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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
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2013年9月生活記録 第7期生 川口聖[2013年11月04日(Mon)]
8月26日に秋学期が始まった。9月に入るまで、外でちょっと歩いただけで汗ばんでしまうほど、蒸し暑い日が続いた。10月が近づくにつれて夜が寒くなり、秋がそろそろ始まったと思ったら、10月に入れば、日中の最高気温が30度近くに上がるなど、天気の起伏が激しく、せきをする人をよく見かけるようになっているこの頃である。

BISON.JPG
(ワルシャワ動物園で見つけた、Gallaudet UniversityのマスコットでもあるBISON)

クラスメートが、昨年新学期が始まった時は11人だったが、前学期に1人減って、2年目に入る今学期は更に2人減って、8人でスタートした。アメリカの大学では学年が上がる度に、学費や適性などの様々な理由でクラスメートが減っていくのが普通のようである。その8人全員でそのまま一緒にMA修業できたらすごくいいなと思っている。今学期は4つのクラスを受けることにした。
DST703 Deaf Culture Studies
LIN771 Field Methods
LIN827 Cognitive Linguistics III
INT720 Discourse Analysis for Interpreters
必須科目はLIN771 Field Methodsのみ、あとは自由科目であり、それぞれのクラスについて、11月生活記録までに3つ分けて報告したい。

記念塔工事.JPG
(修復中のワシントン記念塔)

☆DST703 Deaf Cultural Studies
「ろう文化学」、Deaf Studies学部の科目の1つであり、まずはDeaf Studies学部について紹介したい。Deaf Studiesを日本語に変えると、デフ・スタディ、ろう学、ろう者学などいくつかあるようだが、ここでは「聾人学」と使わせていただきたい。これまでクラスを受けてきて、他人によって認定されたというイメージが残る「ろう者」より、自らろうであると言える「ろうの人」という存在価値や存在意義を見出す目的があることで、「聾人学」という言葉こそふさわしいように感じたからである。聾人学部は、主にろうの人による歴史、文化、社会、言語などについて研究するところだ。

実に、小生の2013年3月生活記録で、言語学とは国語の先生みたいに「こうあるべきだ」という考えを示すための学問ではないと述べた通り、ろう文化とは何か、聾人学部ではどんな研究をしているか、言語研究をすすめるためにも知っておきたいと思って、受講申し込んだのである。クラスメートは、ろうの人と見間違えるほどASLが堪能な聴者3人を含めて11人、小生を除いて、聾人学部の院生、そしてろうの教授というクラスだ。やはりカルチャー・ショックというものを味わった。日本でろう文化とは何かといろいろ耳に(“目に”)入ってきたが、まだ知らないことが多すぎると感じたほどである。「ろう文化とはこうあるべきだ」と唱えるための研究ではなく、人類学、狭義的には文化人類学もしくは社会人類学を基本にした研究手法ですすめられている。

例えば、ろうの人と会話をするときはお互いの目と目で見合わなければならないなど、ろうの人に接する時のマナーというものが日本での手話講習会などによく出されているが、こちらでは必ずしもろうの人全体にあてはまることではないという言い方になっている。ろうの人同士でも目をそらすことはよくあるし、会話相手の手語を”聴く”時はどうしても相手の顔を見なきゃわからないなどの自然体がある。その自然体がろう文化の一部であると言えるのだ。

また、Deaf Family(デフ・ファミリー)という言葉について、聴覚障害者、難聴者、中途失聴者などは医療や福祉分野でできた言葉になっているのと同じように、「デフ・ファミリー」は言語学者によってつくられた言葉である。手語が堪能でない言語学者が手語を研究するために、デフ・ファミリーの人を呼んだほうが手っ取り早い、研究発表するときに説得しやすいからなのだ。デフ・ファミリーの人が使う手語こそ“本物の手語”だと、ほとんどの言語学者は思っていない。なのに、そういう誤解が広まったのはなぜなのか、ろう文化を研究する意義が出ている。

このように、「ろう文化とはこうあるべきだ」という言い方は間違いであると思い知らされた。難聴者、中途失聴者、ろう盲者などに関係なく、耳が聞こえないことから起こる様々な文化的・社会的問題事象を、学術的に多角的に捉えることが「聾人学」とあり、ろう社会を実態調査しながら研究発表されて初めてろう文化とは何かを知ることができるのだ。

やはり、この分野については日本ではやらなければならないことが多いなとすごく感じた。幸いに、聾史のほうで頑張っている、ろうの方が多くいらっしゃるようで、日本のろう文化とは何か知るためにも必要なので、陰ながら強く応援したい。また、日本に人類学関係を専攻した、あるいはしているろうの方がいらっしゃれば、是非ともろうの人についてどんどん論文を出してほしいなと願っている。本当に、これまで得てきた知識を大きく見直すほど、いろいろ考えさせられるクラスである。
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