2013年10月生活記録 (第5期生 川俣郁美)[2013年12月24日(Tue)]
10月に入り、米政府がシャットダウン(一時機能停止)した。シャットダウンに合わせて気温も急激に冷え込み始め、やっとコートとブーツの出番が来たかと思えば、30 度を超える夏の気温に戻ったり、雨が一週間続いたりと、不安定な天気が続いた。ハローウィンが近づく頃には0度近くにもなった。季節の変わり目、緑色の木々が日に日に黄色・オレンジ・赤に染まっていく風景にはホッと心が和む。
◆◇Pro-Tactile◇◆◇
今学期に入り、Pro-Tactile(プロタクタイル)という言葉をよく耳にするようになった。「Pro」は「賛成」•「支持」、「Tactile」は「触覚」を意味する。触覚を有効利用して、 ろう盲者とのコミュニケーションをより確実かつ円滑にしようというものです。10月29日、ProTactileの先駆者であるAJ Granda氏とJelica Nuccio氏による講演が行われた。
まず会場に入って驚いたのが、通訳者の数である。ざっと15人程の有資格ろう手話通訳者が配置されていた。司会者も ろう盲学生であり、Granda氏とNuccio氏の略歴を簡単に紹介した後、2人をステージに迎えた。2人がステージに立つと、私たちは挙げた両手をひらひらさせて拍手喝采した。するとGranda氏は言った。「聴流の拍手は聴覚を使った拍手(Granda氏とNuccio氏、手をパチパチさせる)。ろう流の拍手は視覚を使った拍手(両手をひらひら)。じゃあ、 ろう盲流は?(どんどんどん!) そう、足踏みよ。触覚で伝えるのよ。」とたんに大きな地響きが会場にとどろいた。拍手ひとつで相手に賞賛・歓迎・感動・感謝が相手に伝わる。会場がひとつになれる。ボディランゲージのパワーを思い知った。講演しょっぱなからインパクト大。
Granda氏とNuccio氏はアッシャー症候群で、元々はろう者だったが、のちろう盲となったそうだ。
ろう盲者と一口に言っても、個人個人でコミュニケーションの方法が違う。触手話や、相手の見え方に合わせて、相手から少し離れて手話をしたり、近くで手話をしたり、手話の動きを小さくして手話をしたり、実に様々である。明るい所では近くで手話をするが、暗い所では触手話を利用するなど、場所によってコミュニケーションの方法を調整したりする時もある。
Pro-Tactileでは、手を肩や膝に置いて、相手に「ここにいるよ、あなたを見ていますよ」ということを相手に伝える。相づちを打つときは、相手のひじ・足などをぽんぽん叩く。たまに叩く速度を早くしたりして、「あ〜!わかる!」といった強い同感を示したり、ギュッと握って「え!?」と驚きを示したりもする。トイレなどで席を外すときは、その都度理由を伝え、どのくらいで戻るのか伝えるといい。弱視の相手を呼ぶ時、肩をぽんぽん叩いたあと、相手が自分の目を見るまで手を肩から離さないようにすることで、相手が私の位置を判断しやすくなる。長さを伝えるときは、伸ばした相手の腕をものさしにして、「指先からここまで」と長さを伝えるとより分かりやすい。などなど。
先ほど述べたように、コミュニケーション手段は十人十色。一番大切なのは「伝える」こと。この場合はこうだ、など勝手に思い込まないで、相手に確認し、お互いにとって一番良い方法を開発していく事が重要である。
また、ろう盲者の社会経験の機会を奪わない事の大切さを教わった。なんでも「やってあげる」のは良くない。例えば車に乗る時。晴眼者はろう盲者に「ここで待ってて、ドアを開けるね。」といい、 ドアを開け、車の屋根に頭をぶつけないようにと、頭を押さえつけてろう盲者を座らせる。コーヒーをいれる時も、「コーヒーいる?ここで待ってて」と言ってコーヒーをいれてから戻ってくる。「なんでもやってあげる」ことで、社会参加の権利を奪い、自立もできなくなってしまう。車のドアまで案内し、ドアノブに触れさせるだけでいい。ろう盲者は自分でドアを開け、屋根を探りあて、車に乗る。コーヒーもろう盲者自身が自分でいれる時は、どこに何があるのか説明する。もし晴眼者がコーヒーをいれる時は、ろう盲者を晴眼者の利き腕の前腕に触れさせたままにする。そうすることで、ろう盲者はどうコーヒーをいれているのかがわかる。
「なんでもやってあげる」のではなく、一人の人間として尊重しあい、「情報保障」をする。それだけで、私たちの人生が豊かになる。どんどんどん(足踏み)!




