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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
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2006年10月 生活記録(2期生 高山亨太)[2006年11月01日(Wed)]
1.10月は・・・
 筑波大学大学院博士課程の中間評価論文の中間発表会のために日本に一時帰国したり、Gallaudet Universityでの学生や教員による新学長に対する抗議(Protest)が起こったり、大学が閉鎖されたり、つい先日に新学長が解雇されたりするなど、忙しく落ち着かない日々であった。

2.中間評価論文
 私の所属する博士課程は、普通の博士課程とは違って、修士課程も含んだ5年一貫制であり、現在、2年次の学生である。2年次に、修士論文形式で中間評価論文を提出するか、中間報告だけで済ませるか選択することが出来る。大きな違いは、前者のみが修士号を取得することが出来ることである。
 もちろん私は修士号を持っていないし、必ずしも博士が取得できるという保障もないので(もちろん取得できるように努力している訳なのだが)、修士号を取得するためにアメリカのクラスや宿題をこなしながら、修士論文の執筆も並行して進めている状況である。次は、最終発表会と最終提出が1月に控えており、基を抜けない日々が待ちかまえている。
 久々に帰国して、食事と人々といった日本の良さを改めて実感することになった。日本からアメリカへの帰国時には、悲しくなるような気分を覚えてしまったようだ。笑

3.Protest
 日本からアメリカに帰国したのは8日であるが、Protestが実行されたのは6日の金曜日からであった。もちろん到着したときにはその実感がわかなかったのだが、9日の月曜日に通常通りに登校したときに改めて、Protestが起こっているんだなと実感することになった。Protestは、1988年に起こったDPNというProtestのように1週間で終了すると思われていたが、思った以上に長期化するとは思ってもみなかった。
 Protestは、HMBというメインキャンパスを占領し、最終的にはすべての入り口をロックし、大学を閉鎖するという事態にまで展開した。Protestの理由は、様々であり見解が分かれるためここでは省略しますが、以下の2つの日本語のブログに多くの情報が寄せられているので、興味のある方は、閲覧になっていただければと思います。
 私は、Gallaudet Universityに来てから、DeafというものDeaf cultureというものを知ることになり、とても楽しく過ごしている自分がいることがわかった。Gallaudet Universityは、すべての聴覚障害者、ろう者、難聴者、それらをとりまく聴者にとって非常に重みのある価値や歴史のある場所であると信じている。様々な情報や考え方を聞いて、情報を集めていく中で新学長の選考過程、新学長の経済的な指導力に疑問を持ち、最終的には、日本人として抗議に賛同し、サポートした。これからもGallaudet Universityが発展するためには、このProtestは大きな意義があると信じている。Protestが理事会の会議による結果、新学長が解雇されたことで1つ区切りがついたが、Protestに参加した学生や教員の処遇に関する問題や、新たな新学長の選考といった問題が控えている。この先どのような問題が残っているのか気になるところである。
日本にも筑波技術大学があるが、多くの教員が手話を十分に活用できないことや、工学系のみしかないこと、聴覚障害のある教員の比率が低いこと、手話通訳学科がないこと、筑波技術大学が実施している学生研修旅行先がGallaudet Universityや第1期生の太田さんが留学しているNTIDなどがあるアメリカではなく、北欧であることに大きな疑問を持っている。近い将来、一度は教員として勤務してみたい筑波技術大学は、Gallaudet Universityから得られることは多くあるはずだと信じている。筑波技術大学とGallaudet Universityの間では、協定がないと聞いている。是非とも協定を結んで、単位互換制度や交流を進めてほしいと考えている。筑波技術大学も近い将来に聴覚障害のある学長が誕生してほしいものだ。

この記事のURL
https://blog.canpan.info/deaf-ryugaku/archive/41
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コメント
高山です。

石井さん、コメントをありがとうございます。確かにDPNとは違って、論点や問題が外部には見えにくいのも確かですが、内部でもよくわからなくて、情報が錯乱している状況で混乱しやすいのも確かです。私のようにサポートだけはしているという中立的な立場の人の方が多いはずです。

そもそも理事会が、学生や教員の声を聞いて、もっとしっかり選考すればこのような問題は起きなかったと思います。そういう意味で、理事会に問題があると思います。DPNの時の理事が思った以上に多く残っているはずです。すばりDPNの時の理事は同じことを繰り返しているとも言えますので、理事会のマネジメント能力にも疑問があります。
また多くの教員から聞くのは、元新学長が5年間まったく一度もコミュニケーションというか連携をとっていないとのこと、これも大きな問題であり、多くの教員がサポートした理由の1つでもあることは納得できるところです。HMBという建物は、ELIやIIPのオフィスがあり、元新学長のオフィスも4階にあります。しかし、これまで一度もELIやIIPからの要請があったにも関わらず、一度も2階のELIやIIPのオフィスに顔を出したことがないと、一人の教員が言っていたので、インターナショナルの学生や教職員もなかなか受け止められなかったのも無理がないのではと思っています。

ともかく、理事会が解雇を決定したことで収束ではなく、これからが本当の意味での重要な時期になってくるのではないかと思っています。はっきりとは申し上げられませんが、1月からは、暫定的にNTIDの学長を務めたことのある方に1年間のみ学長を依頼するという方向であるようです。
Posted by:高山亨太  at 2006年11月02日(Thu) 14:17

石井です。

10月初旬ギャロに伺ってときは今までで一番長く(4日間ですが)訪れたので、ギャロが非常に重みのある特別な場所だということを私も感じました。

とはいえ今回の学長問題に関しては正直「大学ってこれでいいの?」と感じています。現場にいる皆さんとはかなり違って冷めた見方だと思いますが・・・。

僕は「プロテストを終わらせるために大学が一旦正式に決定した重要事項を取り消してしまう」ことが本当に良い決断なのかわかりません。大学のBoardの決定ってそんな程度のものでいいのかな? Trusteesはもっとしっかりしろと・・・。

ギャロは約180億円の年間予算の内約125億円、つまりほぼ7割が連邦政府のお金で賄われてるはずですから、大学としてきちんと連邦政府と納税者に「何故フェルナンデス氏の学長就任を取り消したのか?何が問題であったのか?今回の取り消しが何故最善の選択だったのか?」を説明する責任があるでしょうね。 

僕の不勉強かもしれませんがDPNの場合と比べると争点がわかりにくいので、大学側は選んだ判断と同じく、取り消した判断についてもクリアになさるべきでしょうね。プロテストをしている人からしても、Boardが自分たちの主張を認めたのか、それとも事態を収拾するためだけに取り消したのか、では意味合いがかなり違いますよね。

長くてすみません。

将来日本にも聴覚障害のある学長が誕生すること、同感です。
Posted by:ishii  at 2006年11月02日(Thu) 12:25

高橋さん、コメントをありがとうございます。今回の経験は、かけがえのないものになるだろうと思っています。今後の経過も重要であるのは当然ですし、今回の出来事を再分析することも重要だと思っています。うっかりブログのアドレスを掲載するのを忘れてしまいました。後者の方のブログは、私も賛同して協力しているブログです。よろしくお願いします。

http://blogs.yahoo.co.jp/guaanc

http://blogs.yahoo.co.jp/gallaudet_students
Posted by:高山亨太  at 2006年11月01日(Wed) 14:03

高山さん、詳しい報告ありがとうございます。ギャロデットの様子については、米国のメディアでもずいぶん取り上げられていますね。ギャロの将来にとっては、この後の経緯が本当に大切になってくると思います。ところで、もしよければギャロの様子が書かれている日本語のブログのアドレスを教えていただけますか?よろしくお願いします。
Posted by:高橋@日本財団  at 2006年11月01日(Wed) 13:46