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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2016年9月生活記録 第11期生 山本芙由美[2016年10月03日(Mon)]
んにちは!第11期生の山本芙由美です。

ここワシントンDCは突然、大雨が降ったりするなど、てんやわんやなお天気が続いています。さて、ギャロデット大学に入学してから約1ヶ月が過ぎました。
生活面や学業面でようやく落ち着きを取り戻した頃です。

そして、私は元気です。

まず最初に履修クラスについて報告させていただきます。

【HIS381】Gay and Lesbian History (ゲイとレズビアンの歴史)

歴史学部のクラスです。このクラスでは欧米中心にLGBTQAの歴史について学びます。歴史におけるSexuality Identity (性自認)、同性の関係、LGBTQAコミュニティの発展、LGBQAへの権利や政治運動、HIV/AIDS、Post gay Queer Identity (構造主義におけるゲイクィアアイデンティティ)について触れていきます。
古代から近世、近代、現代への時間的プロセスを読みとりながら、LGBTQAはどのように変わってきたのかを学ぶことができます。このクラスは大量の英語文献を読んで議論、レポートを書くスタイルですが、LGBTQAの歴史を学ぶことで今後の運動で何が必要かなどを客観的に考えることができます。
現在、インターセックスの歴史を学んでいますが、彼らの生きてきた時代的背景、社会システム等によっては彼ら自身を修正(手術療法)をしなければならない等、彼らの生きにくくさについて改めて勉強しているところです。

※インターセックス;外性器・内性器・内分泌系・性染色体など身体的な特徴が、男女に判別しづらい人の状態。医療的対応が必要な場合もある。当事者が知らない・知らされていない場合も少なくない。「インターセックス(半陰陽)」「性発達障害」「性分化障害」とも言われてきたが、2009年に日本小児内分泌学会は総称を「性分化疾患」と統一。一方、「性別越境者」「性を超える人」と表現する人もいる。

【COM430】Gender and Communication (ジェンダーとコミュニケーション)

このクラスは私たちが生きる社会における男/女の役割(ジェンダー)について学びます。生物学、教育、宗教、文化、家族、メディア、労働など様々な視点から、ジェンダーコミュニケーションについて調べたり、考えたりします。
現在、フェミニズムの3つの波(リベラルフェミニズム、ソーシャル/マルクス主義フェミニズム、ラジカルフェミニズム)について学んでいますが、それだけでなくセクシャリティについても取り上げられています。
議論の中で特に印象に残ったのはVisual Community(視覚的コミュニティー)である、ろうコミュニティーでその人の性自認をどう表現、他人に説明するかについてでした。現在、日本でもそのような議論があるので、それをクラスで紹介したら皆さん大変、興味を持ってくれました。
授業初日、自己紹介で先生が自分のことをレズビアンだと堂々と公言しました。これまでの留学生活で、ろう先生自身がLGBTQAだと公言するクラスを受けるのは初めてかもしれません。


【SOC250】Gender and Society  (ジェンダーと社会)

社会学的な視点からジェンダーについて学ぶクラスです。個人的レベルから政治的レベルまで、ジェンダー(男らしさ/女らしさ)がどのように形成し、社会化しているかについて学びます。
文化によって出てくるジェンダー差異という言葉もこのクラスで初めて知りました。
例えば、リオオリンピックに参加した国の中で肌を見せてはいけないという文化があったり、男女がお互いに視線を合わせたりしてはいけないという文化があったりします。また、手話通訳者派遣で同性原則の国があったりします。
先日のクラスでは、先生いわく、アメリカ手話は「Very Gender Neutral Language(ジェンダー役割においてとても中立的な言語)」だそうです。
私自身、それについてはまだ議論の余地があると感じていますが、今後のクラスでも積極的に発言して、日本の状況についても共有していきたいと思っています。

【SWK318】Human Diversity (人間の多様性)

ソーシャルワーク学部のクラスです。学生に"多様性"への意識を高めるためのクラスです。ここギャロデット大学では、人種、民族、文化、言語、セクシャリティー、実に多様なアイデンティティをもつ多くの学生が在籍しています。
このクラスを受講することで、それぞれがもつ個人的な固定概念、価値観を自分自身で分析、他者への理解が可能となります。
ディスカッション型のクラスですが、先生の授業への取り組み方や進行方法については大変、参考になっています。学生の多様なアイデンティティや背景に気を使いながら、学生の発言を促したり、丁寧に解釈しなければならないからです。
また、日本ではなかなか思いつかないこともこのクラスで知ることができました。例えば、ひとりの学生がアフリカンアメリカン、クィアゲイ、ろう、インテグレーション出身といように様々なアイデンティティをもつとします。下の画像にあるように、ひとつのカテゴリーだけでは解釈しきれません。そして、どのクラスでも"Intersecution(交差)"という言葉がよく使われていました。
アイデンティティといえば、日本では "重なる"イメージが強いのですが、"Intersection(交差)"という言葉を浸透させることで、様々な立場を可視化させることが可能になるのではと思っています。

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(多様な個人的、社会的バックグラウンド)

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(クラスで使用するテキスト;見た目だけでは判断できない、その人の文化的背景)

LGBTだより

ギャロデット大学にはLGBTQAろう学生のための"LGBTQA Resource Center"があります。そこにほぼ毎日、通い詰めている私ですが、実に多様なイベントを開催してくれています。
昼休みにお弁当を持ち寄って集まる "LGBTQA Brown Bag Lunch"で様々なトピックについてのディスカッションをしたり、LGBTQAについて活動する学生のためのセルフケアについて学ぶワークショップがあったりと、内容がとても充実しています。
センターのコーディネーターであるCaraさんは私と同じQueerでアクティブな人です。

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("LGBTQA Brown Bag Lunch"のチラシ;この日のトピックはバイセクシャルについてでした)

そして、今年8月、Caraさんを含めた関係者の熱心な取り組みのおかげで、学内に"All Gender Restroom(全てのジェンダーのためのトイレ)"の配置が実現しました。まだ数に限りがあるものの、学内のすべてのトイレに配置実現を目指したいということでした。

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"All Gender Restroom(全てのジェンダーのためのトイレ)"

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(LGBTQA Resource Centerが無料配布している虹色キーホルダー;通学のお友になってくれています)

そして、先日9月30日、ギャロデット大学で新学長の就任式が執り行われました。
Roberta "Bobbi" Cordano氏がこれまでの学長で初めてのろう女性です。そして、参列者の中には彼女のパートナーや子どもがいました。演説の中でパートナーのことを堂々と"wife(妻)"と表現したり、紹介する姿には、とてもインスピレーションを感じました。

ギャロデット大学を含め、これからの米国ろうコミュニティの変化が楽しみです。

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(キャットシッターを頼まれた友達の家猫 "Kimiko"さんと)


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