2012年6月生活記録 第4期生 武田太一[2012年07月01日(Sun)]
ボストンでは時々35度を超える猛暑日が数日続き、夜は熱帯夜で寝にくかった。しかしそれが過ぎると今度は一気に肌寒くなり、長袖が欠かせないときもある。ボストンで生まれ育った人ですら今年はおかしな気候と言っているほど、本当におかしい。
●研究入門
5月下旬から続いていた研究入門の講義がようやく終わった。一番大変だったのは論文を10本読んでそれぞれの要約を書くという課題であった。これは最終課題である研究計画書を作成するための参考文献になるのだが、教科書と違って論文の方が難解な説明が多いため、読むのにだいぶ時間がかかってしまった。ほとんどの課題の〆切を特別に伸ばしてもらったおかげで、ちゃんと取り組むことができ安堵している。この研究入門は論文の読み方なども導入されているため、今までの講義でいろんな論文を読んできた学生たちにとっては、なぜコースの最初で必須講義として受講出来ないのかという声があがった。しかし、この講義で学んだことは次の秋学期の修士論文で役に立つのは確実だろう。

木の下で休息
●誰がろう重複児の教育に適しているか
これは先の研究入門で私が作成した研究計画書のタイトルである。この研究計画書を作成するにあたって、ろう重複児に関するデータを集めてきた。私の考えではろう重複児を指導するにあたって、ろう教育コースだけではなく、特別支援教育コースも受講したことがある教員の方が適しているのではないかと思っている。というのも、重複障害の場合は他の障害も合わせ持っているため、その他の障害の特性について知っておかねばならないからである。
アメリカの場合、ろう児のうち40%が何らかの障害を併せ持っている。そのうち5.5%が視覚障害、5.4%が発達遅延、8%が学習障害、5.4%が注意欠陥/注意欠陥多動性障害、8.3%が知的障害、1.7%が自閉症となっている。その上、1つの障害だけでなく複数の障害を併せ持っている児童もいる。そのため、彼らに対してはさらに独特の支援が必要になってくる。
重複障害を有しているかどうかの診断は難しいとされている。例えば聾自閉症の場合は聴覚障害の診断が新生児スクリーニングの関係もあり早い。しかし自閉症と診断されるのは後になってからである。これは自閉症の診断が新生児〜乳幼児の間では困難だからである。また知的障害との重複についても知能指数の程度とコミュニケーション能力で的確な判断が難しい。しかしここ近年、診断の技術も向上しているので早期介入/支援の必要性がさらに求められている。
聾学校の教育体制もろう重複児への学習到達度と関連性があるのではないかと思う。ボストンにいて2つの聾学校で実習やボランティアをしてきたが、ある聾学校では幼稚部の段階では口話教育が個別指導計画で決められている。しかし、重複児の状況を見ると全く言葉の発信が見られない。(普通のろう児でも口数は少ないのだが…)逆にバイリンガル教育を提唱している聾学校では重複児の語彙数は多い。自分から積極的にコミュニケーションをとろうとする姿勢が見られ、また相手の言うことも理解出来ている方である。これは学校のどこにおいても手話によるコミュニケーションが徹底しているからであり、児童たちは学校生活で目からの情報が常に得られるようになっており、また児童同士、先生との会話を通して自然に言語を習得しているからであろう。このため小さい頃に手話によるコミュニケーションの基礎を培うことはとても重要なことである。皮肉なことに、個別障害者教育法の基で作られる個別指導計画は口話教育が大事と考える専門家によって決められることも多く、また家庭で手話が使えないことも考慮した上で様々な改善や支援が求められている。
●夏学期2
ゆっくり休む暇もなく、7月から夏学期パート2が始まる。必修講義がないため講義を取らないまま休みを堪能するのもありだがそれだともったいないので、1つぐらいは取っておきたいと思い、選択したのが異文化心理学である。日本にいた頃はろう文化と聴文化の違いでしかイメージがなかったのだが、アメリカにいると自分が外国人=日本の文化を持っている、さらに多くの移民が集まるのでそれぞれの国の文化が聾学校の中にも現れる。そのために起こる文化の違いや摩擦について知っておくことで、今後に活かせるだろうと思った次第である。講義が始まるのをとても楽しみにしている。

日本食バイキング




