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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2021年6月生活記録【第16期生 大西啓人】[2021年07月08日(Thu)]

こんにちは!
夏季講義を無事に終わり、留学があと1年となりました。
これまでの1年間は手話で議論しながら知見を深める環境で様々なことを学べて、非常に有意義な1年間でした。最初はASLと英語に苦戦し、授業についていくのに精いっぱいで意見や質問もなかなかできなかった自分に対し、1年経った今ではほとんどの内容は読み取れるようになり、意見や質問も気楽に発言できるようになりました。比較してみるとASLや英語力がかなり成長したと実感しています。
これだけではなく、教育における知識や価値観などにおいても、日本と似ているところもありますが、アメリカ特有のものもあり、新しい視点も取り込みながら学習でき、充実した1年間を過ごすことができました。
残りの1年間は研究活動が中心になりますが、授業を通して貪欲に様々な視点や知識を吸収して、これまでの経験やこれからの経験を糧にして、さらなる成長へ活かせられるように頑張ります。

さて、今月のテーマは前回に続き、「教師の役割」について考えたいと思います。
前回では、教育メディアにおける重要性や有効性、中高生への仮説など説明しました。教育メディアはリテラシー能力や読解力、語彙力、様々な分野への影響は大きいです。研究では、ろう児が生まれて早い段階で手話言語に触れることで手話言語に触れていないろう児より高い識字能力を示すことが多いと述べているため、ろう乳幼児のための教育メディアは多くのろう学校で必要とされています。

しかし中高生のための教育メディアはまだその有効性や影響力について調査している研究は少ないため、明らかになっていません。

ただ教育メディアを求め、授業や教室内に取り入れるだけで、ろう児の識字能力は向上するのでしょうか?
実際にこれだけでも向上できますが、さらに教師がどう動くかによって、識字能力だけではなく、アイデンティティなど様々な視点から、より高い影響を与えることができます。
前回紹介した教育メディアで使われたビデオを用いて、教師からのサポートを行うことによるろう児たちの学びを研究した論文があります。

この論文では前回紹介した教育ビデオを視聴した後、教室の様子や教室内活動を観察し、その影響力を調査したとされています。実際に行われた教室内活動は「語彙」「ワードゲーム(グループと個人)」「物語」「概念」「順序」とテーマごとにろう児は教師と一緒に復習するなどを行いました。ここでの活動は言語獲得(ASL語彙、ASL文法構造など)リテラシー能力(英単語、内容理解、知識など)を意識していたそうです。教師による教室内活動を観察することを通して、ろう児たちのリテラシー能力関連の行動(書く、読む、理解するなど)を調べるために「行動意義」「行動基準」「行動頻度」をスコアにまとめたり、語彙テストを活動前後で実施したりして、調査しました。

結果として、
・語彙能力について、視聴後(活動前)と教師による教室内活動後の2点を調べ、参加者の平均語彙スコアが以前より高かった
・ビデオ視聴や教室内活動中に英単語、内容理解などのリテラシー能力について、教師と対話することでより利益を得ることができた
・実際に活動に関わった教師に教師による影響力についてほとんどが肯定的だった

以上でわかるようにろう児の場合、教師による影響力でより高い識字能力へと成長できるとなっています。教師の役割について理解したところで次は中高生における教師の役割について考えたいと思います。

別の研究論文で英語教育を受けた外国人の経験をインタビューでまとめたものがあります。日本も第一言語が日本手話または日本語になっており、英語は外国語として学びますね。同じように外国語として英語を学んだ経験のあるろう者にインタビューを行い、収集したデータを基に何ができるかについて議論されていました。
研究では4人のろう者チェコ人に経験をインタビューし、「学習経験」「モチベーション」「指導様式」「学習戦略と自主学習」のテーマごとにまとめました。インタビュー中に語った経験を読んで、私が過去に経験したものと類似しており、同感できる点がたくさんありました。例として以下に経験談を書いていきます。

【学習経験】
・語彙ばかりで他の学習がなかったため、かなり退屈だった。
・語彙を練習することの繰り返し、他のことを学ぶ機会がなかった。
・授業のはじめに宿題を確認して完了した後、文法や語彙を教師から説明を受けて、各々複数のプリントを取り組むだけの授業だった。(一方的な展開でコミュニケーションがない)
・つまらなかったため、授業に集中しなかった。

【モチベーション】
・旅行や留学での経験を使って、子どもたちに興味を示すようにしていた。
・語彙と構文を学ぶために様々なテーマで家庭教師とメールを繰り返すことで、間違いを訂正できた。
・英語に興味があったのに中学校での英語指導に失望し、モチベーション下がった。
・英語を学ぶことに対して、「問題があるから」「苦戦しているから」「強制されている」「義務だから」などで説明されて、意義がわからなくなった。

【教育様式】
・授業中、すべての時間を手話でコミュニケーションをしていた。
・基礎手話しかわからない教師の場合は通訳をつけていた。
・英語における口話発音教育が行われていた。
・一般学校で使用される教科書だったため、ヒアリングを要する問題から何も学ぶことができなかった。

【学習戦略と自主学習】
・語彙や文法構造を説明する際に、写真だけではなく絵を書くことで説明していた。
・自分の語彙をあげるためにわからない英語は英語で書かれている辞典を用いて調べていた。
・字幕付きのビデオ、映画、興味のある分野の本などを読んでいた。

見てわかるようにこれらはすべて教師によって大きく左右されてしまい、教師による子供たちへの影響力は非常に大きいとわかります。この研究は、教師は慎重に考えなければならないことを示唆しています。これらの経験は生徒として英語指導を受けた経験をまとめているため、生徒側からの視点になります。生徒側にとって何が一番望ましいか、どんなニーズをもっているか、何に苦戦しているかなど生徒たちの実態に基づいて、影響力を自覚しながら教師が知っている知識をどれだけ活用できるかが鍵になります。上記にある実際に感じた生徒視点での経験を読んで、教師がやるべきなことは何か、考える機会となればと思います。
私は論文や他教室から参考した理論や指導法を自分のクラスに取り入れても生徒にとって危険であると、この論文から学びました。例をだすと、前回のブログから教育メディアは有効性があるため活用するべき!とも捉えることができます。そこで私が教育メディアに効果があると信じ、授業に取り入れて実施していても必ず効果があるとは限りません。もしかしたら何らかの悪影響を与えてしまうこともあるかもしれません。生徒のニーズに合っているかどうか、戦略としてこれが望ましいのかを考え、慎重に検討するべきだと考えます。

また、教師の役割を考える際にこれといった具体的な役割ではなく抽象的であると思います。ただ私の考え方は教師として何ができるのか、生徒のために何が重要かなどを正確に見極め、それに対応できるように多くの引き出しを用意できるようにするべきと思っています。だから私が思い描く理想の教師像のために多くの知識、経験を積むためにこうして留学しています。このように教師は自分なりに学校から生徒から保護者から何が求められるか熟考しながら、自分にとっての「教師の役割」は何か、自分ならできることは何か考えるといいかもしれません。
2つの論文からモチベーションを維持できるように何ができるか、生徒が自主学習で効果を実感できるようにどんなサポートをするか、など常に考えながら取り組まなければならないこと、また教師による影響力はかなり大きいものと認識して、慎重に動いていかなければならないことを学びました。当たり前ですが、生徒たちの未来を肩にかかっているため、重大な責任があることも忘れていけません。

こうして私は論文を読んで、教師における役割、教室内で教師ができることを改めて考えさせられました。このブログで多くの人も改めて考えさせられる機会となれば幸いです。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

【参考】
・Golos, D., & Moses, A. (2015). Supplementing an educational video series with video-related classroom activities and materials. Sign Language Studies, 15(2), 103-125. http://www.jstor.org/stable/26190975

・Jitka Sedláčková, Edit H. Kontra(2019), Foreign language learning experiences of deaf and severely hard-of-hearing Czech University students, Pedagogická orientace, 29(2). https://doi.org/10.5817/PedOr2019-3-336

・2021, June 08. 2021年5月生活記録【第16期生 大西啓人】. Canpan. https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/1325
Posted by 大西 at 02:05 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年5月生活記録【第16期生 大西啓人】[2021年06月08日(Tue)]


※手話内容はブログ記事と同様です。
※日本語字幕はついていません。

みなさんこんにちは。
私は今、今月から夏学期が始まり、7月までクラスをとっている仲間たちと一緒に学んでいます。アメリカでは、夏に約3ヶ月の休暇(5月中旬~8月下旬)があります。どう過ごすかは人によって異なり、仕事またはバイト、旅行、夏学期の授業など様々だそうです。3ヶ月以上も休暇があるので、どう過ごすか悩みますね…!もしあなたならどう過ごしますか?
本来は旅行したいところですが、現在コロナウイルスの猛威や変異株のこともあり、ワクチン接種を完了してても安心できないので旅行計画は組んでいません…(トホホ…)
最近は友達やクラスメートとZoomでの交流を行っているくらいです…笑 今後の状況によりますが、もっと友達と交流したり、旅行したりできることを祈ります。

夏休みが始まり、英語教材リテラシー教育バイリンガル教育に関する様々なテーマで学術論文を読む時間が前より増えました。そこで「教育メディア」について興味深い論文があったので、今回紹介します。

教育メディアはろう教育において、視覚的に内容を理解できることから、ろう児の言語と識字能力の発達を促進するためのツールとして活用されています。実際に研究のために使われた教育メディアはこちらです。






もっと詳しく掘り下げていきましょう!
ここで使用する「教育メディア」は、就学前のろう児向けにろう文化や単語習得、ロールモデルを含め、家での学びが可能になるために構築されたASLを用いたビデオを指します。この教育メディアを通してどのようにろう児の識字能力を発達するかに重点を置いています。就学前のろう児向けなので簡単なASLと単語学習になっていますが、非常に重要なポイントがいくつかあります。今から紹介するポイントはろう児への教育「戦略」として有効であり、教育メディアだけではなく授業方法にも取り入れることができるでしょう!

ろう児向けにASLで開発された教育メディア
ビデオはろう学習者の言語(例:ASL)ろう者に効果的な視覚的コミュニケーション(例:写真、プリント、身振り)視覚的戦略を含めた文化(例:ろう)に基づいています。ろう児のニーズに合わせていることからろう児にとって身近に感じられて、親近感を生じさせることができます。こういった要素はろう児たちの学習意欲の維持に効果的なのです。

多様な表現方法(multiple modes)
このビデオは、コミュニケーションの様々な方法が組み込まれており、複数の方法の間につながりがうまれ、理解を促すように考えられています。例えば新しい単語の意味を登場人物によって、身振りや顔の表情によって示されたり、写真や画面で表示されたり、手話で説明されたりします。同じ情報を1つの方法に依存するのではなく、複数の表現方法を使用した方が理解促進に有益です。

リテラシー思考(literate thought)
上であげた「多様な表現方法」はろう児の学習意欲を促進したり、理解力にも影響を与えたりできると考えてられていますが、それだけではなく、「リテラシー思考」を開発することもできます。リテラシー思考とは、視覚的に表現された文脈化されていない情報を文字として理解するための思考を指します。つまり実際に読み書きしていない状況(図や絵、手話など文字として表現されていないこと)の中で、文字をまだ獲得していないろう児は視覚的にインプットすることで意味/概念を理解します。このリテラシー思考に基づき、文字を認識することができます。このビデオは文脈化されていない状況の中でリテラシー思考を使用して、多くの意味/概念を正確に構築できることが重要としています。つまりろう児はビデオでの手話や絵などの視覚的情報を基にリテラシー思考を使用して、頭の中で読み書きにおける学習が多く展開されているということです。

指導技術(face-to-face strategies)
絵本読み聞かせやろう学校の授業で使われている指導技術はろう児の言語や識字能力の向上に効果的といわれています。この技術がビデオにも使用されています。バイリンガル教育でとりあげられている「サンドイッチ法(sandwiching)」や「チェイン法(chaining)」をこのビデオ内に組み込まれています。教育メディアに本来対面で使用されるはずの技術を取り入れることで、どこでもいつでもネット上で手話によって語彙と意味/概念をつなげて学習することができ、識字能力の向上に効果的です。

※サンドイッチ法やチェイン法についてはこちら



今回の研究は、教育メディアが特定の言語(ここではASL)や識字能力の向上にどれくらい影響を与えることができるかを調査することが目的だったため、この教育メディアは教育ツールとして実用化されていません。研究では、実際に上に紹介した3つのビデオを通して、手話レベルで分けたグループそれぞれに語彙認識スコア内容理解スコアをテストしながら影響力を調査しました。そこには、ろう児たちに事前評価と事後評価を行い、事後評価における成績が事前のものより高く向上できたと結果が出ています。これだけではなく、手話レベルで分けてそれぞれ調査した結果、手話レベルに問わずASLを用いたビデオを通して、語彙認識、内容理解の両方とも向上できたとなっています。ただこれはビデオを使用して、その前後を調査したため、ビデオを使用していない場合との比較はされておらず、正確性が欠けているため、教育メディアの必要性はまだはっきりされていません。

でも私はこの教育メディアを実用化し、英語教育にも使用できると考えます。まず教育メディアの重要性に対して、手話やろう文化などの背景が含まれている、理解促進のための複数の表現方法があるだけではなく、学習意欲の維持に効果的学校や家庭でもどこでも学習できるろう児の注意を引くことができる、といった要素がろう児の言語能力、識字能力の発達に不可欠です。そう思う理由は私が小さいときから絵本読み聞かせが大好きで、当時のろう学校から絵本読み聞かせを記録したビデオが配られたので 購入して、家で内容や手話表現を覚えてしまうほど繰り返して視聴していた経験があるからです。今思えば、視聴していなければ、言語能力や識字能力が発達できていなかったかもしれません。この視聴していたビデオは教育メディアとして役割を果たしており、他にも繰り返し視聴できる教師がビデオを止めて解説、議論する機会を作ることができる点も魅力なため、効果は高いと考えます。
次にろう生徒(小学校高学年~中高生)における英語教育にも割り当てられるのではないかと仮説します。上記で説明した内容は第一言語の獲得における就学前のろう児向けでした。しかし第二言語としての英語を教えるためにも活用できるのではないでしょうか。確信はなく、効果があるかどうかわからないため、「仮説」になりますが、私の意見として、上記のようにASLを使うのではなく、日本手話で英語を学ぶことができる教育メディアがあれば、第二言語(第三言語)としての英語力の発達にも貢献できると思っています。複数の表現方法によって英語を理解し、リテラシー思考をもとに語彙認識や内容理解を繰り返して、手法技術によるインプットとアウトプットを繰り返すことで英語力を伸ばすことができます。就学前のろう児における言語獲得と中高生のろう生徒における第二言語習得では結果が異なると思いますが、試してみる価値はありそうです。

また、この教材メディアは「ロールモデル」という役割を果たしており、ろう児のための社会的モデルとして示すことができそうです。このように多くの仮説、理論や結果など論文を通してつながりを見つけながら、自分の中で新しい仮説や視点を組み立てながら読むことは英語で大変ですが、とても楽しく充実しています。またこれからもまた何か見つけましたら、その都度発信していきたいので引き続き、応援よろしくお願いしますひらめき

第16期生 大西

【Reference】
Debbie B. Golos&Annie M. Moses(2013). Developing preschool deaf children’s language and literacy learning from an educational media series. American Annals of the Deaf 158(4), 411-25. https://www.jstor.org/stable/26234911?seq=1

Debbie Golos, & Annie Moses(2014, February 18). Peter's picture: An educational video series in ASL. https://peterspicture.com

FSDB LearningNetwork(2018, August 23). Chaining/Sandwiching strategy. Youtube. https://www.youtube.com/watch?v=eJ46YjA5gCw
Posted by 大西 at 03:04 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年5月生活記録【第16期生 皆川愛】[2021年06月07日(Mon)]
この留学ブログに綴るの生活記録となりました。

カチンコ動画はこちら


卒業式修了のご報告
5月14日付けをもって、ギャロデット大学大学院ろう者学修士課程を修了することができました。
また、ギャロデット大学から大学院最優秀学生賞(Graduate student outstanding achievement award)
更にろう者学部からもジョージ・ヴィディッツ賞(George Veditz award)を頂きました。
*各賞をクリックすると受賞の説明に飛びます(アメリカ手話と英語)パソコン

これもひとえに、日本財団をはじめとし、日本ASL協会、家族、友人、
そしてこの生活記録を通して応援してくださった皆様のご支援によるものです。お礼申し上げます。

パンデミックの情勢により、卒業式はオンラインでの実施となりました。
そこで、有志にてフーディング(hooding)と呼ばれる黒のガウンの上に首元にフードをかけていただく、日本でいう学位授与式を行っていただきました。
ささやかなものでしたが、院生活、そして米国生活が走馬灯のように思い出され、忘れられないものになりましたうま
IMG_8846.JPG

(有志によるフーディング、ギャロデット大学の先生と日本人学生とで)

We also have the Graduate Student.png

(学部内でのzoomお祝い会では受賞にスポットライトを当てていただきました)

最後の生活記録では、
・留学で得たもの
・私にとってのギャローデット大学
について書きたいと思います。
あくまでも私目線です。

かわいい留学で得たもの
私が留学生活で得たものは知識や技術はもちろん、大きな糧になったのは「脈」でした。

クシャルナガル先生(Dr. Poorna Kushalnagar)がセンター長を務めるろう健康研究センター(Center for Deaf Health Equity)での院生助手としての経験は、
ろうの医療や健康問題に取り組む研究と実践を直に学ぶ大変貴重な機会となりました。
そして彼女は私の人生の中で、ろう者として、女性として、研究者として、遠のロールモデルです。
先生とは米国内での活動にとどまらず、世界ろう者会議の場で一緒に発表させていただき、
また国立がんセンターの研究班にて招致講演ができたこともこの上ない光栄でした。

デフゲインを提唱されたバウマン先生(Dr. H-Dirksen Bauman)、今後のろう者学を引っ張っていかれるモリアーティ先生(Dr. Erin Moriarty Harrelson)の元で、ろう者学を学べたことも大変幸運でした。
バウマン先生には、ろう者への看護に関する教育において何が必要なのか、
それは単に手話を覚えたり、マニュアルを身につけたりすることではなく、
個々人が抱く「ろう」の意味を見つめ、そして変えていくことなのだと教えていただきました。

モリアーティ先生には、言語イデオロギーを紐解くことの難しさ、面白さを教えていただきました。社会の中にある行動や信念、価値観は、イデオロギーに基づいています。言語もそうです。
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(修論の口頭試問: Defence にて、左上ダークセンバウマン先生、右上モリアーティ先生、左下がクシャルナガル先生、右下がストーカー先生)

このように、人生において、ろう者として、学術分野での活動者として、ろうコミュニティのアドボケーターとして、
沢山のロールモデルに出会い、今後にとって心強い人脈を得ることができました。
日本に帰国しても、人との繋がりは切れないものです。

留学生活では、言語の壁、様々な”ism”(差別)と、日本では経験しなかったような困難にも出くわしました。
日本での経験やキャリアを失うことの不安もありました。
それでも、得たものの方が多かったですし、留学して良かったと心から言えます。

ビル私にとってのギャロデット大学
5つの観点を箇条書きにします。

1. リベラルアーツに根ざした教育
ギャロデット大学は世界でも唯一のろう者のためのリベラルアーツに基づく大学だというフレーズをしばしば目にしますが、これは間違いありません。
リベラルアーツは幅広い学問に触れ、世界を変えるためのヒントを提示してくれます。
特に私が2年間没頭したろう者学は多学際的でした。歴史、哲学、社会学、倫理学、法学などの分野を網羅します。そうしないと、社会の構造は見えてきません。
以下の図は生活記録でも何度か出してきました。「ろう」の概念は無限大です。それを無限大にするのはリベラルアーツだと思っています。
次に、「一本のペットボトルの水」から何を思い浮かべるでしょうか。
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人間が生きるために必要なもの、ありとあらゆる生態系を維持するもの、
世界には飲水へのアクセスに格差があることなど、、一つの物事から何が想像できるか、何が見えるか。
リベラルアーツはこの引き出しを増やすのに大きく役立ちました。
社会を変えたいなら、自分の専門分野に関係なく、リベラルアーツはきっと役に立ちます。

2. 手話によるフルアクセスと卓越したメンター
言わずもがなですが、手話で不自由なく学術的な議論ができ、ご指導を頂き、共に研究ができるということは当たり前のようで、私とっては大変貴重でした。
ろうや手話のことを1から説明しなくてもいいこともありがたいものでした。むしろそれを上回る視点や意見をくれました。
ギャロデット大学が150年以上の歴史をかけて築いた学術スペースとリソースは格別でした。

3. 少人数・参加型授業
ギャロデット大学は基本的に少人数の参加型の授業です。
授業ではグループワーク、ディスカッション、プレゼンテーションを繰り返しでした。
そのおかげで筋道を立てて、ともに学び合い、違いに気づき、新たな自分を発見電球、その上で伝える力が身に付けられたと思います。

4. 世界とつながる
アメリカ手話と英語のバイリンガル教育によって、語学力を伸ばせます。
この語学力は新しい世界へのドアを開く大きな武器になります。
学会や会議に参加する後押しをしてくれます。そこで世界中の学者、アドボケーターとの縁を掴むこともできます。

5. 自己洞察
ギャロデット大学は、ある意味USAアメリカ社会の縮図とも言えます。
多様な背景を持つ者が者集まります。肌の色、国籍、ジェンダー、障害、出身地、家庭、卒業校なども様々です。
その中でどうしても誰かが特権(Privilege)を持ち、その力関係の中で、そして抑圧(Oppression)が生まれます。
この文脈で、特権とは労なくして得られる優位性です。
米国では白人が白人というだけで、特権を持つと言われています。それを裏付ける例として、黒人の大卒の人よりも、白人の高卒の人の方が寿命が長いのです。
肌の色は変えられません、これが社会の不平等です。
言語獲得に関しても、乳児期から手話の環境にあるか否かは大きく影響します。
特権と抑圧が表裏一体の場所で、思うことはたくさんありました。
私は日本で肌の色によって差別や抑圧を受けた経験がありません。
日本における私自身の特権、それがもたらすであろう抑圧にも向き合うことができました。
さらに、社会における力関係を洞察するきっかけになりました。それは留学しなければ一生気づかなかったことかもしれません。
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(第16期生の大西さんとギャロデットのランドマークにて)

大西さんとはこちらで初めて出会い、アトランタに旅行に行ったり、一緒にコロナの予防接種を受けたり、
ろうのイシューを話し合ったりと、とても濃い時間を過ごしました。
アプローチや専門は違うけれど、大西さんのろう教育にかける思いにたくさんの刺激を受けました。
ありがとう!

育てられることのありがたみを知った今、コミュニティへの還元をすること、
そして、これからの世代、特にろう者、女性たちの力になれるようになりたいと強く思っています。
それだけ自分がそう思える素晴らしい先生方、同僚、クラスメイトに出会えたからです。

英語で卒業式はcommencementといい、この単語は「まり」という意味を持ちます。
まさにここからが本当のスタートだと感じています。

最後になりますが、留学開始当初から多大なご支援をくださった日本財団、日本ASL協会、
特に細やかなサポートをしてくださった根本様、奨学生の先輩方と同期、家族、友人、
そして、応援してくださった全ての皆様に感謝いたします。

7月からろう健康研究センターで研究員(Research associate)として働かせていただくご縁に恵まれました。
奨学金をはじめ、様々なご縁や機会は私自身の特権とも言えるかもしれません。
これらの特権を抑圧を生む権力に使うのではなくエネルギーに変えて、これからも精進いたします。
日本でも看護大学の非常勤講師や国立がんセンターの研究員などを通して、
継続的にろうコミュニティとつながり、還元できる活動を続けて参りますので、
どうかこれからもよろしくお願いいたします。

16期奨学生 皆川 愛
Posted by 皆川 at 11:33 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年4月生活記録【第16期生 皆川愛】[2021年05月08日(Sat)]
月は2年間の学びを生活記録で振り、ろう者学とは何か、これまでの動向を振り返り今後の指標を記しておきたいと思います。

カチンコ動画はこちら



2年間のろう者学の内容に特化した生活記録を振り返ると、
・ろう文化(Padden & Humphries, 1988; Holcomb, 2012)
・ヘゲモニー (Gracims, 1989; Turner, 1996)
・文化学(カルチュラル・スタディーズ)
・インターセクショナリティ(Crenshaw, 1989)
・音声優勢主義(Derrida, 1976)
・反本質主義
・オーディズム(Humphries, 1967; Lane, 1996; )
・デフゲイン(Bauman & Murray, 2014)
・感覚的志向(Bahan, 2014; Bahan, 2005)
・感覚のヒエラルキー(Classen, 1997)
・デフエコシステム
・オリエンタリズム
・二項対立
・アイデンティティ政治(Shakespeare, 2006)
・記号的レパートリー(Kusters et al, 2017)
・生権力(Froucault, 1977)
・言語イデオロギー(Kusters et al, 2020)
・手話の標準化(Adam, 2015; WFD, 2015)
など、それぞれの概念を紹介してきました。

今読み返すと、当時の浅学を思い知らされるもので、アップデートが必要なものもたくさんあります。
用語だけ並べて知ったつもりかと言われたこともありました。
大学で看護を学び、臨床経験で身につけた点滴技術のように、それによって目の前の命が救われるようなことはないかもしれません。
学問に優劣もないですが、ただろう者のことを話して、ろう文化を学ぶだけでしょと言われることも度々あり、その度に悔しい思いをしました。
ろう者学はリベラルアーツに根ざした多学際的学問です。
1.jpg

一日にしてわかるものではありません。
2年経った今わかったことはほんの少しです。実践にすぐ役立てるか、何ができるのか自分でもわかりません。
これは今後も続くでしょう。きっと長い道のりです。

*過去の生活記録を含め、間違いや見落としは全て私の責任にあります。
 生活記録の掲載や更新は来月をもって終了しますが、
 問い合わせや修正の提案などはいつでも受け付けております。

これを読んで、ろう者学を学ぶことの意義を少しでもわかっていただければと思います。
そして、ろう者学が単なるろうの生き方の追究と思われませんように。

*今まで「ろう者学」と用語を使ってきましたが、それについて少し思うことがあり、私見を述べさせてください。
 ろう者と称しているところで、ろう者のことを学ぶ、ろう者の言語や文化を学ぶというふうに思われる可能性を思索していました。
ろう者学は、ろう者とそれを取り巻く社会の構造を追究します
 「ろう者」という言葉が誤解を招いているのかなと思いました。
 実に英語表記はDeaf people Studies(ろう者学)ではなく、Deaf Studies(ろう学)です。
 日本でこれまで使われてきた言葉を変えるのはいかがなものだとも思います。
 ただ、ろう学など、他の用語も可能性としてありうると最近は思慮を巡らしています。
 これについては今後も皆様にご意見を頂きたいと思います。

これまでに紹介した概念、これらに共通しているのは社会構成主義の視座に立つということです。
社会構成主義とは、簡単にいうと考えや観念は人々の社会的交流から生まれる言説が現実を作るという考えです。
ろうを取り巻く言説については、Ladd(2003)がまとめております。 *詳しくは2020年5月の生活記録

大学院生活で2年間お世話になったダークセン・バウマン先生。
彼の手話はとてもクリエティブで、パワフルで、毎回心動かされます。
ろうを取り巻く問題について様々なレンズで突いていくこと、私の目を開かせてくれました。
先生との有益で刺激的な語らい合いは宝物です。心から尊敬している先生です。
彼はTED Talksの中でこのエピソードから始めています。
スクリーンショット 0003-05-07 22.02.43.png

僕はコロラド州で生まれました。いわゆる”平凡”な幼少時代を送っていました。外で遊び回り、友達や家族と過ごしました。そしてある日突然、衝撃的な僕の人生を変える出来事に遭遇します。21歳の時です。聴者になりました。どういうことでしょう。僕は生まれた時から聴者だったわけではないです。生まれた時からずっと聞こえていました。環境音、母の声、電話が鳴る音、、全てです。聞くことで完全にアクセスできていました。ただ、それまで聴者としての自分のアイデンティティを自覚する瞬間がなかったのです。
この例から「聴者」という概念は、個人の中で、社会との交流の中で作られるということがわかります。

「ろう」の意味も然り、社会によって構成されています。だから、「ろう」の意味は変えられる。
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次の世代のろうの子どもたちに何を残すか、社会の「ろう」の意味を少しずつ変えていけば、彼らが生きやすくなるかもしれない。
負の経験を減らせるかもしれない。
綺麗事だと言われればそうかもしれません。
私は言葉だけ並べてアクションを起こしていません。でも、世界を変えるための行動戦略はいろいろあります。

これまでの欧米でのろう者学の動向を見ながら、今後のろう者学が切り開いていくであろう分野を私なりに考察したいと思います。

ろう者学の学術的研究と教育が盛んになったのは1980年代です。
4.jpg

ウィリアム・ストーキー(Stokoe, 1960)による手話の音韻構造の発見が発端です。 
これまで手話は単なるコミュニケーション手段であり、言語ではないと言われていた言説がこの時点で覆されます。
そこから「ろう者」とは何かというところで、米国の学者を中心に盛り上がります。
そして、キャロル・パッデンとトム・ハンフリーズによってろう文化の構成要素が提示されます(Padden & Humphries, 1988)。 *詳しくは2019年9月の生活記録
視覚言語である手話を使い、音声を使わず、血縁関係ではなくろうコミュニティとの繋がりが重視されるマイノリティグループであり、手話にも文学があり、それらがろう者の価値であり、文化と位置付けられると主張しました。
当時はろう文化の明文化が目的だったのだろうと思います。
ジム・キールやディ・ラッドも英国のろう者と社会を描写しています(Kyle, 1990; Ladd, 1998)
なおLaddは後に本が出版され、そちらがしばしば引用されていますが、彼が博士論文として提出したのは1998年です。
それらは聞こえないという負の病理に焦点を当ててきた医学モデルに対する挑戦です。それを打ち消そうと、文化や言語の視点からろう者の存在を訴えます。
グラハム・ターナーは文化を明文化する重要性を理解した上で、文化はリスト化できるものなのかと疑問を呈します。
文化は単なる行動様式を示すのではなく、その行動様式を構成するもの、すなわち社会を理解するための知見だと言っています(Spradley & McCurdy, 1987)。
これが生んだのはろう社会でのろう者によるろう者の排除です。
デフファミリー出身でなければ、ろう者らしい行動を振る舞わなければならない、そうしないとろう者じゃないと主張します。
この傾向は特に米国で顕著だったようです。

その後、1990年代から2000年代にかけてろう者への抑圧についての議論が盛んになります。
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ハーラン・レーンはアフリカの植民地史にろう者社会への抑圧と共通性を見出しました(Lane, 1996)。
心理学行動で社会面、認識面、行動面、情緒面において劣っているとみなし、
生物学的に(アフリカは肌の色で、ろう者は聴力で)劣っているせいだと合理化するのです。
そしてそこには支配者がいます。具体的にはアフリカでは植民者、ろう社会では聴者の専門家です。
ラッドもろう者を文化言語的マイノリティとして位置付け、
多数派文化である支配側と不均衡な力関係にあり、植民地主義の位置範疇に位置付けられると主張しています。
(*日本語文献では森壮也監訳による「ろう文化の歴史と展望」)
そして、トム・ハンフリーズが博論で提唱したオーディズムの概念が世間に広まったのは、レーンの書籍で紹介されたこの頃です。
(*日本語文献では長瀬修の訳による「善意の仮面:超能主義とろう文化の戦い」)
そして、オーディズムにもいくつかの次元があると提唱します。 *詳しくは2020年1月の生活記録
抑圧論は聴者社会からの支配とそれへの抵抗を露わにしました
しかし、そこに共存はなかなか生まれません。ろう者が抑圧されていると主張するだけで何も生まれないという反省が出てきます。

そして、ポストモダニズムとして出現したのがデフゲインです。 *2019年12月生活記録でも書きましたが、アップデートしたいです。
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デフゲインの提唱過程はこうです。(自分の解釈であることはご了承ください)

違いは社会的に良くないものとみなされています。特に日本はそうかもしれません。同化を求められます。
でも、違いこそが社会への貢献を生む。

全ての「違い」には物差しがあります。
物差しによって優良、普通、もしくは不良と判別されます。心理学的行動や聴力といった物差しが該当します。
ある物差しでは優良だったものが、別の物差しでは不良とみなされるかもしれません。
歴史的には差別は、権力あるものが物差しを作り、それによって不良か優良かを区別しました。
不良かどうかなんて確証もないのに、物差しで合理化してしまうのです。

社会的に不良とみなされていた「違い」に価値を見出す
違いはただ聴力だけ。知的指数だけ。数です。そこではなく、人間に目を向ける。

これまでの「ろう」の意味を超えなければならない。その先にある新しいものを見出す。

ストーキーの言語構造解明以前よりろう者の言語は手話だと言われていますし、私もそうだと思います。
でも、実世界で人と人とのコミュニケーションは一つの言語に依拠しているわけではありません
肉屋や魚屋さんに行けば、聴者でも口頭で品物を唱えながら、欲しいをものを指さす。
プレゼンテーションで音声や手話で話すけれど、パワーポイントによるイラストや文字情報もある。
それがトランスランゲージングに見出される記号的レパートリーです(Kusters et al, 2017; De Meulder et al, 2019)。
人間は一つに依拠すると危険です。実際、コロナ禍で一筋縄ではいかないことがたくさん浮上しました。
口話でコミュニケションを取ってきた人はマスクで口元が見えず大変でしょうし、聴者も声援を送れなくなりました。
前職で出会った糖尿病によって視力を失った高齢ろう者は「若いうちに触手話を覚えておけばよかった」と言っていました。
一つの方法に依存するより、いくつかの方法を持っていたほうが、万時に強い
だから多様性は重要なのです。

聴者にはろう者の経験から学ぶことがある。発声器官が未発達の時でも赤ちゃんの表出を促せるとしてブームになっているベビーサインも手話の存在が契機になっています。
オンライン学会でも字幕をつけたことで、ろう・難聴者だけでなく、家で子どもと接しながら字幕で内容を把握できる。

社会の構造、権力、そこから生まれる抑圧が消えることはないと思っています。それを理解した上で、違いを尊重し、人間として見ること。
これが今後のろう者学の目指す方向と私は考えています。

<参考文献ペン

Bahan, B. (2007). Upon the formation of a visual variety of the human race. In Bauman, H-D. (Ed.)Open your eyes: Deaf studies talking (pp. 83–99). Minneapolis: University of Minnesota Press.

Bahan, B. (2014). Senses and culture: Exploring sensory orientations. In H-D. L. Bauman & J. Murray (Ed.) Deaf Gain: Raising the stakes for human diversity (pp. 223 - 254). Minneapolis: University of Minnesota Press.

Bauman, H. D. L, & Murray, .J J. (2014). Deaf gain: An introduction.  In H-D. L. Bauman & J. Murray (Ed.) Deaf Gain: Raising the stakes for human diversity (p. xv - xlii). Minneapolis: University of Minnesota Press.

Classen, C. (1997). Foundations for an Anthropology of the Senses. International Social Science Journal,153, 402-423

De Meulder, M., Kusters, A., Moriarty, E. & Murray, J. (2019). Describe, don’t prescribe. The practice and politics of translanguaging in the context of deaf signers. Journal of Multilingual and Multicultural Development, March 2019. doi: 10.1080/01434632.2019.1592181

Holcomb, T. K. (2012). Introduction to American Deaf culture. California, CA: Oxford University Press.

Humphries, T. (1975). Audism: The making of a word. Unpublished essay.

Kyle, J. (1990). The Deaf Community: Culture, Custom &Tradition. In Siegmund, S. (Ed.)
Sign Language Research & Application (pp.175-185), Hamburg: Signum-Press.


Kusters, A., Spotti, M., Swanwick, R., & Tapio, E. (2017). Beyond languages, beyond modalities: Transforming the study of semiotic repertoires. International Journal of Multilingualism, 14(3), 219-232. https://doi.org/10.1080/14790718.2017.1321651

Ladd, P. (2003). Understanding Deaf culture. Clevedon, UK: Multilingual Matters.

Lane, H. (1992). The Mask of Benevolence. Disabling the Deaf Community. San Diego, CA: DawnSignPress.

Padden, C. (1989). The Deaf community & the Culture of Deaf people. Reprinted In S. Wilcox (Ed.) American Deaf Culture: An Anthology (1-16), Silver Spring, MD: Linstok Press.


Spradley, J., & McCurdy, D. (1987). Culture and the Contemporary World. In Spradley and McCurdy (eds.) Conformity and Conflict: Readings (pp.1-10), Boston. Toronto: Little, Brown.
Posted by 皆川 at 10:53 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年4月生活記録【第16期生 大西啓人】[2021年05月08日(Sat)]


手話動画1
※手話内容はブログ記事と同様です。
※日本語字幕はついていません。

みなさんこんにちは。
コロナウイルス感染状況についてまたすごいことになってますね…(泣)大阪や東京を筆頭に感染数がまた増えていると聞いてます。アメリカも感染数は減っているとはいえ、まだ数万人いる状況です。みなさんも感染対策をしっかりしながら、お体に気をつけてくださいね。
ワクチン接種に関して、高齢者や医療関係者などを優先的に少しずつ始めているとも聞きました!嬉しいですね!私のような若者たちがいつ接種を受けられるのかわからないですが、早く受けられることを祈っています。

実は私、2回目のワクチン接種をこないだギャロデット大学で受けました。種類はモデルナでした。1回目の接種では特に副反応はありませんでしたが、2回目は副反応が大きく、1~2日間寝込んでいました…。

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現れた症状については頭痛、腰痛、筋肉痛、神経痛、関節痛、高熱などでした。みなさんも今後、接種を受ける場合は十分に準備を整えてから受けることをオススメします。現れる症状に関しては人よりけりですが、重い場合と軽い場合があるそうです。接種を受けた日から数日たった今、元気になりました!


さておき、本題に進みましょう。

今回は「多文化教育」について、授業内でクラスメイトたちと一緒にプロジェクトとして、多文化教育に活用できるオンラインリソースを制作しました。これを紹介したいと思います!

みなさんはPinterest(ピンタレスト)というツールを知っていますか?
様々な人々が様々なトピックにおいて情報を共有できるツールで、例えば教育関係、服飾関係、スポーツ関係、健康関係など多くの情報が公開されています。自分のアカウントがあれば、興味のある分野や興味のあるトピックや情報を見つけたとき、ピンすると自動で自分のフォルダに移動してくれるので便利です。

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そんなピンタレストに私たちの作ったボードがあるので、ぜひ見ていってください!
https://pin.it/3QRivsM

なぜこれを作ったのか、どんな情報をまとめているのか、課題点はなにか、順番に説明していきたいと思います。

@なぜこれを作ったのか?
私たち教育者は常に学び、成長し続ける必要があり、また児童生徒にとって効果的な学習を提供できるために質の高い教材や利用できる情報が必要です。私たちはオンラインリソースやオンライン教材において、ろう児童生徒のために有効な情報がまとめられている場所がないと気づき、これを作るべきと考えたことがきっかけでした。これを必要だと思う理由は主に3つあります。

・ろう児童生徒には聴者たちと比べ、多様な実態、背景、経験があり、多様性について知るべき情報源が少ないため、知らないもしくは深く考えていない教育者がいるため
・ろう教育において、聴者に適している教材や指導が使われており、ろう児童生徒にとって非効率的かつ差別的に感じることがあるため
・オンライン教材や情報源が多くあるにも関わらず、ろう児童生徒向けではないため

私たちはこの活動を通して、1)多文化教育だけではなく、反差別教育など多くのろう児童生徒に有効な情報源を集めること、2)多文化教育や反差別教育で悩まされている多くの人々たちのために中心となる情報源を作ること、を目指しました。

目標が達成できているかどうかは微妙ですが、私たちが制作したオンラインリソースを通して多くの人々にとって参考になれたらと思います。

Aどんな情報がまとめられているのか?用途は?
私たちはろう児童生徒のために活用できる情報を多文化教育だけではなく様々なトピックをまとめると幅広く“教育”を貢献できると考え、以下のような情報をまとめました。

・ろう教育
・多文化教育
・反差別教育
・LGBTQ教育
・リテラシー教育
・家庭教育

などになります。私たちがまとめた情報では日本語で構成されている情報源や英語で構成されている情報源、様々な例がありますが、それら全てはろう教育において有力情報であると私は思います。このように世界中の人々が協力し、多くの情報が共有されれば、ろう教育における多文化教育や反差別教育など多様な教育をさらなる発展を遂げられるでしょう。このオンラインリソースを自国の情報だけではなく他国で取り上げられている内容について知ることができる、気になる情報があれば活用することができるコミュニティとして成り立つことができれば嬉しいです。

また、私たちはろう児童生徒のことを第一にろう教育における多文化教育やその他に関する情報を集めましたが、これらはろう教育だけではなく、特別支援教育、自立教育など幅広い分野において割り当てることができると考えています。もちろん学校だけではなく、家庭にも使える情報にもあります。例えばろう児を持つ親が情報が足りないとき、育児で困っているとき、このオンラインリソースは家族にとっても有効なのではないでしょうか。

ただ現時点ではこれらの情報において、日本教育の一部、アメリカ教育の一部しかまとめていません。(プロジェクトメンバーが日本人とアメリカ人しかいなかったため。)
しかしこのピンタレストの利点として、誰でもボードを編集でき、情報を共有できるのです。制作したのは私たちですが、誰でも情報を追加できるということです。今はまだ情報が少ないですが、一大プロジェクトとして今後も発展できると想定しています。

B課題点
私たちは授業を通して、ろう教育に参考できる情報源をまとめましたが、課題点があります。
先程、Aで説明したとおり、このオンラインリソースは情報を世界中から集め、私たちはお互いが支え合うことができるコミュニティを作りたいと考えました。自国だけではなく、他国においてどんな教育法でやっているか、どんな教材を多く使われているかなど知ることができれば、大きな力になれると思い、制作しました。しかし現時点では英語力を要することになってしまいます。

例をあげると、日本のろう教育においてよく使われている教材については知っているが、アメリカではどんな教材が使われているのか気になりますよね。その場合、アメリカでの記事やオンライン教材に関する論文などを読めばいいのですが、そこには英語で書かれていますね…。英語が読める方であればいいかもしれませんが、読めない方もいます。同じようにアメリカの教員でもスペイン語で書かれた記事を読むことができない人もいます。このように言語面における問題が残っており、私たち学生の範囲では解決できず、未解決のままとなってしまっています。
ゆくゆくはコミュニティとして設立し、通訳者や翻訳家の方々など力になれる方がいれば解決できるのではと考えていますが、理想的な想像だけで現実的な見通しは今のところありません…。
何か良いアイデアがあればぜひ協力し合いましょう!


さいごに、

授業内でプロジェクトメンバーと共に重要性や有効性について考えながら、プロジェクトに取り組むことができ、かなり良い経験となりました。
多文化教育は一般的に多人種、多国籍において多く取り上げられているテーマですが、学習障害(LD)や多動注意欠損障害(ADHD)、LGBTQなど多様な背景をもつ学習者がいることを考えると、人種や国文化だけではなく、様々な形で活用できると思います。私自身もこのプロジェクトを通して、多様性について改めて考えさせられ、様々な背景をもつ学習者にとって快適な教育のために私たちができることは何かを考えられるようになりたいと強く思えました。
先程述べた言語面における課題点に関しては現時点では解決することは難しいですが、日本だけではなく他の国のケースについて知ることができる点はとても重要であると思います。私は今まで日本で育ち、今までの教育が固定概念化され、多角的な視点で見ることができませんでした。アメリカにきて様々なことを学び、日本のろう教育の強みや課題点など改めて考えることができたのです。これは「日本」という環境が客観的に物事を見ることが難しい状況に陥ってしまっている面もあると思います。他国で学んだことで気付かされることと同じように、この情報源を用いて他の国の様々な情報を知ることで自分がやっている教育や受けている教育について客観的に考え直すこと多角的に物事を見ることが必要になってきます。自分の周りにある出来事を客観的に考え、改善すべきところがあるかきちんと検討することによって自分にとっても教育を受ける子どもたちにとっても影響を与えることもあるでしょう。こうして人は常に学び続けるべきだと思っています。

以上が私たちのプロジェクト報告でした。

【Reference】
García-Fernández Carla Marie. (2014). Deaf-Latina/Latino critical theory in education: the lived experiences and multiple intersecting identities of deaf-Latina/o high school students (dissertation). https://repositories.lib.utexas.edu/bitstream/handle/2152/25088/GARCIA-FERNANDEZ-DISSERTATION-2014.pdf?sequence=1

Murray, J. J., Snoddon, K., De Meulder, M., & Underwood, K. (2018). Intersectional
inclusion for deaf learners: moving beyond General Comment no. 4 on Article 24 of the United Nations Convention on the Rights of Persons with Disabilities. International Journal of Inclusive Education, 1–15. https://doi.org/10.1080/13603116.2018.1482013

Stapleton, L. D. (2016). Audism and racism: The hidden curriculum impacting Black
d/Deaf college students in the classroom.
https://www.academia.edu/35003418/Audism_and_Racism_The_Hidden_Curriculum_Impacting_Black_d_Deaf_College_Students_in_the_Classroom
Posted by 大西 at 05:17 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年3月生活記録【第16期生 大西啓人】[2021年04月08日(Thu)]

手話動画は多忙のため、準備ができ次第、掲載します。


皆さんこんにちは。
今、コロナについて日本で第四波が来ているなどとニュースになっていますね。アメリカも感染者数は減ることなく、増え続けています。
実は私、4月2日にギャロデット大学の尽力のおかげでワクチン接種を受けることができました!これで少しは感染するリスクが減るといいですね…

アメリカではワクチン接種(2回接種する必要あり)を受けた場合、受けた者同士でマスクなどの予防対策なしに会うことをCDC(疾病管理予防センター)では認めると公表されましたがまだまだ心配です。まだ予防接種を受けていない方もいるので、常にマスク、消毒などの予防対策は継続するべきだと思っています。アメリカも日本もコロナウイルスによる影響が減ることを祈っています。

さて、今回は前回紹介した春学期の授業「様々な学習者のための家庭と学校、コミュニティの共同」で「学校と家庭における宿題の重要性」について授業を進める(ファシリテーション)という役割であるファシリテーターを経験したのでブログに書き留めていきたいと思います。

一般的な宿題といえば穴埋めプリント、漢字/計算ドリル、文法プリント、日記などがありますが、私も学生の時、上記のような宿題をやってきましたが、正直「楽しかった!」と感じたことはあまりありません。
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なぜ楽しく感じないのか宿題を最大限活かすためにはどうするべきか様々な学習者が等しく効果をあげられる宿題とは何か、などクラス内で話し合いました。

ファシリテーターとして私は、以下のテーマを基に話し合いの場を設けました。

「宿題を課すことの意味を正しく理解させ、宿題を家族との会話にどのようにつなげるか?学ぶことができる機会を教師はどのようにひきだすか?放任主義、虐待など家族が宿題に対し非協力的、または父子、母子家庭のため仕事や家事に追われ協力することが難しい場合、教師や学校ができる対応は?」
【実際に使用したPPTページ】
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グループに分け、20分間議論を重ね、様々な意見やそれぞれ学生の経験談など聞きました。その中で特に「学校のために学ぶこと、自分のために学ぶことがあり、それぞれ宿題の形が変わってくる。学校で学んだこと、内容理解ができているか確認するためなら、学校内でもできる」や「家族との時間は貴重な時間であり、家族とのコミュニケーションを活かせる宿題が望ましい」といった意見がありました。
また多国籍社会であるアメリカでは、家族が英語堪能者ではない場合、学校から出される宿題は英語なので、児童生徒の力になってあげることが難しいといった例もあるそうです。この場合は学校と家庭をきちんとつなぎ、連携がとれる相互関係を築くには家族がもつ言語にも考慮するべきとも言及していました。文化的尊重はもちろん、言語的尊重も必要であることを学べました。

アメリカのある学校が行った面白い宿題の例をあげます。
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語彙を学習するために従来使われてきたプリント形式(穴埋め、漢字や計算などの反復練習など)ではなく、「リンク言語」という方法で行う。

リンク言語とは何か?
出された語彙に対し、児童生徒がインターネットで調べ、学んだ様々な情報をまとめていく宿題であるが、

ある先生は調べた内容をまとめるだけではなく、写真を使用して、調べた内容に対して児童生徒の事前知識を活性化しながら家族の経験や知識を児童生徒に話し、多角的に物事を捉えることを目的とした学習方法で家族からの視点も取り入れられるようにした。

これによって児童生徒は家族と文化的かつ言語的つながりができ、新たな発見や別のトピックなどの新しい領域コンテンツへの構築や、より高度な言語を使いこなす術を身につけることができる。

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従来行われてきた宿題はどれもそれによりもたらされる効果に一定の成果があり、学習目的を果たすものであると推測されます。例えば社会において理不尽なことや大変なことが多くある中でどう解決するかどう対策していくかといったスキルを身につけるため学校で学んだことを改めて復習することで頭への定着を図るためカリキュラムに沿って期待される学習レベルに到達するための時間確保のためなど様々な目的があります。
このように従来の宿題には多くのメリットがあり効果が期待されますが、私は宿題の大前提として、“どれだけ楽しく学べるか”が重要だと思います。宿題だけではなく、学習においてもモチベーションの維持を保つには、「楽しさ(学習欲)」「興味(知識欲)」です。

児童生徒によく見られるケースとしてモチベーションが低下しているからか、宿題を“早く終わらせる”ことに必死だったり、わかる問題でも適当に書いていたりしていませんか。

話し合いの経験や上記を踏まえて私の意見は、宿題とは学校と家庭をつなぐツールであり、家族と教師をつなぐこともできると思うのです。また家庭内でのコミュニケーションは非常に重要なので、より多く会話するためのきっかけとして“宿題”を利用することは教育方法として効果的なのではと思いました。実際に私自身も家族から学んだことは数え切れないほどあり、家族の経験や知識を聞くだけではなく、自分の経験を家族に話し、そこから意見を聞くことで知見を広げることもできました。こうした家族との会話は児童生徒の成長に必要不可欠で、学習促進できるような宿題に必要なことは「楽しさ」だと思います。家庭内の様々な会話が楽しい宿題となるなら、その効果はより大きなものとなるでしょう。宿題をきっかけに家族とのコミュニケーションを増やしていくことで家庭内においても更なる学びへつなげることが可能となるからです。

ただ、家族の負担やニーズもありますので、そこも考慮しなくてはなりません。
こうした議論のおかげで教師としてできることは何か改めて考え直すことができ、非常に良い機会でした。
最後にASLを用いてファシリテーターとして授業を進めるのは初体験であり、貴重な経験でした。ASLで言いたいことがうまく伝わりきれずもどかしさがありましたが、議論を重ねて私だけではなく、他学生にとっても有意義な時間を送ることができてよかったです。

大西

【参考】
CDCのワクチン接種者へのガイドライン
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/fully-vaccinated.html

Rivera, C. (2020). Book Review: Affirming Disability: Strengths-Based Portraits of Culturally Diverse Families by Sauer, J. S., & Rossetti, Z. Research and Practice for Persons with Severe Disabilities, 45(4), 291–293. https://doi.org/10.1177/1540796920960685
Posted by 大西 at 06:18 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年3月生活記録【第16期生 皆川愛】[2021年04月06日(Tue)]
ワシントンDCにもの花が咲きました!
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カチンコ動画はこちらより


2020年4月の生活記録にも書かせていただいた、
ろう健康研究センター(以下、研究室 正式には” Center for Deaf Health Equity”)で、
今も引き続き院生助手として働かせていただいています。

研究室の目標はろうコミュニティにおける健康格差の是正です。
従来、ろう者の健康については、聴者集団(一般住民)との比較調査によって、健康状態が不良というようなことが言われてきました。
実際、ろう者集団も背景や経験は多様であり、その健康状態は一概には言えません。
研究センターは、ろう者を取り巻く様々な健康社会決定要因に着目しています。

子宮頸がん検診の受診率についての論文を紹介させてください(Kushalnagar et al, 2019)。
まず聴者集団と比較をしたところ、特に若年層(20から40代)において受診率が低いことがわかります。
その若年層内で分析すると、LGBTQのアイデンティティを回答した人々の中でとりわけ受診率が低いことがわかりました。
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ろうLGBTQコミュニティ中で啓発活動を行ったり、
そうした集団の人々と子宮頸がん検診を躊躇する理由について話し合ったりすることで、
健康格差を埋めるための戦略を講じることができます。
このようにコミュニティと対話をしながら研究を行い、
還元していく取り組みをコミュニティに基礎を置く参加型研究(Community Based Participatory Reserach: CBPR)といい、
当センターが大事にしていることです。

他にも1524人を対象にした研究では、
ろう者の中でも子供の頃に家庭の中で会話から取り残された経験がある集団は、
肺がんやうつ・不安障害の発症率が高い、
保護者との直接のコミュニケーションに障壁があった集団は
糖尿病、高血圧、心疾患といった慢性疾患の発症率が高いことがわかりました(Kushalnagar et la, 2020)。
3月生活記録_文字.jpg


このようにろう社会の中でどのような集団がどのような健康状態について
不利益を受けているのかを明らかにする研究とその集団への介入の示唆
を行なっています。

これまでに2000人以上のデータを収集しており、
このようにろう者を対象にした健康に関する大規模研究は、
将来的には日本でも必要だと考えていることもあり、
研究のプロセスについて記しておきたいと思います。また、量的研究と質的研究の混合の重要性も述べます。

1. 全国のろう者のリクルート
アメリカ全土のろう者を対象にする場合は、@SNSを使った参加者収集とA各地域のろうコミュニティのインフォーマントに頼る方法があります。
@SNS
研究協力の趣旨を説明した文章とASLによる動画をソーシャルメディアにアップし、参加者を呼びかけます。
Here is an update on our Deaf Caregiver project. The project needs.png

(センターのフェイスブックでに掲載されているリクルート動画:ろう介護者の経験のインタビュー調査の呼びかけです)

A各地域のろうコミュニティのインフォーマント
各地域にリクルートとデータ収集のために研究者が出向くことはほぼ不可能なので、
各地域にリクルートに協力してくれる人が必要です。
地域のろう協会やろうコミュニティセンター(日本でいう情報提供施設)、そのほか関連する団体などに頼むことになります。
チラシを置かせてもらったり、研究協力の趣旨を説明した動画をソーシャルメディアにアップします。
IMG_7191.JPG

(コミュニティセンターでの研究リクルートのチラシの写真:当該チラシ以外はぼかしています)

興味を持ってくれた人は、当研究室までビデオ電話かメールで連絡が来るので、そこで研究の趣旨が英語とASLで説明されたページを見てもらい、同意を持って研究が開始されます。

2. 手話による調査
私が関わらせていただいているろう女性の健康に関する調査は、新型コロナウイルス感染拡大以前から基本的にビデオ電話 (Videophone:VP)で行っています。
なぜならインタビュー調査を行う人が全ての各地域に出向くことは費用や時間の関係上、困難だからです。

興味深いことにアメリカでは、電話リレーサービスとは別に、ろう者同士が持つ電話番号で動画でリアルタイムで通信ができるのです。
デモグラフィックと呼ばれる基本情報の調査は、
オンライン上に英語とASL(全て動画)による質問があるので、インタビューの前に各個人で答えてもらいます。
必要時、インタビュー中に対面形式で行うこともあります。


スクリーンショット 0003-04-05 21.56.56.png

(調査の一画面の例:質問文書と質問の手話動画、答えも選択肢をクリックすると回答の手話動画が再生されます。また必要に応じてイラストも活用されています。)
この書記言語から手話への翻訳過程については4月の生活記録をご参照ください。

もし、機会があれば、その地域に出向き、リクルート兼対面形式でインタビューを行います。私自身ロサンゼルス(LA)に行くことがあったので、一例として紹介させてください。
地域のろうセンターが主催するろう女性イベントがあったので、そこでブースをセットし、参加者を募りつつ、可能な場合はその場で、プライベートが確保された部屋に誘導し、インタビューを行いました。
Want $25.jpg

(地域のろうセンターでのブースの様子:机横断幕を垂らして、そこで研究室のメンバーとリクルート協力者が立っている様子)

一人ひとりにインタビューを行い、最終的に約250名のろう女性のデータが集まりました。

インタビューは全て選択式というクローズドクエスチョンによる回答で、
数によるデータで表されるため、そのような結果に至った背景や因果関係まで見ることは難しいです。
そこで、重要と思われる所見について、参加者に共有し、
それに至る背景や理由についてグループで話してもらう、フォーカスグループ形式での研究を現在、行なっています。

このように量的データと質的データを交えた研究を行うことで、結果により深みを付加することができます。

3. コミュニティへの還元
研究成果はもちろん論文出版や学会発表を通してなされますが、
抄録を翻訳したASL動画も作成し、SNSやホームページに公表しています。
DEAF WOMEN HEARING WOMEN.png

(Facebookに公表されている抄録を翻訳したASL動画の一例:
乳がん検診と子宮頸がん検診の受診率のろう者と聴者の比較について説明しています)

また、その結果を政策提言の資料として活用したり、
ろう者の医療の経験を共有するパネルディスカッションのイベントを開催したり、
ろう者の健康知識底上げのための手話による動画作成をしたりなど、
コミュニティに還元するためのさまざまな活動も行っています。

<参考文献>
Kushalnagar, P., Engelman, A., & Simons, A. (2019). Deaf Women's Health: Adherence to Breast and Cervical Cancer Screening Recommendations. American Journal of Preventive Medicine, 0(0), 1-9. https://doi.org/10.1016/j.amepre.2019.04.017

Kushalnagar, P., Ryan. C., Paludnevicience, R., Spellun, A., & Gulati, S. (2020). Adverse childhood communication experience associated with an increased risk of chronic diseases in adults who are deaf. American Journal of Preventive Medicine, 59(4), 548-554. https://doi.org/10.1016/j.amepre.2020.04.016
Posted by 皆川 at 10:25 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年2月生活記録【第16期生 皆川愛】[2021年03月08日(Mon)]
の蕾も膨らみ、春はもうすぐそこですね花見(さくら)
今月は手話の多様性と、言語イデオロギーについて考えてみます。

カチンコ手話動画はこちらより
スクリーンショット 0003-03-08 17.16.37.png


@言語イデオロギーとは
人はみんな個々の中に、言語に対する思いや信念を持っています。
「標準語や標準手話と呼ばれるものこそが真っ当な言葉だ」
「英語やアメリカ手話は世界的に影響のある言語だから覚えたい」といったふうにです。
そんなときは、"標準語ってどうやって決めるの?" "なぜ英語が世界で通用する言語という結論に至ったのか?"
を考えてみてほしいと思います。
言語にまつわる観念や思想が、特定の集団になんらかの利害関係を伴うとき
言語イデオロギーと言われるものになります。
それは政治的な利害関係が伴って、制度や文化の中で構成されます
さらに、それは実践としても現れます。

Aろう社会を取り巻く言語イデオロギーの例
例えば、1880年のミラノ会議(第二回国際ろう教育者会議)では、
「手話は音声・口話法より劣っている」という観念のもと、
ろう教育での手話の使用を禁止し、現場で教職についていたろうの教員の解雇に迫りました。
そして、世界各国で聴覚口話教育法などが制定されるなど、
政治的に思想を実践に取り入れるプロセスも見ることができます。

一方で、バイリンガルの思想を反映している教育現場にもイデオロギーが存在します。
対応手話を容認しないのはなぜか?
対応手話による言語習得の効果についてはまだ研究途上ですが、対応手話はろう社会で自然に生まれた言語ではなく、
音声言語に単語を付加しただけの人工言語だという見方もあります(Branson & Miller ,1998)。

他の例として、施設、センターなどの用語において、
用語の頭文字を「し」や「せ」といった指文字で示すことに対する様々な考え方も
一つの言語イデオロギーとして取り上げられています。
これはアメリカ手話でも同様傾向があり、議論があります(Kusters et al, 2020)。

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頭文字を用いない「Family(家族)」の手話

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Fの頭文字を用いた「Family(家族)」の手話
(写真はAcadeaficより)

B手話の標準化

近年、世界ろう連盟も懸念点として声明を出しているのが
手話の標準化(Standarilzation of sign languages)です(WFD, 2015)。
スクリーンショット 0003-03-07 21.01.40.png

(写真はWFDより、クリックするとそのリンク先へ飛びます)
一部の国では、国行政からの公共アナウンスを全国民に伝えるために
各地域での自然言語である手話を一つの国家手話に統一しようとする試みもあります。
それのみならず、手話の言語権や法整備の推進、ろう教育で使用される手話の均一化を目的とすることもあり、
そこには政治的・制度的利害が関与しています


手話は、地域、年齢、性別、教育、家族背景などに影響され、多様性があるものですが、
それを一つに統一しようとするのは、それぞれの多様性を無視することになります。

日本でも矢野氏が宮窪手話の言語体系の分析と記述を行なっています。
彼女がそれを始めた動機が以下の言葉に集約されています。
『島のは手話じゃなく“ホーム・サイン”。手話とは違う』『日本手話とはかけ離れたもの』『ホーム・サインは言葉とは言えない』と言われました。“地元で皆が日常生活で使う宮窪手話が言葉でないはずがない。宮窪手話も日本手話と同じ言葉だと証明したい”と思って、考え始めたのが中学部の頃です。
スクリーンショット 0003-03-07 20.57.26.png

(写真はNHK WORLD JAPANより、クリックするとそのリンク先へ飛びます)
いつみても、その言葉は私の胸を突き刺します。

手話にも様々な分類があり、国家手話は洗練された高貴ななものとしてみられることがしばしばあります(Burke, Snoddon, and Wilkinson 2016)。
その分類は上下をつけるものであってはいけませんが、ろう社会でも長年かけて構造化された階層がみられます。
アメリカでの例を取り上げると、
McCaskill先生らを中心に言語の妥当性を証明した黒人アメリカ手話(McCaskill et al, 2011)、
ハワイ手話(Lambrechet, Earth and Woodwark, 2013)などが
純粋なアメリカ手話ではないとみなされてきた歴史があります。
今日ではその言説は撤回されつつありますが、
全米の手話通訳者の試験を管轄している全米手話通訳協会(Registry of interpreters for the deaf: RID)における
有色人種の受験者数は増えているにもかかわらず、合格・登録者数がずっと横ばいという状況です(Hill, 2018)。
白人の受験者に有利なように判断項目が設定されているという指摘もあります。

複数ある手話を単一の表現に統合したり、古いと言われる手話を新しいものに置き換ようとしたりすることは、
まさに手話の標準化であり、その実践に対して警笛を鳴らしています。

Cおわりに
どんな手話にも多様性があり、個々レベルで、また組織や制度レベルでその言語に対するイデオロギーが存在します。
自分の、そして違和感を持った周囲の人の言語に対する考えはどこからきているのか、
どんな影響を受け、何に触発されているのか(動かされているのか)ぜひ考えてみてください。

<参考文献>
Branson, J., & Miller, D. (1998). Nationalism and the linguistic rights of Deaf communities: Linguistic imperialism and the recognition and development of sign languages. Journal of Sociolinguistics, 2(1): 3–34.

Hill, T. (2018). Is diversity a mask for tokenism in the field of Sign Language Interpreting?. Retrieved from https://streetleverage.com/tag/interpreters-of-color/

Kusters, A., Green, M., Moriarty, E., & Snoddon, K. (2020). SIng language ideologies: Practices and politics. In A. Kusters et al (eds.). Sign language ideologies in practice.  https://doi.org/10.1515/9781501510090

Lambrecht, L., Earth, B., & Woodward, J. (2013). History and documentation of Hawai’i Sign Language: First report.” Third International Conference on Language Documentation and Conservation, University of Hawai’i, February 28–March 3.

McCaskill, C, Lucas, C., Bayley, R. Hill, J., King, R. (2011). The hidden treasure of Black ASL: Its History and Structure. Washington, DC: Gallaudet University Press.


NHK.(2018). ろうを生きる難聴を生きる「故郷の手話を守りたい」番組ダイジェスト.
https://www.nhk.or.jp/heart-net/program/rounan/789/

World Federation of the Deaf. (2015). WFD Statement on standardized sign language. Retrieved from https://wfdeaf.org/news/wfd-statement-on-standardized-sign-language/
Posted by 皆川 at 10:48 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年2月生活記録【第16期生 大西啓人】[2021年03月07日(Sun)]


皆さんこんにちは!
1月ブログでお会いしたのに、もう次の報告です。1ヶ月があっという間に過ぎましたね!
コロナ感染について、アメリカでは予防接種を受けられるようになったと前回お話しました。全州が予防接種を受けるための電子登録フォームを開設したので、早速メリーランド州のフォームで登録してみました!予約できるようになると「予約可能」とメールで連絡が来るそうです。医療関係者、政治関係者、高齢者など優先順位が色々あるのでいつ受けられるかはわからないですが、待ってみようと思います。

さて今回のテーマは「多文化教育」で、特にLGBTQについて、述べようと思います。私は1月から始まった春学期で「様々な学習者のための家庭と学校、コミュニティの共同」という授業を学んでいます。ここで質問です。“様々な学習者”といわれて、あなたはどんな人を思い浮かべますか?

重複障害?
学習障害(LD)?
注意欠陥多動性障害(ADHD)?

などなど様々ありますね。その中に「LGBTQ」も含まれています。アメリカではこれ以外にも、反人種差別者、移民で第一言語が英語ではない英語学習者、宗教の違いによる反宗教差別者などもいます。日本にずっといた私は人種差別、英語学習者などに馴染みがないため、授業中の議論で他の院生の経験や視点から新たな知見を得ることができました。

教室や学校において、LGBTQやジェンダーに悩みを持つ児童生徒がどんな環境に置かれているのでしょうか?一例を紹介します。
@イリノイ州では2013年に同性結婚が認められたにも関わらず、あるジェンダー高校生がスカートを履いていることに嫌悪感をもった他の生徒は、そのジェンダー生徒が公共バスに乗っているとき、スカートに火をつけて大火傷を負わせた。

A帽子やフードを外す原則がある学校内で、小1のジェンダー児童が昨夜髪型をポニーテールにしたけれど、朝に元に戻す時間がなくて、フードで隠したため、からかわれることが嫌で外すことを拒否した。

B高校生のジェンダー生徒は校長に「学校にスカートを履いて登校したらどう思うか?」と相談し、たくさんの友達を失う、親など大人が怒るなどの二次影響があるかもしれないと言われたが、それでもドレスアップして登校した。しかしその生徒はクラスメイトからグループワークや宿題などを一緒にしたくないといじめられ、最終的には理解のない教師から教室を出ていくように言われた。

このような問題はどの教室でもどの学校でも起こる可能性があります。もしあなたのクラスにLGBTQ当事者がいた場合、どのように対応しますか?アメリカで実際に活動しているケースを以下に載せます。
・幼稚部や小学低学年など早い段階で、子どものおもちゃを用い、「男子のおもちゃ、女子のおもちゃとなぜ分けるのか」「男子が女子のおもちゃを使って遊ぶのはおかしいことか」と児童たちに考える機会を与える。幼稚部など早い段階でジェンダーについて理解できたら、ジェンダーに対する偏見を持たずに成長できるからである。

・LGBTQで悩んでいる児童生徒やLGBTQで生きると決めた児童生徒と一緒に授業を計画する。日本でいう「総合的な学習の時間」のような授業で当事者から様々なことを説明する機会を与え、自分に自信を持つことができるように促す。

・教師やサポートスタッフ(学生教師、学校補佐官、事務員など)を集め、緊急会議を開き、学生の権利について話し合う。権利の不可侵における重要性を理解するために機会を設け、理解するだけではなく今後の影響や対応について協議する。また教育者が共通認識を持つことで、指導に一貫性が生まれ、他の児童生徒にも同じ認識へと導くことができるようにする。

こうして様々なケースについて書かれた本や記事を読んで、私は改めてLGBTQ当事者に負担を感じさせないために教室環境や学校環境を整える必要があると感じました。そして人の興味や愛、アイデンティティには決まった形はなく、男として生まれてきたから心や行動は男らしくいなければならないといった固定概念をなくすためにも幼少期かや小学校など早い段階でジェンダーについて考える機会を作る考え方に賛成です。人と違うことを恥ずべきではなく、「個々の”違い”とはそれぞれの個性である」「性別関係なく人として尊重するべき」といったことを全ての児童生徒は早い段階から知るべきです。ただ注意点として、もしLGBTQ当事者がいたらさらけ出すべき!暴露するべき!というわけではないことです。LGBTQ当事者がこれからどうしたいかを決めるのは本人なので、教師から強制するべきではないということです。私たち教師ができることは性別関係なく人として尊重するべきだと児童生徒に認識させることであり、そのために最善かつ効果的な環境作りに向けて、LGBTQ当事者から話を聞いたり、今後の対応について教育者同士で協議することだと考えます。

日本ではLGBTQへの理解が世界と比べて遅く、公表している人はまだ少ないです。 日本社会の特に高い年代の方にはまだ男性は社会で働き、女性は男性を支え家庭を守るといった昔からの考え方が残っています。男性のあるべき姿、女性のあるべき姿に固定概念があり、その慣習がLGBTQを公表しにくい弊害となっているのかもしれません。男女が結婚したら夫側の名字を名乗る、日本の家庭における主婦や家事に対する認識、同性愛への理解が少ないなどといった沢山の慣習が、よりマイノリティであると強調される要因となっているのではないでしょうか。 こうした昔から根強く残っている固定概念を変える事は簡単ではないですが、時代の変化に応えて少しずつ人々の意識を改めていくことが必要だと考えます。

そして私たち教師は教室に“様々な学習者”がいることを忘れずに一人一人の背景やニーズを正確に把握する必要があります。これから世界はグローバル化され、日本にもLD、ADHDやLGBTQだけではなく、国際化による人種差別で困っている児童生徒や日本語が困難で学習に困っている児童生徒に対し、より細やかな対応が必要になってきます。私たち教育者は様々な学習者のために教室内指導と児童生徒対応を的確で柔軟的に変更できる体制を整えていかなければならないでしょう。

今回はLGBTQに重点をおきましたが、他の様々なニーズをもった児童生徒がいることを忘れずに勉学を励み、将来活かせるようにしたいと思います。 最後まで読んでいただきありがとうございます。


【参考文献】
・wayne au, Rethinking multicutural education:teaching for racial and cultural justice, https://rethinkingschools.org/books/rethinking-multicultural-education-2nd-edition/

・Annika Butler-Wall, Rethinking sexism, gender, and sexuality, https://rethinkingschools.org/books/rethinking-sexism-gender-and-sexuality/

大西 啓人
M.A. Deaf Education Studies Gallaudet University
Posted by 大西 at 08:07 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
2021年1月生活記録【第16期生 大西啓人】[2021年02月07日(Sun)]
2021年1月生活記録

今回は手話動画はありません

新年に入ってから今月が初投稿です。昨年は少しの間だけでしたが、留学ブログを応援してくださりありがとうございました。今後もブログを投稿していきますので、引き続き応援よろしくお願いします。

今月は学習記録ではなく「生活」について書こうと思います。実はギャロデット大学は冬季休暇が1ヶ月もあるのです!

ギャロデット大学院:20年12月19日~21年1月18日
日本の大学:12月25日あたり~1月6日あたり

日本の大学の冬季休暇は短かったので、1ヶ月もあると不思議な感覚でした。本来は旅行や友達に会うなど様々な経験をしたかったところですが、新型コロナウイルス感染予防のため、安易に外出せず家で映画鑑賞したり、YouTubeや他の論文で知識を深めたりしました!日本での過ごし方と似ているため、“アメリカ感”があまりないかもしれません…。唯一アメリカ感がある日帰り観光を紹介します。
※マスク着用、消毒、ソーシャルディスタンスなどコロナ対策を意識しながらの観光です。

冬季休暇中に私が赴いた観光先は「Baltimore(ボルチモア)」と「Annapolis(アナポリス)」の2箇所です。どちらも日帰りでコロナ対策をしっかりした上で友達や同居人と一緒に楽しみました!


■駅、電車(地下鉄)

電車ですが、アメリカではコロナのおかげ(?)せい(?)で、利用者が極端に少なかったのです。同居人の話ではコロナで車移動か、在宅勤務中心になっているため、電車を利用する人は少ないとのことでした。私もボルチモアへは電車で向かいましたが、アナポリスへは車で向かいました。

日本で駅にコンビニなどの売店が売られてありますが。私も学校帰りにいろいろ買って、空腹を凌ぎました。アメリカにもあります。ただ販売されているのはおやつやつまみなどの軽食で、飲み物も種類が少なく、日本より不便さを感じました。(おにぎりのような小腹がすいたときに食べられるものがほしいと思いましたが良いものがなく、駅付近のSUBWAYへ…)

ボルチモア駅ではコロナ対策なのか不明ですが、出入口が1つしかなく、他は閉鎖されており、制限されていました。これは利用人数を減らすため?密集しないため?とにかく斬新な経験でした。
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※運賃は日本と同様に「切符を買う」か「電子マネー」が主流で、馴染みのある方法です。


■Baltimore:ボルチモア

ボルチモアはメリーランド州(MD)に属し、州最大の都市で独立都市として知られているところです。昔から良港として栄えており、ハーバープレイスが美しいところでした。また初代大統領で建国の父であるジョージ・ワシントン氏を讃えて造られた塔もあり、歴史を感じられる都市でした。ボルチモアはとても広く、観光できたのは一部の地域だけでしたが、ボルチモアの都会的な景色、港町ならではの景色、2つの側面を体感することができました。

同行していた友達の話では、昔ワシントンD.C.に多くの人種が住んでいたそうですが、首都として政治が行われるようになってから白人優位に変わり、多くの移民や人種はボルチモアに流れてきたとのことでした。確かに周囲を見ると、黒人が多くいたように感じました。日本では人種差別に馴染みのないため、場所によって白人中心、黒人中心と分かれているという話は悲しくなります。また肌の色、言語などの視点・見方によってアジア人と黒人の優劣が逆転するなどの話も聞きました。「人種のサラダボウル」と呼ばれるほど多種多様さが有名なアメリカに隠れた不便さを強く感じられた一日でした。多民族、多人種社会こその強みを活かせられる反面、人種差別などの問題はこれからも続くのだと改めて考えさせられました。
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(ワシントンモニュメント)
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(ボルチモアの都心部)
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(ボルチモアの港湾部)


■Annapolis:アナポリス

ボルチモアと同様にメリーランド州に属し、中央部に位置する州都です。歴史的建造物が多く、日本でいう国会のような政治が行われる議事堂もあり、その近くに飲食店、書店、服飾店、カフェなど商店街のように様々な店がありました。私は書店に興味を持ちました。訪れたのは漫画専門店で漫画しかありませんでしたが、日本の漫画(ポケモンや侍関連など)として紹介されるコーナーがあって嬉しくなりました。他にもハリーポッターシリーズの漫画もありましたが高価でした…。(分厚いため1冊4000~5000円相当) またアナポリスには、世界中から集めたワインを扱う酒店もありました。

ここでは、同居人からアメリカ首都と州都の関係性について学びました。首都であるワシントンD.Cは州都アナポリスに関与しておらず、全米のまとめ役として役割を担っています。最初は“日本”と“都道府県”のような関係性だと想定していましたがそうではなく、ヨーロッパのEUのような関係性だそうです。たとえばイタリア、フランス、ドイツそれぞれが主体となって担う政治があって、国どうしがEUとして協力関係にあるのと同じように、アメリカもこのように構成されています。改めてUnited States of America(USA)の意味を正確に理解できたような気がします。
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(アナポリスにある漫画専門店)
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(州都アナポリスのメリーランド州会議事堂)
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(アナポリスの街風景)

現時点ではまだワシントンD.Cやメリーランド州都市など比較的近い都市しか観光していませんが、コロナ感染拡大が収まり、終息に向かえば様々なところへ観光しようと計画中です。

アメリカではワクチン接種をすでに開始しており、医療関係者、政治関係者、高齢者などが優先して接種していますが、まだ一般人の多くは接種できていません。留学生である私はいつ受けられるのか…、アメリカでは受けられず日本で受ける必要があるのか…そのあたりはまだギャロデット大学から情報がありませんので分かりません。(または大使館からの情報でしょうか)

アメリカのコロナ感染はまだまだ拡大しており、ギャロデット大学では春学期も引き続きオンライン授業のみとなっています。秋学期と同様に外出を控え、家で過ごす時間が長くなりそうです…。従来の留学生活とまた違う斬新な経験ができているとプラス思考に考えながら、新たに学ぶためのテキストたちと一緒に家でできることをやっていこうと思います。


第16期生
大西
Posted by 大西 at 23:56 | 奨学生生活記録 | この記事のURL
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