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聴覚障害者留学
 
 このブログは、2004年度より特定非営利活動法人(NPO)日本ASL協会が日本財団の助成の下実施しております「日本財団聴覚障害者海外奨学金事業」の奨学生がアメリカ留学の様子および帰国後の活動などについてお届けするものです。
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2009年12月生活記録(岡田)[2010年01月19日(Tue)]
今月は学期末ということで、いつもはバタバタしているのだが、幸いにも必須の課題はLaw in Higher Education のクラスのペーパーのみで、しかも10枚程度でよかったので比較的楽だった。ADA法やRehabilitation Act で、保護される障害者がどのように裁判所によって定義されてきたか、というトピックを設定してリサーチを行った。

障害者にとって重要なこれらの法律も、保護対象となる障害者を明確に定義しているわけではなく、30年以上にわたる裁判所の判決や、その時々の裁判官の考え方(保守かリベラルか)、行政府のスタンスによって、運用面が形成されたり、定義が微妙に変化したりしている。そのような歴史の中でどのように保護の対象が定義されてきたのかをリサーチした。なぜなら、これらの判決は、障害学生支援室のスタッフの配置や、提供するサービスにも大きな影響を与えているからである。

1990年前後には学習障害・発達障害を持つ学生に関する裁判が多く見られるし、事実それらが大学の組織編成にも影響を与えた。また2008年にはADAが改正され、現在では、eating, sleeping, walking, standing, lifting, bending, reading, concentrating, thinking, communicating に影響を及ぼす場合も保護対象と明確に規定されている。これらを受けて従来の障害学生支援室という小さな枠組みではなく、大学全体としてAcademic Advisingという方向に行かないともはや対応できない流れになってきている。

たとえば、寮生活をする障害学生の支援には寮のスタッフ等の支援が不可欠であるし、心理的な課題がある場合は、医療センター等との連携が必須である。以前に報告したが、退役兵員をサポートする場合は伝統的な20歳前後の学生への支援と異なるアプローチが必須である。

このリサーチを通して、アメリカでは法的にも、大学により包括的なアプローチを求めるところまできていること、いくつかの大学ではすでにすばやく対応していること、部署の枠を超えて連携する必要があることを学んだ。ただ、逆に言えば法律があるからこそ、大学としてもすべき「ライン」が明確になってくるという側面がある。日本ではこれがないために、障害学生支援のシステムを作るときの理論的な枠がもっと大切になってくると思う。運営者が目の前にいる障害学生しか見なければ、そのシステムは疲弊を起こしてしまうだろうし、もっと上のレベルのAdministrationに負担がかかり、結果として質の低下を招くこともありうる。

このクラスは法律という面からのアプローチではあったが、そのフィルターを通して、Administratorとして考えるべきことなどを学べたので、非常に意義のあるクラスであった。

新年早々新学期が始まる。次学期は新しいクラスとしては、American Community Collegeを取り、秋学期から引き続き、Internship in Administrationと論文作成のためのIndependent Studyを履修する。Community College のクラスの先生は昨年まで学長として働いていた方なので、よりAdministration という観点から学べると思うので楽しみにしている。
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