国からの移民と本質的には同じであるにも関わらず、アメリカ人として見てもらえる。しかし、国籍がないことで、2歳の時からずっとその方の中で葛藤し続けているそうです。
また、アメリカ生まれアメリカ育ち、ASLと英語が母国語の方ですが、見た目がアジア系の方の言葉も印象に残っております。その方は「アメリカ出身と言えど、親の出身も自分の中のアイデンティティを構築する大事な要素である」とおっしゃっておりました。その言葉に、参加者のほとんどが大きく頷いていました。
アメリカ人といっても、同じ人はいない。見た目や見えないところと、育ちのギャップにそれぞれ思うことがあり、アイデンティティの葛藤がある。そのような方達をココナッツ、またはオレオクッキーと例えられるそうです。
実は1年間ここカリフォルニア州で過ごしてみて、日本人、留学生というアイデンティティはあるもののなぜか現地の人と自分は異なるとは思えなかったのです。文化やバッググラウンドは異なるけれど、どこか本質的なところは同じだと思えたのです。その中で、日本と同じ、日本と違う、と区分していたのは自分の方だったのかもしれません。そう思う要因の一つに、今回、このような周りの人のお話を聞いて、なるほどと腑に落ちるものがありました。
最後に、CDIのワークショップに参加したことを20代のアメリカ人ろう者の友達に伝えると、みなさん興味深々でたくさん質問をうけました。その方達が、笑顔でいつかCDIとして活動したい、というのをきいて、またまたパワーをもらいました。
それでは来月またお会いしましょう。