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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
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2011年10月生活記録 (第4期生 福永 梢)[2011年11月01日(Tue)]
 地震、ハリケーン。今年のワシントンDC はまれなものを経験している。これで終わりかと思ったら、10月末に雪が降った。約30年ぶりの現象らしい。


↑スノウ・ハロウィン(某オンラインニュースより転載)


*-:-*-:- 失敗ではなく成功から学ぶという見方 -*-:-*-:

 銃声、麻薬、暴力が当たり前な貧乏な社会に生まれ育った子どもは、将来どんな人になるだろうか。同じことを繰り返す大人になるというのが一般の答えだと思う。しかし、実際はそうならない子どもたちもいることが貧困サイクルなどの研究で示唆されている。2002年に作られたブラジルの映画「City of God」はまさにその様子を描いている。しかも実話である。



↑Meirelles, F. & Lund, K. (2002). City of God. Miramax Films.


 生涯発達理論クラスの課題で、この映画に出てくる主人公の青年期(Young Adulthood)に対象を絞り、危険性と回復力について分析・考察した。青年期は多くの危機と遭遇するとされている。より広い社会に出ることで恋愛、仕事、家庭などで失望したり悩んだりすることが増え、成人になったことでたばこ、お酒、お金など今まで限られていたことができるようになるからである。映画の主人公はスラム街に生まれ育っているが、人間としてのモラルをもちあわせている。殺人・暴力をしたことがなく、スラム街にも外の一般社会にも順応する。主人公のほかに、麻薬商売にかかわりつつ、宗教・社会階級などが違う人たちにオープンな人も登場する。彼らが多くの危険と張り合わせながらもこのように育つことができたのは、なぜか。この成功例を用いた分析・考察はとても新鮮だった。これまでの「失敗例」をいじくるやり方とは心のもちようや得られるものがまた違う。失敗から学ぶ方法、成功から学ぶ方法の両方とも身につければ、対応できるクライアントや問題の幅が広がると思う。

 さらにこのレポートはアメリカ手話で提出しなければいけなかった。論理的なことを手話でまとめるのは初めてで、たった10分間の動画を作るのに2日間もかかった。教授によると、アメリカ手話に堪能な人にとっても難しいという。手話で、英語で書かれている専門的なことを話すからだそうだ。日本手話ではどうなんだろうと思いつつ、自分のアメリカ手話が伸びたなあと実感する機会でもあった。


-*-:-*- 模擬社会ゲームSimSoc *-:-*-



↑Gamson, W. A. (2000). SIMSOC: Simulated Society, Participant's Manual
(5th Ed.)
. New York: Free Press. (HP: http://www.simsoc.net/)


 多文化カウンセリングクラスでは週末の3日間、模擬社会ゲームに参加した。カウンセリング学部がある校舎内に1つの小さな社会を設定する。司法、政党、会社、国内総生産など実際の社会システムそのままだ。生徒は4地域の住民となる。4地域には裕福な地域から貧しい地域まで社会的地位がある。私の地域ではマスメディア、労働組合を運営していて、平均的な地位にいた。ある条件をクリアしないと死ぬ(ゲーム脱退)し、国内総生産値が下がると社会そのものが崩壊する。限られた時間と曖昧なルールの中で一番貧しい地域をサポートしようと4地域とそれぞれの社会システムが動くのだが、これがなかなか難しいのだった。

 最終日に個人、地域それぞれの視点を交換し、「Listen for Understanding(理解するために聴く)」の姿勢の大切さを話し合った。個人的には、人がどうやって自分を社会的弱者だと見なすのかわかったことも大きな収穫だった。3地域の住民たちは「CANNOT/NOTHING(できない/ない)」にばかり目がいき、「今、○○ある?」「えっもってないの?!」の話ばかりになっていた。これが何回も繰り返され、一番貧しい地域の人は次第に「自分たちは劣っている、問題因子なんだ」と思うようになる。しかし最後の段階で、その貧しい住民は「自分たちが社会に大きな影響を与えている、これは私たちの強みなのかもしれない」と思い始めたそうだ。「何が強みか」「何をもっているか」に焦点を当てるだけで、まったく気持ちのもちようが違ったという。「City of God」を分析したときに感じたことと重なり、とても考えさせられた。今回学んだことはこれからの自分にとっても大事なことだと思う。実はこのSIMSOCはギャロデット大学のホームカミング(Home coming/学祭みたいなもの)と日程が被ったのだが、参加して本当によかった。

 SIMSOCがあった週はこれまた中間テスト期間で、とてつもない多忙期だった。最後のテストが終わった日の夜、何人かのクラスメイトと集まって打ち上げ会をした。この期間中私は風邪をひいてしまいきつかったのだが、打ち上げ会でいつの間にか治っていた。この調子で学期末まで気を引き締めていこうと思う。

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