• もっと見る
聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
 コメントでいただくご質問はブログに書かれている内容の範囲のみでお願いします。それ以外の留学に関するご質問は日本ASL協会の留学担当にお問い合わせ下さい。
« 2011年5月生活記録(第5期生 川俣郁美) | Main | 2011年5月生活記録 4期生 川上恵 »
2006/4/28ブログ開設時からのアクセス数
UL5キャッシング
最新記事
カテゴリアーカイブ
リンク集
最新コメント
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/index2_0.xml
2011年5月生活記録 (第4期生 福永梢)[2011年06月15日(Wed)]
 大家さんの「日曜大工」が進んできた。アメリカの日曜大工は日本よりスケールがでかい。部屋の壁を塗り替えたり庭に車庫やテラスを作ったりする。家まるごと改造だって珍しくない。うちでは大家さんが物置と化している地下室の天井・壁をはがしたり、庭で深い穴をほってコンクリートを流し込んでレンガをセメントで積み上げたりしている(車庫の基礎作り)。1人で黙々とするのが好きらしく、私はもっぱら眺める側だ。
しかし日曜大工の風景って和むもんなんですねー。



□■□ 盲ろう者へのカウンセリング (counseling for deafblind people) ■□■

 カウンセリング入門クラスの最後のゲスト講演は「重複障がい者へのカウンセリング」でテーマに、ギャロデット大学に多い重複障がい:盲ろう(弱視難聴含む)にしぼられた。アッシャー症候群の2人による講演は新しく学ぶことが多かった。

 まず、自己アイデンティティの多様さである。例えば同じ聴こえにくさでも「ろう」、「聴覚障害」、「難聴」などと、自分の聴こえにくさをどう表現するか個々によって異なる。見えにくさにおいても同じだという。さらに年をとるごとに聴こえにくく見えにくくなるタイプや、環境によって聴こえ方や見え方が変わるタイプは、自己アイデンティティが変わりやすいそうだ。
 ところで、アッシャー症候群はワーデンブルグ病などと並んでよく見られる遺伝性の病気である。自身がアッシャー症候群であることを示すとき、たいがいの人は「US(User Syndromeの略)」と表現する。しかしアッシャー症候群の症状には3タイプあり、その中には聴こえる人もいる。彼らは「US」よりも「RP(Retinitis Pigmentosa/網膜性色素変性症の略)」を好むらしい。「US」と言うとほとんどまたは完全に聴こえなくて見えにくいんだと思われることが多く、自分の状態やニーズが正しく伝わらないからだという。同じ病名でもその病名を使わないことがあるのはとても興味深かった。
 これらを踏まえて、「その人が自分で選んだ自己アイデンティティを尊重してほしい、それが正しいか間違ってるかはまわりが決めることではない」とゲスト2人とも強調していた。

 最後に、ろう社会における盲ろう者の孤立問題である。白づえが子どもに当たってしまったときが一番つらいがそれがなかなか伝わらないこと、レストランのライトを少し落とすだけで気軽に入れる盲ろう者は多いことなど新しく知ることばかりだった。「ろう者たちは聴こえる人の偏見・固定概念には敏感だが、自分の中にもあるとは気付かない」――この言葉は未だにとても印象強く残っている。



□■□■□ アルバイト (part-time jobs) ■□■□■

 5月13日、第3期生の富田さん、第4期生の川上さんの卒業式 (commencement) をしんみり見届けたあとはずっとバイトの日々である。今年の夏は、今までのバイトに加えてアーカイブス (Archives) でのバイトを掛け持ちする。ろうに関する記録を管理するところで、歴史を垣間見ることができるだけでなく、集まった写真、本、芸術品などが整理整頓されていく過程を見ることもできる。夏休み中も新たに学ぶことが多そうでわくわくしている。
この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/499
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
 
コメントする
コメント
>藤岡さん(まじゅ〜)

1年半くらいぶりですね。
まさかこのブログを見てるとは思わず、びっくりしました(笑

偏見と固定概念について、拙論ですが、
批評を受ける機会に恵まれることが大切な気がします。
時間を少しおいてからでもいいので、その批評を何の付加価値もない事実の1面として見れるようになったら、うまく消化できるように思います。自分もまだまだいたらないので、こんなこと言うのも恐れ多いですが。

この感じだと、会ったとき積もる話がたくさんありそうですね(笑
お互い少しずつ学んで、ステキな大人を目指しましょう(笑

コメントをどうもありがとう。
Posted by:福永  at 2011年06月19日(Sun) 23:07

お元気ですか。
お久ぶり、まじゅです。覚えていますか。
山口の二人の結婚式で会って以来でしょうか。アメリカで多くを学んでいるのですね。
「ろう者たちは聴こえる人の偏見・固定概念には敏感だが、自分の中にもあるとは気付かない」
とても深い言葉ですね。偏見や固定概念って自分ではなかなか気づけない。
だから偏見・固定概念なんでしょうね。
自分の中の偏見・固定概念に気づくには、どうするとよいのだろう。多くの人々との交流や実体験、また新たなことを学ぼうとする積極性が大切になってくるのでしょうか。

また帰国した際、気が向いたらご連絡ください。私も少しは大人になりましたので(笑)、院生時代よりは色々な話ができるかもしれません。

無理しすぎないで、アメリカでの生活を楽しんでください。
また生活記録を読ませてもらうのを楽しみにしています。
Posted by:藤岡麻美  at 2011年06月16日(Thu) 13:32