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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2016年3月生活記録 第7期生 中川美幸[2016年04月14日(Thu)]
3月ともなれば、あちこちでストレスの話を耳にしますね。卒業なのに就職先が決まらないとか、進学先が決まらないなど、様々な話題が飛び交います。私は今年の5月13日に卒業式を迎えることになっているのですが、卒論と卒論プロジェクトが全然進まず、焦るようになってきました。実習もまだ始まらないし、ストレスが溜まりに溜まっていたので、ずっと支えてくれた友人たちが桜を見てストレスをなくそうよ!!と誘ってくれました。皆で一緒に友人の家に泊まり、朝5時に起きて弁当を作り、桜を見に行きました。皆が作ってくれたお弁当は何もかも美味しかったです。アメリカ在住最後の花見鑑賞となりました。ここアメリカに戻ってくることは、暫く無いだろうと思います。

みんなで花見縮小.png
K国、C国、U国の友達と一緒に3時間歩き回りました★

花見ごはん縮小.jpeg
なんと全て食べきりました!!すごいですよね。

講義
☆ EDU633 Language Arts in Elementary Education 小学校の英語

小学校の子供達が書いた文章は、英語だけではなく、分からない線や間違った言葉もきちんと評価するべきだということで、複数の子供達の書いたノートを見比べ、どのレベルにあるかを話し合いました。
633授業イメージ おもしろいね縮小.png

633 書き方の見本 縮小.png


このクラスでは、1学期を通して3冊のテキストから学んだことを取り入れ、絵本を選び、それを指導案に盛り込ませていくのです。

「King & King」
キング 男男結婚 絵本 縮小.png
これは私がとても興味を持った絵本です。日本では同性婚が話題に上っているからこそ、どうやって指導案を作っていくのかを皆で話し合いました。今、作成している指導案は20ページにも及びます。それでもまだまだ終わりません。


「A Bad case of Stripes」
ストライプ 絵本 縮小.png
これはグループで指導案を作成し、グループで活動を提供するプロジェクトです。私達は、この本を指定され、これを活用して、指導案を作成しています。これを使って、英語と算数、英語と美術、英語と理科というように、色々な科目を盛り込ませて作り発表していくのです。毎週毎週グループで話し合うことはとても勉強になります。


☆ EDU793 教育実習 Practicum
3月の教育関連会議でケンダル聾学校の先生にお会いしたところ、彼女たちのクラスなら、実習に来ても構いませんよ!!とのことで、有難く手続きを済ませ、4月からやっと実習開始です。1月から3月まで3ヶ月も待った甲斐がありました。卒論発表のお蔭様でしょうか???たった1ヶ月ですが、土日も家庭訪問、家族会議、教師会議、アメリカ手話企画などに参加することで挽回しましょうという先生の温かいサポートにより、多くのことを学べるのが嬉しくてたまりません。諦めずに待っていて良かったです。

星2︎ EDU799 卒論実習

卒論プロジェクトを仕上げるために、自分の手でE-bookを作るべきだという大学院の卒論委員会からの提案により、実習の中で、E-bookを作成することになりました。日本語翻訳、手話翻訳のデータ集めを終えた後は、いよいよ撮影です。しかし、先生、カメラマン、日本手話コーディネーターとのスケジュール調整に、撮影用の服の調整など、色々なことで手間が掛かり、こんなにも大変だということを思い知らされました。私が普段着ている服を20着位持参したのですが、ほとんどボツになったので、E-bookを作成されている先生や友人たちにも相談し、あちこちのお店を歩き回って、服を買いました。全部で1万4000円もしました。でもアメリカでは使わなかったら返品することが出来るので、すごく助かります。

むずかしい撮影用の服縮小.jpeg
20着もの服がボツになりました。
こちらが候補の服です★ 
バオバブ用 白にしたよ 縮小.jpeg

撮影用の服です★

★ 卒論★
私の卒業プロジェクト(capstone)がスタートしてから、ずっと卒論と格闘していました。3月はいよいよ、教育関連会議で発表となりました。EHDIの方でご覧ください。

★ EHDI早期介入教育会議★
3月13日から16日までカリフォルニア州サンディエゴ市で会議が開かれ、そこで卒論の中間発表をしました。今までずっと調べたこと、メリット、デメリットなどをまとめて発表するのですが、教育学部と言語学部の教授の考えが違うので、何度も何度もやり直しました。この会議には病院、医者、看護師、行政関係(日本で言えば都道府県の教育委員会)、聾学校関係、聴覚療法士、言語療法士、難聴学級関係、人工内耳会社、口話主義者などなど、本当にあらゆる分野の方が集まって、聞こえない子供達の耳から入る教育をメインとした会議なのです。私は教育学部の薦めもあって、発表をするべきだと言われたので、今までずっと準備してきました。日本に帰る前に、多方面の方々が集まる会議に行ってみたいと思っていたので、この会議では実に様々な見識を知ることが出来ました。我がクラスの先生や実習先の担当だった先生が発表するということもあり、各々の目的に合わせて数日間朝から晩までひたすら分科会を歩き回りました。例えば、3人の早期教育専門家の発表では、彼女たちは「早期教育に家族関係はとても大切である。それが子供達の言語発達につながるし、耳で聞く、目で見るなど、どんな方法でもいいから、家族関係を大切にして欲しい」と言いました。もともと聾学校の乳幼児クラス(早期教育部)で働いていたので、私も同感です。

EHDIで発表2016年3月18日縮小.jpeg
ポスターを使って発表します。

EHDIの名札とわたしの名前縮小.jpeg
この名札を受け取り、「I Can Sign」というシールを手にしたとたん疑問を感じました。何故「わたしはDeafです。」というシールがないのだろうと。これが方針の表れです。そして、この会議で一番驚いたのが、日本でいう保健担当者との話し合いがあるのです。私はワシントンDCの会議に参加したのですが、ワシントンDC保健省の保健担当職員は「補聴器の予算があるので、欲しい時は言ってください。」と言いましたが、聾学校の先生たち、保護者たちは「補聴器のための予算があるのでしたら、ろう者のメンター制のほうが大切です。」と要求しました。他の州には聞こえない赤ちゃんが生まれたら、ろう者のメンターがつき、ずっと家族を支えてくれるのです。しかし、ワシントンDCにはありません。それを訴えていたのです。

会議の後、私はサンディエゴ州立大学(SDSU)の研究所を見に行きました。今までろう児、難聴児たちの言語獲得に興味があって、たくさん勉強してきたのですが、研究所は見に行ったことがなかったのです。本当に以下の研究はすごく驚かされました。ある研究では、ろう児と健聴児の読む力を調べており、瞬間で文章を読み取る長さはろう児の方が長いのです!! 納得いきますよね。

ろうのこどもは読む長さが長い!!縮小.jpeg
すっごく感動した研究発表。やっぱりろう児はすごいね★
http://ehdimeeting.org/

★ ECE Summit 早期教育サミット★
これは先ほどの早期教育会議とは全く違った考えで開かれています。先ほどの会議は手話を使用しない、または手話を知らない教育関連者(専門家や教員、病院関連者など)を優先しているので、手話通訳者がいるかどうか確認しなければならないのです。逆にこの会議は手話使用者、手話を知っている関係者を基本としているので、読み取り通訳者が必要かどうかの確認が必要なのです。真逆な会議に参加できる機会はこれしかないと思い、両方参加させて頂きました。この会議は3月17日から19日までカリフォルニア州フリーモント市で開催されました。参加の目的は、私がクラスで日頃気になっている様々な差別、アンチバイアス、言葉の選び方などをどうやって教えていくかを学ぶことです。残念ながら、ギャロデット大学でも差別があり、去年緊急タウンミーティングが開かれたほどです。私のクラスでも差別があり、数人の外国人が去って行きました。

LGBT関係の分科会では、色々な経験のやりとりがあり、一人の参加者が親友を自殺で亡くしたとのことでした。彼はゲイであることを誰にも言えずに死んでいったそうです。彼みたいな人達を増やさないためには、小さいうちからの情報を与えていくことが大切だと先生は言っていました。

更に、言葉の選び方にも私たちは気を付けなければならないと言われているのが、親たちへの呼び方です。私は英語で時々「お父さんとお母さんへ」と書いてしまいますが、アメリカでは「お父さんとお父さん」、「お母さんとお母さん」が子供達を養子にして育てているケースもあるからこそ、両親、もしくは保護者たちと呼ぶべきだと言っていました。また、教材の使い方でも、私たちは教室に同じ人種の人形や絵本を置いてしまいますが、出来るだけ多種多様な色、形、サイズの人形や絵本を用意しなければならないと何度も繰り返していました。

アメリカの算数縮小.jpeg
幼稚部ではすでに算数の教科書を使って教えているそうです。

フリーモント聾学校見学縮小.jpeg
幼稚部の子供達が書いたものを見せてくれました。

大変驚いたのが、アメリカでは学校で禁止されている絵本がいくつかあるそうです。アンチバイアスとか差別とか白人や黒人とか言葉の選び方にとてもシビアなアメリカならではのこと、日本では有名な絵本はいくつかの理由で禁止されているそうです。日本の聾学校で教える前に、もう少し、絵本が禁止されている理由を探ってみようと思いました。
http://www.buzzfeed.com/spenceralthouse/classic-childrens-books-that-have-been-banned-in-america#.scEN7OexR

アメリカで使われない本例縮小.jpeg
わたしの大好きな絵本が、、、、、

IMG_4030.jpg
幼稚部でも図書館でもかなり有名な絵本がアメリカでは、、、、
この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/932
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