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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2022年11月生活記録【第18期生 田村誠志】[2022年12月07日(Wed)]
皆様、おはようございます、こんにちわ、こんばんわ

日本の秋がそろそろ終わり、冬ももうすぐ迫ってきてしまいました。
同時に秋学期のFinal examとCognitive linguisticsのPresentationと、秋学期で学んだ各クラスの全ての知識を試されるQuals examという三つの壁も近づいてきています。
今年は11月18日からThanksgivingsというFall breakの週で、忙しい勉強の日々から離れゆっくりと休めることもできました。もちろん宿題もありますが…。

現在、三つのクラスは基本的なセオリーやコンセプトをしっかりと固めた上で、実際にどのような分析を行うのか、実技に向けての訓練が多く出題されております。
Generative LinguisticsではDescriptive grammarからより複雑な文章構造でもツリー構造のルールに従うことで、ツリー図を描くことが出来ます。より発展したツリー図はX-barと呼ばれます。現在は与えられた文章がX-barに適応できるかの論理的定理、その説明の練習、非定文、疑問文やフランス語、アイリッシュといった外国語の文章をX-barで描く練習を行なっています。

Cognitive Lunguisticsは抽象的な手話の動画を鑑賞し、抽象的な手話はどのDVD構造であるかを理解した上で、手話言語における意味論的構造の概念化をもっと深く掘り下げていきます。意味論的構造は「MEANING」と「form」によって形成されております。例えばMEANINGは「猫」の絵を、formでは文章で「cat」と表記します。では「帽子の中に入った猫」というMEANINGでは、formではどのように表すでしょうか。「cat in the hat」となります。このように問題の状況を目で認識して、MEANINGが浮かび、どのような「form(文章またはASL)」で説明するかというコンセプトであり、人々はどうやって意味論的構造を概念化するかを学んでいます。

Phonology、音韻論ではさまざまな言語にも必ず音素のルールがあるということがわかりました。しかしそのルールは言語によって異なります(例えば日本では必ず子音の間に母音を加える)。話し言葉内では英語を日本語に変換するとき、日本語の発音で英語に近い音を出そうとしています。この技術をPhonotacticと言います。しかしこのPhonotacticはパターンがあり、どのようなルールで構成されているのかをaltanationsによって識別することが出来ます。現在は見たこともない言語を使ってどのようなPhonotacticsなのかを説明するためにaternationsで識別して説明する練習を行なっています。

どれも新言語をどうやって分析するかの基本的知識と分析方法ですがなかなか興味深くとても楽しく学んでいけています。同時にASLでの説明や日常会話も日々研磨中です。
もうすぐクリスマス、新年祝いのシーズンですがみなさまもお身体は気をつけてください。

写真はThanksgiving時の料理です
IMG_1162.jpeg
Posted by 田村 at 09:00 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年10月 第18期生 鈴木美彩 生活記録[2022年11月07日(Mon)]
2022年10月 第18期生 鈴木美彩 生活記録 イベント盛り沢山
↓動画はコチラから↓
https://youtu.be/jWNAktEn--8

※これまでInstagramのリンクをシェアしてきましたが、一部の動画が見れない問題があったためこれ以降はYoutubeのリンクを貼り付けます。これまでの投稿にもYoutubeリンクを追加いたしました。よろしくお願いいたします。

ギャロデット大学はろう・難聴者のために作られた世界で唯一の大学で、ここでは頻繁にイベントが開かれます。1400以上の学生の中には聴者もいますが、アメリカ手話という共通言語があるからこそ、他で得られない経験がここにはあります。

以前ご紹介したバイソンフェスタや最近開催された日本でいう文化祭のようなホームカミング(目玉はアメフトの試合)などの年行事だけでなく、日々の大学生活の中でも毎週何かしらのイベントが行われています。毎週の昼休みや空きコマ、授業が終わったあとの夕方や夜などです。また、金曜日は授業があるクラスが少ないので、大きめのイベントが開催されたりします。先日は通訳学部による企画があり、言語学の博士生が通訳に応用できる言語学の話をするとのことで、参加させてもらいました。10月31日に近づくと通訳学部と言語学部の共催のハロウィンパーティーが開かれました。食事とともに交流やゲームを楽しんだそうです。学生同士でも声を掛け合って個人的に学習会を開くこともあります。課題が片付いて空き時間を作ることができたら、ここぞとばかりにイベントへ参加しています。

これまでに参加したイベントをご紹介します。

APIA(アジア系の学生団体)による秋祭りでは、中国の文化を体験しました。月餅をみんなでシェアしたり、中国発祥のスポーツ、「ジェンズ」羽のついた重りを蹴り合う蹴鞠のようなものをやりました。

学内のみにとどまらず、ギャロデット大学の近くにあるビール専門のバー「レッドベア」では、アメリカ手話のイベントもよく開かれます。大学に近いこともあり、特にイベントがない日でもアメリカ手話を使うお客さんをよく見かけます。
先日はここでASLトリビアが行われ、参加してきました。アメリカ手話でクイズを出題し、チーム対抗で得点を競い、優勝チームには一人ずつ賞金が与えられます。私は遅れて参加したので見ているだけでしたが、クイズの内容はハロウィンが近づいてることもあり、ホラー映画のポスターを見て映画のタイトルとキャラクターの名前を答える問題がありました。

11月2日には、メキシコの文化「死者の日」故人を偲ぶ日で、そのイベントがオープンエリアで行われました。特別な料理がふるまわれ、文化を紹介するポスターが貼られていました。様々な人とお話し、交流を楽しみました。

学内の劇場では、DCの非営利団体による劇場からろうの劇団が来場し、「ISM」の演目が行われました。ISMはイズムのことで、オーディズム(聴能主義)やエイジズム(年齢差別)、ジェンダーイズムなど様々な差別について、自身の経験にもとづいた一人芝居が集約された舞台です。

アフリカの夜を祝う会ではアフリカの様々な料理が出され、それぞれの国の代表的なダンスや文化が紹介されました。

私達のいる言語学部では、手話の音韻について研究したストーキーの隠された物語という題目で講演会のイベントが開催されました。とても興味深い内容だったので次に述べたいと思います。
Posted by 鈴木 at 05:04 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年10月生活記録【第18期生 田村誠志】[2022年11月04日(Fri)]
皆様、おはようございます、こんにちわ、こんばんわ

日本の秋はどのようにお過ごしでしょうか?
こちらはギャロデット大学院の中間試験を終えて、一息ついております。しかしまだまだ学ぶことはたくさんありますので休憩できる時間はあまりなさそうだなぁと思いました。また大学では秋のイベントがたくさんあり、ハロウィーンのイベントが特に盛り上がりましたね。私が住んでいる家の周りも子供たちがたくさんお菓子を集めるために駆け回っております。


さて、今回のブログの記事は、私が現在受講している「Cognitive Linguistics」について説明したいと思います。和訳すると...認知言語学です。認知とは一体なんなのかというと説明がかなり難しいですね...(笑)
全ての人々は物事を認識する能力が備わっており、その能力は主に自分がこれまで経験したこと、実際に見た世界によって培われていきます。しかしその認識能力を使い、相手にどのように表現するか?手話で表現するのと、話し言葉で表現するのと違いは何か?そして言語学者はその認識能力から生まれた言語をどのように分析するのか?これらが本クラスの基本的な学習内容です。

ここで例を見せましょう。
とある「シチュエーション」… つまり私たちが目の前にある「状況」を目で見て認識します。
ワイングラスに半分入った水の「状況」を見てあなたはどう思いますか?
ある人から見たらまぁまぁ水が入っていると思いますし、別の人から見たら不十分だと思うかもしれません。この「認識の違い」がとても重要なのです。この「状況」を「conceptual content」と呼び、人々がそれを見ることでイメージして「construal」(概念という意味です)を形成することができます。
しかしここから人々に伝えるための言語はどうすればのでしょうか?もし話し言葉や書き言葉で伝えるとき、「ワイングラスにまぁまぁ水が入っています」「ワイングラスには水が不十分だけど入っている」というかもしれないでしょう。文章ではより正確な描写が出てきません。
そこで手話表現だとより正確に水が入っている描写を表現できます。この描写をconceptualization(概念化)と言います。手話による概念化(簡単に言えば表現方法)は大きく分けて三種類(semiotic mode)ありPlain form,Indicating form, Depictive form,となります(手話表現による描写の例はここの動画リンクをクリックしてください)

このsemiotic modeについて基本的な分析のコンセプトを学んでいきます。例えばASLでは実際の木からイメージして手話を作り出しますね。木というシンボルから手話を概念化するのをiconicと言います。これは描写がなく特徴も何もない概念化された「TREE」の手話です。この時ASLによる「TREE」の表現は掌を振っていますが、実際に「TREE」はそこまで激しく揺れていますか?実際にはそこまで揺れていない木もあるならば手を振らないでそのまま停止することもできますがほとんどの人はそれを「TREE」と認識しないでしょう。このように手話表現はそのシンボルの通りですが理由や影響を受けて手話が形成されます。このことをiconic motivateと呼びます。
このiconic motivateにはより描写を表現するかそうでないか(foreground or background)の2種類があり私たち認知言語学者はその分析に気をつけなければなりません。

話は少し戻りこの描写表現(depiction form)はよりカテコライズ化され、「VP-internal」と「VP-external」と大きく二つ分けられていきます。「VP-internal」は主に手話表現者が登場人物になりきって、登場人物の視線や経験、顔の表情を演じながらdepictive formの手話を表現をします。その時のsigning space(手話の範囲)は自分を取り込み、自分の視界全体に適用されます。例として魚が泳いでいる姿を自分に例えると、自分が魚の目線になり「泳ぐ」という手話を繰り出す。この概念化がdepictive formでありVP-internalなのです。
一方、「VP-external」はsigning space(手話の範囲)は自分の手の範囲だけであり、自分の視点ではなく第三者の目線として手話表現をすることです。例として魚が泳ぐのを、手で魚の手話を表現をする。この時、手の範囲だけdepictive formになります。ここまでが手話による認知言語学の基礎理論と分析方法です。
この手話言語による認知言語学のアプローチは人々が話している手話言語はより描写的であること、そして言語学者から見れば様々な手話言語は全ての人が持つ認知能力に基づいてどのように表現できるのか、その定説や根拠を証明できるのです。実際に手話による認知言語はかなり昔からアプローチをしており、現在も本大学の教授や博士たちが研究しており新しい理論を唱えております。


このような初歩的なdepictive dformの理論と分析を繰り返しながら日々勉学に勤しんでいます。
写真は中間試験を終え、ギャロデット大学の日本人聾者たちと集まってお食事に行ったワンシーンです。
第2期生:高山亨太様 第16期生:皆川愛様
第18期生:鈴木美彩様
写真掲載のご協力をありがとうございました。
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Posted by 田村 at 03:34 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年9月 第18期生 鈴木美彩 生活記録[2022年10月08日(Sat)]
2022年9月 第18期生 鈴木美彩 生活記録
言語学とは?-音韻論-

↓動画はコチラから↓
https://www.instagram.com/reel/CkCkiCDg5G7/?utm_source=ig_web_copy_link
https://youtu.be/GBTPrAEZ8GU


こんにちは、鈴木です。
初学期が始まって早1ヶ月です。

私生活も学業もてんやわんやの状態が続きましたが、ありがたいことに今日も健康体で過ごしております。

さて、今回は ”言語学とは何か” という話をしたいと思います。

現在、私は3つの授業を取っています。

Dr. Deanna Gagne による Phonology (音韻論)
Dr. Deborah Pichler による Generative Linguistics (生成言語学)
Dr. Paul Dudis による Cognitive Linguistics (認知言語学)

どの先生方も素晴らしく優しくて友好的です。

すべての授業において、言語学とは何かという導入から始まりました。

Dr. Deanna Gagne による Phonology、音韻論 では言語の最小のレベルである音について学びます。

言語を分解していくと文法レベルから語彙レベル、そして音のレベルと小さく分けていくことができます。これが言語で最小の単位です。手話にも音があり、手形・場所・動きの3要素は有名です。

人間が日常的に使っている日本手話や日本語、アメリカ手話、英語などが言語であると言えるのは、最小の単位に分解できることが大きな意味を持っているからです。

世の中には様々なコミュニケーションが存在し、情報を送ったり受け取ったりするのは人間だけではありません。遠く離れたエサの位置を教えるミツバチの8の字ダンスや擬態や威嚇に役立つイカの模様七変化などは明確な意味を持ち、それを他者に伝えています。

しかし、コミュニケーションがあるだけでは言語とは言えません。言語だけが持っている要素を見つけ、それを研究することで言語の本質を追求するのです。だから、世界中の言語が持つ重要な要素の一つである音素を音韻論では研究します。

まず、私たち言語学修士課程の1年生は、この授業で音声言語すなわち英語の音から学び始めます。英語を話している様子を観察すると、表面的には唇が動いているだけですが、MRIを通して見てみると唇のみならず口腔内の舌や声帯などありとあらゆる筋肉が総動員していることがわかります。初めてその様子を動画で見たときは、まるでびっくり人間のスゴ技を見たような気分でした。

Dr. Deanna GagneがMRIの動画を見せる前、私たち学生に対して以下のように念を押していたのが印象強く残っています。

「これから見せるものはろうコミュニティで育った人間にトラウマを思い出させるリスクがあります。ですが、私たちは発音方法を学ぶのではなく、驚くほど模様が目まぐるしく変わるイカの皮膚模様を研究するように、英語話者がその驚くべき身体能力をもっていかに発音しているかに着目し、あくまでも言語としての音を見るのです。決して口話教育の過ちを繰り返したいわけではありません。」

言語学に対する面白さを存分に語りながらも、ろうコミュニティへの敬意を忘れないその姿勢に感銘を受けました。

1ヶ月が経った現在は、手話の音について音声言語の音素から発想を得たストーキーの記述法を学んでいるところです。
Posted by 鈴木 at 01:19 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年9月生活記録【第18期生 田村誠志】[2022年10月07日(Fri)]
皆様、おはようございます、こんにちわ、こんばんわ

ギャロデット大学院、言語学のプログラムが始まって早5,6週間が過ぎました。少しASL手話による講義も慣れてきたかと思います。それでも先生方のASLはとても早いのですが、やはりここは第一言語、第二言語の差というような壁があるのだなぁと感じてしまいました。


今回のブログの記事は、私が現在受講している「Generative Linguistics」について投稿したいと思います。

この「Generative Linguistics」は偉大なる言語学の父とも呼ばれたNoam Chomsky氏が1951-1955年に開発し、統語論に対する科学的アプローチを行いました。「Generative」とは日本語で「生成」であり、どのような言語や文法を無意識に生成するのかそのルールを着目しています。その科学的なアプローチから「Phonology」(音韻論)、「Morphology」(形態論)「Cognitive Linguistics」(認知言語学)などの研究分野が広がりました。
現在は御年93年であり、まだ生きているのですから生きる伝説だな...とは思いました。

Noam Chomsky氏の持論は「言語は人間に特有の生物的な才能と見なされ、人間は生まれながらにして同じ言語知識を持っているとされる」とあり、要するにそれぞれ異なる外国言語でも、言語や文法を作るための知識は全ての人類は有していると唱えています。

しかしその科学的なアプローチを導入するためにはデータ収集作業が必要です。そのデータを収集するには反証可能性と実証を得る為の仮説をブレインストーミングを行いながら立て、変数調整を行いつつどのような言語構造の違いの影響が生じるか慎重に見極めなければいけません。

Universal Grammarと呼ばれる全ての人類が持つ言語の設計図というものがあり、私たちは第一言語や第二言語を話すための言語設計図があります(文法や言葉など)。この設計図は第二言語も第三言語も学べるための設計図もあるのでスペースは無限にありますが、必ず「原則」と「パラメータ」があるのです。
従来人々はどのように言語を学ぶのかを無意識に行っていると言われております。親や兄弟、学校の先生、友人などの会話にて正しい文法、間違っている文法などの判断が培われていきます。この言語を見たり聞いたりすることで自分の言語知識能力が増えていくことをI-Language Linguistics Competenceと、発話や手話表現によって相手に伝えることをE-Language Linguistics performanceと呼ばれています。「Generative Linguistics」はE-Language Linguistics performanceを中心に学んでいきます。
ここで私たち人間たちは、いついかなる時もフォーマルな場で話しているのでしょうか?答えはNoだと思います。(家族や友人にいつもかしこまった会話を話す?)この発話や書き言葉によるルールはPrescriptive RulesとDescriptive Rulesがありどのような違いがあるかを説明していきます。
Who did you meet?
John is fatter than me.
一見こちらはきちんとした英文法ですが実はきちんとした英文法のRuleで作られてはいないのです。でもなぜか意味が把握できますよね?不思議だと思いませんか。他の例では日本語では「自分、遊びに行くわ、あなたんとこに」と話していても意味が掴めますね。このように文法では主格や所有格などのRuleを崩しても意味が伝わるようになるのをDescriptive Rulesと呼ばれます。
では先ほどの英語のPrescriptive Rulesではどのようになるのか。
John is fatter than I.
Whom did you meet?

本クラスは文法の違いやさまざまな外国語の文法構造化のルールをより明確にするための知識を学ぶことができます。そのため文法構造をどのように調査するかその練習をNoam Chomsky氏が考案した「tree」で学んでいきます。その内容は別のブログでより細かく説明したいと思います。

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ギャロデットのコンピュータラボで勉強しております。

ここ現在2022/10/6、ワシントンD.Cはとてもめっきり冷えてくるようになりました。
一日過ぎただけで急激な温度差が出ており、体調を崩しやすい日々が続いています。
日本の皆様もお気をつけてください。
Posted by 田村 at 01:05 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年8月 第18期生 鈴木美彩 生活記録[2022年09月05日(Mon)]
2022年8月 第18期生 鈴木美彩 生活記録
渡米後2週間

↓動画はコチラから↓
Instagram: https://www.instagram.com/reel/CiLQP7gruv_/?utm_source=ig_web_copy_link
Youtube: https://youtu.be/0BPTtvoIo38


こんにちは、アメリカから鈴木です。

日本を発って早二週間です。
シェアハウスで年代の近い同じ学生や社会人と暮らしていますが、彼らはアメリカ出身のろう者で毎日会話にスラングが飛び交います。犬や猫たちもいて、ペット経験のない私は動物たちとの共同生活に戸惑いつつも新鮮な毎日を楽しんでおります。生活にも慣れてきたところで、先週から授業が始まり、ますます充実した日々です。

私は2年前にも日本社会事業大学のプログラムで留学し、およそ1年ぶりのアメリカになります。コロナ禍に突入したての頃でしたので、留学時期が延びたりステイホーム留学だったりで大勢の人と交流する機会がなかなかありませんでした。

今回の留学はオープンなキャンパス内で学べて、交流の機会にも恵まれています。前回とは打って変わった環境に色々と不安でしたが、渡米直前には腹の底からやる気が湧き上がってきて、それに助けられる形で日本を飛び立ちました。

私は、日本ASL協会日本財団の助成の下、2004年度から実施している日本財団聴覚障害者海外奨学金事業第18期生留学奨学生に選ばれ、米国ギャロデット大学大学院言語学修士課程に留学しています。

今後、定期的に日本財団のブログで留学生活の報告をさせていただきますが、同時にろう社会の皆さんにもお届けしたく、手話動画も併せて投稿いたします。
内容を小分けに載せやすいと思い、インスタグラムの動画を引用する形で予定していますが、この先YouTubeに切り替えることもあるかもしれません。

皆さんにご覧いただくことが励みになるのでぜひブログまでお越しください。
お待ちしております!


新学期前イベント
↓動画はコチラから↓
https://www.instagram.com/reel/CiLSr_HM6_L/?utm_source=ig_web_copy_link
https://youtu.be/QHRHCZnbAYY


授業が始まる前の1週間は学内で様々なイベントが行われていました。私もそのうちのいくつかに参加しました。特に外せないのがオリエンテーションです。国際学生対象のものや院生対象の説明会がありました。ギャロデット大学でキャンパスライフを送る際に役立つ情報が得られる良い機会です。

国際学生向けのオリエンテーションではビザについての話があり、無断で就労をした場合は強制送還の恐れがあることなど注意喚起も行われました。

院生向けのオリエンテーションではお話だけでなく、体育館内に様々なブースが設けられ、健康保険や財政、郵便、学生自治会などそれぞれのスタッフがいました。新学期を目前に、なにか漏れている事務手続きがないかどうかや不明点を気軽に質問できる場となっていました。実際、健康保険の件で懸念が合ったので直接スタッフの方とアメリカ手話で相談しました。他にも学内の郵便にある個人ポストの使い方について伺いました。対面で手話を使って直接確認できるのは大変ストレスフリーで大きな安心感でした。2年前の留学ではすべてがメールで行われ、様子が全く見えず、何かが漏れていてもどこに問い合わせたら良いのかわからず、苦戦しました。だから今回のブースにはかなり助けられました。

その後は学内を探索し、数多くある寮のうち1つを見学しました。階ごとに男性用フロアと女性用フロアが設けられていて、互い違いになっているのが興味深かったです。

また、食堂の食事も体験しました。国際学生オリエンテーションの期間は食堂が無料で使用できるとのことで、この日はビュッフェスタイルの食事を取りました。サラダや果物、ピザなどがありました。
郵便も実際に見に行きました。個人用のポストがずらりと並べられていて驚きました。郵送したい際にはここに来れば投函することができ、とても便利なリソースの一つです。

探索の途中で、黄色いTシャツの人々が何やら集まっているのが見えました。黄色いTシャツは学部生のもので、私が来ている院生の青いTシャツと色違いです。オリエンテーションで無料配布されたものでした。この集まりはバイソンウォークというイベントで、アメリカの大学ではそれぞれに象徴となる動物がありますが、バイソンはギャロデット大学のシンボルです。このイベントは、学内を大勢で練り歩き、最後に2022年度にちなんだ「22」の人文字を撮影するというものでした。
IMG_6627.JPG   IMG_6628.JPG

大学探索ついでに、同じ院生で国際学生の子とバイソンウォークについていきました。歩く際、キャンパスの光景を楽しみながらゆっくりおしゃべりしました。

その日の夜はどっと疲れてしまいました。慣れない第二言語の激しいシャワーによりASL飽和状態でした。しかし、実際に大学の雰囲気を味わったおかげで大学生活のスタートに安心感も持てました。

Posted by 鈴木 at 05:00 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年8月生活記録【第18期生 田村誠志】[2022年09月03日(Sat)]
皆様、おはようございます。
8/24にて言語学M.A.のオリエンテーションを終え、次の週から本格的にクラスが始まりました。
現在9/4にて全てのクラスを一通り受け週末を過ごしております。

今回の記事は、大学院生活に入る前にどのような準備をしたのかをここに記してみようと思います。

実は私はギャロデット大学には一年前から在籍しておりEnglish Language Institute(ELT)プログラムを受けたのです。ELIとは英語、アメリカ手話を中心的に学ぶための教育機関でありたくさんの国際留学生などが在籍しておられ、自分も国際留学生として入学しました。

なぜELIに入学したのか?

私はこれまで日本国内で英語の学習をしていてもアメリカ手話を学ぶ環境がないに等しい場に居たため、アメリカ手話の知識はほぼ皆無でした。そのためアメリカ手話とより英語の力を向上するために入学しました。その時のコロナの状況は以前よりは改善されており、マスクをしながら対面授業をする事が可能であったため学ぶ環境としては少し良かったと思います。

ELIの授業では3つのクラスがあり、英語とアメリカ手話のクラス、そしてCross Cultural Comunication(CCC)に分かれており午前は英語を午後はアメリカ手話、CCCを学ぶスケジュールになっております。
英語のクラスを受ける前にPlacement testというものがあり自分の英語の力を測り、どのレベルのクラスに在籍するのかを決めることになっています。レベルは1~6まであり高いほど難しくなっていくのですがLevel6になるとそのクラスの小テスト、中間試験、期末試験はもちろん、ACT(Level6のみ)の試験を受けることになっています。それらが全て終わると成績の総合評価を照らし合わせ卒業できるかどうかということになっています。
アメリカ手話も同様にLevel1とLevel2のクラスに分かれており、私はBeginnerのLevel1に在籍することになりました。そこから基本的なアメリカ手話を学び宿題をビデオ動画撮影で提出するというものです。

CCCのクラスはELIの新入生が全てLevel関係なくそれぞれの文化を教えあったり、プレゼンテーションを行なったりするとても楽しい内容でした。国際留学生ならではの強みと言ってもいいでしょう。

私はPlacement testの結果、レベル6に配属され1学期 (1semester)…8月から5月まで約半年間でELIを卒業する事ができました。私の予想では1年間在籍すると思ってたんですが….
ELIを卒業後、私は残りの期間どうしようかと考えたところギャローデット大学でまだ学ぶ事がたくさんあると判断し、もう1semesterはInternational Special Student Program (ISSP)として在籍し、学部生と同じクラスを受けることにしました。

ISSPはELIと違いアメリカ手話を流暢に使い講義を行なっているため、半年ばかりで学んだ基本的なアメリカ手話の知識で苦戦していました…(苦笑)。課題の提出システムや教材の注文、ギャロデット大学のオンラインシステム、BlackBoardアプリを駆使して授業を取り組む、先生たちのアメリカ手話による各クラスの授業、どれもこれも大学院と共通していることなので基礎知識を今のうちに慣らしておいて良かったと思います。ちょうど言語学の基本知識のクラスも受講できたので、大学院に入る前に復習とそれぞれの専門用語のアメリカ手話を覚えることにも役立ちました。テストや宿題はそれぞれのクラスごとに異なりますが、このようなやり方で進めるのかなと経験を学ぶことも良かったと思います。2022年の春学期は5月に終わり、ギャロデット大学の卒業式を見た後日本に一時帰国し7月に再び渡米して大学院に入るための手続きや準備をさっさと終わらせて、夏休みの期間中、友人たちと楽しい時を過ごせました。

住んでいる場所について

当初、ELIに入学したときは大学の寮に住むことになり、たくさんの学生たちと身近に交流する事が簡単でとても楽しかったのですが、冬休みになると寮が完全閉鎖されるため、他の住む場所は日本しかないので毎回一時帰国するのも大変だと思い、off-campusでルームシェア生活をすることに決めました。12月の1semester終わりの3日前に引っ越しを完了してISSPの生活はその家で生活をしていましたが、もっといい環境で過ごせるお話をいただき今年の8月にVirginia州に引っ越すことにしました。VirginiaのBallston駅の近くに住んでいるのですが、大きなショッピングセンターから市民プール、公園の中にサイクリングロード、演劇のステージ、アスレチック、アジア料理のレストランの集合街、アイススケート場など楽しそうなところがあるので引っ越しできたのはラッキーだと思います。

大学院のクラスが始まって

大学院のオリエンテーションでは2年間を通してどのクラスを受講するのか分かりやすく説明してくれました。この1semesterでは
・Generative Grammar
・Cognitive Grammar
・Phonology
を受講することになっています。
Generative Grammarはノームチョムスキーという偉大な言語学者が考案した文法理論であり、一連の文法のルールをどのように解明するか研究を行っています。例えば英語では”I have a glass of water”(私はコップ一杯の水を飲む)の文では必ず「主語」+「動詞」+「名詞」とさらに品詞を明確に区分けして文法のルールを追求することを目的としています。
Cognitive Grammarは人々が見ている景色や現象を捉え、状況を文的に表現するのですが様々な捉え方が異なるため表現も大きく異なります。これは知覚経験や心理経験、概念の捉え方によって大きく変化をもたらします。この現象を明確に理解することを目的としています。
Phonologyは日本語で訳すと音韻論であり、音のイメージを想像してしまいますがアメリカ手話もこの分野に触れることができます。手話言語も言語の一部なので。アメリカ手話では音韻論は五つのカテゴリーに分けられておりHand shape/Movement/Location/Palm Orientation/Non Manual Signalsがあります。それらの一つが欠けてしまうとアメリカ手話としての言語は意味を成さないことになってしまうのです。この基本知識を知った上でHockett’s designeのセオリーを理解して離散性言語と生産性言語の定義を学ぶ事が目的となっております。

写真は2021年の8月に大学の寮(Carlin dorm)に入居した時の写真です。
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Posted by 田村 at 22:05 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年5月生活記録 【第16期生 大西 啓人】[2022年06月07日(Tue)]


※手話内容はブログ記事と同様です。
※日本語字幕はついていません。

皆さん、こんにちは。この場を借りて皆さんに報告したいことがあります。

先日、2022年5月13日(金)をもって、ギャロデット大学大学院ろう教育修士課程を修了することができました。「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の下、日本財団や日本ASL協会をはじめ、様々な方々の応援があったおかげです。文化や言語の違いにかなり苦労しましたが、ギャロデット大学院で学んだ知識や経験はこれから日本に還元していく予定です。引き続きご応援いただけたら嬉しいです。

Photo May 15, 12 06 33.jpg

二年前、留学を決意した大きな理由の一つは自分に自信がないことでした。大学四年間、英語教育や特別支援教育を学んできましたが、「このまま先生として、教壇に立ってもいいのか」「自分の中身が空っぽで子どもたちに何を伝えられるのか」と大学卒業に近づくにつれ、悩みが大きくなり、更なる学びと研究を求めて留学を決意しました。

二年間の留学生活を経て、帰国した今では、自分に対し、自信が持てるようになりました。理論に基づいた説明ができる知識を得て、ろう教育やバイリンガル教育における専門性が更に深められたと自負しています。
実際にこの二年間、私は以下のテーマを学んできました。

・ろう教育(手話、多様性、ろう文化など)
・リテラシー教育(読むこと、書くこと)
・バイリンガル教育(手話言語と書記言語)
・言語獲得理論や第二言語習得理論 など

基本的には議論や研究を重ねて、ろう教育を中心に学びました。研究では、「ろう生徒のための英語教育と英語教材」をテーマにリテラシー教育やバイリンガル教育、第二言語習得理論などに焦点を当てて探究してきました。

ここで、たくさんの経験を通して多くの知識を得たので、これからどんなことを頑張っていきたいのか簡単に述べていこうと思います。日本に帰国してから頑張りたいことは大きく分けて2つあります。

・ろう生徒のための英語教育を確立し、日本における英語教育の質を高めたい。
・日本にろう教育やバイリンガル教育に関する知識や理解を広めたい。

《ろう生徒のための英語教育》
アメリカで学んだことを踏まえて、日本のろう生徒に適した英語教育を考え、できるだけ多くのろう生徒に提供できるように活動するつもりです。これだけではなく、教室内指導の他にろう学校勤務の英語教師とお互い切磋琢磨できる関係を築き、一緒に英語教育の質を高めていけるように目指したいです。多くの英語教師と一緒にろう生徒のための英語教育について議論する機会が今から楽しみです。

大学院では「第二言語習得における困難や問題がどのように学習を妨げているのか」「どのように言語獲得や言語習得がなされるのか」「何を基に認知能力が向上されるのか」「第一言語の存在がどのように第二言語の習得に影響を与えるのか」などといった様々な視点から研究、考察を重ねて勉強してきました。この経験を英語教育や教材に活かせられるように少しずつ発展していけたらと思っています。

《ろう教育やバイリンガル教育の普及》
現状から述べると、日本におけるろう学校のほとんどは、日本手話ではなく日本語対応手話が中心になっており、日本語対応手話と声を同時に使うトータルコミュニケーション法を主流としているろう学校もあると聞きます。これも一つの教育法ですが、ろう児童生徒に適したバイリンガル教育として成り立つことはないのです。

また、トータルコミュニケーション法や日本語対応手話によって、ろう児が高度な日本語力や社会人基礎力などが身につけられると考える人もいます。これはろう教育として正しいとはいえないです。この教育法で大学進学や大手企業への就職など達成できたろう児童生徒はいるかもしれません。しかし全てのろう児童生徒に有効ではないのです。日本手話はろう児にとって自然な言語であり、全てのろう児のためにろう教育に日本手話が必要なのです。また、ろう教育学では手話言語から書記言語を学ぶことができ、正確なバイリンガル教育をもって高度な言語レベルまで発達できると証明されています。(この理論から日本手話から日本語を学ぶことも可能と考えられるということです。)

ここで私が思う、現状における一番懸念する点は上記のように日本手話の重要性やろう教育、バイリンガル教育に関する知識が乏しい例が多いことです。私は教員や教職員、教育委員会などの教育者なら、なぜろう児童生徒に日本手話が必要なのかバイリンガル教育がなぜろう児童生徒に適した教育なのか、理論上から理解するべきだと思っています。ろう児童生徒に適した教育を議論したり考察したりするには、理論に基づくろう教育やバイリンガル教育を理解してから行うことが必要であるということです。

そのように理論上から正しく理解するために、教員だけではなくろう教育に関わる多くの教育者(ろうコミュニティを形成する成人ろう者、医療関係者、言語聴覚士などの専門家など)が一丸となって議論したり実践したりできる機会をもっと設ける必要があるでしょう。ここ数年でバイリンガル教育を取り入れる活動を続けて、頑張っているろう学校を何校か見かけるので、その動きに貢献、促進できるように教職員などの教育者、ろう児童生徒をもつ保護者、これから教員を目指す学生、多くの人々に宛てたろう教育やバイリンガル教育の普及を目指していきたいです。

最後に、アメリカ生活を経て、大学院を修了できましたが、私はまだまだ「日本財団聴覚障害者海外奨学生」として責任があることを肝に銘じ、先輩方に恥じないように日本への還元を目指して活動を続けていきます。今までご応援してくださった方ありがとうございました。またこれからも引き続きご応援してもらえたら嬉しいです。

《ろう教育に関わる皆様へ》
教育現場、日本のろう教育において、私は新参者ですが、アメリカで学んだことをできるだけ多く還元できるように活動していきます。今後ともご指導ご教鞭のほどよろしくお願いします。

第16期生
大西
Posted by 大西 at 19:22 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年4月生活記録【第16期生 大西啓人】[2022年05月08日(Sun)]
2022年4月生活記録

皆さんこんにちは。ゴールデンウィークは楽しめましたでしょうか?充実した休日が過ごされたことでしょう。私の現状といえば、5月6日付けに修論発表があり、無事終えることが出来ました!
院生活2年間の集大成を発揮できたと思っています。無事合格することができれば、確実に卒業できます…!(とはいえ、すでに卒業の準備を進めています笑) 修論関連は帰国後に機会があると思うので、そのときに話したいと思いますきらきら

さて、今月の内容は前月に続き、「学校における言語発達」および、「家庭と学校間のつながりの重要性」について考えていきたいと思います。ここは基本的にろう児を持つ聴親に向けて発信したい内容ですが、教師や学校にも意識するべきとも言えます。

子どもの言語発達において、家庭と学校、それぞれ役割があり、家庭では前月に話したとおり、「基本的な言語能力を獲得する」「派生する様々な能力(想像力や認知力、コミュニケーション力など)を身につける」といったものが中心だったと思います。

学校ではどういった役割を持っているのでしょうか?もちろん、家庭で行われることが多い即時的な会話や非即時的な会話は、学校でも行うこともできます。幼稚部や小学低学年の段階ではそういった会話レベルも必要なので、意識するべきですね。ただそれだけではなく、学校ならではの役割があります。それは「学術的な学び」です。小学生に上がる頃から国語、算数、理科など本格的に勉強が始まりますね。学術的な学びのために、子どもはさらに言語能力の発達が必要になってきます。学校に見られる場面はどういうものでしょうか?

交流のための会話(Social Talk)
「からかう」「遊ぶ」「想像する」「おしゃべり」などといった交流で見られる会話レベルです。友達間や先輩後輩間、教師と生徒間でも様々な場面で見られます。こういう会話は休み時間(遊び)や食事時間、個人的な会話などから来ます。これは家庭で見られる会話(即時的な会話、非即時的な会話)と同じものとなります。つまり教師も即時的な会話や非即時的な会話といった「家庭言語(home language)」を意識するべき理由の一つです。

学術的な学びのための会話(Academic Talk)
ここが重要なポイントとなります。学校において最もよく見られるのは、学術的な場で見られる会話です。小学生、中学生、高校生に問わず全般的に見られます。学術的な会話とは、「設問に回答する」「情報を共有する」「情報を比較する」「知識を要約する」などといった高次な認知能力が求められる会話レベルです。他にも、小説や物語などの本や授業で使われる教科書を読んで、語彙や内容を理解することも学術的なレベルの一つです。学校で学術的な内容を学ぶにつれ、こういった会話を自然にされるため、無意識のうちに子どもたちの言語能力の発達に貢献できるのです。

ここでちょっとした豆知識ですが、ろう児に対する教育では手話で会話していれば自然な成長ができますが、音声中心である口話での会話だとこういった成長ができず、言語発達を妨げる結果になってしまう可能性もあります。

話を戻しまして、学校では言語能力の発達だけではなく、学術的な環境を通して、様々な知識や経験を得る場でもあります。そのため、社会自立やキャリアスキルの習得も必要になります。つまり学校は学術的に学ぶ場所なので、ろう児の学術的な言語発達が達成できるように学校や教師は意識しなければなりません。これが学校における役割です。学校で見られる交流のための会話も学術的な学びのための会話を教育学では、“School language”と呼びます。

教師や学校が意識するべきと言いましたが、もちろん、親も学校に関する知識を知る必要があります。家庭でできないことを学校だと出来ることもあります。どういった教育が必要か、どういった言語発達を求めるのか、学校や教師と話し合い、自分の子どもへの教育について考える権利を親は持っているということです。

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ここからは、「家庭と学校間のつながりの重要性」の分野になりますが、先程述べたように、親は子どもに合わせて適切なアプローチがなされるように学校に要望する権利を持っています。年齢に応じて、学術的な語彙や概念を提供することを求め、教師や学校と話し合うことが重要になります。例えば、聴親に多い悩みなのですが、皆さんは自分たちが提供できる手話が基本的なレベルなため、子どもにとって物足りないのではないか。という懸念を持っているのではないでしょうか?

家庭では難しいことを学校に求めることも一つの方法です。学校では、ろう教師手話通訳資格を持っているレベルの高い手話を提供できる先生もいます。また、ここで説明しているような知識や教育学を学んでる専門性の高い教師が集まっています。家庭でも学校のようにレベルの高い教育をしたいと考えている場合、そのための知識が必要になりますが、教師や学校と相談することもできるのです。

他にも学校は優れている教師がいるだけではなく、コミュニティに関する情報や教育学に関する情報もたくさん持っています成人のろう者モデルがたくさん集まるコミュニティだったり、ろう教育やろう文化を学べるコミュニティだったり、学校は何らかの情報を知っています。聴親として懸念していることに対して力になってくれるかもしれません。コミュニティでは、交流のための会話が多いですが、中には学術的な学びのための会話もあることもありますので、基本的な言語能力を身についたり、様々な能力を強化したりできる場でもあります。

以上が、家庭と学校とのつながりにおける重要性となります。最後になりますが、これらのアプローチは手話で交流し、手話で会話し、手話で学習するという前提のもとに行われるべきです。ろう児に対して、音声での教育だと上記で述べた効果は期待できないと思います。
※人工内耳装用児などでは効果があるかもしれませんが、私は全てのろう児のために手話教育を推奨します。

聴親はろう児が誕生して、初めての経験に戸惑うことや懸念することが多く、不安要素がたくさんあると思います。私は教育者として、そういった心配や不安をできるだけ和らげることができるように情報をたくさん発信していきたいと思っています。

ここまで最後まで読んでくださりありがとうございます。繰り返しになりますが、聴親に発信したい内容ですが、他の皆さんもろう児と関わる機会があるのでしたら、意識するべき内容になります。

第16期生
大西


【参考文献】
3月生活記録 第16期生 大西
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/1352

Dickinson, D. K., & Tabors, P. O. (2001). Beginning literacy with language: Young children learning at home and school. Paul H Brookes Publishing. https://psycnet.apa.org/record/2001-06306-000
Posted by 大西 at 05:30 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2022年3月生活記録【第16期生 大西啓人】[2022年04月07日(Thu)]
皆さん、こんにちは。私は相変わらず元気ですが、修論の締め切りが迫っており、焦っているこの頃です。先日、アメリカではギャロデット大学をはじめ、色んなところで桜が満開となりました。投稿日の時点ではもう満開期は終わってしまいましたが、とてもきれいでした。そろそろ日本も桜が満開になる頃でしょうか?

今回はろう児を持つ聴親に向けて、発信したい情報を持ってきました。「家庭における言語発達」「学校における言語発達」および「家庭と学校間のつながりの重要性」について話したいと思います。

まず家庭における言語発達ですが、これは全ての子どもにとって、言語の基礎を固めるための重要な役割を果たしています。家庭で見られる言語発達は主に「読書(Reading book)」「遊び(Playing)」「食事時間(Meal time)」で大きく貢献されます。


読書(Reading book)

ここでよく見られるのは、親による読み聞かせだと思います。実は読み聞かせの際に見られるアプローチが2種類あるのです。それは、“Immediate talk※”と“Non-immediate talk※”というものです。※専門用語(日本語)が分からず英語表示になります。

読書は子どもの言語発達において重要な役割を果たしており、ここ数十年において研究者によって、読書は子どもの早い段階でのリテラシー能力、学校での学術的な成功、心情的成長に大きく関係していると証明されています。

“Immediate Talk”とは、読み聞かせの際に使用している絵本や本、もしくは小説などに出てくる登場人物やストーリー、言葉を用いてコミュニケーションをとることを指します。つまりこの対話は本に書いてあるイラストや言葉を使って会話し、言語発達の向上を図るものです。さらに目の前に情報があるため、すぐ認識でき、即時に概念と言葉を結びつくことができる面から、子どもの言語発達の初歩的な段階になります

例:桃太郎
親「川から流れてきたこれはなーんだ?」
子「もも!おいしそう!」

例:算数に関連する絵本
親「ここにあるりんごは何個あるかな?」
子「ひぃ、ふぅ、みぃ…3個!」

続いて、“Non-immediate Talk”とは、上記に述べた即時的な対話ではなく、さらに応用した対話になります。ある研究によると、一般的に3~5歳対象の読み聞かせにあたって、11%~18%の確率でこの対話が見られるとされています。これは、本に書かれているイラストや言葉を基に、子どもの個人経験、一般知識、推論や予測に関する質問や言及など、現実の世界とつなげる対話と定義されています。つまり本に書かれているイラストや言葉を使って、子どもの意識を本の外へ広がっていく対話方法になります。経験や知識といった概念について対話することが多いため、認知力が求められ、即時的なものより高度なものとなっています。

例:浦島太郎
親「浦島太郎はなぜカメを助けたんだろう?」
子「カメがいじめられてかわいそうだ。」
親「そうだね。いじめるのはいけないことだよ。もし〇〇がいじめを見たら、浦島太郎みたいに止めるんだよ。」

つまり、多くの家庭は読書において、このような2つのアプローチがなされて、子どもの言語発達を大きく貢献しているのです。最初に本に書かれている情報や概念を学んだ後に、本の外へ広がりながら親とのコミュニケーションを経て、子どもは認知力などの高次な能力を身につけていくのです。

遊び(Playing)

これも上に述べた読書と類似しています。子どもの遊びにも言語発達に大きく貢献できている要素があります。家庭でよく見られるのはおもちゃを使った遊びだと思います。車のおもちゃを使ってコロコロ動かす遊びなどがありますね。子どもがおもちゃを使って想像しながら遊ぶことを“Pretend play※”と言いますが、一般的にこの遊びは言語発達だけではなく、社交性や想像力の向上にも発揮します。
ここで注目したい点は親も一緒に遊ぶことです。親は一緒に遊びながら子どもと対話しながら言語発達を貢献することができます。アプローチが3種類紹介します。

まず“Pretend Talk”というものですが、これは親と子どもがいる環境にあるおもちゃを即時に使用しながら想像力を働かせて対話することです。
例:家を組み立てる
子「煙突はどこに置いたらいいの?」
親「煙突?家に付けたいの?なんで?」
子「もしサンタが来たら入れるようにするんだ!ドアはここかな?」
親「なるほど!じゃあ煙突は屋根の上かな?ドアは家の前がいいね。」

続いて、即時に使用できるおもちゃを使って、文字を学ぶリテラシー的な対話を“Non-Pretend Talk”というものがあります。ここは文字だけではなく数字や概念でも該当されます。リテラシー能力につながるもの全部、該当されるでしょう。
例:
子「今から車使って遊ぼう!」
親「車を使って遊ぶの?どんな車が好き?」
子「えっとね。これかな!あお?」
親「そう。青。他にも車が2つあるね!この色は?」
子「あか…きいろ?…僕はあおが好き!」
親「3つの車は、青い、赤いと黄色いだね。青がいいの?」

最後に、「遊び」で見られるアプローチで一番高度なものが”Non-toy play talk“というものです。これは親や子どもがいる環境にあるおもちゃを使わず、子供の個人経験などにつなげながら、親と会話することです。ここでは、経験や知識を共有するときに見られますね。
例:
親「ビー玉って何から作ってるの知ってる?」
子「知らない!ダイヤモンド?」
親「残念!ガラスから作られてるんだよ。ダイヤモンドってどういうものがあるかな?」
子「そういえば先生が指につけてたよ!リング?」
親「うん!それは指輪だね!他は?」
子「母さん前に首にかけてた。」
親「よく見てるね!そう。ネックレス。ダイヤモンドを使ってるね。」

「親との遊び」にも言語発達だけではなく、知識や経験の増加、想像力の向上など社会的作用もあります。想像力を働かせて遊ぶことから始まり、様々な視点を持てるようになります。様々な視点を持つことは言語発達にもつながりますね。

食事時間(Meal Time)

読み聞かせや遊びだけではなく、食事中にも言語発達に貢献できます。食事時での会話にも言語発達に貢献するためのアプローチが隠されています。重要とされている要素は“Narrative talk※”と“Explanatory talk※”が見られる場面です。

“Narrative talk”は簡単というと、子どもが学校や遊びで経験してきたことを、“物語”として親に何回も話す様子を指します。ここは子どもにとって、頭の中にある理解した内容を上手く言語化させる、内容を話して何が言いたいのか明瞭化することを練習する場でもあります。

次に“Explanatory talk”ですが、Beals(1993)によると、「対象物、出来事、概念、結果などの間に論理的つながりを求める、もしくは作る対話」と定義されています。例えば、以下のものがあります。
例:
親「ゆっくり食べなさい。のど詰まるよ!」
子「わかったよ〜…ゆっくり食べる。」

例:
子「母さん、どんなアレルギーを持ってるの?」
親「ピーナッツだよ。もしピーナッツを食べると危ないことになるんだよ。」
子「ひえぇ。僕にもアレルギーがあるの?」
親「いいえ。あなたは持っていないわ。でも私はピーナッツがダメだから一緒に気をつけようね。」
子「わかった!ピーナッツ味のパンを渡さないようにする…!」

このように、食事時間は2つのアプローチがあり、“Navarrative talk”には、言語発達の向上が見られ、“Explanatory talk”には、予想や理由をもって、理解力を育むとされています。

まとめ

以上になりますが、「家庭における言語発達」について理解できましたでしょうか?家庭でも学校でも言語発達を貢献することができますが、それぞれ役割は異なります。家庭では、読み聞かせや遊び、食事時間を通して、基本的な語彙力、リテラシー能力に注目することが多いです。それだけではなく、認識力、想像力や理解力などを基本的な能力として幅広く身につけることができます。こうした言語発達を、教育学研究では"Home language"という英語表示を用いて表しています。日本語でいうと「家庭言語」といったところでしょうか。
まとめると、親は家庭言語において、語彙力、リテラシー能力を特に注目し、認識力、想像力、理解力も意識しながら子どもとコミュニケーションをとるといいでしょう。もちろん使う言語は音声言語でも手話言語でも書記言語でも全て同様に作用されます。ろう児の場合は手話言語が一番効果的です。読み聞かせでは手話を用いて、視覚的に分かりやすい絵本を使う、遊びでは親とのコミュニケーションは手話で行い、目を合わせて会話する、食事時間も手話でコミュニケーションをとって、様々なテーマで話し合うと効果が見られるでしょう。

また、ろう児をもつ聴親の皆さんは自分の手話力に自信がない人が多いと思います。私の親もそうでした。それでも手話で話しかけてくれたことで、私はここまで成長できました。一緒に本を読む、一緒に遊ぶ、一緒に食べるといった日常生活の中で過ごしながら、簡単な手話でもいいのでろう児とコミュニケーションをとってみてください。ろう児とのコミュニケーションを通して自然と手話力は上がりますし、最初は“Immediate talk”や“pretend talk” “Narrative talk”のように初歩的なレベルから始めるべきなので高度な手話力は求められません。皆さんのろう児が年を重ねていく度に手話力を向上すると共に少しずつ教えられる内容をより高度なもの、幅広いものにしていくといいと思います。

最後に、この「家庭言語」は家庭で見られる言語発達を指しており、家庭でしか見られないわけではありません。読み聞かせも遊びも食事時間における言語発達は家庭のみならず、学校や地域、様々な場面でも効果があります。つまり、もし両親が家庭でできる言語発達におけるアプローチは何かと聞かれたら、上記のように「家庭言語」として答えます。

さて、「家庭における言語発達」について熱くなってしまいましたね。ここまで長くなってなりましたので、「学校における言語発達」や「家庭と学校のつながりの重要性」についてはまた来月、言及していきたいと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございます。

第16期生
大西

【参考文献】
Dickinson, D. K., & Tabors, P. O. (2001). Beginning literacy with language: Young children learning at home and school. Paul H Brookes Publishing. https://psycnet.apa.org/record/2001-06306-000
Posted by 大西 at 07:47 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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