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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2016年8月生活記録 第9期生 福田桂[2016年09月18日(Sun)]

 はじめに、滞在先のショアラインの町(北シアトルよりも上)からバスでダウンタウンへ移動する時、必ず見れる場所の中でお気に入りスポットを紹介したいと思います。
今回は、綺麗な夜景を眺めてきました。
IMG_7573.jpg
【写真】シアトルでのシンボルタワー「スペース・ニードル」


 研修は、プロ・タクタイル(以下、PT)を活用したトレーニングが中心の生活訓練をしてきました。
私の研修目的は、盲ろうのリーダーになることであり、盲ろう者サービスセンターの盲ろうディレクターと職員やワシントン州盲ろう団体の会長にインタビューをさせていただきました。また、全盲ろう者とお話がしたいという私の希望に応じてくれて、ライトハウスの従業員、夫婦の方々へのインタビューもしました。
  一方で、ライトハウスの従業員の方で、彼らの通勤の様子を観察する機会を与えてもらいました。(以下、写真記載。2枚の違いをご注意ください)

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【写真】職場から自宅までの通勤の様子
(左)バスから電車に乗り換えの途中、階段を降りています。彼は介助者の支援を受けず、駅員にヘルプをもらいながら毎日通勤しています。
(右)盲導犬と一緒にバス待機中。彼の手元にある黄色のカードは、自身が乗車するバスの番号。バスの運転手がそれを見て、バスの中まで案内しています。


 研修開始時から取り掛かってきた個人プロジェクトを進め、私はPTイベントの立ち上げを考え、テーマは以下の通りです。

「DeafBlind only, No Sighted people(盲ろう者のみ、ノー晴眼者)」

 今後の自身の経験のために、最初にシアトルで行いたいと考え、ピザレストランで実施しました。
盲ろう者がメインで、ピザの注文をするとき、SSPに助けてもらうことなく、盲ろう者同士で互いに助け合います。そして、テーブルは盲ろう者だけが集まり、PTで会話します。

日本は、盲ろう者がイベントやレストランへ行く時、自身の欲しい物や注文は通訳介助員に助けてもらうべきだという考えを持つ方が多く、それだと通訳介助員に依存してしまうことになります。私は盲ろう者自身の自立は必要だと感じています。ゆくゆくは、「自律」に変えていきたいと考えています。研修先で、「自律」の言葉を中心に教わりました。

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【写真】ピザレストランにて、参加者全員と撮影
(TCのインストラクター達、ライトハウスの従業員、盲ろう者サービスセンターのスタッフ、元ギャロデット大学の盲ろうの先生が参加してくださいました)


盲ろう者キャンプに参加、ボランティア活動経験

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【写真】タクタイルマップ(すべての施設名に点字が付いています)

 8月26日〜9月3日までの1週間、シアトルからバスで2時間のシーベックとよばれる場所で盲ろう者キャンプがありました。以前からこのシーベックキャンプに参加したかったのですが、大学の授業と重なってしまい、参加できずにいました。
キャンプのボランティアワークは、研修に取り入れているので、週2日ほどキャンプの準備のお手伝いをさせていただきました。また、キャンプ中でもスタッフのサポートをしたり、様々な面でボランティア活動をしました。

 キャンプで、PTの重要さを参加者全員に知らせてあり、3日間のワークショップのみならず、夜の交流会でもPTの活用をされていました。私は研修で指導のトレーニングをこなしてきたので、ワークショップでは指導者としての経験も少しさせてもらいました。

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【写真】PTワークショップその1
椅子を3列並び、盲ろう者、SSPが互いに会話をしています。
(ワークショップの初日、多くの方々に集まっていただきました)

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【写真】PTワークショップ2
二人のインストラクターが前頭に立ち、PTについて説明をしています。後方にいるろう通訳者は彼らの背中に周りの様子を伝えています。

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【写真】PTワークショップその3
インストラクター(中央)が両手で盲ろうの受講生二人(右)の手を触れながら話しています。インストラクターの背中に周りの様子を伝えている通訳者、肩に晴眼者の手が置いています(私はここにいる、あなたに質問があるよっていう意味で、インストラクターが自分へ振り向くのを待っています)
《その後、私も加え、インストラクターのサポートをしました》

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【写真】盲ろう関連商品の販売の様子
左側に白杖が何本も吊るしてあり、その関連の商品が揃っています。
《ボランティア活動の一部。OM(オリエンテーション・モビリティ)のインストラクターに頼まれ、この仕事を手伝いました》

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【写真】カフェテリアで食事後、キャンプのディレクターであるaj氏(DeafBlindのリーダー)が前頭に立ち、1日の流れや注意など説明。

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【写真】カフェテリアで食事(全員が盲ろう者)


2年間の留学を終えて...

 私は、9月5日(日本の時間)に帰国し、同日をもって留学を終えました。生活記録も今回が最後です。

 2013年8月に渡米、オーロニ大学とギャロデット大学で学び、そして1年間の休学を経て、シアトルでの研修、実りのある留学生活を送れました。特に、研修は私が一番学びたかったもので、渡米前にそういう計画を持っていてよかったです。結果、将来に生かせる経験にもなりました。

 今後は、もうすでに新たな計画や目標を持っていますので、自分の方向性を変えずに前へ進んでいきたいと思います。しかし、決して一人ではできません。研修先で、指導などやるからには二人以上が必要だと教わりました。一緒にやっていく盲ろうの仲間を探すことから、少しずつ始めたいと思います。

 2016年4月生活記録でも書きましたが、私のコミュニケーション方法は触手話になりました。目の疾患による進行が理由ではないのです。生活記録で何度も書きましたが、プロ・タクタイルとの出会いによって自分の人生が大きく変わり、視覚手話よりも触手話のほうが言語獲得としてわかりやすいと感じ始めてきたからです。触手話は物を触るとの一緒で手で触れると理解が早く、利便さが良いです。
例えば、場所を尋ねる時、晴眼者は手で空間的に書いたりしますが、目の見えない人には伝わりません。その場合、手で地図を書いたほうがわかります。これが、プロ・タクタイルの一つの方法です。日本ではあまり知られていませんので、まずはプロ・タクタイルの普及を目指したいと思います。また、触手話は、盲ろうの文化の一つであると考えています。

 長い間、私を温かく見守り頂き、また日本財団や日本ASL協会のご支援を頂きながら留学生活を終えることができました。だが、私がここまでやってこれたのは、現地の盲ろう方々に多くの場面を支えてくださったことでもありました。何事も一人で行うよりは、人と助け合うことが何よりも大事だと思いました。やはり、盲ろう者同士はいいですね。

本当にありがとうございました。


第9期生 福田 桂


《参考》
*DeafBlind = アメリカ人なので個人の権利を尊重しています。「盲ろう」と呼称するのは日本だけです。
この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/990
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