2014年6月生活記録 第7期生 川口聖[2014年08月08日(Fri)]
本格的な夏が始まった。肌にうるおいを保てないためか、あっという間に日焼けてしまうほどである。ギャロデット大学では、一般学生にとって長い夏休みに入ったが、その同時に12週間のサマースクールが始まり、いろんな人が来ている。よく知られているASLクラスだけでなく、院レベルのクラスなども用意されている。他に、デフ・ダンスショーや手語劇など、いろんなイベントが開催されている。教員などの大学職員の夏休みは7月半ばからが多いようである。
(近いうち開通される、ギャロ大近くのHストリートの路面電車)
☆アメリカ留学「徒然草」
「つれづれなるまゝに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」。第11期留学奨学生の募集が始まった。日本にだけでなく、世界にも挑戦してみたい方は奮ってご応募してください。これまで3年間、アメリカに滞在してきて、色々感じたことを述べたい。ただ、皮肉っぽく感じられてしまうところがあるが、それは逆に良い意味があることを強調しておきたい。
○アメリカの社会とは?
“超”個人主義とヒーローイズム(heroism)の社会。政府や他人を信用しない、信じられるのは自分だけ、自分のことは自分で守ると、“超”がつくほどである。テレビドラマを観れば、同僚や恋人でさえ普通に裏切るのが定番とか、口約束を守らないのは個人の自由など、争い事を避けるための仁義や礼義などがあまり通用しない。さらに、空気を読まない、行間が読めないというような人や、まわりの聴者が何をしゃべっているか聞こえないまま育ってきた、ろうの人などにとっては住みやすい社会、もってこいの国であると言ってもいいだろう。また、石を投げれば“軍人”に当たるというほどなので、人は誰でもヒーローになれるという風潮がある。アメリカ映画を観れば、ヒーロー物語やロマンス物語が多いのは、アメリカ社会における宗教的な感覚から理解できるのである。
○アメリカの大学院とは?
アメリカの大学院では、修士課程において、単位制をとっているところが多く、日本の大学3,4年レベルと同じであると言っていいだろう。つまり、修士課程で専門知識を習得して、その課程を修了したら、その専門知識を生かした社会経験を何年か積んでいき、さらに、その専門知識と社会経験を使って研究したいということで博士課程に入る、というコースをとる人が多いようである。よって、修士課程は、宿題やテストが多い、修士論文がないのがアメリカでは普通である。もし研究論文を起稿したいとか、研究職に就きたいなど、研究したいという目標がある、または、修士課程を修了しただけでその専門に合った就職先が見つからないような専門課程を履修するつもりなら、最初から修士課程と博士課程の両方を履修することを目指す必要がある。このように、日米の大学院に大きな違いがある。
○ギャロデット大学とは?
10, 20年前のギャロデット大学とは大きく変わったと言われているほど、今は、ろう学生が多い、ろう盲の人や聴者も入れる、ASLと英語の2つを公用語にした、一般の大学であると思っていいだろう。アメリカでは、一般の大学ほとんどに通訳者などの情報保障がついているので、ギャロデット大学との境界があまりなくなっている。つまり、ギャロデット大学に在籍したことがあるという“ブランド”がほしいという理由を除いて、純粋に学問を究めたいなら、大学名より、教わりたい教授がいるという大学を選んだほうがいいとなるだろう。また、最近のギャロデット大学では、ベテラン教授がどんどん退職なされたようで、「教員の若返り」はよい響きがある反面、学術の質が多少落ちてしまうことは否めないのである。
“超”個人主義のアメリカなので、日本の良さを理解している人にとって、戸惑いを感じることが多いのである。例えば、わがままと個人の自由はどう違うのか、人権と個人の自由はどう違うのか、相手をどこまで信じていいのかなど、日本で当たり前のように感じていることが、アメリカでは通用しない。逆に、アメリカで当たり前のようになっていることが、日本では通用しないのである。よって、有意義ある留学として成功するためには、海外へ移住・永住したい方は除いて、日本に戻ってから留学経験を生かして、日本社会にどのように溶け込むかも含めて、留学計画を立てる必要があるだろう。さらに、「五常の徳」を大切する日本人にふさわしく、民間外交官的な役割を担っていくという自覚を、常に持っていたいものである。
(国立美術館の新館から見た、本館)
☆National Gallery of Art 国立美術館
独断的な5段階評価は、★★★★☆(4つ星)。本館と新館の2つにあって、本館の1階は彫像中心に、2階は絵画中心に展示されている。全てを見回るのに、途中で足が棒になってしまうほど、規模が大きいのである。100以上の部屋があって、それぞれに部屋番号が付けられていて、年代が古いほうから順に陳列されている。やはり、歴史を前もって知っておかないと、鑑賞がつまらなくなるほどである。例えば、年代が最も古いほうの展示物には、宗教的なものや神話的なものが多い。年代が新しくなるごとに、王、貴族、富裕な家族の順に、貧民の画はないけど、人物像が目立っている。1850年あたり、写真の歴史が始まるとともに、風景画が増えてくる。そして、1880年頃から、写真の大衆化が進むのと並行して、生活感のあるものや庶民の画が増える。という感じである。初めて入館した時に、一番びっくりしたのは、ほとんどの展示物が、レオナルド・ダ・ヴィッチの絵画や割れやすい物やポーチに入れるほどの小物を除いて、ガラス張りのケースに収められていなく、さわれるほどである。もちろんのこと、さわらないことが美術品鑑賞のマナーである。やはり、展示物の半分以上はヨーロッパからであり、日本からの物はなく、アメリカの物としてはこれから始まる感じである。よって、★★★★☆(4つ星)とした。
(ギャロ大近くにある、Bonsai公園)
(近いうち開通される、ギャロ大近くのHストリートの路面電車)
☆アメリカ留学「徒然草」
「つれづれなるまゝに、日くらし、硯にむかひて、心に移りゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」。第11期留学奨学生の募集が始まった。日本にだけでなく、世界にも挑戦してみたい方は奮ってご応募してください。これまで3年間、アメリカに滞在してきて、色々感じたことを述べたい。ただ、皮肉っぽく感じられてしまうところがあるが、それは逆に良い意味があることを強調しておきたい。
○アメリカの社会とは?
“超”個人主義とヒーローイズム(heroism)の社会。政府や他人を信用しない、信じられるのは自分だけ、自分のことは自分で守ると、“超”がつくほどである。テレビドラマを観れば、同僚や恋人でさえ普通に裏切るのが定番とか、口約束を守らないのは個人の自由など、争い事を避けるための仁義や礼義などがあまり通用しない。さらに、空気を読まない、行間が読めないというような人や、まわりの聴者が何をしゃべっているか聞こえないまま育ってきた、ろうの人などにとっては住みやすい社会、もってこいの国であると言ってもいいだろう。また、石を投げれば“軍人”に当たるというほどなので、人は誰でもヒーローになれるという風潮がある。アメリカ映画を観れば、ヒーロー物語やロマンス物語が多いのは、アメリカ社会における宗教的な感覚から理解できるのである。
○アメリカの大学院とは?
アメリカの大学院では、修士課程において、単位制をとっているところが多く、日本の大学3,4年レベルと同じであると言っていいだろう。つまり、修士課程で専門知識を習得して、その課程を修了したら、その専門知識を生かした社会経験を何年か積んでいき、さらに、その専門知識と社会経験を使って研究したいということで博士課程に入る、というコースをとる人が多いようである。よって、修士課程は、宿題やテストが多い、修士論文がないのがアメリカでは普通である。もし研究論文を起稿したいとか、研究職に就きたいなど、研究したいという目標がある、または、修士課程を修了しただけでその専門に合った就職先が見つからないような専門課程を履修するつもりなら、最初から修士課程と博士課程の両方を履修することを目指す必要がある。このように、日米の大学院に大きな違いがある。
○ギャロデット大学とは?
10, 20年前のギャロデット大学とは大きく変わったと言われているほど、今は、ろう学生が多い、ろう盲の人や聴者も入れる、ASLと英語の2つを公用語にした、一般の大学であると思っていいだろう。アメリカでは、一般の大学ほとんどに通訳者などの情報保障がついているので、ギャロデット大学との境界があまりなくなっている。つまり、ギャロデット大学に在籍したことがあるという“ブランド”がほしいという理由を除いて、純粋に学問を究めたいなら、大学名より、教わりたい教授がいるという大学を選んだほうがいいとなるだろう。また、最近のギャロデット大学では、ベテラン教授がどんどん退職なされたようで、「教員の若返り」はよい響きがある反面、学術の質が多少落ちてしまうことは否めないのである。
“超”個人主義のアメリカなので、日本の良さを理解している人にとって、戸惑いを感じることが多いのである。例えば、わがままと個人の自由はどう違うのか、人権と個人の自由はどう違うのか、相手をどこまで信じていいのかなど、日本で当たり前のように感じていることが、アメリカでは通用しない。逆に、アメリカで当たり前のようになっていることが、日本では通用しないのである。よって、有意義ある留学として成功するためには、海外へ移住・永住したい方は除いて、日本に戻ってから留学経験を生かして、日本社会にどのように溶け込むかも含めて、留学計画を立てる必要があるだろう。さらに、「五常の徳」を大切する日本人にふさわしく、民間外交官的な役割を担っていくという自覚を、常に持っていたいものである。
(国立美術館の新館から見た、本館)
☆National Gallery of Art 国立美術館
独断的な5段階評価は、★★★★☆(4つ星)。本館と新館の2つにあって、本館の1階は彫像中心に、2階は絵画中心に展示されている。全てを見回るのに、途中で足が棒になってしまうほど、規模が大きいのである。100以上の部屋があって、それぞれに部屋番号が付けられていて、年代が古いほうから順に陳列されている。やはり、歴史を前もって知っておかないと、鑑賞がつまらなくなるほどである。例えば、年代が最も古いほうの展示物には、宗教的なものや神話的なものが多い。年代が新しくなるごとに、王、貴族、富裕な家族の順に、貧民の画はないけど、人物像が目立っている。1850年あたり、写真の歴史が始まるとともに、風景画が増えてくる。そして、1880年頃から、写真の大衆化が進むのと並行して、生活感のあるものや庶民の画が増える。という感じである。初めて入館した時に、一番びっくりしたのは、ほとんどの展示物が、レオナルド・ダ・ヴィッチの絵画や割れやすい物やポーチに入れるほどの小物を除いて、ガラス張りのケースに収められていなく、さわれるほどである。もちろんのこと、さわらないことが美術品鑑賞のマナーである。やはり、展示物の半分以上はヨーロッパからであり、日本からの物はなく、アメリカの物としてはこれから始まる感じである。よって、★★★★☆(4つ星)とした。
(ギャロ大近くにある、Bonsai公園)