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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
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2010年10月生活記録 (第5期生 川俣郁美)[2010年11月15日(Mon)]

 10 月に入り、一気に冷えてきたかと思えば一週間後に暑くなったりと、不安定な天気が続いた。

◆◇手話はなぜ言語なのか◇◆◇
 アメリカ手話はアメリカでは既に言語として認められ、今や全米高校の選択外国語クラスの中で、スペイン語の次に人気のある言語となっている。今年5月の生活記録で話したように、オーロニ大学で受けた心理学入門のテキストにも、手話は言語であると明記されてあった。 だが、なぜ言語なのか。現在とっている「アメリカ手話とろう学」では、アメリカ手話はなぜ言語なのかを学んだ。 いくつかを紹介したい。

 まずは音韻論(Phonology)から。 音韻論とは、日本語の場合、五十音図の中から音を選んで一つの単語を形成する。例えば、「時計」は、「と」と「け」と「い」を組み合わせて初めて「時計」という意味のある単語ができる。手話の場合は、@手の形、A手の動き、B手を動かす場所、C手の向き、を組み合わせて一つの単語を形成する、といった具合だ。

 動詞、名詞にもルールがある。アメリカ手話の場合、名詞の場合は手の動作を2回繰り返すのに対し、動詞は1回のみのことがほとんどである。例えば「本」の場合は合わせた手のひらを2回パタパタさせる(本を開閉する様子)のに対し、「本を開く」は合わせた手のひらをパタっと外側に一度だけ開く。

 さらに、顔の表情は修飾語の役割をと果たすことが多い。例えば「青い」と「真っ青」では、手の形、手の動き、手を動かす場所、手の向きは同じだが、顔の表情が異なる。「真っ青」と表す場合は目を細めるプラス唇をすぼめることでさらに青さを強調する。
 他の例として、「泣く」という手話表現。手の形や、手の動かし方、顔の表情、身振りによって、意味が大きく違ってくる。それは、悲しくて泣いているのか、怒りながら泣いているのか、笑いながら笑っているのか、うれしくて泣いているのか、といった、泣いている人の感情や、号泣する、グスンと泣く、ポロポロ泣く、すすり泣く、ホロリと泣く、ボロボロ泣く、しくしく泣く、しゃっくりをあげながら泣く、などといった、その人の泣き方も含む。
 「しゃっくりをあげながらボロボロと泣く」という表現は、 「大泣き(手話)」「ぐしゃぐしゃの顔(表情)」「しゃっくり(身振り)」を同時に表す。 数秒の間にきめ細かい情報が凝縮されてあることがわかる。

 音声言語の場合はひとつひとつの単語を並べて話すところを、手話の場合はいくつかの単語を同時に表すことが多い。手話は音声言語と比べて短いと言われるのはこのためであろう。情報量が減っている訳ではない、ということを教えてくれた。

 手話にもコミュニケーションをとるために必要な体系がしっかりとあり、価値ある言語であることを学んだ。私たちが日常的に使っている手話はれっきとした言語であるということを再確認することで、ろう者としてのアイデンティティ向上に繋がった。これからも様々なことを学んでいきたい。



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