2024年1月「記述文法と規範文法」鈴木美彩(18期生) 生活記録[2024年02月08日(Thu)]
2023年1月 第18期生 鈴木美彩 生活記録
記述文法と規範文法
https://youtu.be/8qAm6P3YVK8
ライアン・レピック教授によるLanguages of the World: 世界の諸言語のクラスは言語学の中でも言語類型論に特化した授業です。世の中には様々な蝶々がいて、定義によって蝶と蛾に分けたり、色や大きさ、オスメスの区別など、様々な視点から分類することができます。それと同じように、世界中のあらゆる言語を様々な基準から分類するのが言語類型論です。この授業ではクラスの一人一人が個人的にこれまで聞いたことがない言語を1つ選び、それを学期を通して調査していきます。
そのために必要なのが文法の本です。これはある言語の参考書やテキストのようなものではなくて、その言語の文法を事細かにに説明した本で、できる限り実例を広範囲に集めた記述本です。総量700は軽く超えるほどのページ数です。参考書は300ページ以上あるものもありますが、なぜそれだけでは不十分なのでしょうか。そこには記述文法(descriptive)と規範文法(prescriptive)という二つの対になる考え方が関係しています。この二つは言語学課程での最初の学期でも学ぶほど大事な基本です。 まず、規範文法の英語はprescriptiveで、prescribeの部分は指図するとか規定する、薬を処方するという意味もあります。学校教育における英語の授業は規範文法のいい例で、こう在らなければならないと説明することです。文法はSVOだとか、現在形、過去形、未来形のそれぞれのルール区別しなければならない、などが規範文法的なアプローチにあたります。逆に実際の事象のみをただ説明するのが記述文法です。言語学は限りなく記述文法に近く、規範文法的なアプローチは言語学者にふさわしくありません。規範文法的に言語の文法をこういうルールだからこう在らなければならないと説くのは言語学者の仕事ではなく、むしろ非文法的かどうかに関係なくある事象を分析し一つの仮説を立てることがより言語学的な行いです。だから、文法を参照した記述文法的な本は記述的がゆえに桁違いのページ量を持つのです。現在、受講している手話教育課程でもこの用語を学びましたが、そこでは記述文法も規範文法もバランスよく使っていく必要があるというように教えられました。手話教師は言語学者ではない人々に言語を習得させるのが仕事なので、誰が読んでもわかりやすいようにルールを整理し、それを活用することが必要です。ただ事象が説明されているだけでは応用に進むことができません。同じ言語を扱う学問でも、記述文法と規範文法においては全く異なる視点を持っているのが興味深いです。
この授業では私はアフリカ大陸のエチオピアに沢山存在する言語のうち、Sidaamaを自分のテーマにしました。ギャロデット大学の近くにSidamoというエチオピアのカフェがあり、同じ名前の言語があることを知ったのがきっかけです。地元ではSidaamaと呼ばれているそうで、これからの調査が楽しみです!
記述文法と規範文法
https://youtu.be/8qAm6P3YVK8
ライアン・レピック教授によるLanguages of the World: 世界の諸言語のクラスは言語学の中でも言語類型論に特化した授業です。世の中には様々な蝶々がいて、定義によって蝶と蛾に分けたり、色や大きさ、オスメスの区別など、様々な視点から分類することができます。それと同じように、世界中のあらゆる言語を様々な基準から分類するのが言語類型論です。この授業ではクラスの一人一人が個人的にこれまで聞いたことがない言語を1つ選び、それを学期を通して調査していきます。
そのために必要なのが文法の本です。これはある言語の参考書やテキストのようなものではなくて、その言語の文法を事細かにに説明した本で、できる限り実例を広範囲に集めた記述本です。総量700は軽く超えるほどのページ数です。参考書は300ページ以上あるものもありますが、なぜそれだけでは不十分なのでしょうか。そこには記述文法(descriptive)と規範文法(prescriptive)という二つの対になる考え方が関係しています。この二つは言語学課程での最初の学期でも学ぶほど大事な基本です。 まず、規範文法の英語はprescriptiveで、prescribeの部分は指図するとか規定する、薬を処方するという意味もあります。学校教育における英語の授業は規範文法のいい例で、こう在らなければならないと説明することです。文法はSVOだとか、現在形、過去形、未来形のそれぞれのルール区別しなければならない、などが規範文法的なアプローチにあたります。逆に実際の事象のみをただ説明するのが記述文法です。言語学は限りなく記述文法に近く、規範文法的なアプローチは言語学者にふさわしくありません。規範文法的に言語の文法をこういうルールだからこう在らなければならないと説くのは言語学者の仕事ではなく、むしろ非文法的かどうかに関係なくある事象を分析し一つの仮説を立てることがより言語学的な行いです。だから、文法を参照した記述文法的な本は記述的がゆえに桁違いのページ量を持つのです。現在、受講している手話教育課程でもこの用語を学びましたが、そこでは記述文法も規範文法もバランスよく使っていく必要があるというように教えられました。手話教師は言語学者ではない人々に言語を習得させるのが仕事なので、誰が読んでもわかりやすいようにルールを整理し、それを活用することが必要です。ただ事象が説明されているだけでは応用に進むことができません。同じ言語を扱う学問でも、記述文法と規範文法においては全く異なる視点を持っているのが興味深いです。
この授業では私はアフリカ大陸のエチオピアに沢山存在する言語のうち、Sidaamaを自分のテーマにしました。ギャロデット大学の近くにSidamoというエチオピアのカフェがあり、同じ名前の言語があることを知ったのがきっかけです。地元ではSidaamaと呼ばれているそうで、これからの調査が楽しみです!